「食欲不振」「食べられない」で鍼灸院を受診される方へ
結論からとなりますが、
「最初は病院を受診してください」
「当院受診の際は、検査の結果をお持ちください」
理由は「食欲不振」「食べられない」という訴えだけでは
予想される病気が多く、検査で絞り込んでいく必要があります。
それらの病気の中には、すぐに病院での治療が必要なものもあり、
内科以外のものもあります。
「食欲不振」「食べられない」というと胃腸をまず思い浮かべますが、
結核などの感染症や、甲状腺・副腎の異常などの内分泌疾患、
うつ病、パーキンソン病など原因が多岐にわたります。 1回の受診では原因が判明しないこともあります。
繰り返しになりますが、優先順位としてはまずは病院の受診です。
当院が「食欲不振」「食べられない」という訴えにする質問
当院では下記のような質問をしています。
・急にたべられなくなりましたか?
・徐々にたべられなくなりましたか?
・体重は減っていますか、どれくらいの期間にどれくらい減っていますか
・気分の落ち込み、好きだったことへの興味がなくなっていますか
・熱はありませんか
・病院で検査されましたか、どういった検査ですか?
「急に食べられなくなりましたか?」
当院では「急性」の「食欲不振」の方は、今までおられません。
胃腸炎などの消化器系以外にも多くの病気が考えられる訴えですので、
この場合は病院での検査が必要です。「急性」という、いつから症状がはじまっているかは
医師に伝える大事な情報です。
「徐々に食べられなくなりましたか?」
長期にわたる「慢性」の経過の場合です。
血液検査による「炎症所見」の有無で
予想される疾患が異なります。
「炎症所見」がある場合は、その炎症の原因を見つけるための
精査が必要です。炎症を起こしている病気が「食べられなくしている」ことがあります
検査結果などをみせていただき、炎症所見があるようでしたら、
再度病院での検査が必要と考えます。
「慢性」だと「急性」よりなんとなく安心してしまう点もありますが、
原因が特定されておらず、改善してないという点でやはり見直しが必要です。
そして炎症所見がない場合も、他の疾患が考えられます。
胃カメラなど内視鏡などをされているかもお尋ねします。 まだされていない検査があったり、他の病気を疑った場合はやはり病院への受診をお願いすることがあります。
「体重は減っていますか、どれくらいの期間にどれくらい減っていますか」
体重の減った量とその期間がポイントです。ダイエットなどをされていないのが前提ですが、6-12か月で5%以上の体重減少、
または4.5キロ以上の減少が病的な体重減少の目安になります。
食べられるのに体重が減少している場合は、甲状腺疾患や糖尿病などの可能性があります。
「気分の落ち込みが2週間以上続いていますか、 好きだったことへの興味がなくなっていますか」
うつ病などによる食欲低下の可能性を考慮します。
心療内科などの受診歴など患者さんの背景を詳しくうかがっています。
「熱はありませんか」
熱がある場合は、感染症や膠原病などが疑われますのでやはり病院受診が最優先です。
「病院を受診されましたか?」
どのような病院の何科を受診され、検査内容、処方されたお薬
医師から伝えられた内容を確認しています。
当院でも病歴を聴き、様々な可能性を考え、異なる科への
受診をすすめることがあります。
「食欲不振」「食べられない」症状に対する鍼灸での対応
実際には「食欲不振」「食べられない」といった患者さんが
鍼灸院を受診されるときは、もうすでに病院を数件受診されています。
そして「異常はない」と判断され、でも「食べられない」という状態がほとんどです。
そのような状態で、鍼灸でできることがある場合に対応しています。
具体的には「機能性ディスペプシア」や
「一時的な気分の落ち込みによる食欲不振」などをみてきました。
実際の症例については 「腹部症状」 を参考になさってください。
「食欲不振」「食べられない」という訴えの背景には多様な病気があります。
当院では鍼灸による施術をする前に、適切な医療につなげることを
重視しています。
参考文献
・「病名がなくてもできること 診断名のない3つのフェーズ」
國松淳和 中外医学社
・「医療職のための症状聞き方ガイド すぐに対応すべき患者の見極め方」
前野哲博 医学書院