埼玉県春日部市の鍼灸院 はり・きゅう はりも

〒344-0058 埼玉県春日部市栄町1-279
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足底腱膜炎と鍼灸

足底腱膜炎

足底腱膜炎と鍼灸

「足底腱膜炎」は踵から足の裏の指まで広がる「足底腱膜」に問題があり
痛みを起こします。主に踵に強い痛みを感じます。

朝起きた時の第1歩目や、長距離ランナー、飲食業など長時間の
立ち仕事に従事する方に多い症状です。

今回は「足底腱膜炎」についてご案内いたします。

足底腱膜炎の症状

・起床時の第一歩目の痛み
(足根管症候群と症状が同じため区別が必要)

・踵の内側の痛み(踵以外にも痛みを訴えます)

・階段の上り・爪先立ちで痛む

足底腱膜炎になりやすい人

荷重により踵に負荷がかかり、足底腱膜やアキレス腱を繰り返し
動かす動作の多い方になりやすい傾向があります。

・長時間の立ち仕事・歩行

・肥満

・長距離ランナー

・ダンサー

・偏平足

足底腱膜炎になる原因

足底筋膜と踵の骨への繰り返す負荷が、 足底腱膜の
付着部である踵の内側に痛みをおこします。

足底腱膜周辺の解剖

足底腱膜

・踵の内側から足の裏の指に広がっています。
(踵骨隆起内側から第1-5基節骨に付着)


・腱膜が始まる付近に、脛の神経の枝があり、
 痛みに関係することがあります。
(腱膜起始部から脛骨神経の枝、外側足底神経に影響)


・アキレス腱の動きとの連動により痛みが生じます。
(踵の骨膜を通じてアキレス腱につながる)


・足底腱膜の内外側に隣接している筋肉の影響を受けます。
(足底腱膜の内側:母趾外転筋)
(足底腱膜の外側:小趾外転筋)


・足底腱膜より深いところにある筋肉・靭帯の影響を受けます。
 (短趾屈筋が踵骨の内側に付着・長足底靭帯が踵骨に付着)


・ 踵骨付着部に最も負担がかかる といわれています。


・ 足底腱膜より浅いところに脂肪体があります。
 (踵骨下脂肪体・加齢で柔軟性低下)

足底腱膜炎の身体の状態

足・足の指・足の裏・ふくらはぎ(下腿三頭筋)が硬くなっています。

・足関節背屈制限

・ふくらはぎの緊張

・足底腱膜の緊張

・足指の筋力・機能低下

足底腱膜炎の所見

・踵骨内側の圧痛

・足趾・足関節の筋力低下

・ 踵骨棘が合併

足底腱膜炎の施術方針

・疼痛を誘発する運動の中止

・足底腱膜が緊張→踵の付着部の緊張緩和→アキレス腱のストレッチなど

・足底腱膜が弱化→付着部の荷重要素軽減
 →足趾・足関節の筋力強化・脂肪体・靭帯をやわらかく

足底腱膜炎の鍼灸施術

前項の「足底腱膜周辺の解剖」で述べた、問題のある部分へのアプローチが
中心となります。


・下腿三頭筋への刺鍼

・アキレス腱付着部への刺鍼

・踵内側の疼痛部位への刺鍼

・足底腱膜・踵骨下脂肪体への熱刺激

・足底・足指間・足関節周囲・下腿内側の循環改善

・足底腱膜・下腿三頭筋のストレッチ

・足指の筋力強化(荷重しない状態で)


