埼玉県春日部市の鍼灸院 はり・きゅう はりも

〒344-0058 埼玉県春日部市栄町1-279
Tel:048-763-5323
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しゃがむと痛い 膝裏の痛み

しゃがむと痛い 膝裏の痛み

「しゃがむと膝が痛い」という訴えは「変形性膝関節症」を持つ患者さんから
よく聞きます。その場合、膝の内側を示される頻度が高いように思います。

今回は「膝裏の痛み」について症例を通じてご案内いたします。

*この症例は患者さん個人が特定されないよう内容に変更を加えております。

[患者]

40代、男性、立ち仕事


[主訴]

左膝裏・左膝裏外側の痛み

[病歴]

1.2週間前からしゃがむと左膝裏・膝裏外側が痛い。
正座の形はできるが、左膝裏に痛みがあり、数分ももたない。

左腰も前屈みで少し重だるい痛みがある。腰の動きで膝裏の痛みは悪化しない。
膝裏以外の下肢に痛み・しびれはない。

仕事は立ち仕事だが、しゃがむ動作も多いため、日常生活に支障が出ている。

ここ最近は職場の草むしりを毎日1時間ほどしていた。

20代の頃から下肢静脈瘤の既往があり、過去に静脈を切除する手術歴がある。
現在も下腿はむくみやすい。

[所見]

膝窩に広い範囲で圧痛多数。大腿二頭筋に圧痛・硬結あり。
放散痛はない。
下腿前・外側に痛み・しびれはない
大腿・下腿ともにむくみが強い。

大腿二頭筋と膝裏の疼痛部
大腿二頭筋と膝裏の疼痛部

[鑑別]

総腓骨神経絞扼障害(腓骨神経障害)
しゃがむ動作、長時間の立位の病歴はあるが、
下腿外側から足背にかけてしびれや痛み、感覚障害がない。

腰部神経根症
腰の動きによる膝裏の痛みの増悪はない。

[施術方針と内容]

病歴から「総腓骨神経絞扼障害」の可能性もあるが、
疼痛部位が膝裏・膝裏外側の範囲でとどまっていることから、
大腿二頭筋の付着部症も念頭に置いて施術を開始。

[施術]

腹臥位にて、腰・膝裏、大腿後側、下腿後側に電気ていしんでむくみを取り、
残った硬結部に鍼を行う。

腰の痛みは気にならない程度になる。
膝裏の痛みは楽になるが、しゃがむとまだ半分ほど残っている。

座位にて、腓骨裏に残る硬結に単刺、しゃがむ動作での痛みはさらに減る。

正座はお尻が踵につく前に、腓骨頭後側・腓骨頭上部付近に痛みがある。
痛みが出始める膝の角度で、同部位に単刺。
これにより正座での痛み、しゃがむ動作での痛みはほぼ消失。

ハムストリングス等のストレッチの方法を確認して、予防に努める.

むくみがちな体質と、草むしりによる「しゃがむ動作」により
膝裏の負担が増したと思われる。

[施術を終えて]

「しゃがむ」といった膝を曲げる動作は、総腓骨神経を締め付ける動作であり、
大腿二頭筋にも負担がかかります。

「総腓骨神経絞扼障害」に特徴的な病歴「しゃがむ」「草むしり」などは
ありますが、「下腿外側から足背にかけての疼痛・しびれ」は認められませんでした。
今回は初期症状であった可能性もあります。


施術は、最初に電気ていしんで膝窩のむくみにアプローチしたことで、
圧痛部位や緊張部位が途中からより明確になったように思えます。

さらに施術中に再度、正座やしゃがむ動作を確認していただくことで、
患者さん自身が膝窩よりもやや外側の腓骨頭後側周辺に痛みが再現されることを
明確に感じたようです。



そのため、「総腓骨神経絞扼障害」よりは、「大腿二頭筋」の緊張・圧痛、
付着部である腓骨周囲の所見と施術による変化から「大腿二頭筋」の付着部症の
可能性が高いと考えました。

