埼玉県春日部市の鍼灸院 はり・きゅう はりも

〒344-0058 埼玉県春日部市栄町1-279
Tel:048-763-5323
肩の痛み

五十肩になった時の日常生活の注意点

五十肩

 

五十肩は時期によって注意することが異なります!!」

 

「五十肩」は「肩こり」と違って、疲れて肩が重い、だるいといった感じのものでありません。

初期は痛みが強く、夜も眠れないくらいです。

その後、腕が固まって上がりづらくなります。

「五十肩」になったとき、日常生活上の注意点とリハビリの内容はは時期によって異なります。

 

五十肩には2つの時期があります

 

「五十肩」は痛みの強い「炎症期」、動きに制限がかかる「拘縮期」にわけられます。

日常生活の注意点、リハビリはこの「時期」によってまったく異なります。
鍼灸治療や自宅灸も経過に応じて内容が変わります。

 

「炎症期」:痛み始めてまもない時期。文字通り炎症が強く、肩に熱を持ったり、
      はれたりします。
      動かさなくても痛い「自発痛」、夜眠れないほどの「夜間痛」があります。
      痛みはありますが、腕はなんとかあげられます。

      概ね、1-2週間程度となります。

 

「拘縮期」:痛みはまだありますが、「炎症期」ほどではなくなっている時期。
      痛みよりも、腕を上げられず、固まってきます。

      シャツを着たり、髪の毛を結ぶのが大変になります。
      夜は眠れるようになっています。

 

 

肘掛け椅子

 

「炎症期」の日常生活の注意点とリハビリ


「炎症期」はとにかく痛みでつらい時期です。腕の重みですら負担になります。
痛みが強くて医師に注射をうってもらう方もおられます。

以下の事に気を付けてください。

  1. 日中は三角巾などで腕を支えて、腕の重みによる負担を減らします。

  2. 熱を持っている状態では、保冷剤などで冷やす。入浴・カイロなどで温めないよう注意します。

  3. 就寝時は横向きになり、痛いほうの肩を天井に向けるようにする。抱き枕などを抱えるようにすると腕が安定します。

  4. 仰向けで休む場合は、痛いほうの肩甲骨の下に平たく折りたたんだバスタオルをいれ、腕全体の下にもタオルを入れ、少し高さを作って安定させます。

  5. 「五十肩は動かさないと治らないよ」と近所の方がアドバイスをくれることがありますが、「炎症期」は安静第一です。

  6. 痛みで、背中が丸くなり、肋骨や背中が固まってくるため、座って手を膝の上に置いて、「深呼吸」をする程度のリハビリがおすすめです。

  7. 自宅灸もこの時期はおすすめしません。

  8. 服はゆったりしたものを着てください。かぶりものではなく、身体の前が開いているものが肩をあまり動かさず、おすすめです。痛いほうの腕から袖を通します。脱ぐときは逆から。

  9. 食事の時は、両肘をテーブルの上に乗せると、腕の重みが軽減されます。

  10. 肘掛け椅子に座り、腕を置くと腕の重みが減ります。

 

 

「拘縮期」の日常生活の注意点とリハビリ


「拘縮期」は痛みはあるものの、腕を上げるのが難しくなる時期です。この時期から積極的なリハビリが必要です。
 温めながら、少しずつ動かしていきます。

 

  1. 肩用の薄手のサポーターを使います。就寝中は肩が冷えないように、薄いタオルなどをかけます。

  2. 夏場の冷房などが当たらないようにします。

  3. 入浴中などに浮力を利用して、痛みのない範囲で少しずつ腕を動かしていきます。

  4. 椅子に座って、肘を伸ばして、テーブルをふきんで拭くように動かして、動く範囲を広げていきます。

  5. 物干しざおにロープをひっかけて、両手でロープのそれぞれの端をもち、交互にゆっくりと引っ張る動作を行う。
     片方がひっぱると、もう片方が持ち上がるため、腕を上げるリハビリになります。

  6. 前かがみになり、腕全体を脱力して、床に伸ばしたまま、アイロンなどを持ち、ゆっくりとブランブランと振り子のように動かす。腕で動かすというよりも、身体を前後左右にゆすって、結果的に腕が動くくらい、脱力するのが望ましいです。

  7. 歩くときは、ポケットに手を入れると腕の重みを軽減します

  8. 自宅灸は血流促進により組織の回復をすすめまるので、お勧めです。(痛い部分中心に)

 

五十肩の「炎症期」「拘縮期」、それぞれでの注意点をご案内いたしました。
時期を間違えると、症状を悪化させることがありますので、ご注意ください。

 

五十肩については下記もご参照ください。

五十肩-腕が上がらないから五十肩?

