埼玉県春日部市の鍼灸院 はり・きゅう はりも

〒344-0058 埼玉県春日部市栄町1-279
Tel:048-763-5323
鍼灸

[文献]慢性疼痛に対する鍼治療の効果

薬

 

慢性疼痛に対する鍼治療の効果

 

「慢性疼痛」とは3-6か月を越えて継続する疼痛など、
様々な定義をされています。

 

慢性疼痛は長期にわたる痛みそのものが生活の質を落とします。

また長期にわたる痛み止めの服用が胃腸への負担を招くことがあります。

 

さらに高齢者の場合、痛みによって動くことが少なくなり、
筋力低下を進めてしまうことも考えられます。

下記の論文では背部痛、頸部痛、変形性関節症、慢性頭痛、
肩の痛みを対象としています。

 

プラセボを越える結果である一方で、鍼治療群は非鍼治療群より
優れてはいるのですが、その差異はまだまだそんなに大きい
ものではないという結果になっています。

 

*自己学習も兼ねて、海外論文を紹介する記事です。
誤訳などの可能性もありますので原文での確認をお願いいたします。

 

Acupuncture for chronic pain: individual patient data meta-analysis

 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22965186

(2018.12.9追記)

 

[研究の背景]

慢性疼痛に使われている鍼治療だが、その評価に対しては議論の余地がある。
背部/頚部痛 変形性関節症、慢性頭痛、肩の痛みの4つの痛みを
対象にした鍼治療の効果をみることを目的としています。

 

[方法]

システマティックレビューでランダム化比較試験
17.922人の患者を対象に、31のRCT(ランダム化比較試験)
のうち29を使いメタ分析を行った。

 

[結果]

鍼治療は偽鍼と鍼をささない両方のグループと比較して痛みの
コントロールにおいてすぐれていた。

(P < .001 for all comparisons).

鍼が特に好まれたRCTを除外した後に、その効果の大きさは
痛みの状態を超えて同等であった。

鍼を受けた患者は、背部/頸部痛、変形性関節症、慢性頭痛では
それぞれ
偽鍼群と比較して痛みのスコアが減少していた。
0.23 (95% CI, 0.13-0.33), 0.16 (95% CI, 0.07-0.25),
and 0.15 (95% CI, 0.07-0.24) SDs

非鍼群では.55 (95% CI, 0.51-0.58), 0.57 (95% CI, 0.50-0.64),
and 0.42 (95% CI, 0.37-0.46) SDs.

これらの結果から、出版バイアスとの関連も含めて、
感度分析のばらつきがある。

 

[結論]

鍼治療は慢性疼痛の管理に有効であり、合理的な選択肢である。
実際に鍼を刺した方と、偽鍼との有意差は鍼がプラセボを
超えることを示している。

しかしながら、これらの差は相対的にわずかで、さらに鍼を刺す
という特異的な効果が、鍼の治療において重要な要素に
なっていることを示唆している。

 

[読んでみて]

鍼は偽鍼やプラセボと比べて、背部/頸部痛、変形性関節症、
慢性頭痛に効果が認められるが、その効果の差は意外に少ない
という結果だった。なぜか最初にあげられていた
肩の痛みについては述べられていない。

 

抄録だけなので、どの部位に、どういう鍼を使い、どれくらいの
時間をかけて治療したのかなどはわからない。

背部痛や、頸部痛も多様であり、どういった病態を対象にしている
かがわかれば、鍼を積極的に使うべきか、他の手段を検討する
べきかが参考になると思われる。

 

臨床では痛み止めがあまり効かない方、薬で胃に負担がかかる方
などには喜ばれることがある。

実際に、なかなか痛みが軽減せず、鍼治療でも難しい状態があるのも事実です。
それでも、痛み止めや注射、その他の治療で軽減しなかった痛みが、

私の予想を超えて鍼治療で緩解していくのを目の当たりにすることがあります。

 

関連記事

【文献】慢性の痛みに鍼の効果はどうれくらい持続するの?

