股関節前面の痛みの鍼灸症例

股関節前面の痛みの鍼灸症例

*この症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております。

患者 50代、女性
主訴 右股関節痛

2年前、工場での仕事(4日/週  6時間 勤務 1万歩/日)で
右足に体重をかけられないほどの痛みがあったが,
2日で歩けるくらいにはおさまる。


右股関節と右膝内側に痛みと違和感があった。
整形外科を受診し、レントゲンでは股関節、膝関節の異常は
認められず、痛み止めと塗り薬が処方された。


3か月間、理学療法士によるリハビリを週に1回継続。
違和感は残るが、改善した。
歩行時のknee-inを指摘されている。

週5日、1時間ほどのウォーキングを行っていた。

2週間前と昨日に農作業をし、しゃがんだり、
スコップを足で土に押し込む作業をしたところ、翌日歩けなくなった。

階段は上りより下りがつらい。ウォーキングは行っていない。

現在、痛む部位は右鼠径部、右大転子周囲。
腰痛なし、下肢のしびれはない。夜間痛なし。

既往歴なし
家族歴なし  
変形性股関節脱臼の家族歴なし
外傷歴なし

食欲、睡眠は正常。発熱なし。



身体診察

仙骨外縁、坐骨結節、大転子周囲に圧痛多数。
腸脛靭帯、ASIS直下、大腿内側に強圧痛。

FADIR test(+)
FABER test(+)
長内転筋圧迫テスト(+)
SLR(-)
腸腰筋圧迫テスト(-)

施術方針

病歴、身体診察などから「股関節前深部」の痛みが主となる。

状態が安定するまでは週1回の施術を行い、
経過をみてストレッチ、ウォーキングなどをはじめていただく。

施術と経過

第1回
右上側臥位にて大転子周辺に置鍼。
仙骨外縁・大転子周囲に電気ていしんを行う。

仰臥位にて鼠径部外側、大腿内側部に電気ていしんを行い、
違和感は軽減。
大転子-腸脛靭帯の上部1/3は残存。
刺鍼にて旋然・雀琢を加える。

なるべくしゃがむ作業は避けるように伝える。

第2回
短い距離の歩行、立ち上がりは痛みなし。長時間の運転、
勢いよく座ると痛みがある。

立位で靴下をはくときに、まだ足が上がりづらく、
下前腸骨棘の内側付近に痛みがある。
鼠径部内側はあまり気にならない。

第3回
5キロほど歩くと、鼠径部、臀部に張りがでてくる。
股関節屈曲、内転、内旋で鼠径部につまり感が認めらる。
ASIS周囲、内転筋、股関節屈曲・外転・外旋位で
縫工筋起始部、内転筋に単刺。
直後、鼠径部の違和感、張りはなくなる。

第4回
運転3時間半で張りはあるが、痛みはない。
旅行で階段を200段上り、大転子周囲に少し痛みはでたが、
翌日楽になる。

自宅でのストレッチ(臀部、内転筋群、弱めの回旋運動など)をはじめていただく。
臀部の圧痛が減り、股関節前面、鼠径部、内転筋の圧痛が中心となる。
FADIR test(+)
FABER test(-)

第5回
1時間半の農作業、ビル4階への階段の上り、下りともに症状なし。
腹部、鼠径部に温熱刺激を加える。施術頻度を2週間に1度にする。

第6回
6000-10000歩のウォーキングを再開、農作業による痛みはない。
疲労感が鼠径部にはでる。鼠径部は電気ていしんで対応、刺鍼が必要ない硬さになる。


第7回-9回
ストレッチと、ウォーキングでコントロールできている。旅行もできている。
FADIR test(-)

第10回
旅行で23000歩、翌日も痛みなし。
症状が安定しているため、股関節症状については終了となる。

施術を終えて

股関節症状には体重が大きな要素となりますが、この方の体型はやせ型であり、
体重のコントロールは必要ありませんでした。

股関節前深部には様々な組織(骨・筋肉・靭帯・血管・神経)が
複雑に入り組んでいます。

鍼のみで対応していた時よりも、電気ていしんを使い始めてからのほうが
「つまり感」「違和感」のような症状は軽減しやすい気がしています。

同時に、鍼が苦手な患者さんにも対応しやすくなりました。

また患者さんが熱心にストレッチ、ウォーキングなどに
取り組んでいただいたこと。施術ごとにご自身の症状把握に
努めていただいたことが大変参考になりました。

以上が順調な回復につながったと考えています。

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