うつ病と鍼灸-睡眠の大切さ
うつ病と鍼灸、2か月に1度参加している勉強会での今回のテーマでした。
発表者が実際の症例を提示し、参加者全員で「うつ病」だけでなく「薬」や「副作用」の問題、また鍼灸師にできることを意見交換いたしました。
今回の症例は、単に鍼をして症状が改善した内容ではなく、患者さんが抱えている疑問や不安、ご家族や医療者との関係、多剤処方や副作用の問題などを考える貴重な機会となりました。
「薬」の問題点が目立って報道されたりする一方で、「薬」で良くなられた方の報道はあまり目立たなかったり、少なかったりする印象があります。「薬=怖い・悪」のイメージを持つ患者さんは鍼灸院には多いと思うのですが、私がわけを聞いてみると「なんとなく」だったりすることもあります。
これまでも私が患者さんに、いろいろお話を聴いたうえで心療内科の受診を促し、数回の服薬で楽になった方もおられました。「薬」のメリット・デメリットが報道などで並列に扱われて、冷静かつより良い選択を患者さんができる環境が整えばと思っています。
睡眠の重要性(2015.11.18加筆分)
以上の勉強会の内容を書いてから、1年以上経過しますが、「うつ」傾向の患者さんは時折お見えになります。
当院では、患者さんのお話をよく聴いたり、頭痛や肩こりなど、「うつ」傾向の患者さんが訴える症状を鍼灸や、手技で対応しています。
特に生活習慣については、「睡眠」と「食事」については細かく確認していますが、「睡眠」がいかに大切かをあらためて気づかされた経験がありました。
初診時から疲れ切った表情の患者さんは、お仕事でのストレスなどのせいか、平日は夜遅くまで起きており、休日に寝だめをされて、夕方に起床するといった習慣が長く続いていました。お一人暮らしでしたので、食事の内容は偏りがありましたが、食欲はあり、三食召し上がっていました。時折り早朝覚醒や、入眠障害などがあったため「睡眠」に問題があると考えました。
まずは、平日なるべく早く床につき、休日もなるべく平日と同じ時間に起きていただくようアドバイスいたしました。職場環境は簡単に変えられないですが、まずはご自身でできることを。ご自分の力でコントロールしにくい要素にこだわりすぎず、逆に少しの努力でコントロールでき、効果が期待できそうな生活習慣には積極的に取り組んでもらうように促しました。
ご自分でも気づいておられたのか、2か月もすると、随分心身共に楽になられました。食事の内容にも自炊をするなどして積極的に取り組む意欲がわいてこられました。残業などで、たまに睡眠のリズムが変わることもありましたが、「良質な睡眠」がいかにご自身に必要かを気づかれたので、その後はご自身で調整できるようになりました。
先日、書籍「うつの8割に薬は無意味」 (井原裕 著)を読み、「良質な睡眠」と「断酒」がいかに大切かを再確認いたしました。「うつ」にもさまざまな程度があるとおもいますが、前述の患者さんの経験から「睡眠」「食事」「飲酒」などの生活習慣の確認、アドバイスをより適切に行うのが鍼灸師の重要な役割のひとつだと考えました。
文献のご案内
うつ病と鍼灸に関してはイギリスの文献がございます。よろしければご参考になさってください。
・【うつ病と鍼灸】
・[文献]原発性不眠症に対する鍼灸治療の有効性と安全性:無作為化比較試