鍼灸の施術をお受けになる前に

足底腱膜炎は重症度によって、痛みも異なります。

病院では痛み止めの処方、ヒアルロン酸・ステロイドの注射
医院によっては体外衝撃波などの機器があります。

またインソールなども有効な場合があります。

まずは病院で「足底腱膜炎」かどうかをしっかりと
診断をしていただくことが重要です。

踵が痛いから、「足底腱膜炎」だと
自己判断されないことは大事なことです。

「足底腱膜炎」の鍼灸症例については後日、ご案内いたします。

急性低音障害型感音難聴の鍼灸症例

急性低音障害型感音難聴の鍼灸症例


こちらの症例は患者さん個人が特定されないように変更を加えております。

低音障害型感音難聴

患者 

70代、女性


主訴

右耳の突然の難聴・耳鳴り・閉塞感

受診動機

突発性難聴で鍼灸受診経験のある家族のアドバイスで当院を受診した。

病歴

4日前、突然右の耳が聞こえづらくなる。蚊がいるような耳鳴り、
閉塞感がある。めまい・頭痛なし、顔・手足のしびれなし。

3日前に近隣の耳鼻科を受診、服薬を開始する。
カリクレイン・トリノシン・メチコバール・リンデロン

現在、2割ほど症状が軽減している。
医師からは診断名は言われず、「高音」「低音」どちらの
難聴かは伝えられなかった。自分では「低音」だと思う。

随伴症状は首・肩こり、背中の張り。鍼灸受診経験有

食欲正常数年来の睡眠障害健康診断・血圧などに問題はない。

所見

「風池」付近の圧迫で、耳症状が少し強くなる。
乳様突起周囲のむくみ、肩上部の緊張側頭部の筋張りなどが認められた。

初診


右上側臥位にて、頚部、後頭部、肩上部、側頭部、
顎関節部などの緊張を和らげ、循環改善を促す。上記部位に電気ていしんを使用。

「翳風」「天柱」「風池」「聴宮」「下関」「角孫」などへの置鍼15分。

水分摂取となるべく身体に無理のない生活を、心がけていただく。
難聴が「低音」か「高音」かを医師に確認していただくようお願いする

第2回(6日目)

耳鼻科からのステロイドの量が朝3錠 昼2錠 夜1錠から
朝1錠 昼1錠 夜0 となる。

医師から「急性低音障害型感音難聴」と伝えられる。

昨日、本日と少し楽。
耳栓をしていると耳閉感が楽だが、「ファンファン」と反響がある。

聞こえにくさは感じにくく、蚊の音はない。

電気ていしんで大迎-完骨をつないだ刺激を加え電気温灸器で
乳様突起から側頸部、後頭部に熱を加え、緊張を緩め、循環改善を図る。
手足のツボにも数か所、鍼を加える

また睡眠の質が少しでも改善できるように、首・肩の緊張を取るようにした。

第3回(8日目)

蚊の音、耳鳴りは消える。つまり感もない難聴は感じない
「ボワンボワン」と自分の声、テレビの音が反響する。

起床時はすっきりしている
家事を少しずつ、以前のようにするようになった。

気になっていた家事を再開でき、気分が良い。

第4回(11日目)

耳鼻科にて聴力の回復がオージオグラムで確認された。
ステロイドは終了した。

蚊の音もない閉塞感もぬけてくれる。昨日は1日中、
スッキリしていた。

周囲の音に反応して「ボワンボワン」と反響するのは少し残っている。

側頭部「角孫」付近の圧痛を訴えられる。
同部位に硬結も確認できたため、水平刺で置鍼10分、
その後、硬結縮小を確認した。

発症前の習慣だった「ラジオ」を聞くことが苦痛ではなくなった。

第5回(15日目)

前回施術後、2日間ほど「ポワンポワン」した反響音はなかった。
しかしながら、昨日、本日とあったりなかったりが続いている。

施術を終えて

早期の耳鼻科の受診、「急性低音障害型感音難聴」であったこと。
鍼灸施術のタイミングが早かったなどの「好条件」があり、
妥当な経過をたどったように思えます。

難聴・耳鳴り・耳閉感については改善。反響音については、
日によって変化がある状態で終了となりました。

生活面においては、ご家族の協力もあり、患者さん自身の
負担の軽減につながったと思われます。

お見えになるごとに、症状が少しずつ軽減され、
ご本人の表情からも安心感がうかがえました。

8月の休診日のご案内

はりも

 