五十肩-鍼灸施術症例

「肩の痛み」と病態把握

 

五十肩

 

 「肩の痛み」と病態把握


肩の痛みで有名な「五十肩」は痛みが強い「疼痛期」が
発症初期に起こり、腕が上がらない「拘縮期」がそのあとに続きます。

「拘縮期」に入ってしまうと、回復に時間がかかり
生活に支障がでます。

今回は「五十肩の疼痛期」の症例、さらに「肩の痛み」と
「病態把握」について少し書いてみましたので、ご覧ください。


*この症例は患者さん自身が特定できないように変更を加えています

鍼灸症例

 

患者:81歳、女性、両肩の痛みを訴えて来院。

自宅で健康維持のため運動していたからだと思う。
特に、来客があるため、念入りに掃除をしていたのも関係があると思う。

受診動機:急に肩がかなり痛むので受診した。

現病歴

 数年前から肩関節の痛みはあった。昨年は冷房にあたりすぎて
痛くなった。
 
動けなくなるといけないと思い、日に3回運動をしていた。
また来客があるため窓拭きなどの掃除を念入りにしていた。

今回は昨日の朝から両方の肩関節に強い痛みを感じた。

昨年の痛みより強い。右より左の方が強く痛む。痛む部位は
左肩関節前面から上腕外側にかけて。右は肩関節前面のみ。

シャツを着る、顔を洗う、ズボンを上げる動作が痛みのため
できないので家族に手伝ってもらっている。茶碗がもてない。

 
痛みで腕をあげられない。
動作だけでなく、坐って腕を下ろしていても痛みを感じる。

ソファーにもたれていると少し楽。痛みはズキズキする感じ。
しびれはない。手指の痛みはない。


頚の動きによって肩関節の痛みは誘発しないが、
肩上部の痛みは誘発する。
頚部右回旋により右肩上部に痛みを感じる。

昨夜は夜間痛があったが、少しは眠ることができた。
痛みのため横向きで寝られない。腹臥位もできない。
外傷歴なし。

 

一般健康状態

喫煙、飲酒歴なし。服薬は睡眠薬、安定剤、胃薬、血圧の薬

食欲(正) 体重変化無し 睡眠(服薬していれば問題なし) 
発熱無し

 

身体診察

肩関節に熱感・発赤なし。特に前面に腫脹・圧痛あり。触れるだけで痛む。
左肩関節70°挙上可(自動) 右肩関節90°挙上可(自動)
他動外転不可 軋轢音は認められない。

既往歴

変形性膝関節症(両側)・右肩関節靭帯手術歴有り


初診時の診断と根拠

五十肩(炎症期)と頚椎症性神経根症の合併

①ズボンを挙げられない(結帯動作)

②夜間痛有

③洗顔、シャツの着脱などができない。

④他動外転不可(拘縮有)

 

①´頚部の動きで肩上部に痛みがある。

 

鑑別診断とその根拠

①石灰沈着性腱板炎:夜間発症ではない。眠れる程度の痛み。
 →可能性が捨てきれず、経過を見て判断する。

②腱板断裂:他動外転不可。外傷歴がない。軋轢音が認められないため除外。

③腱板炎:拘縮があるため除外

④肩峰下滑液包炎:拘縮があるため除外

⑤慢性関節リウマチ;手指に痛みがないため除外。

⑤胸郭出口症候群:しびれがない、急性発症であるため除外。

 

施術とその指標

痛みの軽減と生活動作の改善を目的とした。

第1回

仰臥位のみで治療。肩関節前面(烏口、結節、間溝、肩偶など)を
中心に浅刺 40㎜-18号で置鍼15分。糸状灸各1-2壮。

坐位で肩関節と後頚部に単刺を加える。治療直後は少し服に
袖を通すのが楽との事。石灰沈着性腱板炎の可能性も念のため伝える。

第2回(4日目)