正座や、しゃがむ動作で痛みが出る部位は様々で、 大腿二頭筋だけでなく、
腓腹筋・長腓骨筋 ・fabellaなど様々な要因が考えられます。

経験則ですが、膝関節伸展位よりも、屈曲位での刺鍼の方が、腓骨頭(特に後側)周囲の
緊張がより取れるような気がしています。

総腓骨神経絞扼障害

総腓骨神経


総腓骨神経絞扼障害(腓骨神経障害)は臨床症状が大切といわれています。

症状
下腿外側から足背にかけての知覚障害
足関節・足趾(第1指)の背屈力低下・下垂足

所見
絞扼部の圧痛・下腿外側から足背への放散痛(Tinel様兆候)

病歴
しゃがみ姿勢・正座・長時間の立位・草むしり、農作業

新しいめまい「PPPD」と診断がつかない「めまい症」

新しいめまい「PPPD」と診断がつかない「めまい症」

先日、NHKのテレビ番組「チョイス」で「めまい」の特集をしていました。

そこで「PPPD」という言葉を初めて目にしました。

「Persistent Postural Perceptual Dizziness, PPPD」
日本語にすると「持続性知覚性姿勢誘発めまい」といいます。

「PPPD」が生まれた背景には、診断がつかない「めまい」があります。

まだ新しい「めまい」の概念ですが、患者さんや鍼灸師にも関係のある内容と
思われました。

参考資料の内容を通じて、一部紹介いたします。

「PPPD」の背景

日本では「めまい」を16種類の病気に分けて診断しています。

この16の「めまい」の診断基準に合わないものを「めまい症」としています。

「めまい症」は診断がついてない「めまい」の為、治療法がなく、場合によっては
「気のせい」「年のせい」とされることがあるようです。

さらに「めまい症」は「めまい」全体の20-25%あるといわれ、かなりの割合となります。

このように、患者さんも医療者も、治療方法がないことに困っていた現状がありました。

そして、国際的にも診断がつかない「めまい」が多く、以下の4つの「めまい」を
まとめる作業から、「PPPD」という新しい「めまい」が生まれています。

①恐怖性めまい 
②視覚刺激によるめまい 
③持続性のめまい 
④運動により誘発されるめまい

今後は「めまい症」の中で「PPPD」が占める可能性が高いとされ、注目されています。

「PPPD」の症状と特徴

・急性のめまいから、慢性の持続性のめまいに移行したものである。

・「PPPD」に先行して、急性のめまいである「BPPV(良性発作性頭位めまい症)」や
「前庭神経炎」などがあり、パニック発作や、心因が先行することもあります。

・立位、体動、視覚刺激による症状の誘発が見られる。

・他の前庭疾患や精神疾患を合併する場合もあるが、それらの疾患のみでは説明できない。

・不安症やうつの合併がある

日常的な悪化要因

[視覚]

・スーパーなどの陳列棚を見る
・テレビ・映画などの映像
・スマホ・パソコンでの動画、スクロール
・本などの細かい文字


[体動]

・急に立ち上がる、振り向く
・乗り物に乗る
・家事などの軽い運動、作業
・エスカレーター・エレベーターにのる

[立位]

支えのない状態で立つ歩く(普段通り・速い速度)
背もたれ・ひじ掛けのない椅子に座る

以上のような日常にある刺激で悪化することがわかっています。

「PPPD」の診断基準

「PPPD」の診断は「問診」によって行われます。

検査では特徴的な所見は現時点ではみられないとされています。
よって「問診」が重要となります。

「PPPD」の診断基準の一部を以下に引用いたします。

持続性知覚性姿勢誘発めまい
(Persistent Postural Perceptual Dizziness: PPPD)

PPPDは以下の基準A~Eで定義される慢性の前庭症状を呈する疾患である。診断には5つの基準全てを満たすことが必要である。

A.浮遊感、不安定感、非回転性めまいのうち一つ以上が、3ヶ月以上にわたってほとんど毎日存在する。
1.症状は長い時間(時間単位)持続するが、症状の強さに増悪・軽減がみられることがある。
2.症状は1日中持続的に存在するとはかぎらない。

