腰痛のタイプ④-高齢者の腰痛:圧迫骨折
骨粗鬆症から脊椎骨折
高齢者に多いのが骨粗鬆症です。骨粗鬆症では痛みはありません。骨粗鬆症から脊椎骨折になると通常は「痛み」があります。
脊椎を骨折した1/3の方が痛みを感じ、残りの2/3の方は骨折があっても痛みを感じないといった報告があります。また、尻もちや転倒など明らかな外傷がなくても、20%の方に骨折がみられるようです。
つまり、骨折した本人も気づいていないところで骨折している可能性があります。「患者さんに骨折を思わせるイベントがなくても、骨折を否定できない」ことに注意する必要があります。
複数の骨折による姿勢の変化と慢性腰痛
加齢によるものだけでなく、脊椎骨折の経験や、気付かないで骨折するなどして、複数箇所の骨折は脊椎の変形を招いていきます。脊椎の変形によって、脊柱周囲の関節、筋肉、靭帯などに持続的に負担がかかることで慢性の腰痛につながります。
背中が丸くなることで、重心の変化などがおこり、股関節(大腿骨頭の被覆率が減少すること)や膝関節(大腿直筋への過剰な負担)に二次的な負担がつながっていくことがあります。抵抗はあるかもしれませんが、杖を使用したり運動をすることで姿勢への影響を減らしていくのがお勧めです。
急性の圧迫骨折
急性の圧迫骨折は痛みも強く、ベッドから起き上がるのにも時間がかかります。病院では鎮痛剤、コルセットが処方され、安静でいることを求められます。
実際に痛みが強いため、寝返りも大変です。
一方で、圧迫骨折の患者さんは高齢者が多いため、あまり長期にわたって安静にしていると筋力が低下する可能性があります。腰の痛みが改善した時に、立つことや、歩くことが困難になるのを防ぐ必要があります。
圧迫骨折による腰痛に対する鍼灸
残念ながら鍼灸で骨を再生することはできません。
急性時には骨折した周囲の筋肉や関節部が主な治療部位になります。
骨を支える筋肉などの緊張をとり、まずは寝返り、座位、立位、歩行と順番にできることを目的とします。
痛みによる長期臥床からの筋力低下を防ぐことと、他の関節の拘縮に気を付けることが大切です。薬物療法と鍼灸を併用した病院では、薬物療法単独よりも痛みの軽減が早まった報告などがあります。
骨折から時間が経過し、慢性腰痛がある場合には、股関節や膝関節など二次的な問題も考慮します。程度にもよりますが、運動と鍼灸、日常生活の工夫などで、地道に対応する必要があります。