痛みが続き眠れなかった。昨日、歯医者でもらっている
痛み止めを服用したところ少し効いた。

(石灰沈着性腱板炎だと痛み止めの服用では収まらない
程度の痛みと思われ、その可能性が下がると判断した)寝ているとつらい。

右肩関節160°、左肩関節40°まで挙上可。他動外転不可。
左肩の腫れがひかない。棘上筋点が最大圧痛(触れるだけで痛む)。

治療は前回同様。生活のアドバイスは左肩甲骨下に折り重ねた
タオルを敷いて寝ていただく。

第3回(8日目)

左肩の痛み、腫脹は不変だが、タオルを敷いて寝ると楽。
服を着るのも少し楽。

第4回(15日目)

この1週間は調子がよい。左肩90°挙上可。
腫れもひいてきた。触れただけで痛まない。

第5回(22日目)

左手で頭を触れるようになる。挙上100°ほど。肩が痛くなる前に
行っていたデイサービスと近隣の公園への散歩を希望されたので勧める。

拘縮を避けるため仰臥位にて右上肢で左上肢を挙上する運動を処方する。

第6回(29日目)

左上肢挙上150° 拘縮期に入る気配がない。
母指を下方へ向けての肩関節外転(棘上筋)は可能。

タオルを臀部付近で引っ張り合う運動を処方する。

公園への散歩は毎日行っている。洗濯物をたためるようになった。
洗い物(軽いもの)ができるようになった。

家族がリハビリのため、わざと洗い物を残している。
運動もまじめになさっているご様子。

第7回(36日目)

 服は自分で着られる、洗濯物が干せるようになった。
髪を洗うのは手伝ってもらっている。自主的に散歩の距離を増やしている。

8回(43日目)

髪が洗える、入浴が一人でできる。ドライヤーができる。

第9回(50日目

両肩とも動き、日常生活は以前のようにできる。
痛みは使いすぎると少しはでてくる。

10回(57日目)

腹臥位になっても肩が痛くならない。
治療は全身治療に切り替える。
右肩手術痕に直接灸を行う。

*2019.5現在、肩関節の施術内容はこの時と比べ、大幅に変わっています。
(熱い直接灸や鍼の本数がかなり減っており、刺激感が少なくなっています)

症例のポイント

初診時は「五十肩」か「石灰沈着性腱板炎」か厳密に判断しにくい
状況でした。五十肩は「疼痛期」と「拘縮期」の二相性の経過を
たどるため、「時間」を判断の味方にし、
一定の治療方針をたてるようにしました。

その結果、「疼痛期」の過ごし方がうまくいき、
「拘縮期」に完全に至る前に、処方した運動をまじめになさって
いただいたことが日常生活への早期復帰につながったと思います。

症状が落ち着くまで、2か月弱でしたが、「拘縮期」に入らずにすみました。

一般的に「五十肩」で「拘縮期」に入ってしまうと、回復までに1年ほど
かかってしまうといわれています。そうなると生活の質が大幅に変わってしまいます。

また今回、家族の支えと、高齢者の「家事をする」、「片付けをする」と
いった「役割」が回復を支える要素であることがわかりました。

 


(下記からは少し専門的かもしれません)

 

「肩関節疾患」の症例から「診断名をつけること」について

鍼灸師は医師と違い厳密な「診断」はできないのですが、
「病態把握」は鍼灸治療をする上で必要です。

「肩関節疾患」の症例から「診断名をつけること」に
ついて少し考えてみました。

これが全てではありませんが、「肩関節疾患」の「診断」については
様々な意見があり、下記に引用します。


「開業鍼灸師のための診察法と治療法 五十肩」 (医道の日本)
出端昭男 133-134 *⑦(鍼灸師テキスト)

「腱板断裂や石灰沈着性腱板炎も経過が長期化してくると、結局、炎症が周辺部の組織に波及し、病態も臨床症状も五十肩に類似します。したがって鍼灸治療の方法としては、腱板ルートの五十肩であっても、また長頭腱ルートのそれであっても、さらに腱板断裂や石灰沈着性腱板炎の週末像としての五十肩症状であっても、ほとんど同様の治療でその目的を達することができます。」

→診断名よりも、何が起こっているかを把握することが大事。
(炎症が周辺部に波及している)