 

 

[文献]成人患者の手術後の悪心・嘔吐に対するツボ刺激の効果:メタ分析

文献

 

[文献]成人患者の手術後の悪心・嘔吐に対するツボ刺激の効果:メタ分析

 

Metaanalyses of acustimulations: effects on nausea and vomiting in postoperative adult patients.
 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16781643
 

*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので、原文での確認をお願いいたします。

 

手術後の成人患者に対するツボ刺激(指圧・鍼・電気)の報告です。
当院のような街中の鍼灸治療院では、このような症状の患者さんが
お見えになることは
ほとんどありません。

病院などで活用できる内容でしょうか。

 

[背景]

メタアナリシスを使用して、手術後の成人集団における
悪心および嘔吐症状(NVS)に対するツボ刺激の影響を調べる。

[方法]
 
手術後の成人集団におけるNVS に対する様々な鍼刺激(AS)
(鍼灸、指圧、電気刺激を含む)の影響に関するメタアナリシスを実施した。
 
過去30年間で発表された33のランダム化比較試験(RCT)が
ランダム化と治療法の質を評価することで確認された。
結果は、固定効果モデルを用いて統合されています。
 
[結果]
 
悪心を扱った24の試験、嘔吐を扱った29の試験、
制吐剤を扱った19の試験があった。
 
ツボ刺激群は
悪心  RR = 0.60, 95% CI: 0.54-0.67, P < .0001)
嘔吐  RR = 0.63, 95% CI: 0.54-0.74, P < 0001)
制吐剤 RR = 0.63, 95% CI: 0.54-0.74, P < 0001)
 
薬物群とツボ刺激群で相対危険値において、有意差はなかった
 
一方で薬物群は制吐剤の使用を増やしている面もある。
RR = 2.27, 95% CI: 1.48-3.49, P = .0002). 
 
対照群と比較したときにプラセボ効果があった。
悪心  RR = 0.67, 95% CI: 0.50-0.90, P = .0069) 
嘔吐  RR = 0.39, 95% CI: 0.19-0.80, P = .0106).
 
ツボ刺激群、制吐剤ともに悪心、嘔吐を減らしたとしている。
 
[結論]
 
このメタアナリシスによってツボ刺激は悪心・嘔吐を薬剤と同様に
低下させる可能性がある。
 
指圧は鍼・電気刺激と同じくらい手術後の成人に対して
悪心・嘔吐を減らすのに効果的かもしれない。
 
 
[読んでみて]
 

結論では悪心・嘔吐に対してツボ刺激は薬と同じくらい
効果があるかもしれないことをこのメタ分析は示している。

一方でプラセボもあり、結果だけを単純に受けとれない面も
まだまだあると思われます。

手術後ではありませんが、乗り物酔いなどの悪心に対して、
手首の内側のツボを使用します。

旅行グッズなどでも、乗り物酔い対策でそのツボに近いところに
刺激をあたえるバンドなどをお店で目にします。
指圧と同じように、物理刺激が何らかの効果をもたらしている
可能性がありそうです。

 

参考記事

・検査で異常がないと診断された吐き気・食欲不振の鍼灸症例

[文献]過活動膀胱の症状緩和のための灸の有効性と安全性

トイレ

[文献]過活動膀胱の症状緩和のための灸の有効性と安全性:
ランダム化クロスオーバーパイロット試験

Effectiveness and safety of moxibustion for alleviating symptoms of overactive bladder:
A prospective, randomized controlled, crossover-design, pilot study.


*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので、原文での確認をお願いいたします

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30142847

 

[背景]

この研究は、試験の実現可能性を評価し、過活動膀胱(OAB)の治療に
おけるお灸の潜在的な有効性および安全性を探ることを目的とした。

 

[方法]

ランダム化、クロスオーバー、アセスメント・ブラインドデザインが用いられた

本研究は、韓国の大学病院の外来部で実施された。研究期間は8週間であった。
参加者はグループAまたはグループBのいずれかに無作為に割り当てられた。

グループAの参加者は、最初の4週間に行動訓練と8〜12回の灸を受け、
グループBの参加者は行動訓練のみを受けた。

次の4週間にわたって、2つの群に与えられた治療は逆転された。
(グループAの参加者は行動訓練のみを受け、一方、
グループBの参加者は行動訓練との灸を受けた)

