埼玉県春日部市の鍼灸院 はり・きゅう はりも

〒344-0058 埼玉県春日部市栄町1-279
Tel:048-763-5323
胸郭出口症候群

腕のしびれ(胸郭出口症候群):電気ていしんを使った症例

電気ていしん

 

腕のしびれ(胸郭出口症候群):電気ていしんを使った症例

 

鍼灸院である当院にお見えになる方でも、
「なるべく鍼をしないでほしい」「鍼が怖い」
おっしゃられることがあります。

治療後にはおもったほどの刺激ではなかったと
言われることがほとんどなのですが、
患者さんの様々な負担を少なくする必要があります。

少しずつではありますが、「電気ていしん」の活用で
治療内容の幅を広げて行きたいと思っています。

 

「電気ていしん」は患者さんの自覚する刺激感はかなり低いです。
使い方にもよりますが、ご家庭の低周波治療器よりも低い電圧を使って
施術にあたっています。

*この症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております。

 

腕のしびれの電気ていしん症例

患者:60代、男性

主訴:左肩甲骨、腕のしびれ

現病歴

1か月前から左肩甲骨内側にしびれが出始めた。

現在は左腕、前腕の外側にしびれを感じる。
指は明確な場所はわからないが、全体的にぼわーっとした感じがある。

左肩甲骨の内側上部に痛みを感じる。頸肩こりは常にある。
買い物袋を下げた時に症状が出たり、悪化することはない。

運転の仕事をしているが、1時間に数回しびれが起こる。
ハンドルを握っていると左腕の重だるさを感じる。

運転に支障があるので、少し休みをもらっている。

左肘を枕にした横向き姿勢で休むことが多かったが、
いまはつらくてしていない。腕は上にあげることができる。
就寝中に痛みはない。

20年前に交通事故で左から右にかけて衝突されるが、
後遺症は特にない。

寝違いで1年前に整形外科に行ったことがある。

血圧は服薬でコントロール。循環器系の既往はない。

 

身体診察

ルーステスト(+)、左後頸部・側頸部の緊張が強い。
肘・手首圧迫によるしびれの増悪はない。腕橈骨筋に強圧痛あり。

 

鑑別疾患

・肩関節疾患:しびれがあり、上肢拳上可のため除外
・胸郭出口症候群牽引型:買い物袋を持つなどの上肢下垂位で悪化しないため除外
・頸椎症性神経根症:上肢のだるさなどはないが、
          左上側臥位などの頸部圧迫姿位などもあるため、合併も考慮。

 

診断

「胸郭出口症候群圧迫型」:上肢の重だるさ、
ハンドルを持つときの中間姿位、
ルーステスト(+)などから判断。

ダブルクラッシュは身体診察から現時点では考えにくい。

 

施術とその経過

初診

腹臥位にて、第4.5.6頸椎椎間関節、風池、天柱に40㎜-18号で置鍼10分。

硬結残存部位を旋捻、雀琢。側臥位にて、「電気ていしん」後頸部、
肩上部に0.03mA-1.1Hzにて10分。仰臥位にて扶突に置鍼10分。
治療回数を3-4回の見込みと説明。肘枕で休むことは避けていただく。

 

2診(7日目)

左後頸部、側頸部の緊張がまだ強い。しびれはまだ残っている。
施術は前回同様。

 

3診(14日目)

前回治療後少しだるさがあったとのこと。鍼の数を減らして、
「電気ていしん」中心の治療に切り替える。

後頸部の硬い部分をひとつずつ柔らかくなるのを確認して、
軽く手でマッサージを加えると大きく変化あり。
側頸部の扶突は15分置鍼。

 

4診(21日目)

しびれが大幅に減り、運転が気にならないようになる。
後頸部の「電気ていしん」を先に行い
残存部位のみ鍼で旋捻、雀琢、軽いマッサージ。

 

