「緊張型頭痛」と鍼灸施術
以前、別記事「頭痛の赤旗兆候」で頭痛の危険な兆候について書きました。
「突然発症の頭痛」「今までにない頭痛」「増悪する頭痛」の3つの兆候があった場合は、鍼灸治療の適応ではなく、一刻も早く病院を受診してくださいという内容でした。
鍼灸治療院に「頭痛」を訴えて来院される患者さんのほとんどが「緊張型頭痛」です。
当院にお見えになる患者さんも「緊張型頭痛」の方が大半を占めています。
今回は「緊張性頭痛」と鍼灸症例をご案内いたします。
緊張型頭痛とは
「緊張型頭痛」はもっとも頻度の高い頭痛です。痛みのタイプは「圧迫感」「しめつけ感」です。「ストレス」や「過労」で悪化し、うつむき姿勢が頭痛を誘発します。
口、顎などの異常が関係する場合もあります。家族歴はあまりありません。痛む場所は、片側ではなく両側に多く見られます。頻度は様々ですが、月に15日以上起こるかどうかが「反復性」と「慢性」の基準の境目となります。
基本的に吐かず、光や音、臭いに敏感になりません。
「緊張型頭痛」の原因は上にも書きましたが、「うつむき姿勢」がそのひとつにあげられます。いわゆる首が前に伸ばされた姿勢です。この姿勢が、首、肩、背中の緊張を強くします。パソコンや、スマホはもちろん、同じ姿勢を長時間維持すると、首に大きな負担となります。
「運転」などもそれにあたります。偶然かもしれませんが、当院は「運転」をメインとした職業の患者さんが非常に多いです。「タクシー」「運送業」「トラック配送」「クレーン車」など、首への負担が大きいのだと思います。
*仕事による姿勢からの影響は大きいです。
緊張型頭痛に対する鍼灸施術
「緊張型頭痛」の方は、「後頭部」「側頭部」の頭痛を訴えられます。
同時に、「後頚部」「肩」「背中」のこり感もあります。それらの部位にかかわる筋肉の「過緊張」を鍼灸で緩めていきます。
「腰痛」を同時に持っている方も多く、これは「頸椎」だけでなく「胸椎」「腰椎」など広範囲に緊張が続き、「脊柱」の生理的湾曲(S字カーブ)を崩した結果だと思われます。
関連部位も加え、「緊張型頭痛」と「腰痛」を再発しないようにしていきます。
「緊張型頭痛」のメインの治療となる後頚部には、手技よりも「鍼」のほうが筋緊張を浅部・深部共に緩めやすく、効果も長持ちするように思えます。
治療中に緊張部位が減っていき、それでも残っている硬い部分にピンポイントでアプローチできる点は「鍼」の特徴のひとつです。
*緊張性頭痛は痛むところ以外からも影響を受けています。
緊張型頭痛の鍼灸症例
症例①
患者:40代、女性
主訴:頭痛、首肩こり(腰痛もあり)
症状
普段から仕事のため、首・肩こりはある。家族にマッサージをしてもらうなどしてコントロールしているが、繁忙期や季節の変わり目に頭痛の頻度が増える。後頭部、こめかみともにしめつけ感が強い。胃腸が弱い為、頭痛薬を使いたくない。飲食業で手元を見ながら立ちっぱなしで仕事をしている。頭痛で寝込まない。嘔吐なし。臭い、光、音などに敏感にならない。
施術内容
初診時はもちろん、毎回「危険な頭痛」の兆候がないかを確認していますが、「緊張型頭痛」で受診されている患者さんです。仕事柄、首・肩・背中・腰に疲れがたまりますが、普段は自分でストレッチや、家族からのマッサージでコントロールされています。
それで難しい場合に当院を受診されています。
「頭痛」だけでなく、全身の緊張が強い為、細かく緊張部位の
確認をしながら、少しずつ緩めていきます。
首・肩だけの治療では再発が予想されるため、背部、腰部など全身をうつぶせ、仰向け、横向けの姿勢で診ています。
肩甲骨周囲の緊張を取っていくと、後頚部の緊張がさらに取れていきます。
本来は予防的な施術が理想ですが、現在は年数回の施術でコントロールできています。
症例②
患者:50代、男性
主訴:頭痛、首こり(腰痛あり)
症状
長年にわたる夜間の長距離運転。腰椎分離すべり症の既往などもあり、若い頃から鍼灸にかかっていた。あまりに頭痛がひどくなると運転に集中できない時もある。軽度の糖尿病と高血圧がある。
施術内容
年齢や、既往歴に「頭痛」症状が加わり、「リスク」のある患者さんだととらえています。糖尿病と高血圧は服薬で管理されていますが、受診の際には「血圧」を確認,測定するようにしています。
頭痛の「危険な兆候」も確認しています。
また、患者さんからうかがっている病歴から、「緊張型頭痛」だと考え、施術を行っています。初診時は、首の緊張が強く、「鍼が入らない」ときもありましたが、使う鍼を変更するなどの工夫により、施術直後に「頭痛」はいつも消失します。
首、腰の過緊張が進むと、仰向けになれないため、「腰椎分離症」についても、加療しています。 この患者さんは春先にお見えになる傾向がありましたが、繁忙期が原因だろうとおっしゃっていました。
最後に
今回は「緊張型頭痛」について、紹介いたしました。
「頭痛」には様々な種類があります。
「片頭痛」「群発頭痛」「帯状疱疹」「副鼻腔炎」「髄膜炎」「側頭動脈炎」
「三叉神経痛」「くも膜下出血」「慢性硬膜下血腫」
きっかけや、頭痛に伴う他の症状などの様々な病歴・検査で診断されます。病歴の中でも、特に先に挙げた「危険な頭痛」の3徴候はぜひ覚えていただきたいと思います。