 

結果を評価するために、OABで検証された8つの質問の認識ツール(OAB-V8)、
OABの症状スコア(OABSS)、下部尿路症状の視覚アナログスケール(VAS)
および頻度排尿チャートを使用した。

分析のために、 Hedge’s g*¹として測定された効果量、群間差を示す結果を提示した。

 

[結果] 

グループBと比較して、グループAの前半4週間の効果量は、
OAB-V8*²が-0.248,OABSS*³が-1.531、VASが-0.713であった

後半の4週間では、グループBは、A群と比較して、
それぞれOAB-V8が 0.465、OABSSが1.207, VASが0.427であった。

お灸をすることで、夜間の排尿量は減少(g = -0965) 、
平均排尿量(g = 0.690)は増加、
排尿頻度(g = -0.498)が低下した。

 

[結論]

灸は過活動膀胱に対する代替手段としてと考えられるかもしれない。
フルサイズのランダム化比較試験は、アウトカム測定値と比較母集団に
おける最小限の調整で実行可能であり得る。

 

[読んでみて]

 

「関元」「三陰交」「太衝」の3つのツボに間接灸を行っています。

文中の「行動訓練」とは「排尿と膀胱の定期的なトレーニング
(トイレへ行く間隔を徐々に増やす)に関する指示、
コーヒー、紅茶、アルコール、ソーダ、人工甘味料、チョコレート、
スパイシーな食品を避けることを示しています。

 

この研究はパイロット研究であり、参加者が全員女性であること、
プラセボの可能性を完全に除外できていないことなどが研究の
限界として示されています。

将来のランダム化比較試験のベースラインとなるデータという
位置づけとなっています。

 

*1 Hedge’s g:効果量を示す指標

*2 OAB-V8:8項目過活動膀胱アンケート

*3 OABSS:過活動膀胱チェックシート

 

せんねん灸

 

 

 

 

 

 

 

【文献】慢性疼痛と心血管疾患との関係の評価:システマティックレビューとメタ分析

 

慢性疼痛と心血管疾患との関係の評価:
システマティックレビューとメタ分析

Assessing the relationship between chronic pain and
cardiovascular disease: A systematic review and meta-analysis

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28850537

 

慢性疼痛と心血管疾患との関連性を調査した報告です。

 

*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので、原文での確認をお願いいたします。

 

[背景]
 

慢性疼痛は、身体機能および生活の質を下げ、3人に1人に
障害をもたらしています。

慢性疼痛の心理社会的影響は既に明確であるが、
潜在的な生物学的影響についてはほとんど知られていない。

 
慢性疼痛は、心血管疾患の罹患率の増加との関連や、
腰痛、骨盤痛、神経因性疼痛、線維筋痛を含む広範囲の
慢性疼痛状態との関連性が指摘されています。
 
研究の目的は、慢性疼痛と心血管疾患との関連についてのエビデンスを
再検討し要約することです。

用量反応勾配#¹(痛みが強いほど、心血管疾患を増加させる)の根拠と、
この関連性にもたらす潜在的交絡因子の程度を評価することで、
関連の質を明確にしようとしました。
 
 
[方法]
 
主な電子データベースMEDLINE、EMBASE、Psychinfo、Cochrane、
ProQuest、Web of Scienceを検索し、
慢性疼痛(3ヶ月以上存在する1つ以上の身体部位の疼痛)および
心血管疾患(心血管死亡率、心臓病、および脳血管疾患)の関連の強さを
報告した文献を調査した。
 
 
慢性疼痛と主に3つの心血管疾患のアウトカムとの関連性を分析して
データを収集するために、メタ分析を使用した。
痛みの重症度の影響、および潜在的交絡因子の役割を物語的に探求した。
 
 

[結果]

