[文献]腋窩神経分布に基づいて鍼治療を行った
頚椎症性神経根症の肩・腕の痛みの臨床研究
[Clinical research of shoulder-arm pain of cervical spondylotic radiculopathy treated with acupuncture based on the axillary nerve distribution]
PMID: 27348908
*自己学習も兼ねて鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので、原文の確認をお願いいたします。
頚椎症性神経根症は、首や肩・腕・指などに痛みやしびれが出る疾患で、
当院でも日常的に出会います。
原因は首、いわゆる頸椎の横からでている神経に炎症が起きることにあります。
原因となる首だけに鍼をして効果がでるときもあれば、首だけでなく、肩・腕などに
鍼をすることもあります。
今回の文献は「腋窩神経」という首から肩・腕にかけて伸びる神経の走行上にある
「ツボ」を使った場合の効果を比較検証した内容です。
[目的]
腋窩神経分布上のツボへの鍼治療と、通常のツボ選択との間で、
頚椎症性神経根症(CSR)に対する有効性の違いを比較すること。
[方法]
頸椎症性神経根症の患者80名を観察群と対照群に無作為に
それぞれ40例に分けた。
観察群では、腋窩神経分布に沿って、肩井(GB 21)、肩貞(SI 9)、
肩髎(TE 14)、肩髃(LI 15)、曲垣(SI 13)、天宗(SI 11)と
頭皮領域のトリガーポイントを選択した。
トリガーポイントにヘグ針*¹を採用し、電気器具で連続波、1Hzの刺激を与えた。
対照群では、大椎(GV 14)、天柱(BL 10)、後谿(SI 3)、華佗夾脊(EX-B 2)を
選択し、通常の鍼で刺激した。
華佗夾脊(EX-B 2)には電気刺激を加え、連続波、1Hzで行った。
鍼の保持時間は2群とも30分、2日に1回の治療を10回行った。
有効性の評価は1回の治療で行った。
治療前後の患者の臨床症状と痛みの程度を採点するために,
日本人学者の田中靖久氏が開発した20点満点のCSRスケールと,
視覚的アナログスケール(VAS)を採用し,両群の有効性を評価した。
[結果 ]
治療後の症状スコアおよびVASスコアは,両群とも治療前に比べて明らかに
改善し(P<0.05,P<0.01),
観察群の結果は対照群よりも良好であった(いずれもP<0.05)。
観察群の総有効率は85. 0%(34/40)であり、
対照群の71. 8%(28/39)より良好であった(P<0.05)。
[結論 ]
頚椎症性神経根症に対する、腋窩神経分布上のツボへの鍼灸治療は、
頸部の通常の鍼灸治療である華佗夾脊(EX-B 2)よりも優れた効果を達成した。
[読んでみて]
この研究では頚椎症性神経根症には頸椎中心の鍼治療よりも、
肩に分布する腋窩神経に沿ったツボを使った方がより効果的という結果でした。
臨床的には頸椎周囲、腋窩神経周囲の両方を私は使っています。
実際に触って硬結や放散痛の有無などを確かめています。
少し気になったのは、この文献で使われているいくつかのツボは
「腋窩神経」の走行上にはなさそうな気もします。
今回の研究は中国のものですが、北欧の鍼を使っていることは初めて知りました。
*¹ ヘグ鍼 北欧のメーカーのディスポーサブル鍼
頚椎症性神経根症の症例は下記を参考にしてください