B.持続性の症状を引き起こす特異的な誘因はないが、以下の3つの因子で増悪する。
1.立位姿勢
2.特定の方向や頭位に限らない、能動的あるいは受動的な動き
3.動いているもの、あるいは複雑な視覚パターンを見たとき

C.この疾患は、めまい、浮遊感、不安定感、あるいは急性・発作性・慢性の前庭疾患、他の神経学的・内科的疾患、心理的ストレスによる平衡障害が先行して発症する。

1.急性または発作性の病態が先行する場合は、その先行病態が消失するにつれて、症状は基準Aのパターンに定着する。しかし、症状は、初めは間欠的に生じ、持続性の経過へと固定していくことがある。

2.慢性の病態が先行する場合は、症状は緩徐に進行し、悪化することがある。

D.症状は、顕著な苦痛あるいは機能障害を引き起こしている。

E.症状は、他の疾患や障害ではうまく説明できない。

持続性知覚性姿勢誘発めまい(Persistent Postural-Perceptual Dizziness: PPPD)の診断基準(Barany Society: J Vestib Res 27: 191―208, 2017)

「PPPD」の病院での治療法

「PPPD」は有効とされている治療法があります。

①薬物療法(SSRI:抗不安薬)
②前庭リハビリテーション
③認知行動療法

「PPPD」に特徴的な症状があった場合は、耳鼻科を紹介したいと思います。

「PPPD」と鍼灸院での対応

鍼灸院では「めまい」の患者さんが時折お見えになります。

「急性のめまい」の患者さんがお見えになることは少なく、
ほとんどが先に病院を受診されています。

しかしながら、「病院でそのめまいは、何と診断されていますか?」と
尋ねても、よくわからないという方もおられます。

「めまい」はあるものの、どうもすっきりしない、継続的な通院を指示されていない。

大きな病気によるめまいではないけれど、よくわからないめまいの患者さんは
意外と鍼灸院に来院されることは少なくありません。

この「よくわからないめまい」に「PPPD」が含まれている可能性は今後増えるでしょう。

病院の受診に関わらず、当院ではあらためて「めまい」についてうかがい、
危険なめまい・鍼灸適応の有無などを確認しています。

参考:鍼灸院での「めまい」は危険な兆候の除外から

「めまい」については以下の方針で行っています。

急性のめまい→中枢疾患を疑わせる症状→早急に病院受診を進める
       末梢性めまい→なるべく早く1度は病院受診を進める

慢性のめまい→病院受診歴の確認・詳細な問診→鍼灸適応の判断

「PPPD」は「視覚刺激」によって、特に悪化しやすいという
特徴的な症状がありますし、有効とされている治療法もあります。

スマホで動画などをよく見る時代ですし、視覚刺激で悪化する
めまいなどがあれば耳鼻科への受診を積極的に勧めたいと思います。

「PPPD」はまだ新しいめまいですので、これからも研究が進むと思われます。

鍼灸と関連した研究報告はまだ見当たりませんでした。(2019.10現在)

器質的疾患ではなく、機能的疾患とされていますので、鍼灸でも対応できる
部分がでてくるかもしれません。

参考資料

① 診断が付かないめまい症の多くはPPPDだった
新潟大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野教授 堀井新氏に聞く(日経メディカル)

② 新しいめまい疾患PPPDの問診票を作成:重症度を評価した12問の問診表
(日経メディカル)

③ 持続性知覚性姿勢誘発めまい(Persistent Postural-Perceptual Dizziness: PPPD)の
診断基準(Barany Society: J Vestib Res 27: 191―208, 2017)http://memai.jp/guideline/pppd2017.pdf

④A Validated Questionnaire to Assess the Severity of Persistent Postural-Perceptual Dizziness (PPPD): The Niigata PPPD Questionnaire (NPQ).(新潟大学の研究)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31219964
*PPPDの3つの悪化要因(直立姿勢/歩行、運動、視覚刺激)のうち、
視覚刺激因子が最も特徴的であるという内容

⑤Diagnostic criteria for persistent postural-perceptual dizziness (PPPD):Consensus document of the committee for the Classification of Vestibular Disorders of the Bárány Society.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29036855
* 診断基準に関する文書