8月の休診日のご案内

 

 8月の休診日は下記5日間となります、

 

2日(金)、3日(土)、12日(月・)・21日(水)、25日(

 

ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

 

 

 

手術前・手術後の手根管症候群-鍼灸2症例

 

手術前・手術後の手根管症候群の鍼灸2症例

 
今回は手術前の手根管症候群と手術後の手根管症候群の
2つの症例をご紹介いたします。
 
手根管症候群に対して、鍼灸は保存療法の一つです。
 
手術を希望せずお見えになる方が大半ですが、
鍼灸に限らず、一定期間の保存療法で改善が見られない場合、
手術の適切なタイミングを妨げないことも重要です。
 
また、手術後に痛みや、しびれ、違和感、つっぱり感などを
訴えて鍼灸院にお見えになる方もいます。
 
どちらも簡単なものではありませんが、以下の症例が
ご参考になれば幸いです。
 
下記症例は患者さん個人が特定されないよう内容に変更を加えております。
 
 
手術に至らなかった手根管症候群の鍼灸症例
 
 
患者:30代、女性
 
病歴
 
2ヶ月前から違和感、1ヶ月前からしびれが始まる。
右前腕橈側の感覚が低下している。
右母指、示指、中指、に痛み、しびれがある。
 
近隣の整形外科で「手根管症候群」と診断を受ける。
 
ビタミン剤が処方されるが症状は軽減されない。
 
夜間痛あり、起床時が最も痛みが強い。
就寝時に朝が来るのが怖く、あまり眠れない。
 
中指にバネ指がある。
 
朝、蛇口をひねるのが辛い、ペットボトルの蓋を開けれない。
 
仕事は週5日、5時間の調理業務
 
前腕のストレッチをすると、少し楽になる。
湿布はしていない。
 
首、肩こりはあるが頚椎の動きによる
上肢症状の増悪はない
 
既往歴なし
 
 
身体診察
 
ファレンテスト(+)
ハンドダイアグラム
 
ルーステストは施行するも不明
 
手根部、手掌部の押圧でいくつか指に放散痛が
再現される。
 
 
施術方針
 
まずは夜間痛の軽減を第一目的とする。
 
症状が半分位になるまでは週1回の頻度の施術を
提案するが、仕事との兼ね合いをみながらの
頻度となる。
 
 
 
初診
 
前腕前側の緊張が強く、母指が内転位になっている。
右上側臥位にて右肩上部、側頸部に電気ていしん、電気温灸器と指圧。
 
仰臥位にて、右前腕、母指球に電気ていしん、電気温灸器を加える。
 
 
第2回(9日目)
 
朝の痛みは変化なし。夜間痛は頻度が減る。蛇口をひねるのは少し楽になる。
中指のバネ指は変わらず。指のしびれも変化なし。
 
日中、仕事中は症状を忘れられる。
施術日、翌日、翌々日まで調子は良かった。
 
前回の施術に加え肘周囲の緊張部位にも施術を加える。
また、前腕の硬結部位に数本置鍼を加える。
 
 
第3回(22日目)
 
大きな変化がない。バネ指の頻度が少し減った程度。
 
 
第4回(36日目)
 
朝、中指が動かしづらい。夜間痛はほとんどない。
夜、前腕を触ってみると冷えていることが多い。温めると
少し楽になる。
 
ツボでいう「郄門」付近、深指屈筋や母指球外側の押圧で、
指に放散する部位があることが判明。
そこから尾側へ2.3㎝の部位の押圧で、バネ現象が軽減する部位を
確認。
 
手根管
 
 
 
変化が乏しいため、置鍼に加え、旋捻、雀琢を加える。
これまで取りきれなかった前腕の緊張部位が大幅に小さくなる
 
自宅灸を行ってもらうことにする
 
 
第5回(51日目)
 
