ランニング中の「足の外側の痛み」や「かかとの違和感」は、筋肉や腱に負担が蓄積しているサインかもしれません。鍼灸による一症例をご案内します。
*下記症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております。
患者:女性、ランナー
主訴
左下腿外側からかかとおよび足底外側の痛み
現病歴
約1か月前より、左下腿外側からかかと、足底外側にかけての痛みを自覚。土踏まずの痛みも認めたが、当初は我慢できる程度だったため、通常のトレーニングを継続。
しかし、時間の経過とともに症状が悪化、歩行にも支障をきたすようになり来院。
来院時には、立位および歩行時に疼痛を認めたが、しびれ感は認めなかった。足関節捻挫や転倒などの明らかな外傷歴はなく、過去の足関節捻挫歴も否定された。また、整形外科の受診歴はなかった。

所見
・疼痛部位に一致して、小趾外転筋、短腓骨筋、長腓骨筋に多数の圧痛を認めた。
・足底外側だけでなく腓骨筋群および腸脛靭帯部に著明な筋緊張を認めた。
・Tinel徴候:陰性
・足部アライメント:回内足や回外足の明らかな傾向は認められなかった。
・腫張・皮下出血なし
以前から、普段のトレーニングは平地および山道の両方で実施していることを確認している。特に山道の下り坂や傾斜路面では、足底外側接地の増加および体幹の側方傾斜が増える可能性が推察された。なお、走行フォームおよびシューズに関する詳細な評価は、この症例では実施していない。

鑑別診断
本症例では、以下の疾患を鑑別に挙げた。
・足根管症候群:しびれ症状を認めず、片側性であることからも可能性は低いと判断。
・腓骨筋腱炎:疼痛部位および過負荷の病歴から、可能性を否定できなかった。
・第5中足骨疲労骨折:腫張や皮下出血などの所見は認められなかったが、
画像検査を実施していないため、完全に除外することはできなかった。

施術方針
現病歴・所見から「腓骨筋腱炎」として施術。
最も疼痛の強い部位は足底外側であったが、刺激感受性が高い部位のため、まず大腿外側および下腿外側へのアプローチを優先することとした。
施術内容
腓骨筋群、外側広筋、腸脛靭帯に鍼治療を行ったところ、疼痛は一部軽減したものの、まだ残存していた。次に、長腓骨筋腱と短腓骨筋腱の付着部に間接灸(せんねん灸)を行ったが、明らかな変化はみられなかった。
その後、小趾外転筋に刺鍼を行い、立位および歩行にて再評価したところ、疼痛は 10/10から4/10まで軽減した。
なお、腓骨筋群の緊張が残存していたため、補助としてキネシオテーピング(KT TAPE)を貼付し、施術を終了した。
経過
1週間経過観察とし、症状が残存する場合は再施術を検討する方針とした。
約2か月後、別訴で再来院した際に本症状の経過を確認したところ、その後は順調に改善し、足底から下腿にかけての疼痛は消失していた。
施術を終えての振り返り
結果的に初回の施術で主訴は改善されましたが、施術後の「時間」、いわゆる自然経過による回復も考えられる。振り返りをしても「腓骨筋腱炎」の判断は妥当と思われ、疲労骨折であれば、単回の鍼施術によって、このような経過をたどらないでしょう。
今回は「山道」という環境要因が下肢外側に負担をかけると推察しましたが、再発予防の観点からも、「骨盤」「体幹」「上半身」の詳細な評価が必要と思われます。