⑥Persistent-postural perceptual dizziness (PPPD)–Yes, it is a psychosomatic condition!
https://content.iospress.com/articles/journal-of-vestibular-research/ves190679
* 心身医学の観点からの議論が、異なる専門分野間の理解と、PPPDが心身医学の広い枠組みにどのように適合するかにおいて重要

10月12日(土)の台風について

10月12日(土)の台風について

台風の影響により、ご来院自体が危険を伴うことから、患者さんにはご予約の
変更をお勧めしております。

当院もガラス張りのため休診の予定です。

ご予約変更の方は恐れ入りますが、お電話下さいますようお願いいたします。
営業時間外でも、電話が転送されますので遠慮なくご連絡ください。

「豊春駅」からバスでの「はり・きゅう はりも」への行き方

豊春駅西口バス停

「豊春駅」からバスでの「はり・きゅう はりも」への行き方

東武野田線(東武アーバンパークライン)「豊春駅」から東武伊勢崎線「北春日部駅」にはバスが運行されています。

当院はこの路線の「塚内公園入口」のすぐ近くにございます。

バスは「火・木・土」の運行ですが、ぜひご利用いただければと思います。

「豊春駅西口」バス停は「豊春駅」改札から西口に降りていただき、右手(春日部方面)に30mほど行った道路沿いにございます。

豊春駅西口バス時刻表
豊春駅-北春日部駅間 路線図

路線図途中の「内牧公園」は緑豊かな広大な公園です。
春先には桜が満開となり、お花見にも最適です。

普段は、ウォーキング、バーベキューなどで利用されています。

10月の休診日のご案内

10月の休診日のご案内

10月の休診日は下記となります。

5日(土)、6日()、14日(月・祝)、16日(水)、22日(火)、29日(火)

ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

発症から1か月が経過した突発性難聴の鍼灸症例

発症から1か月が経過した突発性難聴の鍼灸症例

この症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております。

患者 50代 女性
主訴 左耳難聴・耳鳴り

突発性難聴の病歴

2週間前の夜、耳鳴りが起きて、目が覚める。日中車で買い物に出かけたときに、
すこしくらっとした。倦怠感もあった。

翌日、耳鼻科を受診。聴力検査の時に難聴だと自覚する。
「突発性難聴」・「高音」が障害されていると診断。

発作は1か月前にすでにおきていると医師から指摘を受け、
1か月前に立ってられないほどのめまい、耳鳴りがあったことを思い出す。

医師からは発症から1か月が経過しており、症状が固定化しているため、
ステロイドは処方されず。

しかしながら、家族からの強いアドバイスで翌日耳鼻科を再受診し、
ステロイドを処方してもらう。

3日前、耳鼻科受診(3回目)にて低音域は少し回復、高音域に変化はない。

昨日、耳鳴りが「キーン」とした高音から、「ジー」とした音に変化。

この日から少し眠れるようになる。

現在、自覚的な難聴はない。左耳がこもり、つまり感がある。

首肩こりは以前からある。ここ数ヶ月様々なことがあり、
寝付きが悪い。平均4、5時間の睡眠。

食欲正常

貧血傾向

交通事故歴なし

鍼灸受診経験はない

服薬

タケキャブ、アデホス、ブレドニン、メコバラミン
発症から1ヶ月以上が経過しているが、ステロイドの効果は少しでている様子

所見

耳垂(耳たぶ)裏から乳様突起に浮腫み、第4頚椎横突起に硬結。
肩上部に広範囲の緊張

鍼灸施術方針と説明


耳・首・肩の循環改善 と浮腫の除去

発症から1か月が経過していること。「低音障害型」ではなく
「高音の突発性難聴」であることから、回復の可能性が少し低いことを伝える。

1週間に2回、計4回の施術を提案し、変化がなければ、当院としては難しい旨を伝え、
了承をいただく。

4回の中で変化があった場合、1.2回加療することも伝える。

鍼灸施術内容とその経過


初診


耳周囲への置鍼30分(翳風、天柱、風池、聴宮、完骨、第4頚椎椎間関節、扶突)
セイリンJSP1寸6分(50㎜)・4番鍼を使用。

首・肩・乳様突起周囲への電気ていしん・電気温灸器 による浮腫の除去

第2回(4日目)


