腰痛のタイプ③-仙腸関節由来の腰痛
仙腸関節とは
仙腸関節は骨盤を形成する逆三角形の「仙骨」とそこから左右に扇のように接する「腸骨」からなります。仙腸関節由来の腰痛の研究は進んで、腰痛の10%を占めるという報告もありますが、まだあります。他の関節のように動きはありません、関節運動はごくわずかです。病率や診断基準が確立されていません。
仙腸関節由来の腰痛の特徴
患者さんに一本で痛いところを示していたらと、仙腸関節部を示します。その他に、鼡径部や下肢に痛みがあることがあります。特に下肢の痛みは特徴があります。
よく知られている坐骨神経痛では腰、殿部、大腿(ふともも)、下腿(ふくらはぎや脛)、足の指に痛い、しびれが「つまった」感じでいつも同じように症状があります。
一方、仙腸関節由来の腰痛では日によって痛む場所が違ったり、痛む場所が「つながった感じではなく、バラバラ」であることが特徴のひとつです。また左右どちらの痛む方を下にして横向きになって休むと痛みが増す傾向があります。座っていると痛みが増しますが、歩きはじめると楽になる方もおられます。
仙腸関節由来の腰痛は、産後に痛みを訴えるのが特徴的といわれていますが、性別・年齢にかかわらず誰でもかかる可能性がある腰痛の一つといった報告があり、当院でも産後の患者さんよりも50-60代の女性に多い印象があります。
今まで拝見した患者さんでは、バスツアーや飛行機による長時間の移動で仙腸関節に痛みを訴えることが多いと思われます。狭いシートで仙腸関節が左右から挟み込まれ、同じ姿勢でいることが原因ではないかと推測しています。
仙腸関節由来の腰痛は、腸骨が骨化したもの、結核性や化膿性のものは画像や血液検査で診断できるようですが、それ以外のものは画像では異常がみつからないことも多いようです。仙腸関節にブロック注射をして、痛みの軽減があればそれをもって診断とするといったこともあるようです。
仙腸関節由来の腰痛になった時の日常生活での対応
まず痛いほうを下にして横になると痛みが増しますので、痛いほうは天井の方に向けられた方がいいでしょう。またゴムベルトをウエストではなく、仙腸関節の高さで、腰というよりお尻に巻くイメージで巻かれると楽になります。長時間座ることは避けて、歩かれると痛みが軽減する方を多く見ています。
仙腸関節由来の腰痛に対する鍼灸治療
仙腸関節周囲に鍼をいたしますが、股関節や腰の関節との関係を診て鍼灸治療をしています。仙腸関節だけを治療するよりも、腰の関節や仙腸関節に負担をかけている要素を見つけるようにしています。仙腸関節に原因があり、実際にそこに鍼を的確にすると直後効果が著明にあるのも仙腸関節由来の腰痛の特徴です。
参考症例 股関節の痛み-仙腸関節障害