大日本住友製薬サイト 座談会「肩の痛み」(医師) *①

「診断名をつけることよりもいかに主訴を改善するかが優先します」

「要するに肩の痛みという愁訴の原因部位を診察や画像所見、および理学所見などで総合判断することが大事、病態を踏まえた患者ごとのストラテジーとして保存療法か手術かリハビリテーションで行くのかを判断することになります。」

東京大学医学部付属病院リハビリテーション部 物理療法部門(鍼灸)*⑤

「原因部位や病態の明らかな疾患(烏口突起炎、上腕二頭筋長頭腱炎、石灰沈着性腱板炎など)と五十肩とは区別するべきという、現在ではこの考え方が広く支持されている。しかし、これらの疾患はX腺やMRI、関節造影などの検査で初めて、鑑別し得ることも多く、我々の日常臨床では、五十肩と他の肩関節周囲炎を鑑別することは非常に困難と思われる」

 

絶対に正しい診断名を言い当てることができない場合、
その時どうするかという時に、正しいマネジメントが
できることが大切です。

かといって、診断名をつけられないことは、
診断名をつけなくてもよいということでもありません。

(病態把握をする必要があります)


今回の場合、肩関節疾患に対する鍼灸治療のマネジメントを
変える現象が何か、どうしたらそれを判断できるのか。

疼痛期→除痛が優先。痛み止め、鍼灸などが運動より優先する

拘縮期 →可動域の改善 運動がメインとなる。

 

この「時期」を区別する「病歴」こそが、マネジメントを変えます。

問診について、「構造と診断 ゼロからの診断学」(医学書院)では
下記のように書かれています。

「過去に起こった出来事を現在に取り戻す作業、今目の前にいない患者を取り戻す作業。それができるのは検査でも、身体診察でもなく「病歴」のみ。」*⑥


この内容を誤読していなければ(内容が深く、難しいですが)、
肩関節疾患において、患者の状態がどういう「時期」にあるかという
「現象」を把握できるのは身体診察でも、検査でもなく「病歴」しかない
ということになるかと思われます。

肩関節疾患に関しては「病歴」だけで診断をするのは難しいかもしれない、
でも現象を把握して治療につなげるには、「病歴」をしっかり聞いていれば
そんなに間違った方向にはいかないと感じました。

「診断名」をつけるためだけでなく、「病態把握」から「適切なマネジメント」に
つなげるため、「病歴」をきちんと聞く重要性を再確認できました。


参考資料

①大日本住友製薬 医療情報サイト 座談会「肩の痛み」「肩関節周囲炎」

②「五十肩に対する鍼灸治療の2症例」 宮山忠彦 安野富美子 全日本鍼灸学会雑誌51巻5号

③「五十肩に対する鍼治療の効果 -症例集積による検討-」 堀紀子 山下仁 全日本鍼灸学会雑誌第46巻4号

④「五十肩の臨床所見と原疾患の推定」 木下晴都 全日本鍼灸学会雑誌41巻2号

⑤「腱板不全断裂に対する鍼治療の一症例」 美根大介 小糸康治 全日本鍼灸学会雑誌56巻2号

⑥「構造と診断 ゼロからの診断学」 岩田健太郎 著  医学書院 刊

⑦「開業鍼灸師のための診察法と治療法 五十肩」 出端昭男 著  医道の日本社

五十肩-鍼灸症例

frozen shoulder

五十肩-鍼灸症例

 

「五十肩」、今回は痛みどめや注射が効かなかった症例を紹介いたします。

*下記症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております

 

鍼灸症例

 

患者

70歳、女性
左肩と上腕の夜間痛を訴えて来院した。

1ヶ月間痛み止めを服用しているのに、良くならない。
痛みで眠れないのがつらい。

以前、五十肩になった時とは違う感じがする。
原因はよくわからない。治療をしているが変化がなく、
薬に対して抵抗がある。

五十肩

 

 

 