調査では11,141件の研究が検索され、
うち25件が基準をクリアし、レビューに含まれています。
 
メタ分析(調整されていない研究結果の)は、
以下のように統計学的に有意な関連を示した。
 
 
慢性疼痛と心血管疾患による死亡率  
統合オッズ比 1.20(95%信頼区間1.05-1.36)
 
慢性疼痛および心疾患        
統合オッズ比 1.73(95%信頼区間1.42-2.04)
 
慢性疼痛および脳血管疾患      
統合オッズ比 1.81(95%信頼区間1.51〜2.10)
 
 
体系的レビューでは、用量反応関係を裏付ける証拠が見られ、
痛みの強さと範囲がが強くなると、心血管疾患のアウトカムとの
関連が強くなった。

すべての研究において、慢性疼痛分類、研究方法と研究集団で
かなり異なる観察データに基づいており。
 
これらの研究は、潜在的に交絡する変数の調整において一貫性がなく
不十分なアプローチであり、交絡変数の調整後のデーを集めることが
できなかったため、これらの関連性に因果関係があると結論づけることはできない。
 
 
[結論]

 我々の調査は、様々な国の観察研究によって、慢性疼痛と心血管疾患との
間に可能な用量反応型の関連があることを示唆している。
そのような研究は交絡因子の影響を十分に除外できることができなかった。
 
因果関係がより明確になるよう、広範囲による人口ベースの
縦断研究が現在必要とされている。
 

[意義]

 先進国および途上国における慢性疼痛の罹患率が高いことを考えると、
今回の報告は意義深いが、公衆衛生においてまだ広く周知できていない。

慢性疼痛における生物学的な悪影響についてより知ることが、
地域、国内、グローバルレベルにおける慢性疼痛の負担を
減らすために有益かもしれない。

 

[読んでみて]

慢性疼痛と心血管疾患による死亡、心疾患、脳血管症障害との
関連性が示唆されているが、交絡因子を十分に除外できてないため、
さらなる研究が必要と結論づけている。
 
鍼灸師としては痛みの軽減を図り、こういった心疾患などのリスクを
少しでも軽減することが求められる役割ですね。

 

#¹ 用量反応勾配:観察研究の結果を高め、エビデンスの質をあげるもの
 


 

アメリカでの鍼治療における10の適応症

アメリカ

米国で最も扱われた鍼の適応症状:横断研究

The Most Commonly Treated Acupuncture Indications in the United States:
A Cross-Sectional Study.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30298749

 

アメリカで鍼治療がどのような症状に対してよく
利用されているかを調査した報告です。

 

*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので、原文での確認をお願いいたします。

 
 
鍼治療は、数十年にわたって米国で人気のある代替医療です。
 
鍼の疼痛に対する治療効果は、基礎および臨床研究の両方に
よって検証されており、現在は疼痛に対して、
オピオイドとは対照的に、薬を使わない選択肢としてあります。
 
しかしながら、鍼治療適応の全容はまだ未解明です。
 
 
本研究では、米国の私立診療所における鍼治療適応の
上位10位と99位の症状を調査のため、
全国の419人の鍼治療医の間で横断調査を行った。
 
 
トップ10の適応症は
「腰痛、うつ病、不安、頭痛、関節炎、アレルギー、
一般的な痛み、女性の不妊症、不眠症、頸部痛と五十肩」

 
 
上位99の適応症のうち、疼痛が最も大きなカテゴリーである。
また精神的健康管理、特に気分障害などで最も需要が高い。
 
その他には、免疫系機能不全、胃腸疾患、婦人科
および神経科症状などが続きます。
 
さらに、専門指標、共通指標、および医療専門分野となる
可能性が各適応症について評価されています。
 
 
人口学的分析では訓練された中国の鍼灸師がより広範囲の適応疾患に
対応できる傾向があるが、扱われる上位の症状は主に現地の
ニーズによって決定されます。
 
また、性別、居住国、年齢および臨床経験はすべて
症状分布に影響を与えています。
 
本研究のデータは米国において、鍼治療で扱える症状の概要を
示しており、鍼灸の訓練、健康管理、公的な教育の計画を行う際に有益である

 

[読んでみて]

