【文献】慢性疼痛と心血管疾患との関係の評価:システマティックレビューとメタ分析

慢性疼痛と心血管疾患との関係の評価:
システマティックレビューとメタ分析

Assessing the relationship between chronic pain and
cardiovascular disease: A systematic review and meta-analysis

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28850537

慢性疼痛と心血管疾患との関連性を調査した報告です。

*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので、原文での確認をお願いいたします。

[背景]

慢性疼痛は、身体機能および生活の質を下げ、3人に1人に
障害をもたらしています。

慢性疼痛の心理社会的影響は既に明確であるが、
潜在的な生物学的影響についてはほとんど知られていない。

 
慢性疼痛は、心血管疾患の罹患率の増加との関連や、
腰痛、骨盤痛、神経因性疼痛、線維筋痛を含む広範囲の
慢性疼痛状態との関連性が指摘されています。
研究の目的は、慢性疼痛と心血管疾患との関連についてのエビデンスを
再検討し要約することです。

用量反応勾配#¹(痛みが強いほど、心血管疾患を増加させる)の根拠と、
この関連性にもたらす潜在的交絡因子の程度を評価することで、
関連の質を明確にしようとしました。
 
[方法]
主な電子データベースMEDLINE、EMBASE、Psychinfo、Cochrane、
ProQuest、Web of Scienceを検索し、
慢性疼痛(3ヶ月以上存在する1つ以上の身体部位の疼痛)および
心血管疾患(心血管死亡率、心臓病、および脳血管疾患)の関連の強さを
報告した文献を調査した。
慢性疼痛と主に3つの心血管疾患のアウトカムとの関連性を分析して
データを収集するために、メタ分析を使用した。
痛みの重症度の影響、および潜在的交絡因子の役割を物語的に探求した。
 

[結果]

調査では11,141件の研究が検索され、
うち25件が基準をクリアし、レビューに含まれています。
メタ分析(調整されていない研究結果の)は、
以下のように統計学的に有意な関連を示した。
 
慢性疼痛と心血管疾患による死亡率
統合オッズ比 1.20(95%信頼区間1.05-1.36)
慢性疼痛および心疾患
統合オッズ比 1.73(95%信頼区間1.42-2.04)
慢性疼痛および脳血管疾患
統合オッズ比 1.81(95%信頼区間1.51〜2.10)
 
体系的レビューでは、用量反応関係を裏付ける証拠が見られ、
痛みの強さと範囲がが強くなると、心血管疾患のアウトカムとの
関連が強くなった。

すべての研究において、慢性疼痛分類、研究方法と研究集団で
かなり異なる観察データに基づいており。
これらの研究は、潜在的に交絡する変数の調整において一貫性がなく
不十分なアプローチであり、交絡変数の調整後のデーを集めることが
できなかったため、これらの関連性に因果関係があると結論づけることはできない。
 
[結論]

 我々の調査は、様々な国の観察研究によって、慢性疼痛と心血管疾患との
間に可能な用量反応型の関連があることを示唆している。
そのような研究は交絡因子の影響を十分に除外できることができなかった。
因果関係がより明確になるよう、広範囲による人口ベースの
縦断研究が現在必要とされている。
 

[意義]

 先進国および途上国における慢性疼痛の罹患率が高いことを考えると、
今回の報告は意義深いが、公衆衛生においてまだ広く周知できていない。

慢性疼痛における生物学的な悪影響についてより知ることが、
地域、国内、グローバルレベルにおける慢性疼痛の負担を
減らすために有益かもしれない。

[読んでみて]

慢性疼痛と心血管疾患による死亡、心疾患、脳血管症障害との
関連性が示唆されているが、交絡因子を十分に除外できてないため、
さらなる研究が必要と結論づけている。

鍼灸師としては痛みの軽減を図り、こういった心疾患などのリスクを
少しでも軽減することが求められる役割ですね。

#¹ 用量反応勾配:観察研究の結果を高め、エビデンスの質をあげるもの
 

 

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