埼玉県春日部市の鍼灸院 はり・きゅう はりも

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これだけは!硬くなりやすい筋肉のストレッチ

これだけは!硬くなりやすい筋肉のストレッチ

職業、生活習慣、スポーツなどで硬くなる筋肉は異なります。

個別の差はありながらも、「硬くなりやすい筋肉」の共通した傾向があります。

筋肉は「緊張」と「弱化」のアンバランスで「姿勢」を決める要素になります。

今回は「緊張」に対する一手段としての「ストレッチ」を紹介します。

「硬くなりやすい筋肉」

特に硬くなりやすい下記筋肉のストレッチを紹介します。
これらの筋肉を選んだ理由は後半に。

1ポーズ30秒、3~5セットが目安です。
呼吸は止めず、ゆっくりのばしていきましょう。

・後頭下筋
・僧帽筋
・肩甲挙筋
・三角筋
・広背筋
・大胸筋
・腰方形筋
・大腿四頭筋
・殿筋群
・梨状筋
・大腿筋膜張筋
・ハムストリングス
・下腿三頭筋

①後頭下筋

②僧帽筋+肩甲挙筋

③肩甲挙筋

④三角筋(前部・中部・後部)+広背筋

別法①

別法②

別法③

⑥大胸筋(スタート時から)

別法①

⑦腰方形筋+胸郭側面

⑦大腿四頭筋

別法①:少し強度があがります

⑧殿部

⑨梨状筋+ハムストリングス+下腿三頭筋

⑪梨状筋

⑪大腿筋膜張筋

⑫大腿筋膜張筋+腰方形筋

これらの筋肉を伸ばしておく理由

これらの筋肉は様々な理由で硬くなることがわかっています。

・加齢やその時代に多い職業(例:デスクワークなど)などにより、
 「姿勢」に一定の傾向がある。長期にわたる固定した不良姿勢が
 一部の筋肉の緊張を強める。

・「単関節筋」→弱くなる傾向
 「多関節筋」→緊張しやすい
  

・弱くなる筋肉の「拮抗筋」は緊張しやすい。

・弱い筋肉を補助する「代償」という現象で、より緊張が強くなる筋肉がある

以上の筋肉の特徴からリストアップした筋肉のストレッチを紹介しました。

しかしながら、あくまで「傾向」であり、本来は個別に「動き」「可動域」
「触診」などで硬くなっている筋肉を確認すべきです。

まずはご自身で一通りトライしていただくと、いろいろ発見があると思います。

今回は、前後左右といったいわゆる二次元的な動きのものが中心です。
これに「回旋」といった「ひねり」の動き、また複数の筋肉を同時に伸ばすようなものを
加えるとまた感じが違います。

「回旋」を伴ったストレッチについてはまた別の記事でご案内します。

また「硬くなりやすい筋肉」の背景には、「弱くなりやすい筋肉」の存在があります。この「弱くなりやすい筋肉」を少しでもトレーニングすることで
「硬くなりやすい筋肉」の負担が減ります。

よろしければ下記も参考にしてください

「リモートワーク時代の首のセルフケアとトレーニング」

「胸郭」のセルフケアとトレーニング



当院の再開見込みのご案内

当院の再開見込みのご案内

当院は埼玉県、東京都、千葉県の緊急事態宣言解除後から引き続き
2週間休診し、その時点で再開を判断する予定でおります。(5月15日時点)

宣言解除後の状況、第2波の事などを熟慮し、ご案内いたします。

ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

「胸郭」のセルフケアとトレーニング

「胸郭」のセルフケアとトレーニング

「リモートワーク時代の首のセルフケアとトレーニング」では
「首」だけのセルフケア・トレーニングでは
不十分なことがあるとお伝えしました。

不良姿勢は身体全体の問題です。
そこで、今回は「首」に続く、「胸郭」についてです。

「胸郭」は肋骨、12個の胸椎、そして胸骨からなる部分です。


この3種類の骨から首につながる筋肉があります。

背中がまるいと首や腰への筋緊張の負担が多くなり、
筋肉そのものも疲れやすく、姿勢がかわってしまいます。

背中が反れなかったり(胸椎伸展制限)や 胸郭が広がらないと、
肩が下がってしまい、 首への緊張が増してしまいます。

2つの「胸郭」

胸郭は大きく上部と下部の2つに分けられます。


上部の胸郭に問題があると、上の写真のようになります。

このような姿勢でなどの胸の筋肉(大胸筋、小胸筋)が短くなり、
いわゆる「猫背」で胸の方がつまった感じが見てとれると思います。


この姿勢は前回もお伝えした通り、首に負担がかかります。
頚部・頭部伸展筋力が弱くなります。

→胸のストレッチと前回の頚部のトレーニングが必要となります。

下部胸郭に問題があると、
腹部、脇腹、背筋が短くなります。

→腹部、脇腹、背部のストレッチが必要となります。

「胸郭」のセルフケア(ストレッチとエクササイズ)


最初にチェックしてみましょう

①仰向けに寝る
→背中が床面に接している感触を覚えておきましょう

②万歳をする
→腕の上げやすさ、背中の伸び感などをみておきます。

③深呼吸をする
→呼吸のしやすさ、胸郭の広がり具合、筋肉の緊張をみておきます。

あまり難しく考えず、セルフケア後に動きの改善や
緊張感が軽減されているかを確認してください。

以下の順序で行います。
広く、大きな筋肉から伸ばしていきます。
15-30秒×3セットできれば理想です。「呼吸」はとめないでくださいね。

広背筋
(この後、胸椎を動かすために、制限となる広背筋を先に伸ばしておきます)

一度のばしたら、一旦四つん這いにもどしましょう

②大胸筋
(背中を反らすには肩甲骨を胸椎に寄せることが必要になります、
胸の筋肉が硬いと それができないため、先に伸ばしておきます)

