腰部脊柱管狭窄症-半年続く腰下肢痛(鍼灸症例)
腰部脊柱管狭窄症は高齢者に多く、腰と足に痛みとしびれをきたします。
いわゆる「坐骨神経痛」という症状を引き起こすのですが、特徴的なのは「間欠性跛行」という、歩くと足の痛みやしびれが強くなり、距離を歩くことができなくなる症状があります。
しばらく休んだり、前かがみになると症状は和らぎ、再び歩くことができます。
腰部脊柱管狭窄症については「鍼灸院でよくみる5つの腰痛」の腰部脊柱管狭窄症をご覧ください。
今回は「腰部脊柱管狭窄症」に対する鍼灸の一症例を紹介いたします。
(この症例は患者さんが特定されないよう、一部変更を加えてあります。)
腰部脊柱管狭窄症の鍼灸症例
患者:70代、男性
主訴:左腰下肢の痛みとしびれ
現病歴
半年前から左腰と足が痛みはじめ、眠れないほどだった。
左大腿後側、下腿後側、外側に痛み、しびれがある。足の指では母趾、示趾、中趾にしびれがある。
少しあるくと、足全体が痛くなり、歩けなくなる。自転車では痛くならない。
ひとつめの整形外科では「腰椎分離すべり症」と診断される。
二番目の整形外科では「腰部脊柱管狭窄症」の診断をうける。
三か月間リハビリ、マッサージを行い、痛みどめを服用してていたが、
だんだん痛みなしに歩ける距離が短くなってきた。
具体的には近所の公園を以前は1週できたのが、現在は4分の1ほどしか歩けない。
半年前より腰痛は良くなったが、足や歩行時の症状は悪くなっている気がする。
夜間痛、安静時痛、原因不明の体重減少などはない。
今まで大きな病気もない。このままリハビリでよくなるかどうか不安。
飲酒、喫煙習慣無し。排便、排尿に問題なし。
診断
「腰部脊柱管狭窄症」(神経根型)
根拠
「間欠性跛行」の存在・自転車では痛くならないこと・坐骨神経痛の存在
鍼灸施術とその指標
①腰下肢症状の緩和 ②歩行距離の改善 を目的としました。
第1回
左上側臥位にて、L3,4,5椎間関節、大腸兪、関元兪、梨状、上胞膏、足三里、陽陵泉にステンレス鍼40㎜-18号で置鍼15分。軽めのストレッチを加える。
第2回(7日目)
初診後にだるさなどが出なかったため、使用する鍼を変更し、椎間関節以外はステンレス鍼50㎜-20号で置鍼15分
第3回(14日目)
痛みとしびれは3割ほど残る程度、2回目の施術後に変化があったと伝えられる。関元兪と梨状のみステンレス鍼60㎜-22号に変更
第4回(21日目)
公園を休まず1周することができた。あまりに長く歩くと足が疲れることもあるが、翌日には回復するとのこと。痛みとしびれは1.2割程度。
追記
初診時から2年経過した現在でも、経過は順調。日課である3㎞の散歩もほぼ毎日できていますし、痛みやしびれもありません。(2015.8)
まとめ
腰部脊柱管狭窄症の施術は容易ではないと感じています。
今回は早い段階で変化があり、効果も出たと感じています。
同じ腰部脊柱管狭窄症でも、同様に施術したからうまくいくとは限らないこともあります。
症状の改善度合いは、その病態の程度(発症してからの期間や、痛みの強さ、歩行距離の短さなど)と施術内容によるところが大きいと思われます。
難しいながらも、今回のようにお医者さんでもなかなかうまく行かないケースでは、鍼灸でお役にたてることもあると思います。
*自転車では痛くならないのが腰部脊柱管狭窄症の特徴です