病歴 


3ヶ月前に、左肩こりを感じていた、
2ヶ月前には肩こりがより強くなる。

1ヶ月前に、近隣の整形外科を受診。

五十肩の診断をうけ、レントゲンによると少し石灰化
していると告げられた。ホットパック、低周波などの治療をされ、
痛み止め、湿布を処方される。

併行して、2週間リハビリを行うが痛みが改善しない。
3週間前、痛みがひどくなりヒアルロン酸を1週間に
1回のペースで注射している。

現在まで3回行ったが効果がない。痛み止めも効かず、
胃の不快感も出てきたため、自主的に服用回数を減らしている。

 

現在、特に夜間痛がつらく、1時間に1回目がさめる。
寝返りもできないほど痛い。

仰向けで寝るときは左肩甲骨の下にタオルを重ねて
敷いていると少し楽になる。シャツの着脱や、洗髪では痛みが増す、
洗濯物はなんとか干している。

肩関節の前面、後面、上腕の内・外側が痛い。痛みの性状はズキン。
頚や肩のこりはあるが、頚の動きで肩・腕の痛みが増すことはない。

上肢のしびれはない。薬による胃の不調で、食欲が落ちている。

 

健康状態

喫煙歴なし、お酒は嗜まない。食欲低下、体重に変化はない。痛みで目が覚める。発熱なし。

服用歴

ペオン(鎮痛剤:NSAIDs)、サンパゾン(筋緊張緩和)、湿布

身体診察

肩関節屈曲50度前後、外転70度まで(自動他動共に)。
軋轢音なし。棘上筋、棘下筋の萎縮を確認するも不明瞭。

熱感、発赤はない。腫脹あり。C6,C7,椎間、間溝、前隙に著名な圧痛。

肩前面に広範囲に圧痛あり。左上腕外側に索状の緊張あり。
他動外転、ドロップアームは行っていない。


初診時の診断

  • 五十肩:疼痛期から拘縮期の移行期
  • 悪性腫瘍:年齢と夜間痛から経過を見て判断する

除外診断

  • 石灰沈着性腱板炎:夜間痛はあるが、発症から1ヶ月が経過しているため。
  • 腱板炎:肩関節に拘縮があるため。
  • 肩峰下滑液包炎:肩関節に外転障害があるため。
  • 頚椎症性神経根症:頚部の動きで痛みが誘発されない。

 

治療とその経過

病歴から、悪性腫瘍の可能性、五十肩の疼痛期から
拘縮期への移行期の可能性がある。

3回ほど治療して変化がない場合は、MRIを撮影して
いただく可能性と、痛みが退少するに伴い、拘縮が進むかも
しれないことを説明した。

まずは夜間痛を改善することを当初の目標とした。

初診

腹臥位にて、左肩関節前面にタオルを重ねて敷く。

C3、C6、天柱、風池、天宗、肩貞、肩井にステンレス鍼、
1寸3分、直刺にて1.5センチ刺入、置鍼10分。

仰臥位にて左扶突、曲池、手三里、間溝、前隙、結節、

肩前面の阿是穴も同様。肩前面には糸状灸を3壮行った。

坐位にて、巨骨に外方へむけて水平刺にて単刺。
肩貞に1寸6分で単刺。上腕二頭筋付近に痛みが少し残る。

湯船につかるのをさけること。肩の保温をすることを確認した。
痛みが治まるまでは積極的に動かさないことを勧めるが、
主婦のためそれは難しいとのこと。

 

2回目

前回の治療日と翌日は夜間痛がなく眠ることができた。

2日前に、夜間痛が再発するが痛みの程度は半分くらい、
寝返りは可能。早く治ると思い、肩の痛みの原因は
わからなかったが、美容院でかなりの強さで、
痛いほどもまれたことを思い出した。

初診の治療によるだるさなどはない。
腹臥位から側臥位へ治療肢位を変更。

前回の治療に臑兪、棘上筋・棘下筋・小円筋付着部を加えた。

 

4回目

痛みからだるさに変化してきた。
灸があっているような気がするとのこと。夜間痛は消失。

 

 6回目

寝返りができるようになり、植木鉢を動かしたりもしている。
痛みは肩の前面のみ、胃の不快感もなく、食欲も戻っている。

 

7回目

「だいぶよくなった」とおっしゃったが、可動域などは
肩関節屈曲100度前後。

その後、積極的に動かしていく方向で、リハビリの方法などを確認し、
数回後治療を終了した。

*可動域についても1年後、後遺症なく過ごされていることを確認できました.

