手のしびれ(手根管症候群について)

手のしびれ(手根管症候群について)



先日、遠方に住む知人が手がしびれるので病院に行ったところ「手根管症候群」と診断されたと連絡がありました。一般の方にはあまり聞きなれない言葉です。
 「手がしびれる」訴えは、鍼灸治療院では珍しくありません。
手のしびれの原因は様々ですが、「手根管症候群」はその原因の約20%を占めている報告もあり頻度の高い病気です。

手根管症候群

手根管症候群とは 

「手根管症候群」は手首にある「手根管」という名のトンネルを通過する正中神経が圧迫され、しびれや痛みを誘発します。

特に女性、なかでも妊娠・出産期と更年期におこることが多い傾向があります。
これには女性ホルモンが関係しているといわれています。典型的な症状は最初に、
人差し指、中指がしびれ、その後親指にしびれがでてきますが、小指がしびれることはありません。
夜から朝方にかけて強くあらわれますが、手を振ると楽になるのが特徴でもあります。
なかには肩や肘、手首の関節に痛みを訴えることもあります。
日常生活では症状が進むと、縫い物がしづらく、細かいものがつまみにくくなります。
たとえば箸で豆がつかみににくくなります。しびれ、痛み、動かしづらさが主な症状になります。まれですが腱鞘炎などと合併することもあります。

病院での治療と検査

医療機関では安静にしながら、装具で固定したり、注射(ステロイドなど)や飲み薬、
ビタミン剤などを使って治療します。それでも良くならず手が変形したり、動かしづらいなど症状が進行した場合は手術をすることもあります。

検査ではMRIやエコー(超音波)、さらに神経の信号の伝わり方なども機器を使い診断します。特に超音波による診断は感度89%、特異度98%と優れた診断方法です。

手根管症候群は頸椎症と合併することがあります。(double crush syndromeといいます)
その時は頸が原因で手がしびれることもあり、手と頸の両方の検査、治療が必要になります。治療としてはまず痺れや痛みを取り除くことが第一です。

鍼灸と手根管症候群

鍼灸では手根管だけでなく、手首、指を動かす筋肉にアプローチします。頸椎症との合併がある場合はそちらも対応します。
2012年には軽度~中等度の手根管症候群の患者に週2回、1か月間にわたり鍼灸治療を行ったところ効果が認められたイランの研究報告もあります。
運動麻痺や、強い夜間痛などがある重度のものを除けば、手術をなさる前に治療の選択肢のひとつとし貢献できると思われます。

追記分(2018.6.15)
具体的な当院の方法としては、手根管の中を通過する筋・腱を、特に前腕前面の屈筋群を中心に緩めていきます。浅指屈筋、深指屈筋、長掌筋、橈側手根屈筋、拮抗筋である伸筋群も同様です。

また手根管の中を通過する正中神経の絞扼部位である上腕二頭筋腱膜・円回内筋間や上腕内側の正中神経の走行部位も治療対象です。
手根管症候群は痛み・しびれだけでなく、むくみもあります。指までむくんでいる方もおられます。
数年前から使い始めた電気ていしんで、むくみを細かく取り除き筋肉を緩めます。
電気ていしんは痛みを感じることなく、時間をかけて行うと変化を実感できるため活用頻度が本当に増えてきました。屈筋支帯・腱についてはお灸や電気温灸器を使います。痛みや、むくみで指を動かせないケースもあり、こわばらないように他動的に指の関節を動かしたり、ストレッチを加えることもあります。

手関節の皮線から指先に向かって3㎝が手根管ですので、圧迫によりしびれや痛みを誘発する部位、または長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間に鍼をすることもあります。

参考資料

手根管症候群の論文(原文)
(短期間、軽度の手根管症候群は鍼灸治療がスプリントやビタミンよりも効果的という内容)
[文献]手根管症候群の鍼治療-ランダム化比較試験
[文献]手根管症候群に対する鍼治療による第一体性感覚野の再編成
手根管症候群の説明(整形外科学会)
手根管症候群 パンフレット
腕、指のしびれ-胸郭出口症候群-手根管症候群(鍼灸治療症例)

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