顎の痛み(鍼灸症例)
顎の痛み を引き起こす病気はいくつかあります。
鍼灸院では「口を開けない」「顎が痛む」「音がなる」といった症状がメインです。
顎が痛くなる病気は顎関節症が有名ですが、それだけではありませんので、1度は医療機関での診断をお勧めしています。顎の痛みは「歯科」「口腔外科」が専門となります。
顎関節症について
顎関節症は習慣的に、顎に力が入ることで、顎の関節や筋肉などを傷めます。
上下の歯は本来接してない状態が普通ですが、力が入っていると歯が接触、または噛みしめた状態となります。就寝中では歯ぎしりが起こります。
その状態が継続すると、顎を動かす咬筋、側頭筋の緊張が持続し痛みにつながります。
・ほおづえ・かみしめ:上下の歯を合わせる癖(TCH)
・固いものを食べる
・ガムをかむ
・ねころんで食べる
・大きな口をあけて食べる
以上の生活習慣がある方は注意が必要です
顎関節症に対する対応
軽症の場合は上記の生活習慣の改善、咬筋のマッサージ、開口ストレッチかみしめ癖のある方は、自宅の目につくところに付箋を貼り、それを見るたびに上下の歯を離し、肩の力を抜く習慣をつける
重症の場合は痛み止め・マウスピースなどが病院で処方されます。
鍼灸ではどのように対応しているかを下記症例を通じてご案内いたします。
*下記症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております
鍼灸症例
患者 40代 男性
主訴:左顎の痛み
現病歴
自分では頸・肩こりが原因で顎が痛くなったと思っている。3か月前から左首肩こりがひどく、口が開きにくくなり、だんだんひどくなってきている。 以前は体調がすぐれなくても一晩眠れば良くなっていたが、今回は睡眠でも改善せず、母の薦めもあり鍼灸を受けることにした。
口を十分に開けず、食事の際にこぼしてしまう、そのため人と食事ができないのが悩み。
左顎に痛みや、不快感を感じる。唇、舌がしびれる感じがする。
ゴキっと音がする。
よく噛めないせいからか、胃の調子もいまひとつ。
難聴やめまいなどはない。顎関節付近に指をいれると楽になる。
他にはパソコンの使用で左目が疲れたり、頸や肩がこる。
最近は寝つきも悪く、途中で目が覚めたり、
急に早く起きてしまったりと睡眠の質もよくなかった。
職場でのストレスもあるが、ゆううつな気分になるほどではなかった。特にこれまで大きな病気もなく、会社の健康診断でも問題はない。手や顔はしびれない。喫煙習慣あり、機会飲酒程度。
身体診察
血圧120/90㎜Hg左後頚部、肩上部に緊張。
左「天柱」、左第4,6頸椎椎間関節左「聴宮」、「大迎」、「頬車」に圧痛が認められた。
開口は2センチ程度可能
鍼灸施術と経過
鍼灸がはじめてであり、弱い刺激から少しずつはじめていきました。
施術頻度は1週間に1度。顎関節に関連する筋肉や、頚、肩を中心に鍼灸をしていきます。
第1回
ツボ「天柱」、「風池」、第4.5.6頸椎椎間関節、「下風池」、「扶突」、「膏肓」、「肩井」、「太陽」に置鍼15分。「下関」、「聴宮」、「大迎」に置鍼10分。 「百会」、「完骨」、胸椎際、「胃の六灸」に直接灸各3壮。
座位にて、顎関節周辺の圧痛、開口時の疼痛部位に単刺。 内側翼突筋に硬結が多く認められる。 座位での鍼が直後効果を患者さん自身も実感でき、開口時の変化を確認できる。
第2回(7日目)開口時の音がなくなる。下関の圧痛が消失。「頬車」、「聴宮」の圧痛、自覚痛は残存。治療は前回同様。
第3回(14日目)
痛みが10→3(7割減)「聴宮」付近に少し痛みが残る。前回の治療に加え、顎関節の硬結部位に旋撚、雀琢を軽く行う。
第4回(21日目)
口は以前のように開くようになりましたが、噛んだ時にまだ痛みが少し残りました。この頃には顎そのものより、頸、肩のこりの方が気になっています。 1か月後には休日出勤なども続き、疲れも出ましたが、それでも顎に関しては気にならない。
食欲も戻り、人と食事をするのも気にならなくなりました。
以前は十分な睡眠で翌日に疲れを持ち越しませんでしたが、今回は顎の痛みやそれに伴う睡眠障害もあり、疲れもとれず悪循環になっていたようです。
比較的早い段階から睡眠の質も戻り、仕事が忙しくても
眠ると回復できるように再びなられました。
仕事のストレス・疲労・首肩こり・顎の痛み・開口障害・睡眠障害・食事の問題、胃の問題と多くの問題がありました。
痛みの程度、口の開き具合など同じ顎の症状でも治療回数に個人差はありますが、顎の痛みは比較的鍼灸の効果を実感できる症状と考えています。 「ほおづえをつく、あくびをする、硬いものを食べる、大きいものを食べようとする」などには特に気を付けていただきたいと思います。