埼玉県春日部市の鍼灸院 はり・きゅう はりも

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往診

急性腰痛(ぎっくり腰)と往診について

急性腰痛(ぎっくり腰)と往診について

急性腰痛は本当に突然、何のきっかけもなく激しい痛みが
襲ってくることも多く、大半の方はなんとか当院まで来院なさいます。

時に、ご自宅のトイレに行くことも困難な状態の方からは
往診のご依頼をお受けすることがあります。

 

昨年も数件、ご依頼があり往診に伺いました。
寝返りひとつするのも一苦労で、ご家族の方も車に乗せて
病院につれていくこともできず、困っておられました。

やはり来院できない状態ですから、症状も強いケースがほとんどでした。

それでもほとんどの急性腰痛は、症状は激しいですが、
楽になっていく期間もまた短いのがひとつの傾向です。

 

余程まれなケースでない限り、数回の鍼治療で変化が実感できるのが
急性腰痛の病態の特徴です。

鍼灸は様々な疾患を対象としていますが、
関節、筋肉が原因の急性腰痛に対しては、自然経過よりも早い緩解が
見込める有効な治療手段であると実感しています。

特に発症初期の対応を間違ってしまうと、痛みが強くなったり、
痛む期間が長くなってしまうことがあります。

よくやってしまうのが、「お風呂」です。
温めて治そうとして炎症が強くなり、かえって痛みを増してしまいます。

 

そのほかにも、注意点がいくつかりますので、下記の記事を参考にしてください。

 →「ぎっくり腰になった時に知っておいてほしいこと」 

 

具体的な症例については、 「症状と症例」でもご案内しています。

 

 

 

 

鍼灸往診症例①:肩の痛み-腱板断裂

鍼灸往診症例①:肩の痛み-腱板断裂

 

当院では往診による鍼灸施術および手技療法を行っています。

保険適応での往診施術は、自力で来院できない状態の
患者さんが対象となります。

今回は往診の症例を紹介いたします。

 

*下記症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております。

 

鍼灸往診症例

 

患者:80才代、女性

主訴:右頚、肩、腕の痛み

 

受診動機

4か月前から右肩の痛みが良くならない。
寝たきりになりたくないため。

 

病歴 

4か月前に自転車で転倒。右頚と肩を強打する。
整形外科を受診。
頚はカラーで固定、肩は痛み止めを服用。
湿布、注射などの治療を受けた。

レントゲンでは骨折は認められない。血液検査も異常がない。

医師には「寝たきりになることは覚悟してください」と言われる。

痛みのため、付き添いを伴う病院への通院以外では外出してない。

 

現在、頚はある程度よくなったが、肩の痛みが取れない。
腕も上げられず、シャツを着るのが大変。料理をしようとするが、
包丁を持てない。寝ていても痛く、寝返りも打てない。

だからといって起き上がると、腕の重みで痛くなるので、
左手で右腕を支えなければならない。しびれはない。

頚を動かすと頚に痛みはあるが、肩の痛みは強くならない。

独居のため、今まで家事すべてをひとりでやってきた。
痛くなってからは家の片づけができず、散らかっているのを
見られたくないため友人を家に呼んでいない。

 

身体診察


右上肢挙上不可。 熱感あり。発赤あり。 軋轢音あり。
肩関節や上肢に圧痛、硬結が多数認められる。

頸部右回旋で第5.第6頸椎付近に痛みあり。

 

診断とその根拠


腱板断裂:①外傷歴 ②上肢拳上負荷 ③軋轢音 ④しびれがないこと

 

目的


①痛みをとること ②家事など生活動作ができるようになり、
寝たきりにさせないこと 

肩の痛みだけでなく、二次的な筋力低下や、日常生活の制限、
社会とのかかわりが減ることが予想されるので、それらを防ぐこと。

 

鍼灸施術とその経過

 

初診

軽く触れるだけでも痛みが強いため、
弱めの刺激で始める。右上側臥位で肩関節周囲に浅い鍼で10分程度。
お灸は熱感が強いため行わない。

 

2回目(3日目)

痛みはあるが、胸の高さまで腕はあがる。鍼の本数を少し増やす。

 

3回目(7日目)

施術に慣れてきたので、頸の方にも施術を開始する。
熱感などの炎症所見は引いてきた。左手で支えると右腕は目の高さまで上がる。
他動での拳上ができるので、腱板断裂の可能性がさらに高まる。

 

5回目(14日目)

デイサービスに行くことを決意。外出できる気分となる。
夜の痛みが減り、睡眠の質が上がる。

 

6回目(20日目)

強い熱感が引いたので、お灸を併用。姿勢がうつ伏せでも
肩の痛みがでなくなる。

軋轢音はまだ少しある。

 

10回目(45日目)

腕は左手で支えなくても、頭の上まで上げられるようになる。
痛みが1.2割となり、拘縮予防を目的として自分でできる体操などを指導。

掃除機をかけるなどの比較的力が必要な家事もできるようになってきた。

肩、頚の痛みが落ち着き、自宅での日常生活はご自分でできるようになった。

転倒防止のための足の運動や、バランスを保つ体操などをアドバイスした。

その後は、調子の悪いとき、予防のためなど、必要に応じて施術を行い。

お一人での近隣への買い物や、庭いじりなどができるまでに回復なさいました。

 