前回の施術の直後から、急激に改善されたとのこと。
夜間痛ほぼなし。バネ指も頻度と程度が大幅に減る。
 
施術は前回通り。
 
 
2週間後、仕事が10日ほど休みになり、手を休めることができた。
それから、2ヶ月経過してからも、症状の再発がないとの
連絡をいただき、終了となった。
 
 
施術を終えて
 
夜間痛など、症状が強く、仕事での負担も大きかったが、
当初は鍼をなるべく使わず、
電気ていしんなど弱めの
施術から始めた。
 
前腕全体の強いむくみと緊張は取れた一方で、
前腕前側の硬結部位がより明確になったが取りきれず、
改善のスピードもゆるやかでした。
 
 
夜間痛に改善が乏しいことから、これ以上改善が見られない場合、
医師と手術の相談をしていただくことを考える。
 
4回目の施術で緊張部位が鍼により縮小しました。
さらに自宅灸とまとまったお休みにより、
負担が減ったため、大幅な症状改善につながったと感じています。
 

以前は「手根管部」に直接鍼をしていましたが、改善も限定的でした。
今回の施術では「手根管部」に鍼はしておりません。
 
昨今、「筋膜」という筋肉を包む膜に注目があたり、
理学療法士による報告でも、
「手根管部」ではなく、
関連する「筋膜」をゆるめることで、

手根管症候群の改善をもたらした例を読んだことがあります。
 
今回の症例と同様に前腕の緊張部位を手によって緩めたものでした。
 
「手根管」そのものではないところに、原因があることを
確認できた一例となりました。
 
 
 
 
手根管症候群手術後のつっぱり感
 
 
患者 70代 女性
 
病歴

8か月前、左手の手根管症候群と母指腱鞘炎の手術を行う。
術後は、痛みが10→7となる。
術後は痛みどめの薬の処方だけを受ける。
 
現在左手の痛みは7→1ほど。しびれが残っている。
最近、ようやく左手に時計ができるようになった。
 
左手の手術痕、特に母指球のつっぱり感が最も気になる。
 
 
手根管2
 
 
手術痕に対する突っ張り感、冷感は直接お灸をすることが
多いです。
 
この患者さんは喘息はありませんが、日常的に咳き込むことがあるため、
煙の出るお灸は使用できませんでした。
 
 
手術後もあまり動かしてないこと、動かし方の
リハビリ指導も受けてないため、手にむくみが認められました。
 
患者さん自身が鍼が怖いこともあり、
電気ていしんと電気温灸器で対応した。
 
 
3回目くらいから突っ張り感の軽減がみられ始めました。
 
滑走性を促すトレーニングのプリントを確認し、
自宅で行っていただく。(目薬をさす時についでに行ってもらう)
 
本当に徐々にですが、滑走性のトレーニングを加えてから
お見えになるたびに突っ張り感の程度と頻度が
減りました。3か月もするとほとんど感じないようになりました。

施術やトレーニングで血流改善がなされ、回復につながったと
感じています。

 
 
 
 
 
 

7月の休診日のご案内

せんねん灸

7月の休診日のご案内

 

7月の休診日は下記4日間となります。

3日(水)、13日(土)、17日(水)、21日(

ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

 

 

腕のしびれ(胸郭出口症候群):電気ていしんを使った症例

電気ていしん

 

腕のしびれ(胸郭出口症候群):電気ていしんを使った症例

 

鍼灸院である当院にお見えになる方でも、
「なるべく鍼をしないでほしい」「鍼が怖い」
おっしゃられることがあります。

治療後にはおもったほどの刺激ではなかったと
言われることがほとんどなのですが、
患者さんの様々な負担を少なくする必要があります。

少しずつではありますが、「電気ていしん」の活用で
治療内容の幅を広げて行きたいと思っています。

 