先月に比べ、少し元気がでてきた。耳鳴りの音が「ジー」から「チー」と細い音に変化。
頻度は変わらず。こもり感は減っている。エレベーターで悪化しない。めまいはない。

テレビは聞き取れる。家族がボソボソと話すと、聞き取れない時がある。
前回の施術に加え、「翳風」中心に棒灸での熱刺激を加える。

3回目(9日目)


日中、耳鳴りが気にならなくなる時間が増えた。寝付くときも気にならず。
こもっている感じは1日に1、2回。駅に地下鉄が入ってくるときに気になる。
睡眠時間が6時間確保している。首肩は柔らかくなっている。

頭部・腰部にも棒灸を加える。

4回目(12日目)


睡眠は取れている。耳鳴りは減っているが、再発の不安はある。

5回目(20日目)


耳鳴りは気にならず、音楽を聴いていても共鳴することがない。
この1週間で家族の用事で眠れない日があったが、体調は悪くならなかった。

施術終了となる。

施術を終えて


耳鼻科を受診する1か月前の耳鳴り・めまいから、発症から既に時間が経過していました。
「突発性難聴」は発症から早急に耳鼻科を受診することが大切です。

鍼灸の施術も早ければ早いほど、回復の可能性が高まるように思えます。

当院に依頼された時には、既に1か月が経過しており、
どこまで回復が見込めるかは未知数でした。

幸い施術当初から音の変化、耳鳴りの頻度、耳のこもり感、睡眠状況の改善など、
回を重ねるごとに良い変化がありました。

突発性難聴に関しては、病態や発症からの時間の経過など、
施術による経過などから回復の可能性を見極め、
短期・集中の施術計画を提案しています。

9月の休診日のご案内

9月の休診日のご案内

9月の休診日は下記5日間となります。

ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

2日(月)、8日(日)、18日(水)、27日(金)、28日(土)

顔面神経麻痺(Bell麻痺)と鍼灸

顔面神経麻痺と鍼灸

「末梢性顔面神経麻痺」はある朝起きたら、顔面を中心に違和感を感じて
発症することが多いようです。

寝不足や、過労、ストレスなどが背景にあることが多いですが、
ヘルペスウィルスが主な原因となります。

記事の後半には顔面神経麻痺の鍼灸症例を紹介しています。

顔面神経麻痺の症状


顔面神経が顔の表情をつくる筋肉をうごかすため、顔面神経麻痺になると、
以下のような症状がでます。

・眉が上がらない

・目がつぶれない

・歯をむけない

・口がすぼめない

・鼻唇溝が浅くなる

・口角が下がる

・飲み物がもれる

他の症状

顔面神経は顔の表情だけでなく、味覚、唾液、涙などにも影響します。

以下の症状が多いと、回復に時間を要すると思われます。

・発汗障害

・味覚障害

・唾液分泌障害

・涙液分泌障害

・聴覚過敏

病院での治療


「顔面神経麻痺」の可能性がある場合は、まず「耳鼻科」を受診してください。

「顔面神経麻痺」の原因はウィルス感染以外にも様々なものがあります。

治療のメインとなる「副腎皮質ホルモン」は後に紹介する「病的共同運動」の
予防につながるとも言われています。

またENoGとよばれる電気生理学的検査により、顔面神経麻痺の重症度や
麻痺の回復期間を判定できる検査などもありますので、できるかぎり早く
病院への受診をお勧めします。




・入院・外来での副腎皮質ホルモン投与(10日-12日)

・抗ウィルス薬
・メチルコバラミン

(星状神経節ブロック注射)

原因


単純ヘルペスウィルス1型(HSV-1)の再活性化によって発症する。

ウィルスによる炎症で神経に浮腫が起き、「顔面神経管」という「管」を通る「顔面神経」が絞扼され様々な症状を引き起こすといわれています。

ベル麻痺とハント症候群で顔面神経麻痺の9割を占める。

予後


・8割は自然回復

・2割は半年かかることもあるといわれています。

・病的共同運動がある方は、後遺症が残ることがあります。

*病的共同運動:まばたきをすると、口角が動いたり、食事の際に涙が出たりなど
 自分の意志とは別に複数の箇所が同時に動いてしまうこと。
 遅発性といわれ、発症時ではなく、後からでてくる可能性がある症状。