21日間、治療回数4回、特に3回目以降症状が落ち着きました。

上肢のしびれとして、経過は妥当だと思われます。

後半は電気ていしんを中心とした治療に変更したことで、
鍼の数を少なくすることができ、患者さんの負担も減らせました。

電気ていしんは、体の中に刺すことなく、皮膚、筋肉、
血管などにアプローチでき、循環改善に効果的です。

鍼に抵抗のある患者さんもおられため、当院の新たな手段として
これから活用範囲を広げていきます。

通常の鍼と電気ていしん、お灸、手技をうまく使い分けて、
患者さんの症状改善をより早く、負担の少ない治療内容に
日々刷新していきたいと考えております。

 

2019.6 現在の電気ていしんの使用について

この報告をかいてから2年と少しが過ぎましたが、現在では電気ていしんは
当院の施術で欠かせないものになりました。

それによって、2年前のこの症例についても、
現在ではアプローチ方法が変わっています。

患者さんの負担を減らすだけでなく、鍼灸だけでは難しかった
症状や、鍼と併用することでより問題点が明確になるなど
「浮腫み」を中心に活用の幅が広がっております。

 

左腕の痛み-胸郭出口症候群牽引型(鍼灸施術症例)

左上肢の痛み

左腕が痛い:胸郭出口症候群牽引型(鍼灸施術症例)

肩こりや、腕の重だるさの原因となる
「胸郭出口症候群」という病気があります。

実は「胸郭出口症候群」にはタイプがいくつかあります。

今回はそのタイプを判断するのに、時間がかかってしまった反省症例です。

*この症例は患者さん個人が特定されないよう内容に変更を加えております。

 

胸郭出口症候群-牽引型:鍼灸施術症例

患者 48歳、男性
 
7,8年前から続く左腕の痛みを訴えて来院した。
25年前に前腕外側を叩かれて、打撲したのが原因だと思っている。
毎年冬になると痛くなるが、今年は特に痛いので何とか治したい。
 

主訴 左腕の痛み

 現病歴 
25年前に前腕橈側部(外側)をかなりの強さで叩かれた。
7,8年前から、毎年冬にだけ左肩外側から上腕後外側、前腕橈側部にかけて
ズーンとした痛みがある。
 
今回は3ヶ月前から寒くなり、例年より今年の冬は痛みが強い。
動いていると気にならないが、じっとしていると痛みを感じる。
 
仕事は建設業だが、力仕事はあまりしない。
仕事中ではなく、休憩時間につらくなる。
入浴や温湿布で楽になる。温湿布は就寝中もしている。
 
病院には行っていない。マッサージはその時だけ楽になる。
 
随伴症状は左後頚部から左肩にかけてこりがある。
うがい、シャツの着脱で痛みはない。上肢のしびれ、重だるさはない。
手指にしびれはない。夜間痛はない。
 
 
一般健康状態
食欲、睡眠、排便、排尿は正常。体重の変化はない。
2,3日前から風邪気味で体温はよくわからない。
 
アルコールは1日に焼酎を2,3合、日本酒を1合。
タバコは1日に15本。風邪のため、葛根湯を服用。
 
既往歴 特記すべきことなし。
家族歴 特記すべきことなし。
 
身体診察 
身長160cm 体重62,3  ルーステスト(-)上肢の外転(正)
頚部後屈・左回旋による上肢の痛み(+)
右回旋(-)左前腕橈側、 
左上腕後外側、ツボ「三頚、四頚」に圧痛が検出された。 握力40kg(左右とも)
 
 
初診診断   頚椎症性神経根症
根拠          
  1. 頚部の動きで腕の痛みが再現するため。
  2. 頚椎の椎間関節に圧痛がある。
  3. 鑑別診断            
胸郭出口症候群
  1. 上肢の痛みの性状が「重だるさ」ではない。
  2. ルーステストが陰性である。
肩関節疾患       
  1. シャツの着脱で痛みがない。
  2. 上肢外転が可能である。
  3. 施術とその経過
 