 

追記

2019年現在は肩関節疾患については、鍼よりも
「電気ていしん」「電気温灸器」を使うことが主となり、

「痛み」や「熱さ」を感じることがほとんどない
施術方法に変更しています。

 

肩関節疾患に鍼灸が貢献できるケース

 

鍼灸治療において、肩関節疾患の夜間痛は、平均5,6回の
治療回数がかかっているという報告があります。

今回は寝返りもつらく、眠れない、食欲も落ちるなど日常生活に
影響が多いケースでした。胃が弱い方には長期にわたる痛み止めの服用が
負担になることがあります、そういった意味では鍼灸がより
貢献できるケースだったかもしれません。 

痛みのある肩甲骨の下にタオルを敷くと少し楽に眠ることができます。

 

 

【文献】鍼灸での肩峰下インピンジメント症候群に対する研究

スゥエーデン

 

鍼灸での肩峰下インピンジメント症候群に対する研究

 

鍼灸での肩峰下インピンジメント症候群に対する
スウェーデンの研究を紹介いたします。

 

肩峰下インピンジメント症候群は、腕をあげるときに、
肩の高さより上にくると痛みや、ひっかかり感、こわばり、
夜間痛みなどがおこるものです。

 

若い方で、スポーツなどで使いすぎる方に多いですね。

棘上筋という、腕を上げる筋肉が最も損傷されることが多く、
鍼施術の対象となります。

 

この肩峰下インピンジメント症候群についての原著論文は
こちらにのせておきます。

肩峰下インピンジメントに対するコルチコステロイド注射と
鍼治療の比較:ランダム化比較試験

 

肩峰下インピンジメント症候群に対して、コルチコステロイド注射群と
理学療法に鍼治療を加えた群とで、肩の痛み、機能、生活の質など
において 比較検討しています。

6週間後、3ヶ月後、半年後、1年後と長期にわたって
117人の患者さんを対象にしています。

結論は、どちらも効果はありますが、どちらがより優れた治療法とは
この研究ではいえないということです。

医療費や薬の副作用、鍼を受けたときの感覚の好き嫌いや運動の負担など
総合的に判断できるといいのかもしれません。

 

 

五十肩-腕が上がらないから五十肩?

五十肩の分かれ道

 

五十肩-腕が上がらないから五十肩?

 

肩が痛くなったり、腕があがりにくくなったりと
いった症状を聞くと、「五十肩」と思われる方も多いでしょう。

そういった症状の方のお話を伺っていると、

 

  •  「もう腕があがらなくなるのでしょうか」
  • 「動かさないと、腕が固まり腕があげられなくなると言われました」
  • 「痛いのを我慢して動かしたら、もっと痛くなりました」

 

「痛み」だけでなく、どのように対応すればいいのか
戸惑いもあると思います。

「動かすべきか、動かさないべきか」は大きな問題です。

 

「五十肩」の症状は時間の経過で変化していきます。

「五十肩」という同じ名前でも時期によって症状が違うため、
患者さんが話される症状も当然少しずつ違います。

 

「動かしたほうがいいよ」とアドバイスしてくださった方の「五十肩」と、
現在「五十肩」になってしまった方の症状は時期によって大きく違います。

 

「五十肩」の自然経過は主に3段階に分かれるといわれます。

 

  1.  安静にしてても痛みがあり、夜には痛みが強くなり眠れない炎症の強い時期。(炎症期)
  2. 安静にしている限り痛みはなく、夜も眠れるが腕が動かしづらくなる時期(拘縮期)
  3. 痛みも減り、動きも少しずつ回復していく時期(回復期)

 

痛みが減る一方で、動きは悪くなりますが、それも徐々に回復していきます。

  1. 炎症がある時期は痛みが強く、動かさないほうがいい時期です。
  2. 炎症がひき、痛みが減ってきたときに様子をみながら動かし始めるとよいでしょう。

 

そして「肩が痛い」「腕が挙がらない」といった症状は
五十肩だけではありません。

周りの方の善意によるアドバイスも、
もしかしたら「五十肩とは違う肩の疾患」である可能性もあります。

 

痛みの強い「五十肩」ですが発症してからの
経過に
応じた対応が大切です。

 

そしてその肩の痛みが本当に「五十肩」なのか、
適切な判断は欠かせないと思います。