当院における症状の変化について
当院には2010年の開院以降、腰痛や肩こりといった一般的な運動器症状を中心に、
さまざまな不調を抱えた方が来院されています。
2011年から2017年頃までは、
腰痛、急性腰痛、首の痛み、肩こりといった「筋肉や関節の痛み」を主訴とする方が多い傾向にありました。
一方、2018年以降は、
頚椎症性神経根症、坐骨神経痛といった神経に関連する症状に加え、
突発性難聴、低音障害型感音難聴、めまい、顔面神経麻痺など、
より神経系や感覚器系の症状で来院される方が増えています。
当院データから抽出した「神経/感覚器/自律神経系に該当すると判断した主訴」割合(%)では
- 2011–2017期:神経系等に該当すると判断した主訴 → 13.9%
- 2018–2025期:同様の主訴 → 54.8%
このように、時代とともに「痛み」から「神経や感覚の不調」へと、主訴の内容が変化してきていることが当院の特徴のひとつです。

症状の変化から見えてくる身体の問題
これらの変化には、単に患者さんの年齢層が変わったという理由だけではなく、身体の使い方そのものの変化が大きく影響していると考えています。
以前は、重たいものを持つ、長時間立つといった身体的負荷による「はっきりとした原因の痛み」が多く見られました。
近年増えている症状では、
・神経の圧迫や滑走不全
・姿勢の崩れによる負担の蓄積
・筋肉と神経の協調性の低下
などが、複雑に絡み合って症状を引き起こしているケースが増えています。
また、検査では大きな異常が見つからないにもかかわらず、
「違和感」「ふらつき」「しびれ」など、本人にしかわからない不快症状を訴える方も増えてきました。
痛みだけでなく「身体の使い方」や「神経の働き」に着目する必要があります。

社会環境の変化と不調の関係
症状の変化には、社会環境の変化も深く関係していると考えています。
スマートフォンやパソコンの使用時間の増加により、
長時間、同じ姿勢で画面を見る生活が当たり前になりました。
これにより、
・首や肩への持続的な負担
・手や指の酷使
・目と脳の緊張状態の持続
といった状態が慢性化しやすくなっています。主に上半身の症状となります。
また、仕事や生活の忙しさ、人間関係、情報過多などのストレスによって、自律神経のバランスが崩れやすい現代の環境も、めまい・耳鳴り・胃腸の不調といった症状の増加に影響していると考えられます。
こうした社会的背景と不調の関係は否定できないと思われます。

社会環境の変化
以下は、主訴(神経系・自律神経・感覚器系症状など)が増えてきたことを説明するうえで、相関しうる社会環境の変化の一部です。
- スマートフォンの普及率の急上昇
- NTTドコモ モバイル社会研究所によると、スマートフォン所有率は2010年約 4%から、2015年に50%超、2017年に約70%、2021年には90%を超え、2025年には98%に到達。
- 総務省「通信利用動向調査」でも、2017年時点で個人のインターネット接続機器としてスマホがPCを上回っていたという報告があります。スマホ普及が進んだことで、長時間スマホを見る/操作する習慣が広がり、それが「首・肩の緊張」「神経の絞扼」「手根管症状」などのリスクを高める
- NTTドコモ モバイル社会研究所によると、スマートフォン所有率は2010年約 4%から、2015年に50%超、2017年に約70%、2021年には90%を超え、2025年には98%に到達。
- 長時間労働とメンタルストレス
- 国民生活基礎調査および産業・健康研究による分析で、長時間労働がメンタルヘルス不調(ストレス、不安、うつなど)に有意な影響を与えていることが示されています。
- 厚生労働省は2011年から「労働時間適正化キャンペーン」を行っており、当時から長時間労働が社会問題化していたことを示しています。
- 精神障害(メンタルヘルス)の労災認定件数も、近年増加の傾向があり、業務量・質によるストレスが原因の一端となっています。
職場でのストレスが慢性化/構造化されており、自律神経の乱れやストレス関連体調不良(めまい、耳鳴り、胃腸不調など)の増加要因になっている可能性があります。
- 国民生活基礎調査および産業・健康研究による分析で、長時間労働がメンタルヘルス不調(ストレス、不安、うつなど)に有意な影響を与えていることが示されています。
- パンデミック (COVID-19) による心理的負荷の増加
- COVID-19下での緊急事態宣言や自粛生活は、日本の国民の心理ストレスを大幅に増加させたという研究があります。
- こうしたストレス増加は、自律神経バランスの乱れや身体不調(めまい、胃腸不調、睡眠障害など)を通じて、鍼灸の対象となる不調をより増やす土壌になり得ます。
- COVID-19下での緊急事態宣言や自粛生活は、日本の国民の心理ストレスを大幅に増加させたという研究があります。
当院だけの症状の変化とこれらの社会背景の変化を単純に結びつけることはできませんが、 参考にすべきデータだと思われます。実際に、腰、下肢などの症状よりも、首、肩、目、耳などいわゆる身体の「上部」の施術をする機会が多くなった実感があります。