「痛み」に対して鍼治療が最も活用されている点はおそらく
日本と同じと思いますが、「うつ病」「不安」などメンタルの
分野での利用が目を引きます。

[文献]過敏性腸症候群を治療する鍼の有効性:メタアナリシス

文献

 

過敏性腸症候群に対して鍼の有効性を研究した文献のご紹介(メタアナリシス)

Effectiveness of acupuncture to treat irritable bowel syndrome: a meta-analysis.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24587665

 

*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので、原文での確認をお願いいたします。

 

過敏性腸症候群は数か月以上、便秘や下痢などを頻回に伴い、
腹痛などお腹の調子が悪くなる状態が続くものです。

排便後は楽になり、排便の回数の変化があり、便の性状も変化します。

鍼が過敏性腸症候群に有効かどうかを示したメタアナリシスを紹介いたします。


[目的]

過敏性腸症候群(IBS)に対する鍼の有効性を
ランダム化比較試験のメタアナリシスで評価すること。


[方法]

MEDLIINE、PubMed、Scopus、Web of Science、
Cochrane Central Register of Controlled Trialsから、
過敏性腸症候群の管理における鍼治療の有効性を調査した
1966年から2013年2月までの二重盲検、プラセボ対照試験を調査した。


[結果]

6つのランダム化プラセボ対照試験が基準を満たし、
メタアナリシスに含まれていました。

論文の改訂Jadadスコア#¹は> 3であり、
5つの記事は高品質であった

異質性#²を分析し、これらの研究がメタ分析において
異質性を引き起こさなかったことがわかった。

BeggのテストではP = 0.707、EggerのテストではP = 0.334となり、
メタアナリシスには出版バイアスはなかった
(Begg検定、P = 0.707; Egger検定、P = 0.334)

フォレストプロットからは、ひし形(◇)は垂直線の右側にあり、
交差しませんでした

鍼による臨床的改善のプールされた相対リスクは
1.75(95%CI:1.24-2.46、P = 0.001)であった

STATA11.0とRevman5.0の2つの異なるシステムを使用して、
我々は過敏性腸症候群の治療に対する鍼治療の有意な有効性を確認した。

 

[結論]

鍼は、過敏性腸症候群の臨床的及び統計的に有意なコントロールを示唆する

 

[読んでみて]

結論では過敏性腸症候群に対して、鍼は優位と示されています。

しかしながらフルテキストを読んでみると、まだまだ治療法の
第一選択としては不十分で、
長期的な効果としては認められて
いないと最後に示されています。

その理由に過敏性腸症候群に対する鍼のメカニズムの不明な点や、
論文のサンプルサイズ、方法と期間の不一致などがあげられています。

 

#¹ Jadadスコア:臨床試験の質を評価するもの。3点以上で質が高いとされる

#² 異質性:メタ分析の解析結果の誤差、ばらつき

 

 

 

【文献】安定した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の栄養状態に及ぼす鍼治療の効果:ランダム化比較試験・COPD鍼治療の再解析

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【文献】安定した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の
栄養状態に及ぼす鍼治療の効果:
ランダム化比較試験・COPD鍼治療の再解析

Effects of acupuncture on nutritional state of patients
with stable chronic obstructive pulmonary disease (COPD):
re-analysis of COPD acupuncture trial, a randomized controlled trial.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30355325

 

*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので、原文での確認をお願いいたします

日本の大学での研究報告です。一部の新聞でも記事が掲載されていたようです。

 

 

[背景]

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は全身性疾患であり、
体重減少が顕著な症状であるというエビデンスが増えている。

我々は栄養状態の経過に焦点を当てて、COPD患者の栄養状態と
以前の介入研究における予後に及ぼす鍼治療の効果について調査した。

 

[方法]