鎖骨の下をほぐします。軽めでおねがいします。

肋間筋:横側をほぐし、伸ばします。
肋骨と肋骨の間(肋間筋)に指をいれて、腕の上げ下げを繰り返します。
ひとつずつ緩めていくのが大事
一つの肋骨の動きが悪いと、他の肋骨にまで制限がかかります。

下記のような感じで4指をあてるといいでしょう

横向きでも同じようにやってみます

全体を伸ばします。

肩甲下筋をほぐします

胸椎の伸展を様々な方法で行います

これは少し負荷が強いので首が痛い方は慎重にしてください。
首、腰ではなく背中を伸ばします。

⑦最後に腹筋を伸ばします

全て終わられたら、最初のチェック項目で変化の確認をお勧めします。

ストレッチポールをお持ちの方はうまく活用してください。
本当におすすめです!

「呼吸」と「胸郭」の関係


胸郭は「呼吸」との関連が深いです
ストレッチ中も、脇腹、背中など前後左右に膨らませるように
意識してみてください。

胸郭の動きがでてくると呼吸もしやすくなります。

「胸郭」がなぜそんなに大切か


「猫背」によって頭の位置が変わると頚部の問題に直結します。
その頚部は肩甲骨とつながっています。

肩甲骨を動かすには胸椎が十分に動くことが前提です。

胸椎が後弯している「猫背」だとそれが難しくなります。

なぜなら背中が丸くなると、肩甲骨が外側に位置します。
所定の位置にないため、肩甲骨がうまく動かず、
結果として腕を使いすぎてしまいます。(代償動作)

そこから肩こりや首凝りにつながります。(僧帽筋や肩甲挙筋)


「胸郭」を形成する「胸椎」「胸骨」は身体の中心です。
身体の中心がうまく動かないと、手足への負担が大きいのです。

また肩甲骨の位置が変わることで腕の関節の不安定さにつながり、
肩関節痛リスクがあがります。

さらに背中が丸くなると骨盤が後ろに傾き、腰痛につながることも。

つまり「胸郭」がうまく働かないことで、首や腰への負担が増し、
疲労感や疾患につながること、また、自分の動かしたい動きが
制限されることになります。

他には自律神経症状・肋間神経痛との関連もあります。

これについてはまた別の項目でご案内します。

「胸郭」の大切さをお伝えしつつ、肩甲骨や肩関節、
腰、骨盤との関連性がでてきました。

「にわとりと卵」ではないですが、
やはり身体は相互につながり、連動しています。



次回は腰のセルフケア・トレーニングについて予定しております。

リモートワーク時代の首のセルフケアとトレーニング

リモートワーク時代の首のセルフケアとトレーニング

スマートフォンの普及に伴い、首のトラブルは増えましたが、
リモートワークの広がりによって、さらに首の負担は増えることが予想されます。

今回は「首(頚部)」に注目して、セルフケアを中心にご案内いたします。

「リモートワーク」に限らず、デスクワークに従事している方、スマートフォンを
長時間使用している方に共通の内容となります。

首のセルフケア・トレーニングをする前に

下記の症状がある方は、医師の診察が必要になりますので、
これから紹介するセルフケアは避けてください。

・めまい
・物が二重に見える
・吐き気
・外傷
・交通事故による後遺症がある
・突然意識を失う
・嚥下(飲み込みに問題がある、むせる)
・発熱
・関節リウマチの既往がある
・ステロイドの使用歴がある
・骨密度が低い、骨粗しょう症がある

セルフケアとトレーニングについて

・硬いところは柔らかく
・弱いところは鍛えて強く
・短くなっているところは長く
・使いすぎは休ませる
・左右差・前後差・浅部と深部の差を減らす

患者さん個々に差異はありますが、デスクワークなどの仕事、
スマートフォンなどの生活習慣により、身体にかかる負担には
一定の共通点があります。

負担のかかりやすい部位と、それに対するセルフケアについて
後述していきます。

首に負担のかかる姿勢

耳と肩の位置が垂直線上にありません、頭が前方に位置しています

仰向けで寝たときに顎が写真のように上がっている方は、首にトラブルを
抱えている方が多いです。枕が高めの傾向があります。

不良姿勢による首への影響

デスクワークや長時間のスマートフォンの使用により、
画像のような身体的傾向がみられます。


このような不良姿勢によって首の筋肉には下記の問題が生じます。

・浅部の筋肉を使いすぎる
・深部の筋肉をうまくつかえていない
・後頭部・側頸部・胸部の筋肉の緊張が強い
・首を上に向ける筋肉が弱い(伸展の筋力不足)

首のセルフケアとエクササイズ

まず温めておきましょう。のぼせないよう程度に。
首の後ろ、肩甲骨の間、鎖骨の下あたりがお勧めです。
「ZAMSTホットパック」はアマゾンで1000円前後で販売していますが、

