後頚部、肩背部痛、腕の重だるさ-胸郭出口症候群(鍼灸症例)

後頚部、肩背部痛、腕の重だるさ胸郭出口症候群
(鍼灸症例)


頸・肩こりは鍼灸院で出会う一般的な症状のうちのひとつです。「肩こり」といっても、原因は様々です。
下記の症例では「胸郭出口症候群」という耳慣れない言葉がでてきますが、「肩こり」の原因の一つとされています。

鍼灸症例

この症例は患者さんが特定されないよう、一部変更を加えてあります。

患者 
34歳、介護職の女性が左の後頚部、肩背部の痛みとこり、左腕の重だるさを訴えて来院。
人が相手の仕事のため気疲れしてしまうことが原因と思う。以前に顎が開かなくなったときに、鍼治療で改善した経験があるので受診した。

主訴
左の後頚部、肩背部の痛みとこり、左腕の重だるさ

現病歴
小学生の時から現在まで慢性的に頚、肩こりがある。
今回は1ヶ月前から左の後頚部から肩甲骨上角にかけて、突っ張った痛みやこり、重だるさがある。症状は現在も変わらず続いている。
坐っていても頚が重たくなり横になりたくなる。家庭用のマッサージ機を使うと楽になる。介護職のため、体重の重い高齢者をベッドから起こしたり、支えたりした後や気疲れ、緊張などで症状が悪化する。

また頚部を左に回旋すると痛みが増す。日常生活では、歯を磨く、シャンプーをする、ドライヤーをかける動作で左腕が重だるくなる。
うがいによる症状はない。上肢にしびれはない。夜間痛、安静時痛はない。 



一般健康状態
食欲、睡眠は正常。排便は正常。アルコール、タバコは嗜まない。

身体診察
身長158㎝ 体重47㎏

診断   胸郭出口症候群(圧迫型)

根拠   

  1. 歯ブラシ、シャンプーなど上肢挙上位で症状が誘発している。
  2. 仕事で体重の重い高齢者をベッドから起こした後に、悪化している。
  3. 痛みの性状が「重だるさ」である。

鑑別
頚椎症性神経根症   
うがいで症状が誘発されない。
痛みの性状が「重だるさ」であって、鋭い痛みではないので除外

鍼灸施術とその経過
主訴である、頚、肩背部の症状軽減を目的とした。また仕事での気疲れなどについても考慮し治療を行った。

第1回 全てステンレス鍼、40㎜18号を使用。天柱、風池、六頚に直刺1,5㎝、扶突に直刺2cm、太陽、完骨、曲池、膈兪、腎兪に斜刺5㎜で15分置鍼。
目の周囲、胸部、腹部に散鍼。糸状灸を百会、胸椎棘突起間に各3壮、懸釐、頭維、和髎、足三里に各1壮。
また、循環改善の為、就寝時に頚部にタオルを巻くことを勧めた。

第2回(4日目)
頚肩背部の症状は少し楽になった。ストレッチのパンフを渡す。
遠方の為、一旦終了。

第3回(80日目)  
左右の頚、肩背部にこり、張り感がある。歯ブラシ、シャンプー、ドライヤーなどの使用で、症状は再現しない。ストレッチは続けている。
食欲、睡眠も正常である。胸郭を広げるストレッチを勧めた。


症例のポイント

年齢、性別、仕事内容、症状を誘発する日常生活動作などから「胸郭出口症候群」と判断できます。
「胸郭出口症候群」は女性に多く、介護職という仕事柄「胸郭」に負担がかかることがわかります。

またシャンプーや歯磨きといった「胸郭」に負担のかかる誘発動作によって、よりその可能性を強めています。今回の患者さんは遠方よりお見えだったこともあり、 治療頻度をうまく保つことができませんでした。
しかしながら3回目で日常生活動作から誘発される痛みが改善されているのは、ストレッチが貢献しているのではと感じています。

 

 

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