 現在の研究は、2012年に発表された以前の介入試験である
COPD鍼治療試験(CAT)の再分析である。
 
COPD鍼治療試験(CAT)のデータは、栄養状態、
炎症バイオマーカー、および予後の観点から再解析された。
 
栄養状態は、体重、体組成、筋力の測定、
血清中のレチノール結合タンパク質(RBP)、
プレアルブミン(PA)、トランスフェリン(Tf)、
ヘモグロビン(Hb) (COHb)、高感度C反応性タンパク質(Hs-CRP)、
高感度腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン6(IL-6)、
および血清アミロイドA(SAA)などの炎症バイオマーカーが含まれる。
 
 
BODE指数#¹は、予後に関して測定された。
 
これらの測定値は、実際の鍼治療グループ(RAG)と
プラセボ鍼治療グループ(PAG)の間で比較された。
すべてのデータは、平均(SD)または平均(95%CI)として示される。

ベースラインと最終体積の差を、共分散分析#²(ANCOVA)を
用いて比較した。さらに、Spearmanの順位相関係数#³を用いて、
栄養学的血液検査スコアと炎症バイオマーカーパラメーター間との相関を評価した。

 
 
[結果]
 
12週間後の体重変化は、PAGと比較してRAGにおいて有意に大きかった
(PAGにおけるRAG対0.5 [1.4]のベースラインからの平均[SD]差2.5 [0.4];
群間の平均差:3.00 、95%CI、ANCOVAで2.00~4.00)。
 
RAGの患者はまた、栄養血液検査(RBP、PA、Tf、Hb)、
炎症バイオマーカー(TNF-α、IL-6、SAA、Hs-CRP、COHb)
およびBODE指数において改善を示した。

 

[結論]

この研究は、鍼治療がCOPD患者の栄養状態を改善するための
有用な補助療法となりうることを明確に示した。
 
 
[読んでみて]
 
COPDの患者さんに対する鍼治療によって、偽鍼治療よりも体重や
栄養状態において改善がみられたという報告でした。

興味深い内容ですので、近日中にフルテキストを読んで追記したいと考えております。
 
 
[追記]

使用している経穴は
「中府、太淵、扶突、関元、中脘、足三里、太谿、完骨、肺兪、脾兪、腎兪」

5-25ミリ刺入し、50分間の施術中に時計回り、
反時計回りに3-4分鍼を回旋している。

 

 
 
#¹:BODE指数:COPD患者の死亡リスクを予想する評点法
#²:共分散分析(ANCOVA):共変数の影響を除いて平均値を比べる方法
#³:Spearmanの順位相関係数:統計学における相関の指標
 

【文献】小児の過活動膀胱に対する経皮電気鍼刺激

小児の過活動膀胱に対する経皮電気鍼刺激:パイロット研究 

Percutaneous electrical stimulation for overactive bladder in children: a pilot study.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30414712

 

*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので原文での確認をお願いいたします。

小児の過活動膀胱に対して、仙骨部に電気鍼を使った報告です。

 

[目的]

小児の過活動膀胱(OAB)を治療するため、週1回の経皮的電気鍼神経刺激(PENS#¹)
の有効性(耐性および安全性)を評価すること。
 
 
[方法]
 
OABのため、PENSを受けた4〜14歳の子どもの前向き症例。
 
仙骨神経刺激のために、S3を左右対称に鍼が行われた。
 
OABを有する18人の子供は、毎週PENSを20週間受けた。
周波数は10Hzであった。
 
強度は、参加者が許容でき、運動閾値に達することない範囲で、
最大10mAまでとした。パルス幅は600μs。
 
患者の排尿履歴を、構造化アンケートを用いて治療前に評価した。

機能不全排尿スコアリングシステム(DVSS)#²は、
下部尿路機能不全の症状を定量化するために、治療の前後に用いられた。
 
ビジュアルアナログスケール(VAS)を用いて治療結果を評価した。
 
 
[結果]
 
参加者は7人の男児と11人の女児(平均年齢、7.82±2.45歳)。
 
VASでは、症状は66%の患者で解決された。
 
ベースライン時のすべての小児にあった尿意切迫感は、
84%で解決された(P = 0.001)。
 
尿意切迫感のない無意識の失禁を有する患者の割合は、
治療前の77%から27%に減少した(P = 0.04)。
 
失禁は、治療後16人の患者のうち13人で解決された(P = 0.001)。
 
ベースライン時に頻尿のあった12人の小児のうち1人だけが、
治療後に病状を訴えた(P = 0.04)。
 
すべての症例で再発性尿路感染が解消した(P = 0.001)。

夜間夜尿症に関しては、14人の小児のうち9人で治療が成功した(P = 0.004)。

 
 