顔面神経の走行

顔面神経 枝


顔面神経は枝分かれして、顔面の各部位につながっています。
そのため、様々な部位に症状があらわれます。

*神経の走行には破格も多く、必ずしも下記のようになっているわけではなく、
顔面神経の枝が複数の筋肉に分布する割合は個人差があるようです。

・側頭枝→前頭筋→眉毛・まぶたが下がる

・頬骨枝→眼輪筋→まぶたが閉じない(眼の痛み・涙目)

・頬筋枝→上唇挙筋・口輪筋→口角・上口唇が引き上げられない・鼻唇溝の消失

・下顎縁枝→口角下制筋→口角が引き下げられない

・頸枝→広頚筋

顔面神経が動かす顔の筋肉

顔面神経 筋肉

顔面神経が顔の表情をつくる様々な筋肉を動かします。

図にある筋肉はその一部となります。
「顔面神経麻痺」になると、これらの筋肉が麻痺することで、動きに制限が現れます。

顔面神経麻痺と鍼灸

顔面神経 ツボ

「顔面神経麻痺」に対する鍼灸施術は、顔面神経の走行上に位置する
いわゆる「ツボ」を使用します。

東洋医学的ないわゆる「ツボ」というよりは、顔面神経に関わる
解剖学的に重要な組織である筋肉、神経、血管が「ツボ」の位置に
近いということです。

「ツボ」をランドマークとして、触診により筋肉の拘縮や緊張、
冷えなどの反応を探します。

鍼やお灸を使うことで、神経周辺の血流を促し、回復を図ります。
また、麻痺した筋肉の動きを取り戻すことが目的となります。



浅い鍼を行い、20分ほど置きます。

電気温灸器で反応部位を中心に熱を加え、電気ていしんで
下記の静脈に沿って血流の改善を行います。

顔面神経は耳たぶの後ろ(翳風)から、顔に分布するため、
棒灸なども使用します。

側頸部・肩などの緊張も多いことから同時にそちらも施術しています。

顔面 静脈

鍼灸の施術の頻度は、重症度や発症してからの時間などにより異なります。
発症から2.3週間頃にお見えになる方が多く、最初の1.2か月は週に2-1回、
その後は2週間に1回くらいを目安としています。

顔面神経麻痺の鍼灸症例

50歳 男性
左顔面神経麻痺

現病歴

2週間前に左顔面部に違和感を感じ、翌日総合病院を受診。

ブレドニン、メチコバールを処方され、特に次の受診は決まっていない。
入院はなく、外来での点滴もなかった。

現在は、左目が完全に閉じれない、まぶしくてサングラスをしている。
頬が垂れる感じ。噛むときに力が入らない。

当初、耳鳴りはあったが、現在はない。
発汗、味覚に問題なし。

発症前は仕事が忙しく、ほとんど休まず。睡眠も3,4時間が平均。
外傷、風邪などはない。

鍼灸で治った人がいると聞き、鍼灸院を探してきた。
鍼灸受診経験はない。

初診

左上側臥位にて、セイリンJSP1寸3分・3番鍼にて置鍼20分。

前頭筋、眼輪筋、頬筋、上唇挙筋、口輪筋、口角挙筋、口角下制筋、
胸鎖乳突筋などを対象。

後頚部・側頚部・顔面部に電気ていしん。
しっかり睡眠をとって休むこと。顔面部、頚部を冷房などで冷やさないこと。

第2回

前回の施術に電気温灸器syoukiを加える。
口輪筋、上唇挙筋、前頭筋に緊張がみられる。

第3回

まぶしさはまだあるが、以前より目は閉じれるようになった。
上唇挙筋の緊張がまだある。

第4回

見た目が他人からみてもよくなっていると言われる。
鼻唇溝の左右差はほぼない。

目は特に改善を感じる。口の周りの力がでにくいこと、
頬がたれる感じはまだ残っている。

第5回

調子はよく。目は気にならない。

左口角外方、左頬部に5ミリほどの緊張部位が残っているが、
日常生活に支障はないとのこと。

経過をみることに。

参考文献


・顔面表情筋(眼輪筋および口輪筋)の支配神経に関する研究 昭和医会誌 第72巻 6号
・「ネッター解剖学アトラス」 南江堂
・「鍼灸師・柔道整復師のための局所解剖カラーアトラス」 南江堂

