「ぎっくり腰」になった時に知っておいてほしいこと

「ぎっくり腰」って何ですか

 「ぎっくり腰かもしれない」と来院される患者さんでも、そもそも「ぎっくり腰」ってなんですかと質問を受けることがあります。ぎっくり腰の初期対応はとても大事です。


目次

  • ぎっくり腰とは
  • ぎっくり腰の経過
  • ぎっくり腰になった時の過ごし方
  • ぎっくり腰になった時に自分でできること
  • ぎっくり腰になった時の注意点
  • 急性の腰痛の全てがぎっくり腰ではありません
  • 急性腰痛にともなう危険な病歴
  • 急性腰痛の症状の時間にともなう症状の変化
  • ぎっくり腰で鍼灸治療に求められること

ぎっくり腰とは

「ぎっくり腰」は急性の腰痛のことです。
発症から1か月以内に突然おきる腰痛で、外傷や感染症、腫瘍、結石などが原因ではなく、ヘルニアのように下肢症状(足のしびれや動かしにくさ)などがないものをいいます。

ぎっくり腰の経過

急に強い痛みが襲ってきてトイレに行くことも大変なことがあります。痛みと不安でどうしていいかわからなくなる方がほとんどです。

痛みは強いのですが、ぎっくり腰は1か月以内に自然に治癒することが多く、その後の経過も良好であることが一般的です。

症状が強いですが、「ずっと続くものではないこと」「徐々に悪くなっていく進行性のものではないこと」を知っていただきたいと思います。

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ぎっくり腰になった時の過ごし方:安静と運動のタイミング

発症した日から2.3日は痛みが強く動くこともままならないことがあります。最近は「安静にしているよりも運動をする方が腰痛にはいい」という情報が少しずつ広まり始めました。患者さんでもそのことをご存知の方に出会うことが増えてきました。大事なことはここでいう「運動」の意味です。

「運動」という言葉は、スポーツやランニング、筋力トレーニング、腹筋運動、背筋運動などを思い出させます。我慢強い方はぎっくり腰の直後でも「運動が大事」という知識をもとに、こちらが驚くくらいの運動をされていることがあります。結果はあまり芳しくないことが多いです。

大切なことは運動の「程度」と「タイミング」だと思います。

  • 痛みが強い発症当日から数日は「安静」が中心
  • 痛みが3.4割軽減され、少し動けるようになれば家の中で腰に負担がかかりにくい
    「家事」程度の「運動」
  • 痛みが5.6割軽減されたらなるべく家の中での生活レベルの「運動」

スポーツのように「積極的運動」ではなくて、痛みに応じて普段の生活の動きを「運動」と捉えて行うことが大切です。「安静」から少しずつ日常生活レベルの「運動」を行うことが、早期の痛みの改善、休業の短縮、再発予防につながると言われています。

ぎっくり腰になった時に自分でできること

ぎっくり腰になった時に、悪化させないために自分でできることがあります。
特に発症当日から痛みが軽減してくる数日まではぜひ参考にしていただきたいと思います。

①温めない 温かくて気持ちがいいことと、痛みが軽減されることを冷静に観察してください
②湯船につからない
③お酒をのまない
④横向きになって休む 
抱き枕で体をあずける、左右どちらかが痛いときは、痛む方を天井側にします
⑤仰向けでやすまれるかたは、膝の下に枕をいれる
ひざが軽く曲がることで腰の反りがへり楽になります。関節ではなく筋肉の痛みなどで楽にならない方は横向きがお勧めです
⑥保冷剤などで冷やす
腰の痛む部分や、熱をもっているところを冷やします。感覚が「冷たくてここち良い」から、「冷えすぎて痛い」時にはすぐに外します。数回繰り返して、熱や痛みが減ってくると外します。就寝中は外してください

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ぎっくり腰になった時の注意点

 
痛みどめなどのお薬は必ず医師の指示のもとに服用してください。
胃腸や腎臓への副作用もあるので、基礎疾患をお持ちの方などは特に注意してください。
また高齢者や女性は尻もちなどの外傷がなくても「骨折」の可能性があります。

過去にぎっくり腰と思っていた患者さんに病院受診をすすめたところ「骨折」であった事例が数例ありました。

「動作による痛み」がなく、「安静にしていても痛む」「痛みが時間の経過とともに進行する」といった特徴は、「ぎっくり腰」ではない可能性が高くなります。当院でも結石だった事例がありました。(安静痛と進行する痛み

急性の腰痛の全てがぎっくり腰ではありません

急性の腰痛というと筋肉や関節を痛めたいわゆる「ぎっくり腰」が最初に思い浮かぶと思います。「ぎっくり腰」の頻度が高いため、患者さんの自己判断でも当たることが多いですが、違うこともありますので注意が必要です。

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急性腰痛に伴う危険な病歴

腰痛患者の40%が背後に重篤な病気が隠れているのではと心配している報告があります。実際には急性腰痛の患者さんの1-5%が重篤な病気によるものと言われています。腰痛の背後に重篤な病気がないかどうかを確認します。
下記のような病歴がないかをチェックします。

  • 原因不明の体重減少
  • がんの既往
  • 安静にしているにもかかわらず痛みが増悪する
  • 失禁
  • 尿がでない
  • 発熱
  • ステロイドの長期使用 など

Assessment and Mnagement of Acute Low Back Pain 参照
これらの病歴は腰痛の原因が、筋肉や関節ではなく、腫瘍や骨折、膀胱や腸の神経への問題などが推測され、早急に病院を受診する必要がある情報だからです。病院でも確認されていると思います。

鍼灸治療院では以上のような病歴は問診で患者さんに確認できます。
さらに鍼灸不適応の病気の鑑別もする必要があります。(鍼灸では治らないもの、病院受診をはやくすすめたほうがいいもの)尿路結石や、重度のヘルニアなどです。

強いストレスや、うつなどが背景にある場合も同様です。(「慢性腰痛とストレス」

急性腰痛の時間にともなう症状の変化

急性の腰痛を訴えた初診の患者さんはもちろん、定期的に来院される患者さんでも時間の経過で症状が変化します。最初は腰だけの痛みだったのが、翌日、翌々日に足のしびれ、痛みがでてきて、はじめてヘルニアとわかります。*1

「風邪」も最初は寒気だけだったのが、鼻水、咳、のどの痛み、発熱と症状が時間の経過と共にそろっていきます。
腰痛も同様に、経過を観察する必要があります。

初診時だけでなく、時間の経過と患者さんの状態に変化があることを見極めて、過去と現在との違いを積極的に鍼灸師側から情報を得て、単なる「ぎっくり腰」なのか、それとも「別の腰痛」なのかを見極める必要があります。*1

画像ではヘルニアがあっても無症状の患者さんの割合は多いため、ヘルニアの症状がそろって、画像でヘルニアが確認された時にヘルニアと確定できます

ぎっくり腰で鍼灸治療に求められること

 ぎっくり腰の患者さんが鍼灸治療院に求めていることは

  • 患者さんの痛みと不安を「早く」軽減すること
  • 一見「ぎっくり腰」と思われるものが、病院での精査を必要とするものでないかを鑑別すること
  • 再発予防、受診できない時に備えて情報提供すること

 以上と理解しています。
ぎっくり腰の症例、参考記事については下記をご覧ください


急性腰痛(ぎっくり腰)-症状と症例
急性腰痛(ぎっくり腰)と往診について
ぎっくり腰とゴルフ

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