 
鍼灸施術

第1回
主訴である上肢の痛みを経過の指標とする。

全てステンレス鍼、40㎜18号を使用。ツボ「天柱、風池、三頚、四頚、
扶突、曲池」に直刺、置鍼10分。「五頚、六頚」は単刺。百会に糸状灸3壮。
 
他、全身施術。生活指導は、就寝時に頚部にタオルを巻く、
頚部まで湯船につからない、低反発の枕はさけるよう伝えた。
また、だるさが出る可能性も伝えた。

3回(10日目)
Pain Scale(上肢の痛み) 10→8 施術内容は変更せず。
背臥位から坐位になった時に上腕後外側に痛みが出る。
頚に負担がかからないか確認したところ、
仕事中にヘルメットを着用していた。

4回(14日目)

痛みの程度に変化がない。上腕部に「重だるさ」が加わる。
坐っているときに腕を下に垂らすと、上腕後外側に痛みが再現される。

背臥位でも胸に手を置くと楽になるが、ベッドに垂らすと痛みが再現される。
以上の事から、見直しを行った。
 
再診断
 
再診断:「胸郭出口症候群 牽引型」

根拠         

  1. 上肢下垂位で痛みが誘発する。
  2. 胸に手を置くと楽である。
  3. 性状に「重だるさ」が加わっている。
  4. 圧迫型はルーステスト(-)の為除外できる。
 
身体診察 
軽いダンベルを上肢下垂位で保持すると症状が増悪。
「兪府」「屋翳」「中府」のツボ圧痛が認められる。
「 兪府」「屋翳」「中府」に切皮で置鍼15分の施術を追加。
買い物袋などを下げないようにしてもらう。
 
第5回(17日目)
Pain Scale 8→7 施術後、坐位で痛みが再現しない。

7回(26日目)
Pain Scale 7→6 坐位で、手を下に垂らしても上腕に症状が現われない。
前腕も気にならなくなってきた。

 第8回(31日目)
仕事後もピリピリした感じがない。ツボ「扶突」の鍼は上肢にひびくように刺鍼、
20分置鍼。
 
第10回(42日目)
Pain Scale 6→0 施術は前回同様。
 
第11回(48日目)
痛みがない状態を維持しているため施術を終了する。
 

症例のポイント

  1. 病歴ではなく所見を重視すると誤診につながる。
  2. 頚部の動きで上肢症状が誘発されても頚椎症性神経根症とは診断できないことがある

 

考察

 
施術回数は10回42日目で症状消失。
 
「圧痛、頚部の動き」といった所見だけで診断したためで、
再診断までに時間がかかっています。
 
病歴で、「休憩中に腕を上げているのか」「重い荷物を持った時はどうなのか」
「腕を組むと楽なのか」などを確認しておけば
早期に胸郭出口症候群・牽引型の診断ができ、
適切な施術、生活指導が十分可能な反省症例でした。
 

一般的に胸郭出口症候群は牽引型の方が、圧迫型より施術回数がかかる傾向があるように思えます。

 

腕を引っ張られるような日常動作、
「買い物袋、ごみ袋をさげる、散歩中の犬にひっぱられる、腕をおろしている」
しびれるなどの症状があった場合は胸郭出口症候群・牽引型の可能性を疑います。

この記事の最初の写真のように
「肘を伸ばした状態、さらに荷物をもった状態」
負担となりますので、お気を付けください。

肩こりの原因「胸郭出口症候群」

肩こりの原因「胸郭出口症候群」



「胸郭出口症候群」について

 当院の患者さんでも比較的多い「胸郭出口症候群」

あまり聞きなれないかもしれませんが、
「肩こり」の原因のひとつとされ、
当院では鍼灸が適応しやすい疾患と考えています。

 

「胸郭出口症候群」とは

「肩こり」の原因のひとつとされています

 
首から出ている神経の束(腕神経叢)が肩を経由し、
腕から手に走っています。
 
その神経の束が3つのトンネルで圧迫・牽引されて、
「だるさ」「しびれ」「痛み」などの神経・血管障害を
生じるのが「胸郭出口症候群」です。

 
-どのような人に多いのか-
 

・なで肩、猫背などの姿勢で、腕をあげて作業をしている、
   事務作業をしている中年女性に特に多くみられます。

・女性と男性では、3:1で女性が多くなります。

 

