[文献]原発性不眠症に対する鍼灸治療の有効性と安全性:無作為化比較試験

[文献]原発性不眠症に対する鍼灸治療の有効性と安全性:
無作為化比較試験

Efficacy and safety of acupuncture treatment on primary insomnia: a randomized controlled trial

PMID: 28899535

*自己学習も兼ねて鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので、原文の確認をお願いいたします。

「眠れない」「眠りが浅い」「途中で目が覚める」など、「睡眠」の問題について
患者さんから相談を受けることがあります。
「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」やそれらに伴う問題があるときは、病院を紹介することもしてきました。
一方で、「鍼の施術のあとはよく眠れる」といった感想をいただくこともあります。
今回は比較的「健康な方」を対象にした「原発性不眠症」に対する
鍼灸治療についての文献を紹介いたします。

[目的]
原発性不眠症に対する鍼灸治療の有効性と安全性を評価すること。

[方法]
単施設、単盲検、無作為化対照臨床試験を行った。原発性不眠症患者72名を、
鍼灸治療を受ける鍼灸群と、偽鍼灸治療を受ける対照群の2群に無作為に割り付けた。
治療は週に3回、4週間にわたって行われました。

患者は、2週間ごとに睡眠モニターを装着し、アンケートに回答することを求められ、
合計8週間の治療が行われました。

主要評価項目は、不眠症重症度指数(ISI)であった。
副次評価項目は、アクチグラフィー*¹で記録した睡眠効率(SE)、
睡眠時覚醒(SA)、総睡眠時間(TST)などの睡眠パラメータ、
自己評価式不安尺度(SAS)および
自己評価式抑うつ尺度(SDS)のスコアとした。

[結果]
治療前のベースラインと比較して、両グループの患者は、程度の差こそあれ、
睡眠状態の改善が見られた。

Paired t-test*²の結果、鍼灸群では鍼灸治療の前後ですべての指標に有意差があった。

ベースラインスコアで調整した共分散の一元的分析により、
鍼灸治療群では、治療後2週間(F = 11.3, p = 0.001)、
治療後4週間(F = 33.6, p < 0.001)、
2週間後(F = 39.4, p < 0.001)、4週間後(F = 34.1, p < 0.001)に
ISIが劇的に改善したことが示された。

また、SE、TST、SDSの各スコアにも同様の有意な改善が見られた。治療終了までは両群間でSAとSASに差は見られなかったが、2週間後と4週間後のフォローアップでは、鍼灸治療群でSAとSASの顕著な低下が見られた。

[結論]
鍼灸治療は偽鍼灸治療よりも、不眠症患者の睡眠の質を高め、
心理的健康を改善する効果がある。

[読んでみて]
本文を読んでみると、治療の対象者が18歳から65歳で、循環器系の疾患や、
睡眠時無呼吸症候群、うつ、不安症などを持つ方は除外されています。
高齢者も除外されているので、比較的健康な人を対象にしています。
使用されている経穴は「百会」「神庭」「神門」「三陰交」「安眠」

刺鍼の角度、刺入深度、得気を得るため、回旋・雀琢などを加え、
30分置鍼しています。
これまでの原発性不眠の鍼治療の研究において、治療期間が4週未満であることや、
「得気」を重視していなかったことを問題としています。

その為、この研究では治療期間を4週間、フォローアップを4週間に設定し、
「得気」を重視した内容になっています。

「4週間」という治療期間の設定や、「得気の有無」は鍼灸臨床において、
「不眠」を対象とするときに参考になるかもしれません。今後は「高齢者」や「うつ」など、いわゆる「不眠」になりやすい方に対する鍼灸の効果を検証した研究を探してみたいと思います。

参考記事

うつ病と鍼灸-睡眠の大切さ

*¹ アクチグラフィー:小型の腕時計で、睡眠状態をモニターしています。

*² Paired t-test パラメトリック検定

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