「電気ていしん」は患者さんの自覚する刺激感はかなり低いです。
使い方にもよりますが、ご家庭の低周波治療器よりも低い電圧を使って
施術にあたっています。

*この症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております。

 

腕のしびれの電気ていしん症例

患者:60代、男性

主訴:左肩甲骨、腕のしびれ

現病歴

1か月前から左肩甲骨内側にしびれが出始めた。

現在は左腕、前腕の外側にしびれを感じる。
指は明確な場所はわからないが、全体的にぼわーっとした感じがある。

左肩甲骨の内側上部に痛みを感じる。頸肩こりは常にある。
買い物袋を下げた時に症状が出たり、悪化することはない。

運転の仕事をしているが、1時間に数回しびれが起こる。
ハンドルを握っていると左腕の重だるさを感じる。

運転に支障があるので、少し休みをもらっている。

左肘を枕にした横向き姿勢で休むことが多かったが、
いまはつらくてしていない。腕は上にあげることができる。
就寝中に痛みはない。

20年前に交通事故で左から右にかけて衝突されるが、
後遺症は特にない。

寝違いで1年前に整形外科に行ったことがある。

血圧は服薬でコントロール。循環器系の既往はない。

 

身体診察

ルーステスト(+)、左後頸部・側頸部の緊張が強い。
肘・手首圧迫によるしびれの増悪はない。腕橈骨筋に強圧痛あり。

 

鑑別疾患

・肩関節疾患:しびれがあり、上肢拳上可のため除外
・胸郭出口症候群牽引型:買い物袋を持つなどの上肢下垂位で悪化しないため除外
・頸椎症性神経根症:上肢のだるさなどはないが、
          左上側臥位などの頸部圧迫姿位などもあるため、合併も考慮。

 

診断

「胸郭出口症候群圧迫型」:上肢の重だるさ、
ハンドルを持つときの中間姿位、
ルーステスト(+)などから判断。

ダブルクラッシュは身体診察から現時点では考えにくい。

 

施術とその経過

初診

腹臥位にて、第4.5.6頸椎椎間関節、風池、天柱に40㎜-18号で置鍼10分。

硬結残存部位を旋捻、雀琢。側臥位にて、「電気ていしん」後頸部、
肩上部に0.03mA-1.1Hzにて10分。仰臥位にて扶突に置鍼10分。
治療回数を3-4回の見込みと説明。肘枕で休むことは避けていただく。

 

2診(7日目)

左後頸部、側頸部の緊張がまだ強い。しびれはまだ残っている。
施術は前回同様。

 

3診(14日目)

前回治療後少しだるさがあったとのこと。鍼の数を減らして、
「電気ていしん」中心の治療に切り替える。

後頸部の硬い部分をひとつずつ柔らかくなるのを確認して、
軽く手でマッサージを加えると大きく変化あり。
側頸部の扶突は15分置鍼。

 

4診(21日目)

しびれが大幅に減り、運転が気にならないようになる。
後頸部の「電気ていしん」を先に行い
残存部位のみ鍼で旋捻、雀琢、軽いマッサージ。

 

21日間、治療回数4回、特に3回目以降症状が落ち着きました。

上肢のしびれとして、経過は妥当だと思われます。

後半は電気ていしんを中心とした治療に変更したことで、
鍼の数を少なくすることができ、患者さんの負担も減らせました。

電気ていしんは、体の中に刺すことなく、皮膚、筋肉、
血管などにアプローチでき、循環改善に効果的です。

鍼に抵抗のある患者さんもおられため、当院の新たな手段として
これから活用範囲を広げていきます。

通常の鍼と電気ていしん、お灸、手技をうまく使い分けて、
患者さんの症状改善をより早く、負担の少ない治療内容に
日々刷新していきたいと考えております。

 