繰り返し使えてお勧めです。使用上の注意をよく読んでくださいね。

*肩などに力がはいらないようにしましょう
慣れたら10秒キープ、座ってでもできます
やってみると、普段してない動きであることに気づかれます。

*腰痛がある方は、両膝をたてて行うといいでしょう
上がりにくい方は今まで対象の筋肉をうまくつかえていなかった可能性があります。

*ゆっくり背中を丸めて反らす、15回ほど繰り返します

頭が下に落ちないように、背中と直線状になるよう注意します

*呼吸をとめずにゆっくり、じわーと伸ばします

*「皮膚」をつまんでゆすります。つまみやすさで状態がわかります。
後ろ髪の生え際当たりが硬くなることが多いです


この「皮膚をつまんでゆする」というテクニックは他の部位でも使えます。
ゆする前後に動きを確認しておくと、変化がでていることに気づかれると思います。

首のセルフケア・トレーニングだけでは
足りないことも

今回紹介した首のセルフケア・トレーニングは一部、
胸椎(背中)・腰の内容が入っています。

それは、首を動かすだけでは不十分なことが多いからです。

首につながる筋肉が非常に多く(最低でも28種類)、
それらが多くの骨とつながっています。

首に筋肉を介してつながっている骨

・頭蓋骨
・肩甲骨
・鎖骨
・肋骨
・胸椎
・腰椎

今回は頭が前方に位置すると、首の負担が強くなることを画像で紹介しています。

つまり、頭だけでなく他の骨の位置が不良姿勢で変わると、やはり首に負担がかかります。

従って、状態によっては他の部分のセルフケアやトレーニングが必要となります。

「筋肉」という観点だけでも、やはり身体はつながっていると実感します

本当はリモートワークが普及し、通勤の時間が減ることや自宅での自由な働きかたができれば、身体の負担が減るのが本来のありかただと思います。

自宅ですと仕事の合間にストレッチも気兼ねなくできますしね。
社会の在り方と、身体はそういった意味でも関係が深いです。

次回は、背中・胸郭・腰につづきます。

休診継続のご案内

休診継続のご案内

4月4日より休診しております当院ですが、現在の状況を鑑み、
休診を継続いたします。

今後の再開については5月末に情報を更新予定でございます。

ご迷惑をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

Zoomによるオンライン個別相談について

Zoomによるオンライン個別相談について

新型コロナウィルスの影響が日毎に増しております。
安全対策として、当院は4月4日より休診しております。

改めて皆様にはご迷惑をおかけし申し訳ございません。

休診中もお問い合わせは頂いているのですが、
お断りをしないといけない状況に、本当に心苦しく思います。

そこで何かしらできることはないかと思い、
「Zoom」というオンラインミーティングアプリを活用した
個別相談をはじめます。

「個別相談」というほどの大袈裟なものではありません。
ちょっと聞いてみたいこと、電話よりも対面のほうが
良いご相談内容であれば、ぜひご活用ください。

私にとっても初めての試みですので、
今回のオンライン個別相談については対象を
限らせていただきます。

これまで通り、休診中もお電話・メールでの
ご相談はお受けしております。患者さんご自身が
使いやすい方法をお使いください。

Zoomオンライン個別相談の対象

今回は、当院に来院歴のある患者さん」に限らせていただきます。

Zoomオンライン個別相談の流れ


あらかじめ「Zoom」アプリをご自身のスマートフォン、
タブレット、パソコンにダウンロードしておいてください。
ダウンロードサイトはこちらです。

使い方についても、ご家族の間などでテストされておくと
スムーズです。


メールにてご希望の時間とご相談内容をあらかじめ
ご連絡ください。ご相談内容について準備いたします。
当院ホームページの「お問い合わせ」からお送りください。


ご相談時間の前にオンライン相談のURLをコードを
メールにてお送りしますので、そちらをクリックしていただきますと
オンラインでつながり、Zoomによるご相談がはじまります。

Zoomオンライン個別相談の注意事項

・ご相談時間は10-15分前後となります。
・費用は無料です。
・ご希望の日時によってはお受けできないことがあります。

できることは限られておりますが、何かしらお役に立てればと
思っております。よろしければご活用ください。

慣れない試みで、至らない点もあるかと思いますが、
何卒よろしくお願いいたします。

胸の痛み:鍼灸院での危険な兆候を除外する3つの質問と落とし穴

胸部の痛み:鍼灸院での危険な兆候を除外する

胸の痛み:鍼灸院での危険な兆候を除外する3つの質問と落とし穴

2020.4.20 加筆修正

先日、隔月で参加している勉強会では
「胸痛」の症例が提示されました。
 
この症例での「胸痛」は「危険な胸痛」ではなく、
数回の鍼灸施術で改善したものでした。
 
「胸痛」は第一に心筋梗塞や狭心症、大動脈解離などの
危険な疾患が原因と考えられる症状です。
 
危険な疾患が考えられる場合には、鍼灸をする前に、
病院を早急に受診していただかないといけません。
 

「胸痛」を訴える患者さんが鍼灸院に来院した場合

 
一般的に「胸痛」を訴える方のほとんどは、まずは病院を
受診しますが、まれに「鍼灸院」を最初に受診される方がおられます。

「過去にほかの症状が鍼灸治療で治ったから」、「病院が嫌いだから」、
「それほど症状が激しくないから」など様々な理由がありますが、
患者さんを守るためにも危険な疾患の除外・鍼灸適応の判断が必要となります。
 
当院では数年前に、「腰痛」で診ていた患者さんが
「心不全」になりました。
早急に病院受診を促し、病院での適切な対応により
早期に回復されたケースでした。

その時、患者さんは「風邪かな、たいしたことないよ」と
おっしゃっていました。

しかしながら、普段とは違うぜーぜーとした「喘鳴」、
仰向けで休むより座ってるほうが楽といった「起坐呼吸」、
脚が急にむくむなど、「心不全」の症状がでていました。
 
普段の状態を診ていたため、「いつもと違う」といった
感覚もすぐに病院を勧めた理由だったかもしれません。
 
やはり、危険な兆候には注意をはらわなくてはいけません。

「胸痛」を自覚された患者さんは、まずは病院を
受診されることを強くお勧めします。

 