往診施術を終えて

初診時から痛みが強く、独居による日常生活の不安や、
足腰の筋力低下などによる寝たきりなどの問題がありました。

腱板断裂と思われるこの症例は、本当に痛みが強く、
動きの制限もあることで日常生活に多大な支障をきたします。

座ったり起き上がると、腕の重みで痛みが強くなり受診が困難なため
往診で施術をいたしました。患者さんは鍼灸の経験があったため、
施術自体への抵抗がなかったのが幸いでした。

 

ご高齢にもかかわらず、痛みの原因や自分でできることを知りたい
治したいという意志が強かったことが回復につながったと思います。

炎症所見が引いてからのお灸の併用が、より可動域の改善に
貢献したと実感しています。ある程度痛みがおさまってくると、
拘縮予防や転倒予防などの運動を提案しています。

 

往診の良いところは、患者さんの住環境やご家庭にあるものを使って、
直接アドバイスできることです。

また床を這う電源コードや、じゅうたんとフローリングの境目など
ちょっとした危険な要素に対して注意を促すことができる
のは往診の利点だと考えています。

 

 

鍼灸往診症例②:転落事故後の腰痛

鍼灸往診症例②:転落事故後の腰痛

往診を依頼される患者さんの病態は複雑なことがほとんどです。

患者さんの意欲と協力のもと、当院でもお役にたてたと
思われる症例がありましたので、下記にご案内いたします。

 

*下記症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております。

 

往診症例

患者:80代 男性
主訴:腰痛・背部痛

受診動機

自分でお灸をしてから調子がいいので、
お灸で痛みを和らげてほしい。

 

病歴
 
10年前に仕事で転落事故にあう。腰、背中の手術をし成功したが、
入院中の投薬ミスで動けなくなってしまった。

 

1年間その病院で治療をするが回復せず、他院や温泉療養など
様々な治療を試した。1年前に転倒し、5か月間脇腹を痛めた。

それまでも転倒による骨折が数回ある。信頼する医師からアドバイスで、
日中はなんとか座位を保つようにしている。歩行器を使った歩行も
かなり難しくなってきている。

 

投薬ミスや、信頼する医師が地方に行ってしまうなど
医療への不満が強くなる。

自分でお灸をしたところ、調子が良いので、数名の鍼灸師に
往診を頼むが、弱すぎて効かなかったり、逆に熱すぎて火傷の跡が
残ってしまった。

鍼は過去に受けたことがあるが、あまり効かなかったので、
お灸を希望される。

 

夜間痛、足のしびれ、体重減少などはない。発熱なし、便秘気味。

大きな病気は腰、背中の手術のみ。内科疾患はない。
食欲、睡眠も正常。なんとか元気になりたいという意欲も
十分ある。血圧、便秘の薬を服用中。

 

身体診察

高齢であること、骨折歴があること、手術などから円背状態。
歩行器を使用するとゆっくりと歩ける。
長期間、病院以外へは外出していないため足の筋力低下がみられる。

 

治療方針と目的

手術痕、骨折、筋力低下などがあり、かなりの高齢のため単純な
腰痛とは思えない。また長期にわたっていること、医療不信が
あることなどから、腰だけでなく精神的な部分への配慮が必要と思われた。


痛みをとること、少しでも動けるようになっていただくことなど、
小さい変化を積み重ねて希望が持てる生活にしていく方針。

 

治療とその経過

週2.3回の治療をご希望され、最初はその頻度で治療を行う。

 

初診~3週目

直接灸による腰を中心とした全身治療を行う。

手術痕、過去に骨折した部位、腰椎椎間関節はお灸を
念入りに行う。

治療直後は歩行器でベッドからリビングまでは
身体が軽く動くことができる。
翌日になるとまた戻ってしまう。

 

3週目~8週目

お灸だけだと直後効果にとどまっているため、鍼治療を提案。
鍼がひびいた方が調子がいいということから、腰を中心に
体調を見ながら「ひびき」を加える。

以前鍼灸治療を受けた時はこの「ひびき」が なかったこと、
希望してもしていただけなかったとのこと。
 
この「ひびき」を加えてから、患者さんの体調、意欲、意識が変わった。
ご自宅にある歩行訓練の機械で自主トレをはじめられる。

 

8週目以降


腰の痛みは、自主トレの効果などもあり、かなり軽減。
日中テレビをみて座っていても気にならない
程度になる。

転倒防止の観点から、足が上がること、バランスが保てるように
脛や股関節などにも治療を加える。
 

腰痛の軽減ももちろん大切だが、精神的にかなり落ち着かれ、
なるべく人の手を借りずにご自身で動かれるように
なられたのが大きい。病院以外の親せき宅や、ご近所宅にも
訪問できる気力になった。

 

施術を終えて

 

この患者さんは、過去の転落事故から、手術、そして
投薬ミスなどが重なり医療不信や身体の不自由さに

長年苦しまれていました。

それでも治そうとする気力、意欲は初診時から相当なものがありました。

今回の往診症例は、鍼灸治療そのものが効いたというよりは、
患者さんの意欲にきっかけを与えたといったほうが正しいと
考えています。

これだけの複雑な病態は患者さんの
協力なくしては、なかなか改善に導くことは難しいと思います。

 

ほんの少し動きがよくなったり、痛みが軽減される
精神的にはかなり違います。
一方で、痛みが増したり、
動きが悪くなったりするとその不安は相当なものです。

 

鍼灸で魔法のように痛みがピタッととまる病態もありますが、
複雑な病態、時間が経過したものなどは、
地道に患者さんとの
協力体制のもと少しずつ変化していくのが一般的です

それでも、この患者さんにとっては少しは鍼灸治療が
お役にたてたのではと実感しています。