2019.6 現在の電気ていしんの使用について

この報告をかいてから2年と少しが過ぎましたが、現在では電気ていしんは
当院の施術で欠かせないものになりました。

それによって、2年前のこの症例についても、
現在ではアプローチ方法が変わっています。

患者さんの負担を減らすだけでなく、鍼灸だけでは難しかった
症状や、鍼と併用することでより問題点が明確になるなど
「浮腫み」を中心に活用の幅が広がっております。

 

脚の痛みがあちこち移動する腰痛-仙腸関節障害

 

仙腸関節

 

左腰下肢痛-仙腸関節障害の鍼灸症例

 

仙腸関節障害は頻度の高い腰下肢痛で、経過がうまくいっていても
日常生活で負担のかかる習慣があるとぶり返す場合があります。

生活習慣の中に、仙腸関節障害の原因の一端があったと思われる一例です。

こちらの症例は患者さん個人が特定されないよう一部変更を加えております。

 

仙腸関節障害-鍼灸施術症例

患者:70代、女性
主訴:腰下肢痛

現病歴 

2ヶ月前から左腰・大腿後側・下腿前後側につながった痛みがある。
しびれや重さはない。歩いているとつらくなる。

自宅から550m離れたスーパーに歩いていくのがやっと。
途中で休むかどうか、前かがみになると楽になるかどうかは自分ではわからない。

台所ではすっと立てる。立ちっぱなしでも痛みはない。
入浴すると楽になる、長湯も可能。夜間痛はない。

2.3年前正座が出来ないほどの両膝痛を訴え、近隣の診療所で1年間注射や
内服薬を投与され、両膝・足首が象のように腫れたことがある。
その出来事から病院を受診し、半年後に腫れは引いた。

現在はカルシウム剤のみを服用している。現在は一人暮らし。

 一般健康状態

飲酒・喫煙歴はない。服薬はカルシウム剤のみ。
食欲(正)、体重変化無し、睡眠(正)、発熱無し。
排便・排尿に問題なし。

身長 150cm 体重45㎏ BMI 20

既往歴・家族歴 特記無し

身体診察 

SLR test(-) Patrick test(-)、股関節 屈曲・外転・外旋・内旋は(-)
股関節内転時に大転子付近に痛み。

圧痛は左第4.5椎関、腎兪に検出された。放散痛はない。

 

初診時の診断とその根拠 第4.5腰椎神経根症状

  1. つながった痛みである神経根症状がある
  2. 下肢の疼痛部位から判断

 

鑑別診断

  1.  腰部脊柱管狭窄症:歩行時の疼痛、前かがみで緩解するかが不明瞭。
     間歇性跛行の有無が不明瞭のため除外できない。
  2. 腰椎椎間板ヘルニア:しびれがない、経過が慢性である。SLR test(-)で除外。
  3. 股関節疾患:立ち上がりに問題がない。Patrick test(-)で除外
  4. 仙腸関節障害:下肢症状が神経根症状であるので除外。
  5. 椎間関節性腰痛:下肢の疼痛部位が膝より下にでているので除外

 

施術とその指標

痛みを取り、近隣のスーパーに安心して行くのを指標とした。
痛みが半分になるまでは週に1回の施術計画。
またこれまでの経験から医療に対する不安が強い。

 

第1回 
腹臥位にて、第2.3.4.5椎関、気海兪、大腸兪、関元兪にステンレス鍼
40㎜-18号で直刺、2㎝刺入。左梨状に50㎜-20号で直刺。全て15分置鍼。

下腿は反応点に単刺。仰臥位にて、両膝阿是に浅刺、灸頭鍼後、
直接灸各3壮。施術後の足踏みでは痛みは目立たない。

 

第2回 
前回施術3日目から腰が重い、自転車を押しながらスーパーには行けた。
腰のサポーターをしていると楽。Pain scale10→7.5 

現在は痛みより重さが気になる。重みは腰と下腿後側中心。
椅子に長く坐っていられない。センソリーマーチ(-)、腰の前屈・後屈(-)により、
「腰部脊柱管狭窄症」の可能性は下がる。仙腸関節障害を少し疑う。