-どのような症状なのか-
 
・腕のだるさ、痛み、しびれ、肩甲骨周囲の痛み、
   肩こりなどがあります。

・腕の内側にしびれがでやすい。
 (*鎖骨下筋と第一肋骨の間で腕神経叢の下神経幹に
       含まれる尺骨神経領域を絞扼する為。)

・しびれが長期にわたると、小指の筋肉に萎縮がみられる。

・首、腕、肩、背中の症状以外に、頭痛、立ちくらみ、不眠、胃腸障害、
 全身倦怠感などの不定愁訴、自律神経障害を伴うことがあります。
 
 Exit

「胸郭出口症候群」の仕組み

 
「首から出ている「腕神経叢」の圧迫・牽引が原因となります」
 
1)「腕神経叢」とは
 
「腕神経叢」は頸椎5番から胸椎1番の際から出ている神経の束で、
腕の「動き」「感覚」をつかさどっている神経の束のことです。
 
この「腕神経叢」が「絞扼部位」(神経をしめつけやすい「トンネル」)を
通過します。

「トンネル」は3つありますが、「トンネル」の状態になんらかの
異常があると症状がでます。
 
 
2)「3つのトンネル」で神経がしめつけられます
 
①斜角筋隙

首の側面にある「前斜角筋」、「中斜角筋」、「第1肋骨」で
構成されたトンネル。
「斜角筋三角」ともいいます。
 
頸部の疲労が蓄積し、この2つの筋肉の緊張が進むと、
トンネルの中が狭くなり、「腕神経叢」を圧迫します。
つまり、筋肉の緊張が神経の圧迫につながります。
 
腕神経叢」とともに、「鎖骨下動脈」という血管も圧迫されます。
鎖骨下静脈」は圧迫されません。
 
この部位で圧迫された状態を「斜角筋症候群」といいます。
 
「斜角筋症候群」の場合では、肩甲骨周囲(肩甲上神経、肩甲背神経、長胸神経)に
分布する神経も圧迫されるため、
「上肢」だけでなく、
「肩甲骨周囲」にも鈍痛などの症状がでます。
 
 
②肋鎖間隙

肋骨と鎖骨で構成された「骨」のトンネル
なで肩の場合、鎖骨が下がり、トンネルが狭くなります。
「腕神経叢」と「鎖骨下動脈」、「鎖骨下静脈」も通過し、圧迫されます。
 
この部位で圧迫された状態を「肋鎖症候群」といいます。
 
③小胸筋下間隙

「烏口突起」という肩甲骨の骨の一部が鎖骨の下、胸の前まででてきています。
そこからでている「小胸筋」と「烏口鎖骨靭帯」 
(「鎖骨」と「烏口突起」をつなぐ靭帯 )がトンネルを形成しています。

小胸筋の過緊張や、腕を外側にあげる「肩の外転運動」をしたときに、
「腕神経叢」と「鎖骨下動・静脈」が上に引っ張られ、
向きを変えると圧迫が強くなります。
 
これを「過外転症候群」といいます。
 
日常生活では「つり革を握る」「洗濯物を干す」など、
腕を上げた姿勢で誘発されます。
 

3)「ダブルクラッシュシンドローム」:神経の重複障害
 
ひとつの神経が2箇所で障害されることを
「ダブルクラッシュシンドローム」といいます。
 
「胸郭出口症候群」と「手根管症候群」、
「肘部管症候群」など両方が同時に起きる場合があり、
「胸郭出口症候群」の30-44%を占めるといわれています。
 
 
4)タイプは「圧迫型」と「牽引型」の2つ
 
以上、「胸郭出口症候群」は3つのトンネルで圧迫・牽引される可能性があります。
 
圧迫される「胸郭出口症候群・圧迫型」
腕が下方に引っ張られた状態で症状が誘発する「胸郭出口症候群・牽引型」があります。
 
これは買い物袋を手にもって下げているようなとき、
ひどいときは腕の重みだけでつらくなるときがあります。
 
 
 