[議論]
 
この新しい方法の背景にある理論は、鍼を使用することで
皮膚の電気抵抗を克服し、電極の先端と仙骨神経との間がより近いことで、
週1回の治療で仙骨の経皮的電気神経刺激と同等のメリットを
もたらす十分な刺激量となり、より効果的な刺激となる。
 
 
[結論]

経皮的電気神経刺激は、短期間にわたりOABの有効かつ安全な治療で
あると思われる。さらに、対照群を用いた研究が必要である。

 

[読んでみて]

パイロット研究(予備研究)のため、今後本格的な研究に移っていくのかもしれません。

そのため、患者数も18名と小規模の研究です。

しかしながら、尿意切迫感や夜尿症などの症状に改善が見られている点が
参考になります。

結論にもあるように、皮膚表面、皮膚以下の組織との刺激を比較することで、
効果の違いがみられるとより興味深いと思われます。

 

#¹ PENS:経皮的電気鍼刺激:鍼通電による神経刺激の手法。
TENSは皮膚にパッドを貼る電気刺激、PENSは鍼を2か所に刺し電気刺激を行うもの

#² DVSS:小児下部尿路症状に対する公的な質問票

[文献]慢性重症便秘患者における鍼治療反応に関連する要因:ランダム化比較試験の二次解析

慢性便秘重症患者における鍼治療反応

[文献]慢性重症便秘患者における鍼治療反応に関連する要因
ランダム化比較試験の二次解析

Factors related to acupuncture response in patients with chronic severe functional constipation: Secondary analysis of a randomized controlled trial.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29166673
 
*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。誤訳の可能性もありますので、原文での確認をお願いいたします。
 
慢性便秘症は年齢を問わず、つらい症状です。高齢者は排便がうまくいっているかが
日常生活にとっては大きな要因となります。

慢性便秘症に対して、電気鍼の効果を左右する要因についての報告を下記に紹介いたします。
 
 
背景
 
 鍼治療は、慢性重症機能性便秘(CSFC)に対して
効果的かつ安全であることが示されている。
しかし、鍼治療によってどのような患者が改善するかはまだ明確ではありません。
 
 
目的

CSFC患者の鍼治療に関する因子を探ること
 
 
方法
 
CSFC患者を電気鍼のグループと偽の電気鍼治療グループに
ランダムに分け、2週間の追跡期間、8週間の治療、
12週間の治療なしのフォローアップからなる
多施設ランダム化比較試験の二次解析を行った。
 
反応者は、ベースライン期間と比較して、第20週に少なくとも
1回の完全自発排便(CSBM)が増加した参加者と定義された。
 
両群のCSBM反応者率が記述され、潜在的に鍼治療に関わる参加者の
ベースライン特性は、ブートストラップ法を用いた
ロジスティック回帰分析を用いて主に分析された。
 
 
結果

この研究で合計1021人の参加者が分析され、そのうち516人(50.5%)が
反応者として分類された。
.
20週目のCSBM反応者率は、電気鍼治療群が偽電気鍼治療群よりも
有意に大きかった(62.9%対37.9%、P <0.001)。
 
年齢と併存疾患の両方が臨床的反応と負の相関を示した。
1年ごとに、臨床的反応の可能性は1.2%低下した
(OR 0.988,95%CI 0.980-0.996; P = 0.005)

併存疾患のある患者は(OR 0.581,95%CI 0.248〜0.914; P = 0.001)、

治療に反応する可能性は約42%低かった。
 
 
結論
 
加齢および併存疾患を有するCSFC患者は、鍼治療に応答する
可能性が低い可能性がある。
 
これらの知見は、治療前の患者の選択に関して診療の指針となる。
この関連性を確認するためにさらなる研究が必要である。
 
 
 