左第2.3.4.5腰椎椎間関節、気海兪に硬結が検出された。

施術は第3.4.5椎関、気海兪、大腸兪、関元兪、PSIS、
梨状に50㎜-20号で直刺、置鍼15分。直接灸各3壮。施術後Pain scale 5以下。

左上側臥位にて前回の中髎兪付近の仙骨外縁、PSIS、
殿筋の硬結部に50㎜-20号で、置鍼5分を追加。

 

第4回 
徐々に症状が楽になっていたが、急に腰が重くなったとの事。
触擦でも腰部の緊張が強い。

生活を確認すると、長座位をしていることがわかった
初診時は長坐位ができなかったが、最近できるようになり
長坐位の時間が長かった。長坐位による腰の負担を説明。

現在は下肢症状があちこちに移動する。

「仙腸関節障害の疑いをさらに強める。

スーパーまでは歩けるが、その先の公民館までは難しかった。
気海兪、梨状は60-24号を使用し、下肢まで得気をえる。

 

5回 
自ら調子がいいとはじめて伝えられる。Pain scale1-2 
施術頻度を2週に1回にあけたいと希望され、応じる。

施術は前回どおり。60㎜を使用していたところは全て50㎜に戻す。

後日電話にて、調子がいいので様子をみると連絡あり。
スーパーへは普通に行っている。

 

症例のポイント

初診時と2回目で疼痛部位・性状に変化があり、
初診時の鑑別診断をすぐに変更せざるを得なかった。

「つながった痛み」=神経根症状を想起するが、
本当に神経根症状であったかどうかは疑問に感じる。

初診時の「中髎兪の最大圧痛」、2回目の「長く坐っていられない」病歴、
4回目の「下肢症状があちこちに移動する」病歴から考え、

結論は仙腸関節障害

4回目の「長坐位による悪化」は、生活指導がいかに大切かを
再確認する機会となった。

また多裂筋、仙腸関節、L3の関連を
裏付ける症例でもあったように思えます。

 

6月の休診日のご案内

 

6月の休診日のご案内

 

6月の休診日は下記5日間となります。

 

4日(火)、15日(土)、22日(土)、23日(日)、24日(月)

 

ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

肘の痛みに対する鍼灸院での診方

テニス肘

 

肘の痛みと鍼灸

 

鍼灸院では、頚・肩・腰・膝などの関節の痛みを
訴える患者さんは多いのですが、同じ関節である「肘の痛み」を
訴える方は少ない印象があります。

「肘の痛み」の原因は様々ですが、スポーツでの接触、
歩行中の転倒など、いわゆる「外傷」で当院を
受診される方はほとんどおりません。

お仕事や日常生活の中で、頻回に肘に負担がかかった結果、
肘を痛めて受診される方が中心です。

そしてそのほとんどの方が、整形外科または接骨院の受診を経て
来院されています。そこで「テニス肘」や「ゴルフ肘」といった診断をされ、
患者さん自身も痛みの原因をお分かりになっているケースによく出会います。

 

テニス以外でもおこるテニス肘

「テニス肘」(上腕骨外側上顆炎)は肘の外側から前腕にかけて痛みが出ます。
テニスをする方に多いためこの名前がついています。

しかしながら、テニス肘の90%以上はテニス以外の原因によって
おこるとも言われています。

 

家事などでの雑巾絞り、洗濯、ドアノブ、ペットボトルの蓋をあける、
パソコンでのマウスの使用、配膳、育児、楽器の練習、
手芸、縫い物、テニス以外のスポーツ
など

 

繰り返す動作による負担が肘を痛めます。

患者さんとの会話の中でこういった原因をよくうかがいます。
日常生活に原因がありますね。

 