「病歴」による確かめ方

 
牽引型・圧迫型に当てはまる日常生活での病歴があります

1:牽引型

  「腕を下げたり、引っ張られたりするとつらい」
 
寝るときバンザイする、胸に手を置く、肘を机や肘掛けに置く、腕を組むと楽。
重い荷物を持ったり、犬の散歩などで悪化。臥位で軽快、立位・坐位で悪化する。

 

 

 

 

 

 

2:圧迫型

  「腕を長時間挙げているとつらい」

つり革につかまると腕がだるい、洗濯物を干すのがつらい。
歯磨き・ドライヤー・シャンプー、髪の毛をセットするのがつらい。
細かい手の作業が多い。バイク、自転車に乗る、長時間パソコンに向っている。
ガラス窓を拭く、黒板を使うなどで増悪する。リュックサックで悪化。
 
事務職、経理職、運転手、美容師、教師の方に多い。

 

 
 
 
 
 
 
 
 

-診断-

①日常生活の中で症状の増悪がどんなときにおこるのか。
 上肢挙上位、重いものを持ち上がる、中間姿勢など

②診察時の各テスト法や特定の姿勢、肢位での痛みが日常生活で
 感じている痛みと同じものであるかのチェック(再現性のチェック)

③圧迫型、牽引型、混在を考える。

④ダブルクラッシュシンドロームも考える

⑤他の類似症状がでる疾患の除外・鑑別を行う(頸椎症など)
 
  

鍼灸施術の中身

 
当院での鍼灸施術の中心は「腕神経叢」に対する圧迫要素を
取り除くのが第一です。
 
「斜角筋」「胸鎖乳突筋」「肩甲挙筋」「小胸筋」など、
頸椎、肩甲骨、鎖骨、胸椎、上腕骨、肋骨に付着する「筋肉」を
鍼治療で緩め、
肩甲骨を正常な位置に戻していきます。
 
「斜角筋」で圧迫されているケースがほとんどですが、
「斜角筋」だけゆるめても、あまり効果はありませんし、
長持ちしません。
 
後頚部と側頚部の硬結を丁寧に触診し、鍼でゆるめます。
胸鎖乳突筋と斜角筋への、長めの置鍼をします。

肩甲間部痛には肩甲背神経の圧迫を考え、第5頚神経と中斜角筋を狙っています。 

首への負担が長期にわたる方は、首全体がむくんでいるので、
後頚部を中心に「電気ていしん」を使用すると、より早く首全体の
緊張がとれる感触があります。

運動については、症状が8割程度消失してからおすすめしています。
あまり筋緊張が強い状態で、運動をするとより緊張を強めて
悪化した経験があるかたです。
 
ストレッチは、治療初期からすすめています。
 
 症状が末端の指先まであると回復期間を要します。
首から上腕までより、首から上腕、前腕、手指まで症状が出ている方が
重度と判断します。

「痛み」や「重だるさ」などが「しびれ」よりも先に回復していく
傾向があります。

あとは、治療と並行して「腕神経叢」を圧迫・牽引する頻度を
日常生活でいかに減らせるかがポイントとなります。

 
 
 
 

姿勢との関係

 
いかり肩:「圧迫型」が多いとされます。斜角筋の過緊張がみられます
    →斜角筋を緩める必要があります。
 
なで肩:「牽引型」が多いとされます。背部の筋の筋力低下から、
    肩甲骨を正しい位置に保持できず、
肋鎖間隙や、小胸筋下間隙が狭くなります
   →背部の筋力強化、前胸筋群のストレッチなどで、肩甲骨を正常な位置に戻す
    必要があります。
 
 

