「良性発作性頭位めまい症」の鍼灸症例

「良性発作性頭位めまい症」の鍼灸症例


 「めまい」の中で、最も頻度が高い「良性発作性頭位めまい症」があります。「めまい」は原因が様々で耳、脳、心臓、血管、頚、心因など多岐にわたります。めまいの特徴、持続時間、それに伴う他の症状、検査などから多角的に鑑別する必要がある症状です。


鍼灸院に「めまい」を訴えて来院される患者さんは先に、病院を受診され、診断が出ていることがほとんどです。
しかしながら病院を受診されてない場合や急を要する内容が確認できた時は、すぐに病院を受診していただいています。

ここでは「良性発作性頭位めまい症」の鍼灸症例と論文をご紹介いたします。

*この症例は患者さん個人が特定されないよう内容に変更を加えております。
(すでに耳鼻咽喉科で「良性発作性頭位めまい症」と診断されています)

良性発作性頭位めまい症:鍼灸症例(外来)

患者 60代、女性

受診動機
「良性発作性頭位めまい症」と診断され服薬しているが、今回のめまいに関してはあまり効果がなかったことから当院を受診

病歴
半年前に頭がフラフラし、耳鼻咽喉科を受診ししたところ「良性発作性頭位めまい症」と診断された。

3週間の服薬の後、症状はおさまった。その際に、脳のMRIなども撮影し、血管などは正常と伝えられる。3週間前に頭がフラフラしたため、今回も耳鼻咽喉科を受診し、「良性発作性頭位めまい症」と診断される。処方されている薬(メリストロン・苓桂朮甘湯)を2週間以上服用しているが、今回はあまり効果がない。

起床時に数秒間のふらふらがあり、右に振り返る動作でフラフラする。安静にしていると症状はない。随伴症状は右の首がこる。慢性的に頭重感があり、趣味の手芸を集中的にすると目の疲れとともにひどくなることがある

。耳鳴り、難聴などはない。手足のしびれ、麻痺などはない。嘔気、嘔吐もない。食欲は正常。睡眠は、1,2回目が覚める。発熱なし。体重の増減なし。既往歴なし血圧:130/70

身体診察・右後頚部・側頚部、右肩上部の緊張が左より強い

鑑別診断
医師の診断もでており、患者さんの病歴も「良性発作性頭位めまい症」を強く裏付けている。

「良性発作性頭位めまい症」
・めまいの持続時間が数秒
・頭の動きでめまいが誘発されること
・聴覚症状がないこと
・起床時のめまいがあること
・頭痛はめまい発症以前からのもので普段より強いものではなく、突発でもない。

また、「メニエール病」「前庭神経炎」などは聴覚症状がないことや、めまいの持続時間が患者さんの症状と合わないことから除外できる。

 初診時からの経過
病院を受診していること、危険な兆候がないことから鍼灸を行うことにした。

第1回
腹臥位にて、後頚部に40㎜-18号のステンレス鍼にで10分置鍼。右上側臥位にて右僧帽筋、頚板状筋、頭板状筋、肩甲挙筋に電気ていしんを行う。仰臥位に胸鎖乳突筋に置鍼15分。
治療後、自宅にて背部、頚部のストレッチを行ってもらうようにする。

第2回(5日目)
めまい症状は消失。右の後頭部が重いが、普段からある頭重感で仕事や趣味で肩こりが悪化するとでてくるとのこと。緊張性頭痛と考え加療した。めまいに関しては症状消失のため、終了となりました。

半年前の最初のめまいは、服薬で良くなりましたが、今回の2回目のめまいは服薬では寛解とまではいかなかったことから当院を受診されました。

当初1ヵ月で3.4回の治療を考えていましたが、今回の患者さんは比較的早い症状消失でした。めまいの患者さんは首、肩に強い緊張があります。頭位めまい症に対しては投薬やエプレイ法という三半規管にできた耳石を外にだす方法があります。

鍼灸院ではそれらの施術が終わった後に、「だいぶよくはなっているんだけど、まだめまいが残っている」と言った方がお見えになることが多いように思えます。

病院では特に問題ありませんと言われながらもめまい症状が残る方は首、肩の緊張を緩和することで良くなられる方がおられます。

ご参考になれば幸いです。

「良性発作性頭位めまい症」の鍼灸論文 (2018.10.22 追記)

「良性発作性頭位めまい症」はときおり鍼灸院で遭遇する疾患の割に、鍼灸の海外論文はあまり見当たりません。病院で使われるepley法という理学療法との組み合わせによる報告があります。

Clinical observation of post semicircular canal benign paroxysmal positional vertigo treated with acupuncture at dizzy auditory region plus modified Epley


後半規管型BPPVに対して修正epley法のみと修正epley法に聴覚領域への鍼治療を加えた効果の比較67人の患者を37の観察群、30人のコントロール群にランダムに分け、修正epley法は両群に使用。鍼は「百会」「太陽」を使用。1日1回の治療を6日間行う。治療前後で両群の症状スコアを観察した。観察群の有効率は91.9%で、コントロール群の83.3%を上回ったが統計的有意差はない。

症状スコアは2群とも改善、後半規管型BPPVに対しては修正epley法だけよりも修正epley法と聴覚領域への鍼治療を加えたほうがすぐれていると結論づけている。

これは中国の報告ですが、epley法と鍼治療を併用する環境はあまり国内では少ないように思えます。

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