読んでみて
 
慢性便秘の患者に対して、電気鍼の効果を左右する要因を探した研究報告。
 
この研究では偽の電気鍼よりも電気鍼のほうが有効であったようだ。
効果が乏しくなる要因を「加齢」と「併存疾患」と結論付けている。
 
日常診ている患者さんの中にも便秘を訴える方は多く、食事、運動、
水分摂取など様々な方法で対応しています。
 
この研究でもあるように、年齢を重ねると便秘がちな方は多く、
鍼治療に反応しにくい方がおられます。
 
一方で、便秘に少しでもいい効果があると、
こちらが思っている以上に喜ばれます。

特に高齢者に対する便秘の影響は経験上見過ごせないので、
必ず「食事」、「睡眠」、「排便」については頻繁に確認しています。

 
便秘に対してさらに改善できるよう、今後も試行錯誤していきたいと思います。

 
 

[文献]慢性の痛みに鍼の効果はどのくらい持続するの?

 

effect


慢性疼痛患者に対する鍼の効果の持続性についての文献紹介(メタアナリシス)

The persistence of the effects of acupuncture after a course of treatment: a meta-analysis of patients with chronic pain.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27764035

*自己学習も兼ねて、海外論文を紹介する記事です。
誤訳などの可能性もありますので原文での確認をお願いいたします。

 

[背景]
 
鍼の効果が持続する期間については明確ではないのが現状
 
[目的]
 
慢性疼痛に対する鍼施術について、質の高い無作為化試験からの
大規模な個々の患者データを使用し、鍼施術後の疼痛スコアの
軌道を定めることを目的とした。
 
 
[対象]
 
利用可能な個々の患者データは、29回の試験および17,922人の患者に及びます
慢性疼痛状態には、筋骨格痛(背中、首、肩)、
膝の変形性関節症、および頭痛/片頭痛が含まれています。
 
メタアナリシス技術を使用して、施術後の疼痛スコアの軌道を定めた。
6376人の患者を含む20件の試験では、長期間のフォローアップに
関するデータが利用できた。
 
 
[結果]
 
鍼施術と鍼を使用しない施術(待ちリスト、通常のケア、など)を比較すると、
施術の終了後では、3か月ごとの計測でエフェクトサイズは減少し、
0.011と有意差がない(95%信頼区間:-0.014 to 0.037 P = 0.4)
中央値は、鍼の効果の約90%は対照群と比較して12ヶ月持続することが
示唆されている
 
鍼と偽鍼との比較試験では、3ヶ月毎で0.025 SD
(95%信頼区間:0.000-0.050、P = 0.050)の効果サイズの減少が観察され、
12ヶ月で約50%の減少が示唆された。

慢性疼痛患者に対する鍼の効果は、12ヶ月時点で大幅な減少は見られない
 
 
[結論]
 
患者は一般的に施術効果の持続により安心できる。鍼の費用対効果の研究は
効果の持続時間を考慮して、今回の調査を考慮に入れるべきである。
さらなる研究は、鍼施術の長期的なアウトカムを測定すべきである。
 
 
[読んでみて]
 
鍼の効果の持続性は、患者さんを拝見していても千差万別です。
 
初診時や経過観察中の状態、施術による反応、今までの事例や
経験も踏まえて、当院での見通しを伝えるようにしています。

慢性疼痛のように、長期の痛みは患者さんの病態や心理・社会的背景が
複雑であることも多く、良くも悪くも見通しが早い場合や遅い場合があり、
予測しにくいことがあります。
 
フルテキストを読んでみると、腰痛、ひざ痛、肩の痛み、頭痛、片頭痛、
変形性関節症、頸部痛の慢性疼痛が対象となっていますが、
例外的に慢性の
頸部痛における鍼の効果は経時的に減少傾向がみられる結果となっています。

なぜ頸部痛だけが減少傾向なのかは書かれていません。

さらなる研究が必要と記されています。

経験的には少しでも「運動」など、身体を動かされている方の
ほうが経過が良い気がいたします。