病院の受診は必須、さらに3つの問診

 
「胸痛」を訴える代表的な疾患である心筋梗塞や狭心症は
中高年の男性に多いと言われています。

年齢、性別は重要な要素です。
そして、心臓疾患の有無を問診で確認します。
 
1)痛みは胸骨の裏かどうか
2)労作で誘発するか
3)安静で消失するか
 の3つ。
 
ちなみにこの3つの質問が60歳代、男性ですべて「イエス」で
あれば90%の確率で冠動脈疾患が疑われると言われています。
 
「歩くと胸の痛みが強くなりますか」
「食事によって誘発しますか」
「休んでいるときはおさまりますか」
などなるべく具体的に聞くようにしています。

「胸痛」を診るときの注意すべき「落とし穴」

そもそも「胸痛がある」「冷や汗をかくほど苦しい」「うずくまる」といった
心疾患を疑わせる症状の時は、患者さんが鍼灸院に来院される確率はかなり低いでしょう。
(パニック障害などは除いて)

自覚症状として、「これはちょっとおかしい」「これは苦しい」といった
感覚が働き、病院を受診するからです。

問題は「胸痛」がないけれども、鍼灸院でみるべき状態ではないときがあります。

「心疾患」を疑うときに、2つほど落とし穴があります。

落とし穴① 「胸痛」がない心臓疾患があります

「胸痛」がないからといって、安心できるわけではありません。

明確に「胸痛」を訴えない場合にも慎重になる理由があります。

「痛みのない心筋梗塞」が22-35%といった報告があり、
「胸痛」がないからといって「心筋梗塞」を完全には除外できません。

さらに心筋梗塞の患者さんで初診時の心電図において正常な人が
30%いる報告もあり、病院では問診、聴診、心電図、
血液検査、胸部レントゲンなどで総合的に判断されます。

このように非典型的(胸痛がないなど)な心臓疾患が
一定の割合で存在します。

以下の症状は心疾患の症状の一部です。

「なんとなく重い」
「ムカムカする」
「息苦しい」
「押される感じ」



これらの症状だと「食べ過ぎ」や「過労」「ストレス」かなと思われたり
症状の程度がそれほどではない場合、見過ごされやすい可能性があります。

明確に「胸が痛いです」と訴えられたときと、
上記の症状だけ伝えられた時では、施術者側の「心疾患」を疑うセンサーの感度が
変わりやすい点で、「見落とし」という「落とし穴」があります。

落とし穴② 「関連痛」

もうひとつの落とし穴は「関連痛」です。
「関連痛」は原因部位と異なるところに痛みが発生します。

心臓に問題があっても他の部位に痛みがでるのです。

最近は「心臓が悪くて、肩こりがすることがあるらしいね」と
話される患者さんもおり、一般に広まりつつある情報です。

「左の肩こり」といった情報もありますが、左右どちらか、
また両方にでることも多いので、右側だから安心と
いうものでもありません。


首・歯・喉・歯・鼠径部など心臓から半径30センチ以内は関連痛を否定できません。

「首や肩、鼠径部痛」などは鍼灸院での日常的な訴えと重なることも十分予想されます。

体動や呼吸、圧痛部位の小ささなどは筋肉・骨が原因の可能性を高めますが、
安静時の「関連痛」は要注意です。

さらに、高齢であったり、脂質異常症、糖尿病、高血圧の既往や喫煙歴などの
リスクも考えるべきでしょう。

当院では下記のレッドフラッグ(危険な兆候)がないかを確認しています。

胸痛のレッドフラッグ(危険な兆候)

・突発、進行性 、安静時、夜間の胸痛
・呼吸苦
・発熱
・労作
・動悸
・息切れ
・関連痛
・背部痛
・発汗
・冷汗
・失神
・下腿浮腫


・嘔気・嘔吐
・便が黒い
・貧血

・既往:循環器疾患(不整脈など)の有無、糖尿病など

・バイタルサイン
・血圧の左右差の計測

病院で危険な胸痛を除外されている場合、
また「肋間神経痛」や「帯状疱疹後神経痛」などによる「胸痛」は
鍼灸院で日常的に対応しています。  

病院でいろいろ調べても原因がわからない、
でも心臓や消化器、呼吸器などには問題がない場合は
危険な兆候は限りなく低いと考えられます。

 そういった「胸痛」は、鍼灸でお役にたてることがあるかもしれません。  

 

「めまい」と鍼灸-鑑別と適応

「めまい」と鍼灸-鑑別と適応

鍼灸院での「めまい」の見立ては、施術に入るまでにいくつかの段階があります。
「注意すべきめまい」を疑う情報がないかを患者さんに確認する必要があります。

目次

・「めまい」の表現の難しさ
・「注意すべきめまい」の確認
・「注意すべきめまいの随伴症状」の確認
・「高齢者のめまい」はまず病院受診を!
・「足下がふらつくめまい」
・ 鍼灸院に多い「めまい」
・ まとめ

「めまい」の表現の難しさ

患者さんによって「めまい」の表現は様々です。

「ふらふらする」「ふわふわする」「ふわーとする」
「立ちくらみがする」「気が遠くなる」などです。

「めまい」については、多くの事を確認します。


・「めまいはいつからですか」
・「どんな状況でめまいはおきましたか」
・「めまいは続いていますか」
・「めまいの持続時間はどれくらいですか」
・「めまいは悪化していますか」
・「めまいと同時に始まった他の症状はありますか」
 (随伴症状)

