めまいの鍼灸症例(往診症例)
「めまい」と「腰痛」のため動けなかった「往診」による鍼灸症例を紹介します。
「めまい」は「不安感」のとても強い症状です。医療機関で診断されていることはもちろんですが、鍼灸師も病歴で確認、判断する必要があります。
*下記症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております。
往診症例
患者
70代、女性
主訴
めまい・腰痛めまいと腰痛で動けないので困っている。体調が悪い家族との二人暮らしのため、介護と家事ができないと困る。
病歴
4日ほど前に台所にたったところ、急にめまいがして転倒。転倒した時に腰を打ち、腰痛がある。救急車で近隣の総合病院を受診、良性発作性頭位めまい症(BPPV)と診断される。
腰はレントゲンなどで骨には異常がないと診断されたが、痛みは強い。処方された湿布、痛みどめでは腰痛はあまり良くならない。
立ち上がろうとすると、腰は痛く、めまいがあるため起き上がれない。寝返りをしようとするとめまいがでる。30秒ほどでおさまるが、首を動かそうとすると、めまいがでる。
ずっと寝ていても腰が痛く、動こうとするとめまいがでてしまい、困っている。難聴、耳鳴りはない。手足のしびれはなし、頭痛なし。
めまいへの不安はあるが、気持ち悪さ、吐いたりなどはしていない。物が二重に見えることはない。
今まで大きな病気はしたことがなく、健康診断でも問題がない。発熱なし、食欲はあまりない。夜は腰が痛くあまり眠れない。
アセスメント
医療機関で「良性発作性頭位めまい症」と診断されていること。
寝返りなどの頭の動きでめまいが誘発されること。めまい発作時間が30秒ほどで、耳症状がないこと。また中枢性のめまいを疑う病歴がないことから、「良性発作性頭位めまい症」の可能性が高いと判断した。
腰痛は、骨に異常がないことから転倒による骨折はないと考えた。
施術方針
めまいと腰の痛みにより体を動かすことができず、生活に支障がでている。まずは椅子に座れること、次に立ってトイレに行けること、元の日常生活に戻ることを最終目標として往診にて施術することを確認した。
経過
1回目(初診)
横向き(側臥位)で頸周囲、腰に軽めの鍼治療を行う(初診のため)。めまいは不安が強いが、日ごとによくなっていくことを伝える。
2回目(3日目)
立つことはできたが、歩くのはまだ不安があるため、トイレは這って行っている。食事はめまいが怖く、寝たまますませた。夜間寝返りでの腰の痛みはない。
3回目(5日目)
トイレに歩いて行くことができた。めまいはあと3割程度。腰の痛みはほぼない。
4回目(7日目)
ゴミ捨てに行くことができた。今まで寝ていることが多かったため、スーパーまで行くのは不安がある。
5回目(10日目)
この2日間でスーパーに行くことができた。ようやく家事、介護ができそうとのこと。施術を終了する。
日ごとに症状が軽減されていったため、施術内容は初診時から大きく変えていません。
腰は骨折がなかったため、転倒による炎症が鍼施術や、時間の経過により軽減されていったと考えています。
めまいは「痛み・しびれ」とは違い、「また倒れるのではないかという不安」「頭の病気ではないかという不安」があります。
医療機関で診察を受けていること、また危険な兆候がないことを当院でもしっかりと再度確認することで、患者さんに「治っていくめまい」であることをお伝えすることができます。徐々によくなっていくことを実感することで不安も減っていきます。
この患者さんはめまいで転倒される前に、介護や家事による睡眠不足・ストレスなどがありました。
福祉、介護職との方々とも介護体制について再度お話をしていただくようにいたしました。