腰痛のタイプ⑤-腰部脊柱管狭窄症

腰痛のタイプ⑤-腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とそのタイプ

「腰部脊柱管狭窄症」は「脊柱管」とよばれる脊柱の中の管が狭くなることによって、そこを通過する神経や周囲の骨、筋肉などの軟部組織との関係が悪化し、様々な神経の症状があらわれるといわれています。
タイプは3つあります。


①馬尾型
下肢、臀部、会陰部に感覚異常がおこります。しびれが特徴で、下肢の脱力感があり、左右両方にあらわれます。痛みは通常ありません。また膀胱の障害があります。(頻回にお手洗いに行きたくなったり、尿が出なかったりなど)。膀胱の症状は患者さん自身に自覚症状がなくても検査で障害がみつかることがあります。そのため、膀胱の自覚症状がなくても、馬尾型の他の症状があるときは、病院への受診を強くすすめます。


②神経根型
下肢、臀部の「痛み」がメインです。左右片側のときもあれば両方のときもあります。まれに痺れがあることもあります。


③混合型
①の馬尾型と②の神経根型の両方が合併したものです。
タイプに関係なく共通する症状に「間欠跛行」があります。歩行や長時間立った状態でいると、下肢にしびれ・痛み・異常感覚などがおこります。前かがみになり、休むと楽になります。自転車やスーパーでのカートを押すなどの姿勢では動くことができるとおっしゃる患者さんが多いのはそのためです。

以上の3つのタイプがあります。画像診断で、脊柱管が狭くなっていても無症状の方がおられたり、狭いままでも保存療法(手術ではない、運動や、湿布や、服薬、ブロック注射など)で良くなる方は少なくありません。

脊柱管が狭いといった要素だけが原因ではなく、周囲の神経への血流障害などが関係しているからと言われています。

腰部脊柱管狭窄症のタイプによる対応の違い

①の馬尾型の場合は、すぐに手術がすすめられます。自然に改善することがほとんどないからです。特に膀胱の機能を守るためにも早期に病院を受診されることを強くお勧めします。手術によって膀胱の障害や間欠跛行などの症状が治りやすいと言われています。しびれは残りやすいようです。

②の神経根型は自然によくなることがあります。病院でも保存療法で様子をみて、症状が改善しないようなら手術の選択を検討しています。

腰部脊柱管狭窄症で残りやすい症状

安静時の症状、下肢末端のしびれは手術をしても残りやすい症状です。腰部脊柱管狭窄症そのものが高齢で発症することが多いことからも、手術時の年齢が高くなり、神経組織の回復に時間がかかることなどが関係しているといわれています。

鍼灸治療でのアプローチ

馬尾型はまずは病院での治療です。神経根型は保存療法の段階、初期から中期は鍼灸治療の適応範囲と思われます。脊柱管が狭くなることを鍼灸で止めることはできません。しかしながら初期から中期の脊柱管狭窄症の症状が鍼灸治療でよくなった事例は当院でもあります。またそういった報告もよく聞きます。

腰部脊柱管狭窄症が神経の圧迫要因だけではなく、周囲の筋肉などの軟部組織が病態に影響し、神経への血流障害がおきていることが症状の要因のひとつであるということを考えると、鍼灸治療による神経根型の初期から中期へのアプローチは可能と考えています

また腰椎の前彎(反り方)が強くなると、腰に負担がかかります。それを避けるために、股関節の可動域の改善や腹部や臀部の筋力維持、背部や腸腰筋、大腿前面のストレッチなども勧めています。


 参考症例:腰部脊柱管狭窄症-半年続く腰下肢痛

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