「近い」は大事:同業者からのご紹介から

同業者からのご紹介:顔面神経麻痺の鍼灸症例

時折、同業の方から患者さんの紹介を受けることがあります。
今回は「顔面神経麻痺」を発症した高齢の患者さんでした。

「顔面神経麻痺」は発症してから最初の数カ月が西洋医学・東洋医学両方において非常に大事な時期です。当院でも最初の1.2カ月を重視しています。これについてはどの鍼灸院も同意見だと思います。
「顔面神経麻痺」は病態にもよりますが、初期に複数回の施術が必要となります。

今回はある高齢の患者さんの症例を通じて、鍼灸院受診における「距離」について書き記していきます。

*下記症例は患者さん個人が特定されないよう変更を加えております

患者:70代、女性
主訴:右顔面神経麻痺(ベル麻痺)

受診動機:インターネットで調べて鍼灸院に行ったが、思いのほか遠く、相談したところ自宅に近い当院を紹介された。

病歴
2週間前に右顔面神経麻痺(ベル麻痺)を発症、病院を受診、1週間ほど薬を服用したが
麻痺が残り、自ら鍼灸院をインターネットで探した。初診時の鍼灸施術の内容に満足するが、車で1時間ほどかかることから、継続した受診が難しいと感じて相談。比較的自宅に近い当院を紹介された。

左目がゴロゴロして、下がり、少し閉じづらい。口角も下がり、最も気になるのは口から水がこぼれること。味覚、聴覚には問題なし。発症前には大きなストレスがあった。


施術と経過

紹介先である鍼灸院は勉強会を通じて昔からお付き合いがあり、
初診時の医療面接での情報・診たてをメールにて送っていただきました。
それらを参考にしながら、当院でも医療面接を行い病歴・所見を確認します。
鍼灸施術は当院が2回目となりますが、経過は順調でした。顔面神経の走行に沿って触診、刺鍼するスタンダードな施術内容です。
過去の患者さんを思い返しても、この方は施術するたびに回復が進み、顔面の左右差が顕著に減っていきました。3回目で口角の下がりが減り、4回目で目のゴロゴロと口から水がこぼれることはなくなりました。予想より早い計5回の施術で終了となりました。

鍼灸院と自宅からの距離

今回は紹介元がお互いのことをよく知る同業者であり、紹介からの引継ぎが非常にスムーズに行われ、患者さんの通院による負担は軽減されました。患者さんの経過も順調であり、そのこと自体は喜ばしいことです。

一方で患者さんと鍼灸院の「距離」については思うところがあります。

当院の新規患者さんは紹介が7割、ホームページからが3割です。
そして遠方からお見えになられた方は、ほぼ全てと言っていいほどインターネットによる検索です。

今回は近隣の患者さんを紹介された形でしたが、県外からお見えになる患者さんもおられます。少しでも自分に合った鍼灸院を探し、遠路はるばるお越しいただけるのは、光栄でもあり申し訳なくも感じます。

通院への負担は距離による負担(時間・労力)、経済的負担などがあります。心身の調子が悪い時は更なる負担となり、なるべくなら減らしたいものです。特に今回のような高齢の患者さんの場合は言わずもがなです。

1回の施術で完結する病態であればいいのですが、複数回の継続した施術が必要な場合、「距離」に伴う負担は必ず生じます。それらを少しでも避けるには、「日常病」と呼ばれる鍼灸院でよく扱う疾患は「近い鍼灸院」を探されるのがお勧めです。(「顔面神経麻痺」は鍼灸院で扱う「日常病」といっていいと思います)

「近い」というのは鍼灸に限らず、医療においては非常に大事な要素のひとつです。
今回のような物理的距離だけでなく、患者・施術者間の良好な関係・距離感も含めてです。

とはいっても「鍼灸院」ってどこに行けばいいのだろう、探すのが難しいという話もよく聞きます。そのお気持ちもよくわかりますし、悩ましい点でもあります。

今回のように人となりがわかる信頼できる同業者とのつながりが解決策のひとつかもしれません。



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