足底腱膜炎と鍼灸

足底腱膜炎

足底腱膜炎と鍼灸

「足底腱膜炎」は踵から足の裏の指まで広がる「足底腱膜」に問題があり
痛みを起こします。主に踵に強い痛みを感じます。

朝起きた時の第1歩目や、長距離ランナー、飲食業など長時間の
立ち仕事に従事する方に多い症状です。

今回は「足底腱膜炎」についてご案内いたします。

足底腱膜炎の症状

・起床時の第一歩目の痛み
(足根管症候群と症状が同じため区別が必要)

・踵の内側の痛み(踵以外にも痛みを訴えます)

・階段の上り・爪先立ちで痛む

足底腱膜炎になりやすい人

荷重により踵に負荷がかかり、足底腱膜やアキレス腱を繰り返し
動かす動作の多い方になりやすい傾向があります。

・長時間の立ち仕事・歩行

・肥満

・長距離ランナー

・ダンサー

・偏平足

足底腱膜炎になる原因

足底筋膜と踵の骨への繰り返す負荷が、 足底腱膜の
付着部である踵の内側に痛みをおこします。

足底腱膜周辺の解剖

足底腱膜

・踵の内側から足の裏の指に広がっています。
(踵骨隆起内側から第1-5基節骨に付着)


・腱膜が始まる付近に、脛の神経の枝があり、
 痛みに関係することがあります。
(腱膜起始部から脛骨神経の枝、外側足底神経に影響)


・アキレス腱の動きとの連動により痛みが生じます。
(踵の骨膜を通じてアキレス腱につながる)


・足底腱膜の内外側に隣接している筋肉の影響を受けます。
(足底腱膜の内側:母趾外転筋)
(足底腱膜の外側:小趾外転筋)


・足底腱膜より深いところにある筋肉・靭帯の影響を受けます。
 (短趾屈筋が踵骨の内側に付着・長足底靭帯が踵骨に付着)


・ 踵骨付着部に最も負担がかかる といわれています。


・ 足底腱膜より浅いところに脂肪体があります。
 (踵骨下脂肪体・加齢で柔軟性低下)

足底腱膜炎の身体の状態

足・足の指・足の裏・ふくらはぎ(下腿三頭筋)が硬くなっています。

・足関節背屈制限

・ふくらはぎの緊張

・足底腱膜の緊張

・足指の筋力・機能低下

足底腱膜炎の所見

・踵骨内側の圧痛

・足趾・足関節の筋力低下

・ 踵骨棘が合併

足底腱膜炎の施術方針

・疼痛を誘発する運動の中止

・足底腱膜が緊張→踵の付着部の緊張緩和→アキレス腱のストレッチなど

・足底腱膜が弱化→付着部の荷重要素軽減
 →足趾・足関節の筋力強化・脂肪体・靭帯をやわらかく

足底腱膜炎の鍼灸施術

前項の「足底腱膜周辺の解剖」で述べた、問題のある部分へのアプローチが
中心となります。


・下腿三頭筋への刺鍼

・アキレス腱付着部への刺鍼

・踵内側の疼痛部位への刺鍼

・足底腱膜・踵骨下脂肪体への熱刺激

・足底・足指間・足関節周囲・下腿内側の循環改善

・足底腱膜・下腿三頭筋のストレッチ

・足指の筋力強化(荷重しない状態で)


