慢性腰痛-5年間続いた腰痛(鍼灸症例)

慢性腰痛-5年間続いた腰痛(鍼灸症例)

腰痛は当院で最も訴えの多い症状です。
腰痛の原因は様々で、症状や程度、経過も患者さんにより異なります
今回はその一例をご紹介いたします。
この症例は患者さんが特定されないよう、一部変更を加えてあります。

鍼灸症例

患者 50代 男性 
主訴 腰痛
背景 
5年前から慢性的な腰痛に苦しんでいる。様々な施術を受けてきたが不満がある。インターネットで調べて、筋筋膜症だと思っている。

現病歴
5年前に腰痛発症、大学病院でヘルニアと診断される。一時痛みは落ち着いたが、2年前にヘルニアが再発した。
下肢のしびれが強かったため、近隣の整形外科で内視鏡での手術を受ける。手術後、腰の張り感が残るがそのうち良くなるといわれた。
手術前ほどではないが、腰の痛みが残り他院を受診し、服薬するが効果がない。
数週間前にペインクリニックを受診し、硬膜外ブロックを1か月に4回受けるが改善しない。
接骨院などの電気の施術は以前受けたことがあるが、体に合わない気がする。

現在、座敷に坐っているとき、立っているとき、仕事中の前かがみで痛みを感じる。また振り返ったり、後ろに反っても痛みが出る。
階段、歩行、椅子、立ちあがり、就寝時には痛みを感じない。
痛みところはウエストのライン、第4.5腰椎椎間関節付近。下肢にしびれはない。
痛みの性状は、こり、張り、重み。夜間痛、発熱、体重減少はない。緩解動作や姿勢はわからないとのこと。

一般健康状態 
食欲正常、睡眠はたまに導入剤を服用、機会飲酒週に2回ほど。

既往歴 
10年前 頸椎椎間板ヘルニア(手術済)、5年前腰椎椎間板ヘルニア(手術済)
身体診察 第3.5椎間関節 大腸兪、関元兪に圧痛

初診時の診断とその根拠 
椎間関節性腰痛

  1. 椎間関節の自覚痛と圧痛
  2. 下肢症状がない
  3. 安静時痛なし
  4. 歩行に異常がない

鑑別診断

  1. 腰部脊柱管狭窄症:歩行に異常がない、下肢症状がない
  2. 腰椎椎間板ヘルニア:下肢症状がない、

施術とその指標
第1回 腹臥位にて第3.4.5椎間関節、大腸兪、関元兪、上胞膏に50㎜-20号で直刺。15分置鍼座位にて右大腸兪に単刺。
病歴にあった疼痛動作を確認。座敷に坐る姿勢、立位、前かがみ、振り返り、後ろに反る動作では痛みが出なかった。
慢性的かつ受診歴が多い腰痛の割に、痛みが軽減したことに少し疑問を感じる。

第2回(3日目) 
前回の施術の翌日から痛みが再発した。
以前より奥に痛みがあることがはっきりとわかるとのこと。
再度痛みのあるところを確認。右第5腰椎椎間関節、大腸兪、関元兪の奥に硬結を認める。
大腸兪、関元兪は鍼を60㎜-22号に変更。置鍼時間も20分に変更した。

第3回(10日目) 
あれから痛みはほとんどなかった。すこし後ろに反った時に痛みを感じる。
2か月ぶりに趣味の自転車のツーリングに行くことができた。仕事のお付き合いでのお酒の席でも、座敷だったが最後まで楽しめたとのこと。
痛みが取れて活動的になったせいか、右第5腰椎椎間関節の奥には硬さはまだ残っている。
その後、月1回程度予防のために来院されているが、日常生活に支障はなく過ごされている。

症例のまとめ

この患者さんは慢性的な腰痛で、手術歴もあり、医療機関で満足のいく結果を得られてない背景がありました。
病歴や身体診察、施術の経過から、患者さんの考えていた筋筋膜性腰痛ではなく、椎間関節性腰痛の可能性が高いと判断いたしました。

椎間関節性腰痛ではありますが、患者さんの背景、病態からは少し時間がかかると思われました。(経験的に手術歴があると鍼の効きが少し悪くなる印象があります)

初診時の鍼の種類、深さ、時間では直後効果こそあったものの、その効果を維持させることはできませんでした。
2回目に施術方法を変更したところ、思いのほか早く改善がみられました。薬やブロック注射がなぜ効果を発揮しなかったことに関してはわかりません。

その当時と今回とで病態が違っていたのかもしれません。(以前には鍼が効かずに、ブロック注射で効果があった患者さんもおられました。)

 鍼灸院にお見えになる患者さんは、整形外科、接骨院、整体、マッサージを経て最後に鍼灸施術を選ぶ方が少なくありません。

鍼灸が他の施術法より絶対的に優れていることはありませんが、(どの施術法も絶対的なものはないと思いますが)今回の患者さんのように最後に鍼灸で良くなられる方がおられることもあります。鍼灸も施術の選択肢としてご検討いただければと思います。

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