慢性疼痛に対する鍼治療の効果
「慢性疼痛」とは3-6か月を越えて継続する疼痛など、
様々な定義をされています。
慢性疼痛は長期にわたる痛みそのものが生活の質を落とします。
また長期にわたる痛み止めの服用が胃腸への負担を招くことがあります。
さらに高齢者の場合、痛みによって動くことが少なくなり、
筋力低下を進めてしまうことも考えられます。
下記の論文では背部痛、頸部痛、変形性関節症、慢性頭痛、
肩の痛みを対象としています。
プラセボを越える結果である一方で、鍼治療群は非鍼治療群より
優れてはいるのですが、その差異はまだまだそんなに大きい
ものではないという結果になっています。
*自己学習も兼ねて、海外論文を紹介する記事です。
誤訳などの可能性もありますので原文での確認をお願いいたします。
Acupuncture for chronic pain: individual patient data meta-analysis
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22965186
(2018.12.9追記)
[研究の背景]
慢性疼痛に使われている鍼治療だが、その評価に対しては議論の余地がある。
背部/頚部痛 変形性関節症、慢性頭痛、肩の痛みの4つの痛みを
対象にした鍼治療の効果をみることを目的としています。
[方法]
システマティックレビューでランダム化比較試験
17.922人の患者を対象に、31のRCT(ランダム化比較試験)
のうち29を使いメタ分析を行った。
[結果]
鍼治療は偽鍼と鍼をささない両方のグループと比較して痛みの
コントロールにおいてすぐれていた。
(P < .001 for all comparisons).
鍼が特に好まれたRCTを除外した後に、その効果の大きさは
痛みの状態を超えて同等であった。
鍼を受けた患者は、背部/頸部痛、変形性関節症、慢性頭痛では
それぞれ偽鍼群と比較して痛みのスコアが減少していた。
0.23 (95% CI, 0.13-0.33), 0.16 (95% CI, 0.07-0.25),
and 0.15 (95% CI, 0.07-0.24) SDs
非鍼群では.55 (95% CI, 0.51-0.58), 0.57 (95% CI, 0.50-0.64),
and 0.42 (95% CI, 0.37-0.46) SDs.
これらの結果から、出版バイアスとの関連も含めて、
感度分析のばらつきがある。
[結論]
鍼治療は慢性疼痛の管理に有効であり、合理的な選択肢である。
実際に鍼を刺した方と、偽鍼との有意差は鍼がプラセボを
超えることを示している。
しかしながら、これらの差は相対的にわずかで、さらに鍼を刺す
という特異的な効果が、鍼の治療において重要な要素に
なっていることを示唆している。
[読んでみて]
鍼は偽鍼やプラセボと比べて、背部/頸部痛、変形性関節症、
慢性頭痛に効果が認められるが、その効果の差は意外に少ない
という結果だった。なぜか最初にあげられていた
肩の痛みについては述べられていない。
抄録だけなので、どの部位に、どういう鍼を使い、どれくらいの
時間をかけて治療したのかなどはわからない。
背部痛や、頸部痛も多様であり、どういった病態を対象にしている
かがわかれば、鍼を積極的に使うべきか、他の手段を検討する
べきかが参考になると思われる。
臨床では痛み止めがあまり効かない方、薬で胃に負担がかかる方
などには喜ばれることがある。
実際に、なかなか痛みが軽減せず、鍼治療でも難しい状態があるのも事実です。
それでも、痛み止めや注射、その他の治療で軽減しなかった痛みが、
私の予想を超えて鍼治療で緩解していくのを目の当たりにすることがあります。
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