坐骨神経痛ではない足の痛み-大腿神経痛

下肢の痛み-大腿神経痛

下肢の痛みは鍼灸院では珍しくありません。
腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の症状としての坐骨神経痛が有名です。
しかしながら下肢の痛みを起こす疾患はいくつもあります。
今回はその一例を紹介いたします。

*この症例は患者さんが特定されないよう、一部変更を加えてあります。

大腿神経痛の鍼灸症

患者
70代、女性、腰と右大腿前面のしびれと痛みを訴えて来院された。
20-30年前に腰痛があったが、その時は大腿の症状はなかった。
今回は休んでも改善しないので、職場の同僚の紹介で受診した。

主訴: 腰痛、右大腿前面部の痛みとしびれ

現病歴
1.2か月前から腰の痛みと比例し、徐々に右大腿前面に痛みとしびれがある。
膝から下には症状はない。週に5.6日一日7時間、立ち仕事中心で工場内で部品の組み立て作業をしている。
夕方になると症状が増す。歩行や、階段はつらくない。洋式トイレの立ち上がり時にも痛みはない。
夜間痛、安静時痛はない。体重の大きな変化もない。歩行中に痛みやしびれで休まない。
中腰や前かがみでつらくなる。右大腿をさわると左にはない、皮一枚多くあるような皮膚の感覚異常がある。
自宅では長く台所仕事をすると腰が痛くなることもある。これまで電気や赤外線、マッサージなどの治療を受けたが、直後には少し楽になるが、翌日には症状がもどってしまう。

台所仕事は腰に負担がかかりやすいです



一般健康状態
食欲(正)、飲酒は嗜む程度、服薬は便秘の漢方薬、コレステロールの薬、発熱なし

既往歴・家族歴: 特になし

身体診察
FNS(大腿神経伸展テスト):(+) Patrick test  :(-)
右第3腰椎椎間関節、気海兪に圧痛・硬結あり。

初診時の診断とその根拠:「大腿神経痛」
①大腿前面に痛みが出ている。 ②FNS(+)

鑑別診断

  1. 腰部脊柱管狭窄症:間欠性跛行がない。立位で一日仕事が可能。
  2. 股関節疾患:歩行に問題がない。Patrick test (-)股関節、大腿外側などに症状がない。
  3. 悪性疾患:夜間痛、安静時痛がない。体重減少がない。

施術とその指標:腰と大腿部の症状軽減と、施術効果の持続

第1回 
大腿神経痛と判断をした。右上側臥位にて、右気海兪、大腸兪、関元兪、第3..4.5腰椎椎間関節、上胞膏に50㎜-18号のステンレス鍼で直刺。20分置鍼。右気海兪、大腸兪は大腿部まで鍼のひびきがあった。

第2回(8日目)
大腿部の痛みは10→3 膝上部に少し残る程度となった。台所仕事では痛くならなくなった。施術は前回同様。

第3回(15日目)
大腿部の痛みは10→0 腰は仕事が終わるころに少し痛みが出てくるが以前ほどではない。施術姿位を腹臥位に変更し、気海兪、大腸兪のみを60㎜-20号に変更した。

第4回(21日目) 
大腿部は症状がない。腰は仕事中もあまり気にならなくなった。月に1回、予防のための来院となる。

休める椅子をおいておくといいでしょう

まとめ

大腿前面の症状には大腿神経という腰から出ている神経が関与しています。
特に施術で使用した、気海兪や、第3腰椎椎間関節は大腿神経の走行に沿っています。
今回は患者さんの病歴と、症状、所見で大腿神経痛の可能性が高いと判断をし、そこから施術部位へのアプローチが比較的うまくいった症例だと感じています。

台所仕事は腰下肢に負担がかかります。いつでも休める椅子を近くに用意しておくとよろしいかと思います。

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