生活指導


「日常生活にある症状を悪化させる習慣をさけるのが基本です 」
 
・枕の確認
・圧迫や牽引が加わらない肢位を取っていただく。
・重量物の挙上や荷物を下げる動作を軽減する。
・就寝時首にタオルを巻く
・胸郭を開くストレッチ
・長時間の上肢挙上位は避ける。
 
 
肩こりの原因の一つである「胸郭出口症候群」は日常生活の中に、
症状を誘発する要素が多くあるのがお分かりになられたかと思います。
 
当院では鍼灸施術で効果が得られやすい病気だと考えています。

より具体的に知りたい方は、下記症例をご参考になさってください。
 

 

「胸郭出口症候群」の鍼灸治療症例

後頸部、肩背部、腕の重だるさ-胸郭出口症候群
腕のしびれ(胸郭出口症候群):電気ていしんを使った症例
腕・指のしびれ-胸郭出口症候群-手根管症候群
左上肢の痛み-胸郭出口症候群牽引型


 

身体診察(専門的な内容です)

 
*ルース・テスト感度78%・特異度99.5%
*エデンテストは頚部の神経根も緊張させる。
*スパーリングテストも頚椎神経根症では特異度90%だが、TOS患者でも7割が陽性
 
*圧痛部位が「圧迫型」か「牽引型」の区別をする指標となる

「腕神経叢圧迫症状」ルース・テストの肢位、鎖骨上窩の圧痛、
            放散痛。肋鎖間隙の圧迫による症状誘発が認められる

「腕神経叢牽引症状」斜角筋三角上方部に放散痛を伴う、圧痛が認められる。

 

*腕神経叢の障害部位によって症状が変わる

1)腕神経叢神経幹部(斜角筋部)での障害

1        上位神経幹:頸から肩にかけての痛み。斜角筋三角上方部でチネル徴候陽性。
  四辺形間隙部に圧痛がある。

2        下位神経幹:前腕と環指・小指の痛みとしびれがあり、斜角筋三角下方部で
  チネル徴候 陽性。重症例では骨間筋の萎縮があるが稀である。


2)腕神経叢神経幹側部(肋鎖間隙から小胸筋部)での障害

鎖骨上窩または烏口突起下でチネル徴候が陽性である。

1        内束の障害:上腕、前腕と環指、小指の痛みとしびれがある。

2  外束の障害:鎖骨下から胸部の痛み、母指、示指、中指掌側の
   痛みとしびれがある。

3        後束の障害:上腕、上腕骨外側上顆の疼痛と圧痛があり、

母指、示指、中指背側の痛みとしびれがある。

 
3)腕神経叢終末枝での障害

肩甲上神経と腋窩神経の刺激症状が多い。肩外転・外旋時の易疲労感、

四辺形間隙の圧痛がある

 
上記にあげた病歴と身体診察で圧迫型、牽引型の区別ができ、症状によって
障害部位を推定可能。それに
よって治療点も変わります。
 

 

-その他-

・上肢の冷感は、血管圧迫説と自律神経説とあり文献によって異なります。
・症状部位は文献によって多彩、頭部から頚部、上肢、体幹など
 

-参考文献-

・「運動器疾患のなぜ?がわかる臨床解剖学」 医学書院 2012
・「関節外科 胸郭出口症候群の診断と治療 vol26 No8 2007」 メジカルビュー
・ 「関節外科 vol 17 No5」 1998
・「脊椎脊髄ジャーナル 胸郭出口症候群と脊椎脊髄疾患との鑑別診断 vol16」 2003
・「モダンフィジシャン vol 20 No 4」 2000
・「Orthopaedics  1994 6」
・「新・図説臨床整形外科口座 頚椎・胸椎・胸郭 メジカルビュー 1995 10」
・「医道の日本 2009 5月号」(胸郭出口症候群と鍼灸治療)
 
 

後頚部、肩背部痛、腕の重だるさ-胸郭出口症候群(鍼灸症例)