そのなかで「どんなめまいですか」という質問があります。

めまいの性状「回転性」「浮遊性」「前失神」を知るためですが、
患者さんの中にはうまく表現できない方もおられ、
回答が得にくい気がしています。

「ぐるぐる回る」「浮いている感じ」「目の前が真っ暗になる」と
答えられる方のほうが少ない印象です。

鍼灸院に来院される「めまい」の患者さんというバイアスが
あるのかもしれません。

めまいの性状は参考にするのですが、性状で区別するよりも、その他の質問で
危険な症状や原因を探ったほうが良いのではと思っています。

「注意すべきめまい」の確認

「注意すべきめまい」に気づくことは、鍼灸施術よりも
最初に必要なことです。

以前、「鍼灸院での「めまい」は危険な兆候の除外から」にも書いております。

いつ「めまい」が起こったか  →「突発」
「めまい」が悪化しているか  →「増悪」
「安静時も「めまい」があるか →「安静時のめまい」

「突発」「増悪」「安静時のめまい」は要注意です。

「めまいの随伴症状」の確認

下記にあげる「めまい」に伴う症状・所見は早急に病院受診を勧めるものです。

「中枢」(脳)     :頭痛・麻痺・しびれ

「循環」(心臓)   :血圧・頻脈・胸痛・動悸・発汗・失神
            起床時のふらつき・貧血・黒色便

「感染症」      :発熱・血液検査による炎症所見

「運動失調」     :歩行・立位の異常

「薬剤」       :降圧薬・利尿剤・前立腺肥大・抗ヒスタミン
            睡眠薬、他多数

鍼灸院ではこのようなの症状・所見がある段階では、
「病名」を細かく探すよりも、
「何が原因でめまいがおきているか」を推察することで、
患者さんを紹介する診療科が変わります。

一般的に「めまい」を扱う診療科は、耳鼻科・脳神経外科です。

しかしながら心疾患、いわゆる「循環」を疑う「めまい」の
病歴や所見があった場合、「循環器内科」や
「内科」のほうがよいでしょう。

患者さんにはこのような症状がある場合、
医師に必ず伝えるようにしていただいています。

「めまい」というと「メニエール病」が有名ですが、
実際の頻度はそれほど多くないと言われています。

高齢者の「めまい」はまず病院受診を!

高齢者は基礎疾患を持っている方も多く、
「めまい」をおこすと「転倒」の危険もあります。

また「脱水」しやすく、服用している薬の種類も
量も多い傾向にあります。

病院では「めまいのある高齢者」は診察後に
帰宅させるのも慎重で、以下のことを確認しています。

①歩ける
②水分摂取ができる
③介護環境が確立している

「めまい」は症状の強さと疾患の重症度が比例しないこともあり、
高齢者では特に慎重に対応する必要があります。

つまり大きな病気が原因でも歩いて受診されることがあります。

このような理由で、「高齢の患者さんのめまい」は
病院を受診していただき、その後もより慎重に診る必要があります。

「足下がふらつくめまい」

「めまい」のことを「足下がふらつく」と表現する方がいます。


「歩行」「立位」の異常、「ふらつき」「目を閉じた状態でのふらつき」が
ある場合。

「動きがゆっくり」「ふるえがある」などがある場合は、
病院(神経内科・脳神経外科など)を受診すべきです。


鍼灸師も打腱器による反射(膝蓋腱反射・アキレス腱反射)をみて
異常所見を確認しますが、やはり専門医への受診が最優先です。

一方で、運動不足による筋力低下や、足底の感覚低下、
バランス感覚の低下など加齢減少による「足下のふらつき」もあります。

鍼灸院に多い「めまい」

以下の病気による「めまい」が鍼灸院には多いように思えます。

詳細はそれぞれの記事をご覧ください。

・「良性発作性頭位めまい症」  良性発作性頭位めまい症の鍼灸症例
・「突発性難聴」         突発性難聴の鍼灸症例
・「頚性めまい」


ほとんどの方が先に「耳鼻科」を受診されています。


これらの「めまい」は持続時間、随伴症状(耳鳴り・難聴・耳閉感)
増悪因子・オージオグラムなどの検査所見で再確認しています。

まとめ

以上から当院における「めまい」の鑑別は下記のとおりとなります。

「病院を受診しているか、診療科・診察内容は?」

「危険なめまいの可能性は?」

「随伴症状は何か?」

「高齢者はより慎重に」

「足下がふらつくことを、めまいと表現してないかどうか」

「鍼灸が有効な状態のめまいかどうか」

鍼灸による施術



2020年4月時点で、当院では施術に入る前に
このような過程で「めまい」を診ています。

参考文献

・「高齢者救急-急変予防&対応ガイドマップ(JJNスペシャル) 」 岩田充永 医学書院

・「病名がなくてもできること 診断名のない3つのフェーズ」  國松淳和 中外医学社

「食欲不振」「食べられない」で鍼灸院を受診される方へ

「食欲不振」「食べられない」で鍼灸院を受診される方へ

結論からとなりますが、


「最初は病院を受診してください」
「当院受診の際は、検査の結果をお持ちください」

理由は「食欲不振」「食べられない」という訴えだけでは
予想される病気が多く、検査で絞り込んでいく必要があります。

それらの病気の中には、すぐに病院での治療が必要なものもあり、
内科以外のものもあります。

「食欲不振」「食べられない」というと胃腸をまず思い浮かべますが、
結核などの感染症や、甲状腺・副腎の異常などの内分泌疾患、
うつ病、パーキンソン病など原因が多岐にわたります。

1回の受診では原因が判明しないこともあります。

繰り返しになりますが、優先順位としてはまずは病院の受診です。

当院が「食欲不振」「食べられない」という訴えにする質問

当院では下記のような質問をしています。

・急にたべられなくなりましたか?
・徐々にたべられなくなりましたか?
・体重は減っていますか、どれくらいの期間にどれくらい減っていますか
・気分の落ち込み、好きだったことへの興味がなくなっていますか
・熱はありませんか
・病院で検査されましたか、どういった検査ですか?

