検査で異常がないと診断された吐き気・食欲不振の鍼灸症例

検査で何も異常がないのに、
「吐き気がする」「食べられない」「食べるのが怖い」「食欲がない」
すぐに休める自宅とは違い、仕事での会食の場面や、移動中の急な吐き気は大きなストレスにもなります。鍼灸での一症例ですが、ご参考にになれば幸いです。
*下記症例は患者さんが特定されないよう内容に 変更を加えております。

「検査で異常がないと診断された吐き気の鍼灸症例」

患者
30代、男性

症状
吐き気、下痢、食欲がない

随伴症状
背中のこり、疲れやすい、のどがつまる、頭が痛い

病歴
1年半前から転勤・独居など環境の変化が続く。1年前から1日に数回の吐き気がはじまる。病院では胃内視鏡を受けるが異常なし。服薬するが、あまり変化なく、下痢も続く。
嘔吐、吐血、発熱、貧血、体重減少なし市販薬も使用していたが、体調不良で仕事を休むことも増える。転勤が終わり、1週間前地元の病院を受診、処方された薬が効かない。
2日前に別の病院を受診、血液検査、レントゲンでも異常がない。ここでは違う薬を処方され、少し効果を感じている。
昨日、職場の会食後、お肉を食べた後に気持ちが悪くなり電車を降りることがあった。不安はあるが、外出はできる。
この1年で食事はたべられるものと、気持ちが悪くなるものがわかるようになったので、かなり食べ物の種類を制限している。
発症前にくらべて、麺類だと量が5分の1ほどしか食べられなくなった。

健康状態
睡眠は質・量ともにとれている。趣味などの好きなことはできる。職場などで大きなストレスはなく、体調に対する理解もある

既往歴・家族歴特になし

施術方針
吐き気を減らし、少しずつ食べられるものを増やしていく方針
服薬は中止せず、医師の指示通りに通院すること。一時的に食べられるようになっても、すぐに種類や量を増やさず、慎重になること。体調を診て、食べたいものを1種類ずつ少ない量からチャレンジしていく。
ただし、肉などの脂肪分の多い食べ物へのチャレンジは後半に行う。
症状が再発すると、落ち込む患者さんが多いので、なるべく安定した状態を長く続けることが、自信につながることをくりかえし説明した。

第1回
鍼治療がはじめてのため、弱く、少ない刺激量で行う。背部(胃腸に対応するツボ)に浅刺にて置鍼と電気温灸器を15分行う。首、肩に弱刺激の電気治療を加える。仰向けで、腹部に電気温灸器と弱刺激の電気治療を10分ほど。

第2回(10日目)
前回の治療後1週間は症状が2割減7日目から10日目までは6割減
お肉で気持ち悪くなったことがあるので、脂肪の多いものは避けている。冷たいお蕎麦を1杯食べることができた。自宅では比較的安心して食事ができている。
施術内容は前回に加え、吐き気に「内関」、のどのつまりに「太衝」「合谷」を加える。

第3回(25日目)
一度だけ、少量の赤身肉を食べたとき以外は調子が良い。お昼の外食も種類、量ともに増えてきている。食事の不安感がかなり軽減した。
のどのつまりはなくなる。数日後に職場のプレゼンがあるのが心配。施術内容は前回通り。

第4回(60日目)安定した1か月を過ごす。ケーキなど脂肪分の高いものも食べられるようになった。
プレゼン後も特に症状再燃なし。症状が安定し、不安なくコントロールできているため、施術を終了する。

方針

方針と注意点

「吐き気」「食欲不振」などの症状で鍼灸治療院を最初に訪れる方はあまりおられません。先に病院を受診して、検査・診断・処方を受けている方がほとんどです。

当院でも鍼灸の適応・不適応の判断のために、様々なことを確認しています。
病院への通院は継続をおねがいしています。そのうえで、当院でできることを経験も踏まえてお伝えしています。

施術前半で調子が良くなると、これまで食べられなかった反動なのか、いきなり胃腸に負担のかかるものを食べ始める方が少なくありません。ある程度回復するまでは、「慎重」にというのが当院の方針です。

今回の症例の患者さんは経過が比較的早いほうです。
施術より「食事の仕方」や「睡眠」などの生活リズムがとても大切です。
注意点を何度も繰り返し説明し、ご理解いただくことを重視しています。
腹部の症状に関して下記もご参考ください

機能性ディスペプシア
お腹の張り、痛み、食欲不振:自宅でのお灸を中心とした症例

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