末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)-鍼灸の役割

末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)-鍼灸の役割


顔面神経麻痺には様々な原因があります。主に、耳鼻咽喉科、脳神経外科、神経内科、麻酔科などで対応しています。まずは原因を特定することが先決です。

病気の内容・詳細については医療機関の発信するものを参考になされることをお勧めいたします。今回は顔面神経麻痺の中でも、末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)についてお伝えいたします。 

論文報告から考える
顔面神経麻痺に対して鍼灸が貢献できること

「鍼灸は顔面神経麻痺に効果がありますよ」だけではなく、医療全体の中で鍼灸はどういうケースで利用価値があるのかを鍼灸師個人の経験だけでなく、なるべく客観的な視点も加えて紹介していければと思います。

できる限り、今得られる情報の中での慎重な発信を考えています。 あわせて、医療情報は常に更新していきますので、その内容も随時追いかけていく予定です。

  末梢性顔面神経麻痺の原因ではベル麻痺が52~70%、ハント症候群が4.5~14%という研究があります。1.701名のベル麻痺患者を全く治療せずに観察したところ、自然治癒率は約70%であったと報告されています。

現在はステロイドを中心とした薬物療法が行われていますが。果たして鍼灸治療は薬物療法より回復を早めるのか、または併用すると回復が早まるのか、自然治癒率よりも効果が高いのかが鍼灸の利用価値のひとつの指標となると思います。

発症後7日以内に受診した末梢性顔面神経麻痺の患者61名の研究があります。1)
「急性期」の末梢性顔面神経麻痺が対象です。

  • 「ステロイド単独」
  • 「鍼治療単独」
  • 「ステロイドと鍼治療併用」

の3つの治療法を比較しています。

 結果は、どの治療法も回復はしていきますが、症状の程度にかかわらずステロイド療法が鍼治療よりも回復を早めています。またステロイドに鍼治療を併用しても、ステロイド単独と変わらず、また鍼治療併用をすることでより回復を早めることはないが、遅くすることもありませんでした。 

「急性期」の末梢性顔面神経麻痺については、発症して7日以内の治療が推奨されていおり、鍼治療よりもステロイドなどの薬物療法が第一選択となると結論付けています。
 この研究は日本の大学病院での研究です。
町の鍼灸院では急性期の患者さんの来院が多いかどうかは今のところ確かな情報を持っていません。 

経験から考える鍼灸治療の価値

私は、病院での治療がいったん終了し、発症してしばらくした後の顔のつっぱり感やこわばり、不快感などの後遺症を訴えられる方の対応をした経験の方が多くあります。

鍼だけでなく、痕の残らないお灸で対応することもあります。お灸は良く効く印象を持っています。急性期よりも、その後の時期に鍼灸の利用価値を感じています。

後遺症に対する薬物療法と鍼灸治療を比較する文献は残念ながらまだ見つけられていません。
最近の研究ではブロック注射と鍼灸を併用した方が有効だったとされている中国の研究などもありましたが、中身はまだまだ不明瞭な部分も多いです。 

鍼灸治療が急性期や後遺症に対して経験だけでなく、客観的にも第一選択となるような研究がでてきた時、再度ご紹介できればと思います。

 顔面神経麻痺については下記記事もご参考になさってください。

参考文献
1)末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療 新鮮例に対して全日本鍼灸学会雑誌第52巻1号

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