「めまい」と鍼灸-鑑別と適応
鍼灸院での「めまい」の見立ては、施術に入るまでにいくつかの段階があります。
「注意すべきめまい」を疑う情報がないかを患者さんに確認する必要があります。
目次
・「めまい」の表現の難しさ
・「注意すべきめまい」の確認
・「注意すべきめまいの随伴症状」の確認
・「高齢者のめまい」はまず病院受診を!
・「足下がふらつくめまい」
・ 鍼灸院に多い「めまい」
・ まとめ
「めまい」の表現の難しさ
患者さんによって「めまい」の表現は様々です。
「ふらふらする」「ふわふわする」「ふわーとする」
「立ちくらみがする」「気が遠くなる」などです。
「めまい」については、多くの事を確認します。
・「めまいはいつからですか」
・「どんな状況でめまいはおきましたか」
・「めまいは続いていますか」
・「めまいの持続時間はどれくらいですか」
・「めまいは悪化していますか」
・「めまいと同時に始まった他の症状はありますか」
(随伴症状)
そのなかで「どんなめまいですか」という質問があります。
めまいの性状「回転性」「浮遊性」「前失神」を知るためですが、
患者さんの中にはうまく表現できない方もおられ、
回答が得にくい気がしています。
「ぐるぐる回る」「浮いている感じ」「目の前が真っ暗になる」と
答えられる方のほうが少ない印象です。
鍼灸院に来院される「めまい」の患者さんというバイアスが
あるのかもしれません。
めまいの性状は参考にするのですが、性状で区別するよりも、その他の質問で
危険な症状や原因を探ったほうが良いのではと思っています。
「注意すべきめまい」の確認
「注意すべきめまい」に気づくことは、鍼灸施術よりも
最初に必要なことです。
以前、「鍼灸院での「めまい」は危険な兆候の除外から」にも書いております。
いつ「めまい」が起こったか →「突発」
「めまい」が悪化しているか →「増悪」
「安静時も「めまい」があるか →「安静時のめまい」
「突発」「増悪」「安静時のめまい」は要注意です。
「めまいの随伴症状」の確認
下記にあげる「めまい」に伴う症状・所見は早急に病院受診を勧めるものです。
「中枢」(脳) :頭痛・麻痺・しびれ
「循環」(心臓) :血圧・頻脈・胸痛・動悸・発汗・失神
起床時のふらつき・貧血・黒色便
「感染症」 :発熱・血液検査による炎症所見
「運動失調」 :歩行・立位の異常
「薬剤」 :降圧薬・利尿剤・前立腺肥大・抗ヒスタミン
睡眠薬、他多数
鍼灸院ではこのようなの症状・所見がある段階では、
「病名」を細かく探すよりも、
「何が原因でめまいがおきているか」を推察することで、
患者さんを紹介する診療科が変わります。
一般的に「めまい」を扱う診療科は、耳鼻科・脳神経外科です。
しかしながら心疾患、いわゆる「循環」を疑う「めまい」の
病歴や所見があった場合、「循環器内科」や
「内科」のほうがよいでしょう。
患者さんにはこのような症状がある場合、
医師に必ず伝えるようにしていただいています。
「めまい」というと「メニエール病」が有名ですが、
実際の頻度はそれほど多くないと言われています。
高齢者の「めまい」はまず病院受診を!
高齢者は基礎疾患を持っている方も多く、
「めまい」をおこすと「転倒」の危険もあります。
また「脱水」しやすく、服用している薬の種類も
量も多い傾向にあります。
病院では「めまいのある高齢者」は診察後に
帰宅させるのも慎重で、以下のことを確認しています。
①歩ける
②水分摂取ができる
③介護環境が確立している
「めまい」は症状の強さと疾患の重症度が比例しないこともあり、
高齢者では特に慎重に対応する必要があります。
つまり大きな病気が原因でも歩いて受診されることがあります。
このような理由で、「高齢の患者さんのめまい」は
病院を受診していただき、その後もより慎重に診る必要があります。
「足下がふらつくめまい」
「めまい」のことを「足下がふらつく」と表現する方がいます。
「歩行」「立位」の異常、「ふらつき」「目を閉じた状態でのふらつき」が
ある場合。
「動きがゆっくり」「ふるえがある」などがある場合は、
病院(神経内科・脳神経外科など)を受診すべきです。
鍼灸師も打腱器による反射(膝蓋腱反射・アキレス腱反射)をみて
異常所見を確認しますが、やはり専門医への受診が最優先です。
一方で、運動不足による筋力低下や、足底の感覚低下、
バランス感覚の低下など加齢減少による「足下のふらつき」もあります。
鍼灸院に多い「めまい」
以下の病気による「めまい」が鍼灸院には多いように思えます。
詳細はそれぞれの記事をご覧ください。
・「良性発作性頭位めまい症」 良性発作性頭位めまい症の鍼灸症例
・「突発性難聴」 突発性難聴の鍼灸症例
・「頚性めまい」
ほとんどの方が先に「耳鼻科」を受診されています。
これらの「めまい」は持続時間、随伴症状(耳鳴り・難聴・耳閉感)
増悪因子・オージオグラムなどの検査所見で再確認しています。
まとめ
以上から当院における「めまい」の鑑別は下記のとおりとなります。
「病院を受診しているか、診療科・診察内容は?」
↓
「危険なめまいの可能性は?」
↓
「随伴症状は何か?」
↓
「高齢者はより慎重に」
↓
「足下がふらつくことを、めまいと表現してないかどうか」
↓
「鍼灸が有効な状態のめまいかどうか」
↓
鍼灸による施術
2020年4月時点で、当院では施術に入る前に
このような過程で「めまい」を診ています。
参考文献
・「高齢者救急-急変予防&対応ガイドマップ(JJNスペシャル) 」 岩田充永 医学書院
・「病名がなくてもできること 診断名のない3つのフェーズ」 國松淳和 中外医学社