「急に食べられなくなりましたか?」

当院では「急性」の「食欲不振」の方は、今までおられません。


胃腸炎などの消化器系以外にも多くの病気が考えられる訴えですので、
この場合は病院での検査が必要です。


「急性」という、いつから症状がはじまっているかは
医師に伝える大事な情報です。

「徐々に食べられなくなりましたか?」

長期にわたる「慢性」の経過の場合です。
血液検査による「炎症所見」の有無で
予想される疾患が異なります。


「炎症所見」がある場合は、その炎症の原因を見つけるための
精査が必要です。

炎症を起こしている病気が「食べられなくしている」ことがあります。


検査結果などをみせていただき、炎症所見があるようでしたら、
再度病院での検査が必要と考えます。

「慢性」だと「急性」よりなんとなく安心してしまう点もありますが、
原因が特定されておらず、改善してないという点でやはり見直しが必要です。


そして炎症所見がない場合も、他の疾患が考えられます。
胃カメラなど内視鏡などをされているかもお尋ねします。

まだされていない検査があったり、他の病気を疑った場合はやはり病院への受診をお願いすることがあります。

「体重は減っていますか、どれくらいの期間にどれくらい減っていますか」

体重の減った量とその期間がポイントです。

ダイエットなどをされていないのが前提ですが、6-12か月で5%以上の体重減少、
または4.5キロ以上の減少が病的な体重減少の目安になります。


食べられるのに体重が減少している場合は、甲状腺疾患や糖尿病などの可能性があります。

「気分の落ち込みが2週間以上続いていますか、 好きだったことへの興味がなくなっていますか」

うつ病などによる食欲低下の可能性を考慮します。
心療内科などの受診歴など患者さんの背景を詳しくうかがっています。

「熱はありませんか」

熱がある場合は、感染症や膠原病などが疑われますのでやはり病院受診が最優先です。

「病院を受診されましたか?」

どのような病院の何科を受診され、検査内容、処方されたお薬
医師から伝えられた内容を確認しています。

当院でも病歴を聴き、様々な可能性を考え、異なる科への
受診をすすめることがあります。

「食欲不振」「食べられない」症状に対する鍼灸での対応

実際には「食欲不振」「食べられない」といった患者さんが
鍼灸院を受診されるときは、もうすでに病院を数件受診されています。


そして「異常はない」と判断され、でも「食べられない」という状態がほとんどです。


そのような状態で、鍼灸でできることがある場合に対応しています。


具体的には「機能性ディスペプシア」や
「一時的な気分の落ち込みによる食欲不振」などをみてきました。


実際の症例については 「腹部症状」 を参考になさってください。



「食欲不振」「食べられない」という訴えの背景には多様な病気があります。

当院では鍼灸による施術をする前に、適切な医療につなげることを
重視しています。

参考文献

・「病名がなくてもできること 診断名のない3つのフェーズ」 
  國松淳和 中外医学社

・「医療職のための症状聞き方ガイド すぐに対応すべき患者の見極め方」 
  前野哲博 医学書院

誤嚥予防と鍼灸

誤嚥予防と鍼灸

「誤嚥予防」を目的にしています。

当院は外来中心のため、入院されている
「嚥下障害」の患者さんを診ることはありません。

当院では「誤嚥予防」を目的にしています。

「腰痛」や「神経痛」などで来院される高齢の患者さんには
何気ない会話の中で、積極的に嚥下機能の
低下がないかを確認しています。

「嚥下機能の低下」が見られる病歴・所見がある場合は
まずは医師への相談をすすめています。

当院では電気ていしん・鍼灸・運動療法・ストレッチなどによる施術を行っています。

「唾液や水の飲み込みやすさ」などを施術前後で確認し、
嚥下の大切さをお伝えしています。

誤嚥予防として、ご自宅でできる嚥下体操や
嚥下の問題となる姿勢へのアプローチをしています。

「嚥下」は本当に奥深いです。


「嚥下」のポイントとなる「舌骨」を中心に、
「姿勢」による影響などから「嚥下」の大切さを
知っていただきたいと思います。

目次


・「嚥下」について
・嚥下機能低下による問題
・嚥下機能低下をうかがわせる兆候
・誤嚥を起こす原因と疾患


・嚥下を知る上で大事な「舌骨」
・「舌骨」って?
・「舌骨」のあるべき位置
・「舌骨」に付着する筋肉
・「舌骨」が筋肉を介してつながる骨
・「舌骨」と姿勢の関係


・嚥下の仕組みと「舌骨」の役割
・なぜ嚥下時は口が閉じているか
・脳血管障害と嚥下障害、舌骨との関係


・嚥下を見るのに当院で確認していること
・嚥下に対する当院でのアプローチ
・セルフケア
・「嚥下障害」についての鍼灸の文献
・まとめ

「嚥下」について

「嚥下」とは簡単にいうと「飲み込むこと」です。

食事中にむせたり、飲み込みにくいなどの頻度が
増えてきたときは嚥下機能低下の可能性があります。

高齢者に多く、50歳を超えると他の筋肉と同じく、
飲み込む筋肉も衰えてきます。


筋力があるときは、むせることで吐き出すこともできますが、
その吐き出す力が弱ってくると、誤嚥をおこしやすくなります。

そこから「誤嚥性肺炎」につながることもあります。

嚥下障害は加齢やいくつかの疾患に伴います。

食事という日常生活に大きくかかわることなので
予防や早期発見につながればと考えています。

嚥下機能低下による問題

嚥下機能低下による問題はいくつかあります。


・誤嚥性肺炎

・栄養障害(食べる楽しみ低下・食欲減退・飲みこみやすいものへの偏り)

・脱水(飲み物の量が減る)

・窒息

嚥下機能低下をうかがわせる兆候

・食事中にむせる咳が出る・頻度が増える

・のどがつかえる

・食後に声がかれる

・口に食べ物が残る

ご自身やご家族の方でこういった兆候がないかチェックしてみてください。

誤嚥を起こす原因と疾患

誤嚥をひきおこす、最大の疾患は「脳血管障害」です。
いくつかの疾患は「誤嚥性肺炎」につながることがあります。
下記のようなものがあります。

<物理的な要因で誤嚥につながるもの>

舌炎、口内炎、歯周病、咽頭炎、扁桃炎、食道炎



<疾患があり嚥下機能が衰え誤嚥につながるもの>

脳卒中、脳腫瘍、パーキンソン、筋委縮症



<心理的要因で誤嚥につながるもの>

神経性食欲不振、神経症、心身症



<筋力低下によるもの>

高齢者の加齢による嚥下機能低下

嚥下を知るうえで大事な「舌骨」

「舌骨」、あまり聞きなれない骨だと思います。

この「舌骨」が嚥下において非常に重要な役割を果たします。

なぜ舌骨が大切かは嚥下の仕組みに関係があります。

舌骨の動き、「挙上と下制」は嚥下に関連します。

嚥下時に舌骨は挙上されます。

少し専門的で長いですが、「舌骨」について知っていただくと、
その重要性をご理解いただけると思います。

「舌骨」って?