鍼灸の施術をお受けになる前に

足底腱膜炎は重症度によって、痛みも異なります。

病院では痛み止めの処方、ヒアルロン酸・ステロイドの注射
医院によっては体外衝撃波などの機器があります。

またインソールなども有効な場合があります。

まずは病院で「足底腱膜炎」かどうかをしっかりと
診断をしていただくことが重要です。

踵が痛いから、「足底腱膜炎」だと
自己判断されないことは大事なことです。

「足底腱膜炎」の鍼灸症例については後日、ご案内いたします。

急性低音障害型感音難聴の鍼灸症例

急性低音障害型感音難聴の鍼灸症例


こちらの症例は患者さん個人が特定されないように変更を加えております。

低音障害型感音難聴

患者 

70代、女性


主訴

右耳の突然の難聴・耳鳴り・閉塞感

受診動機

突発性難聴で鍼灸受診経験のある家族のアドバイスで当院を受診した。

病歴

4日前、突然右の耳が聞こえづらくなる。蚊がいるような耳鳴り、
閉塞感がある。めまい・頭痛なし、顔・手足のしびれなし。

3日前に近隣の耳鼻科を受診、服薬を開始する。
カリクレイン・トリノシン・メチコバール・リンデロン

現在、2割ほど症状が軽減している。
医師からは診断名は言われず、「高音」「低音」どちらの
難聴かは伝えられなかった。自分では「低音」だと思う。

随伴症状は首・肩こり、背中の張り。鍼灸受診経験有

食欲正常数年来の睡眠障害健康診断・血圧などに問題はない。

所見

「風池」付近の圧迫で、耳症状が少し強くなる。
乳様突起周囲のむくみ、肩上部の緊張側頭部の筋張りなどが認められた。

初診


右上側臥位にて、頚部、後頭部、肩上部、側頭部、
顎関節部などの緊張を和らげ、循環改善を促す。上記部位に電気ていしんを使用。

「翳風」「天柱」「風池」「聴宮」「下関」「角孫」などへの置鍼15分。

水分摂取となるべく身体に無理のない生活を、心がけていただく。
難聴が「低音」か「高音」かを医師に確認していただくようお願いする

第2回(6日目)

耳鼻科からのステロイドの量が朝3錠 昼2錠 夜1錠から
朝1錠 昼1錠 夜0 となる。

医師から「急性低音障害型感音難聴」と伝えられる。

昨日、本日と少し楽。
耳栓をしていると耳閉感が楽だが、「ファンファン」と反響がある。

聞こえにくさは感じにくく、蚊の音はない。

電気ていしんで大迎-完骨をつないだ刺激を加え電気温灸器で
乳様突起から側頸部、後頭部に熱を加え、緊張を緩め、循環改善を図る。
手足のツボにも数か所、鍼を加える

また睡眠の質が少しでも改善できるように、首・肩の緊張を取るようにした。

第3回(8日目)

蚊の音、耳鳴りは消える。つまり感もない難聴は感じない
「ボワンボワン」と自分の声、テレビの音が反響する。

起床時はすっきりしている
家事を少しずつ、以前のようにするようになった。

気になっていた家事を再開でき、気分が良い。

第4回(11日目)

耳鼻科にて聴力の回復がオージオグラムで確認された。
ステロイドは終了した。

蚊の音もない閉塞感もぬけてくれる。昨日は1日中、
スッキリしていた。

周囲の音に反応して「ボワンボワン」と反響するのは少し残っている。

側頭部「角孫」付近の圧痛を訴えられる。
同部位に硬結も確認できたため、水平刺で置鍼10分、
その後、硬結縮小を確認した。

発症前の習慣だった「ラジオ」を聞くことが苦痛ではなくなった。

第5回(15日目)

前回施術後、2日間ほど「ポワンポワン」した反響音はなかった。
しかしながら、昨日、本日とあったりなかったりが続いている。

施術を終えて

早期の耳鼻科の受診、「急性低音障害型感音難聴」であったこと。
鍼灸施術のタイミングが早かったなどの「好条件」があり、
妥当な経過をたどったように思えます。

難聴・耳鳴り・耳閉感については改善。反響音については、
日によって変化がある状態で終了となりました。

生活面においては、ご家族の協力もあり、患者さん自身の
負担の軽減につながったと思われます。

お見えになるごとに、症状が少しずつ軽減され、
ご本人の表情からも安心感がうかがえました。