「ナラティヴ・コロキウム」に参加して
先日「ナラティヴ・コロキウム」というシンポジウムに参加してきました。
ナラティブとは「物語・対話」、コロキウムは「会議、討論、対話シンポジウム」を意味します。
このシンポジウムは医療だけにとどまらず、看護、福祉、心理、行政、研究職に従事する多彩な職種、または患者さんなど参加対象が広いものでした。それぞれの現場で抱える問題を「ナラティヴ」という視点を通じて考えようという主旨で行われました。
医療ではナラティヴは「ナラティヴ・ベイスト・メディスン:物語と対話に基づく医療」などどして使われています。今回、私は以下のような理由で参加をいたしました。
鍼灸治療院を受診される患者さんの理由・背景・希望が多彩である現状があります。特に初めて鍼灸治療院を受診される方は、何かしらの不安・不満などの問題を抱えています。
例えば「原因がわからない」「わたしは〇〇という病気だと思うが、そのことを伝えられない、伝えてもわかってくれない」「他の医療機関で説明された内容に納得がいかない」など様々です。
また複数の医療機関を受診され、既に診察や検査を終え、重篤な病気などはないことが確認されて、最終的にたどり着くのが鍼灸治療院であることもあります。
特にこのような患者さんの問題解決のために「ナラティヴ」という視点を学ぶことが主な参加目的でした。その内容の全てを書き記すことができるほど、単純なものではありませんでしたが、まずは参加してよかったというのが最初の感想です。
そのうえで、「ナラティヴ」の視点を導入すると、様々な変化・効果があることを知りました。
- 患者さんとの良質な「対話」そのものが治療効果につながること
- 患者さんと良好な関係を作ることにつながり、その結果問題解決につながること
- 患者さんの「語り」だけでなく、語る患者さん自身を尊重する姿勢が大切であること
- 患者さんの変化だけでなく、医療者にもさまざまなことを真摯に考えさせるきっかけを作ること
- ナラティヴ・ベイスト・メディスンは治療法であり、コミュニケーションの形式であり、姿勢・態度などすべてを含むものであること
それぞれの職種・領域で目的に応じたナラティヴ・アプローチを実践するための内容でした。他の医療職・対人援助職の方々がどのようにして患者さんにアプローチしているかもよくわかり、意見交換も大変有意義でした。
鍼やお灸をすることは専門職として大切なことですが、それ以外にも鍼灸師にできる役割があると実感しました。具体的に語りを促進する技法やスタンスなど、奥深いナラティヴの領域を今後も継続的に追っていきたいと思います。
参考資料
・「ナラエビ医療学講座・物語と科学との統合を目指して」 斉藤清二 著 北大路書房 刊
・「ナラティブ・ベイスト・メディスンの実践」 斎藤清二 ・岸本寛史 著 金剛出版 刊