「舌骨」は関節を形成せず、宙ぶらりんの状態です。

そのため付着する筋肉と重力の影響を強く受ける珍しい骨です。

様々な方向から引っ張られるため、安定した「位置」に「舌骨」があることが
嚥下をスムーズに行う上でのポイントとなります。

どのような筋肉があるかは後述いたします。

「舌骨」のあるべき位置


加齢による姿勢変化や、脳血管障害などにより舌骨の位置が
本来より「上方」にいってしまうことが多くなります。

その理由は舌骨に付着する多数の「筋肉」が理由のひとつとなります。

「舌骨」に付着する筋肉

これから紹介するのはすべて「舌骨」に付着する筋肉です。


「これだけ多くの筋肉が「舌骨」とつながっており、
その筋肉の状態で位置が変わるということです。

舌骨上筋群(前):下顎骨の下制・舌骨の挙上

筋肉起始停止神経
顎舌骨筋 下顎骨顎舌骨筋線 舌骨体 三叉神経
顎二腹筋前腹 下顎骨二腹筋窩 舌骨中間腱 三叉神経
オトガイ舌骨筋 下顎結合 舌骨 舌下神経

舌骨上筋群(後):舌骨の挙上

筋肉起始停止神経
茎突舌骨筋 側頭骨茎状突起 舌骨体底 顔面神経
顎二腹筋後腹 側頭骨乳様突起 舌骨中間腱 顔面神経

舌骨下筋群:舌骨の下制

筋肉起始停止神経
胸骨舌骨筋 胸骨柄・胸鎖関節・第一肋軟骨後面 舌骨体部下縁 頚神経ワナ
肩甲舌骨筋 肩甲骨上縁・ 上肩甲骨横靭帯 舌骨体下縁部外側 頚神経ワナ
甲状舌骨筋 甲状軟骨斜線 舌骨大角の後面 頚神経ワナ
胸骨甲状筋 胸骨柄、第一・第二肋軟骨後面 甲状軟骨 頚神経ワナ

舌骨上筋群(前・後)が主動作筋
舌骨下筋が拮抗筋

舌骨上筋群の挙上・ 下制 は同時に生じません。

以上は舌骨に付着する筋肉のみで、
嚥下にかかわる筋肉はまだまだ複数あります。

本当に複雑な仕組みです。

「舌骨」が筋肉を介してつながる骨

・下顎骨
・側頭骨
・胸骨
・肩甲骨
・甲状軟骨


以上の骨に、先ほど紹介した筋肉がつながっています。


したがって、肩甲骨の位置や、頭の位置が舌骨につながる
筋肉の緊張度を変えます。


つまり、姿勢によって舌骨の位置が変わってくることになります。

「舌骨」と姿勢の関係


高齢になると、一般的にいわゆる「猫背」になり、
頭の位置が前方になります。

背中が曲がり(胸椎屈曲)

腕が前方内側に位置(肩甲骨前方偏移)

首は前に垂れますが、前を見るために目線は上がります
(下位頸椎屈曲・上位頸椎伸展)