後頚部、肩背部痛、腕の重だるさ
胸郭出口症候群(鍼灸症例)

 

頸・肩こりは鍼灸院で出会う一般的な症状のうちのひとつです。
「肩こり」といっても、原因は様々です。

下記の症例では「胸郭出口症候群」という耳慣れない
言葉がでてきますが、「肩こり」の原因の一つとされています。

 

鍼灸症例

この症例は患者さんが特定されないよう、一部変更を加えてあります。

 

患者 

34歳、介護職の女性が左の後頚部、肩背部の痛みとこり、
左腕の重だるさを訴えて来院。

人が相手の仕事のため気疲れしてしまうことが原因と思う。
以前に顎が開かなくなったときに、鍼治療で改善した経験が
あるので受診した。

主訴 左の後頚部、肩背部の痛みとこり、左腕の重だるさ

 

現病歴

小学生の時から現在まで慢性的に頚、肩こりがある。

今回は1ヶ月前から左の後頚部から肩甲骨上角にかけて、
突っ張った痛みやこり、重だるさがある。

症状は現在も変わらず続いている。

坐っていても頚が重たくなり横になりたくなる。
家庭用のマッサージ機を使うと楽になる。

介護職のため、体重の重い高齢者をベッドから起こしたり、
支えたりした後や気疲れ、緊張などで症状が悪化する。

また頚部を左に回旋すると痛みが増す。日常生活では、
歯を磨く、シャンプーをする、ドライヤーをかける動作で
左腕が重だるくなる。

うがいによる症状はない。上肢にしびれはない。
夜間痛、安静時痛はない。 

一般健康状態

食欲、睡眠は正常。排便は正常。
アルコール、タバコは嗜まない。

 

身体診察

身長158㎝ 体重47㎏

診断   胸郭出口症候群(圧迫型)

 

根拠   

  1. 歯ブラシ、シャンプーなど上肢挙上位で症状が誘発している。
  2. 仕事で体重の重い高齢者をベッドから起こした後に、悪化している。
  3. 痛みの性状が「重だるさ」である。

 

鑑別

頚椎症性神経根症   

うがいで症状が誘発されない。
痛みの性状が「重だるさ」であって、鋭い痛みではないので除外

 

鍼灸施術とその経過

主訴である、頚、肩背部の症状軽減を目的とした。
また仕事での気疲れなどについても考慮し治療を行った。

 

第1回 

全てステンレス鍼、40㎜18号を使用。天柱、風池、六頚に直刺1,5㎝、
扶突に直刺2cm、太陽、完骨、曲池、膈兪、腎兪に斜刺5㎜で15分置鍼。

目の周囲、胸部、腹部に散鍼。糸状灸を百会、胸椎棘突起間に各3壮、
懸釐、頭維、和髎、足三里に各1壮。

また、循環改善の為、就寝時に頚部にタオルを巻くことを勧めた。

 

第2回(4日目)


頚肩背部の症状は少し楽になった。ストレッチのパンフを渡す。

遠方の為、一旦終了。

 

第3回(80日目)  


左右の頚、肩背部にこり、張り感がある。歯ブラシ、シャンプー、
ドライヤーなどの使用で、症状は再現しない。ストレッチは続けている。

食欲、睡眠も正常である。胸郭を広げるストレッチを勧めた。

 

症例のポイント

年齢、性別、仕事内容、症状を誘発する日常生活動作などから
「胸郭出口症候群と判断できます。

「胸郭出口症候群」は女性に多く、介護職という仕事柄「胸郭」に
負担がかかることがわかります。

またシャンプーや歯磨きといった「胸郭」に負担のかかる
誘発動作によって、よりその可能性を強めています。

今回の患者さんは遠方よりお見えだったこともあり、 
治療頻度をうまく保つことができませんでした。

しかしながら3回目で日常生活動作から誘発される痛みが
改善されているのは、ストレッチが貢献しているのではと感じています。

 

 後頚部、肩背部痛、腕の重だるさ-胸郭出口症候群