手根管症候群に対して、症状のある側の手だけでなく、反対側の手、または足への鍼灸治療による症状改善を示唆した文献を紹介します。
Rewiring the primary somatosensory cortex in carpal tunnel syndrome with acupuncture.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28334999
*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。誤訳の可能性もありますので、原文での確認をお願いいたします。
手根管症候群に対して、手の局所への鍼、手から遠位である足への鍼、
そして偽鍼を比較した文献となります。
脳画像の所見も併せて、局所だけでなく
遠位からのアプローチの可能性を示唆する内容です。
背景
手根管症候群は、最も頻度の高い絞扼性神経障害であり、
手首の正中神経に影響を及ぼす。
鍼治療は低侵襲性で伝統的な治療法であり、複雑な実践様式に根ざしているが、
鍼治療は末梢を対象とした神経を調節する多くの治療法と重なる部分があります。
鍼治療は末梢を対象とした神経を調節する多くの治療法と重なる部分があります。
しかしながら、主観的/心理的、客観的/生理学的結果をもたらした
鍼治療の効果による神経生理学的メカニズムはよく理解されていない。
鍼治療の効果による神経生理学的メカニズムはよく理解されていない。
方法
患者(n = 80,65女性、年齢:49.3±8.6歳)を登録し、
3つの介入群に無作為化した
3つの介入群に無作為化した
(i)患側の手の「局所的な」筋膜への電気鍼治療;
(ii)患側と反対側の足首付近の「遠位」からの筋膜への電気鍼治療;
(iii)プラセボ針を用いた局所的な擬似電気鍼治療。
鍼治療は8週間にわたって16セッションにわたって提供された。
Boston Carpal Tunnel Syndromeによる評価では、ベースライン(治療前)時、
治療後および3ヶ月のフォローアップ時に、痛みおよび知覚障害を評価した。
正中神経感覚潜時および脳画像データを評価する神経伝導研究を、
ベースラインおよび治療後に行った
機能的磁気共鳴画像法は、3桁(2、3および5)にわたる振動触覚刺激を用いて、
第一体性感覚野におけるソマトトピーを評価した
結果
3つの鍼治療介入のすべてが症状の重症度を低下させたが、
局所・遠位の鍼は偽鍼よりも神経生理学的アウトカムにおいて、
より優位に改善がみられた。
局所・遠位の鍼は偽鍼よりも神経生理学的アウトカムにおいて、
より優位に改善がみられた。
神経生理学的アウトカムとは手首と脳、
つまり知覚神経伝導遅延と脳内の皮質間距離
つまり知覚神経伝導遅延と脳内の皮質間距離
さらに、筋膜への鍼治療後の第2 /第3桁間皮質間距離の
より大きな改善は、3ヶ月のフォローアップ時の症状の
重症度の持続的改善を予測した。
我々はさらに、第一体性感覚野に隣接する白質微小構造の
拡散テンソル画像を用いて、局所鍼と遠位鍼の違いの仕組みを探究した。
拡散テンソル画像を用いて、局所鍼と遠位鍼の違いの仕組みを探究した。
手根管症候群の患者では、健常成人(n = 34, 28人の女性、49.7±9.9歳)と
比較して、いくつかの領域で異方性比率が増加しており、
これらの領域での異方性比率の減少が正中神経感覚潜時の改善を示唆している
比較して、いくつかの領域で異方性比率が増加しており、
これらの領域での異方性比率の減少が正中神経感覚潜時の改善を示唆している
(i)病変部と反対側の手への偽鍼ではない筋膜への鍼
(ii)局所だが遠位でも偽鍼でもない病変と同側の手への鍼
(iii)遠位にあるが、局所でも偽鍼でもない病変と同側の足への鍼
結論
これらの第一体性感覚野は、局所的または遠位の鍼治療電気刺激によって
明確に標的化されるので、局所的または遠位部位での鍼治療は、
治療後に第一体性感覚野の明確な神経可塑性によって、
手首の正中神経の機能の改善がみられるかもしれない。
明確に標的化されるので、局所的または遠位部位での鍼治療は、
治療後に第一体性感覚野の明確な神経可塑性によって、
手首の正中神経の機能の改善がみられるかもしれない。
我々の研究は、第一体性感覚野のソマトトピーの改善が、
手根管症候群の長期臨床効果を予測できることを示唆している。
手根管症候群の長期臨床効果を予測できることを示唆している。
読んでみて
手根管症候群は手首にある手根管が絞扼されることで、
痛みや、しびれ、感覚異常が起きる疾患です。
痛みや、しびれ、感覚異常が起きる疾患です。
手根管や前腕を対象に鍼治療することが一般的です。
今回の文献ではその患部である手周辺だけでなく、
反対側の手、そして足へのアプローチにより症状改善の可能性を示唆する
脳画像所見が得られたという内容でした。
反対側の手、そして足へのアプローチにより症状改善の可能性を示唆する
脳画像所見が得られたという内容でした。
一見関係がなさそうな足へのアプローチが神経の回復につながるのか、
フルテキストには部位も示されていましたので、臨床に生かしたいと思います。
フルテキストには部位も示されていましたので、臨床に生かしたいと思います。
#¹ Boston Carpal Tunnel Syndrome Questionnaire:手根管症候群を評価するツール
#² diffusion tensor imaging(拡散テンソル画像):脳の白質の異常をとらえる画像手法
#³ somatotopy(ソマトトピー):身体部位と脳の領域がそれぞれ対応しているという考え