この姿勢の変化により、

前方の舌骨上筋群は伸張
後方の舌骨上筋群は短縮
舌骨下筋群は伸張

姿勢が変わることで舌骨の位置が変わります。

特に舌骨の位置が本来の位置より上方に位置しやすい傾向になります。


複雑ですが、このように猫背の姿勢が
舌骨の位置を変えます。


そのほかには、猫背によって
後頭下筋は短縮
代償で胸鎖乳突筋の過緊張などがおこりえます。

小まとめ

嚥下と舌骨の関係は奥深く、
少しまとめますと以下のようになります。

・舌骨は浮いた状態の骨のため、様々な筋肉の影響を受け、
 本来の位置を維持できないことがある。

・舌骨につながる筋肉が後頭部や肩甲骨にもつながり、
 姿勢によって舌骨の位置が変わり、
 本来の機能を発揮できないことがある。

・頭、首、肩、背中、胸周囲の緊張が嚥下機能に影響する。

以上から舌骨周囲だけでなく、舌骨が適正な位置を保つための
姿勢へのアプローチが必要となります。

嚥下の仕組みと「舌骨」の役割

食べ物を口に入れて飲み込む「嚥下」には段階があります。

捕食、口腔準備期、口腔期・咽頭期・食道期の5つにわかれます。

①捕食

②口腔準備期:咀嚼して食物を嚥下しやすい形状にする時期
口輪筋、頬筋→口を閉じる 食べ物こぼさないように
側頭筋、咬筋、内側翼突筋、外側翼突筋→咀嚼 下顎の動き

③口腔期:食物を後方に送り込み、嚥下反射が起こるまでの時期
内舌筋、茎突舌骨筋、オトガイ舌骨筋

④咽頭期:食物が咽頭に入り、嚥下反射が起こる時期 
オトガイ舌骨筋 甲状舌骨筋、甲状披裂筋、輪状咽頭筋

⑤食道期:食物が食道から胃に送られる

そのなかでも高齢者は「咽頭期」の喉頭挙上が困難だったり、
遅延します。

「咽頭期」に嚥下反射がおき、舌骨の可動がおきます。

この「咽頭期」が非常に重要です。

なぜ嚥下時は口が閉じているか

嚥下時、舌骨は挙上します。

下顎骨は咀嚼筋により口が閉じて固定

舌骨上筋群の下顎骨下制作用は働かない

よって、嚥下時は口が閉じている。
口が開いた状態では嚥下がしにくい。


ちなみに首の姿勢によって開口のしやすさも変化します。

頚部前屈では開口しにくい

胸鎖乳突筋・斜角筋筋緊張亢進・皮膚の短縮
頚部後屈では閉口しにくい

脳血管障害と嚥下障害、舌骨との関係

脳血管障害では筋緊張のバランスが変わることから、
舌骨の位置が変わることがあります。

さらに、体幹機能の低下の影響により
嚥下に問題が生じることがあります。


脳血管障害

麻痺側の低緊張による肩甲骨が下がる

肩甲骨が下がることで肩甲舌骨下筋も下方にひっぱられる

舌骨が麻痺側にのばされるため、非麻痺側への動きが鈍くなる。


一方で非麻痺側の過緊張で肩甲骨が挙上

舌骨下筋が短縮位になる

舌骨が非麻痺側に引っ張られ、麻痺側に動きにくくなる



さらに、頭部や頚部が左右回旋・側屈することで
舌骨の位置が変わる可能性が考えられます。

また就寝時など臥位(背臥位)では
舌骨が重力と姿勢で背中側に落ちるため、

舌骨下筋群(胸骨舌骨筋・肩甲舌骨筋)と
舌骨上筋群(後方 茎突舌骨筋・顎二腹筋後腹)は短縮位

舌骨上筋群(前方 顎舌骨筋・顎二腹筋前腹・オトガイ舌骨筋)は伸張位

姿勢では腰が反り(腰椎過前彎)、胸が上がり胸椎が挙上し、
頸部のアライメントに影響します。
頚部は反り気味(下位頸椎は屈曲、上位頸椎は伸展)

背臥位では体幹が左右に回旋することで舌骨への
影響が予想されます。

就寝時の誤嚥につながらないように、評価することが
大切です。

嚥下を見るのに当院で確認していること

飲み込みにくさ
食事中・食後のむせ・咳
声がれ

舌骨の位置(上方・下方・左右・回旋)
舌骨・甲状軟骨・輪状軟骨の位置関係
舌骨周囲の筋緊張・左右差
舌骨の動き
舌骨の評価は座位・背臥位両方で

顎下のむくみ・痛み
顎の動き
唾液の嚥下回数・連続しての嚥下の可否
飲み込みにくさの左右差

背臥位での頭部挙上の可否
頚部の前面・後面・側面の筋緊張の有無・左右差

後頭下筋群の筋緊張(舌骨下筋群の拮抗筋)
頚椎の可動域
肩甲骨の位置の左右差
胸骨・鎖骨周囲の緊張の有無・左右差

全体の姿勢(頭部前方姿勢など)

既往疾患の有無

嚥下に対する当院でのアプローチ

鍼灸院で「嚥下機能低下」に対してアプローチするのは
「嚥下」に重要な「舌骨」に関わる筋肉です。

さらに頚部、胸郭、肩甲帯へとつながり、体幹などへ
視点を広げ「嚥下しやすい姿勢」につなげることです。

施術対象は「舌骨」に直接・関節的に影響のあるもの
となります。

以下のポイントは特に重視しています。

鍼・電気ていしん・電気温灸器・手技と部位に応じて使い分けます。

・舌骨上筋群
・頚部全て(頭板状筋・頚板状筋)
・後頭下筋群
・下顎骨、側頭骨、胸骨の舌骨筋群の付着部
 特に側頭骨乳様突起
・肩甲挙筋
・皮膚の硬さ
・外頚静脈、鎖骨下静脈

頭部前方姿勢にならない頚部や体幹トレーニングを行い、
嚥下体操、歯磨きなどの確認をしています。

嚥下体操についてはいろいろありますので、
お調べいただくとよりわかりやすいと思います。

日常生活で気を付けること

・ゆっくりたべる
・口の中にたくさん食べ物を入れない
・小さく切る
・正しい姿勢で食べる

「嚥下障害」についての鍼灸の文献

「嚥下」に関する鍼灸のいくつか日本の文献を調べてみると、
以下のような施術の傾向がみられました。

・足三里・太谿への円皮鍼・鍼通電・置鍼

・頚部前面と後面の鍼通電

・皮膚・筋短縮部位をストレッチしながら集毛鍼による接触鍼

・頚部・側頭部・顔面部を通る経絡の末梢穴の取穴

まとめ

「嚥下」の仕組みは本当に複雑で、さらに学習を進める必要があります。

「舌骨」を中心に頚部、肩甲帯、全体の姿勢を丁寧にみながら、
「誤嚥予防」につなげ、食生活とQOLの改善につながればと考えています。

参考文献

・「嚥下障害、診られますか?」:谷口洋/編 羊土社

・「話すこと・飲み込むことへの鍼治療によるアプローチと経穴を応用した
 リハビリテーション」:谷万喜子 
 関西理学療法 2008年8巻

・「 嚥下障害に対する鍼治療 」: 菊池章子 金子聡一郎 高山真
  The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine   2018 年 55 巻 12 号

・「 高齢者の嚥下機能に対する鍼治療の効果 」:知久すみれ
  全日本鍼灸学会雑誌  2016 年 66 巻 4 号

・ 「 脳卒中後に嚥下障害を呈した2症例に対する体幹および
  頚部筋・喉頭周囲筋への運動療法の経験」荒川武士 
  理学療法学 2017年第44巻第5号