指の使い過ぎでも肘に負担はかかります

テニスのように肘を動かさなくても、マウス操作のような指を動かす
ちょっとした動作だけでも、繰り返すことで肘への負担があります。

指と肘の筋肉がつながっているためです。

ためしに指をピアノを弾くように動かしていただくと、
肘の周りの筋肉が動くのを確認できると思います。

つまり肘を使っている意識がなくても、肘に負担がかかっています。

 

痛みを誘発する動作の把握

まずは、患者さんが考えておられる原因と、どういった状況・
動作で痛みが生じるか、また痛みが増悪するかを「よく聴いて」確認します。

肘や前腕、指を安静にできればいいのですが、原因のほとんどが
日常生活や仕事上必須の事ばかりです。

「安静が大切」である点はお伝えしつつも、鍼灸施術を行いながら、
患者さんが家庭でできるセルフケアを検討していきます。

 

肘の痛みに対する鍼灸治療

肘への負担による痛みのため、肘周辺に鍼灸治療を行いますが、
それだけでよくなられる患者さんは少ないと思います。

肘の動きに直接作用する筋肉はもちろん治療対象となります。
また肘をスムーズに動かすため、そして肘の痛みをさけるため、
間接的に肘に関係する筋肉も治療対象となります。

 

ドアノブ

 

連動する動き:肘と肘以外の両方をみます

肘と肘以外の両方を見るのには理由があります。

たとえばドアノブを回す動作は肘や手首だけでなく、
肩、肩甲骨などが同時に連動して動きます。

ためしに、左手で右の肩甲骨に手を置き、右手でドアノブを回す
動作をしていただくと、肩甲骨に動きを感じられます。

ドアノブを回す動作にも背中の肩甲骨の動きがかかわっています。

それぞれの関節には複数の筋肉がついているので、どこかに硬さや、
張り、痛みなど動きを制限する要素があるとやはりスムーズな
動きはできず、どこかに負担が蓄積され痛みや傷害がおきます。

単純な動作にみえても、複数の筋肉、関節が同時に動き、連動しています。
それらの状態が良ければ、
良い動きに。
悪ければ、無理のある動きとなります。

 

肘関節は動く範囲が広い割に、もともと構造上の不安定さを抱えています。
不安定さをを補いつつ、繰り返す動きによる負担を減らすためにも、
肘の動きに連動する筋肉や関節などを丁寧に診て、触って、
比較し(正常時との比較、左右の比較、前回治療時との比較など)
状態を確認していきます。

 

そうすると、テニス肘という肘の外側の痛みでも、外側だけでなく
肘の内側や手首、指、腕、肩、肩甲骨、背部、頚部などをみる必要があります。

また患者さんが日常生活で痛みのある動作を再現していただくと、
どの部分の動きが悪いかなどもわかります。

このような手順で得られた情報を患者さんと共有して、
次回の治療までの自己ケアや予防法を確認します。

具体的には、肘に負担がかかってしまったときの炎症への対応、
肘に直接・間接的に関連する部分のストレッチなどです。

治療院での鍼灸施術に加えて、こうした自己ケアを同時に進めています。
これは肘の治療に限らず、患者さんを診るうえでの大切な視点のひとつだと思っています。

 

最近の当院での肘の施術(2019.5)

以前は肘周囲に複数の鍼を比較的多めに刺すことが
多かったように思えます。

肘につながる筋肉はもちろんですが、肘関節の筋の付着部への鍼は
効果はあるものの、刺激感が強いため
患者さんには
我慢していただく部分もありました。

最近は、電気ていしんで肘周囲の浮腫みを根気よく取り、
電気温灸器で血流を促進し、
最後にどうしても残る痛みの
原因部位のみに鍼をするようになりました。

その結果、刺激感の強い鍼は随分減りました。

また円皮鍼というシール型の鍼(pyonex セイリン社製)を使っていると
肘痛の予防・維持・管理によいという感想も患者さんからはいただくことがあります。