埼玉県春日部市の鍼灸院 はり・きゅう はりも

〒344-0058 埼玉県春日部市栄町1-279
Tel:048-763-5323
顔面症状

顔面神経麻痺(Bell麻痺)と鍼灸

顔面神経麻痺と鍼灸

「末梢性顔面神経麻痺」はある朝起きたら、顔面を中心に違和感を感じて
発症することが多いようです。

寝不足や、過労、ストレスなどが背景にあることが多いですが、
ヘルペスウィルスが主な原因となります。

記事の後半には顔面神経麻痺の鍼灸症例を紹介しています。

顔面神経麻痺の症状


顔面神経が顔の表情をつくる筋肉をうごかすため、顔面神経麻痺になると、
以下のような症状がでます。

・眉が上がらない

・目がつぶれない

・歯をむけない

・口がすぼめない

・鼻唇溝が浅くなる

・口角が下がる

・飲み物がもれる

他の症状

顔面神経は顔の表情だけでなく、味覚、唾液、涙などにも影響します。

以下の症状が多いと、回復に時間を要すると思われます。

・発汗障害

・味覚障害

・唾液分泌障害

・涙液分泌障害

・聴覚過敏

病院での治療


「顔面神経麻痺」の可能性がある場合は、まず「耳鼻科」を受診してください。

「顔面神経麻痺」の原因はウィルス感染以外にも様々なものがあります。

治療のメインとなる「副腎皮質ホルモン」は後に紹介する「病的共同運動」の
予防につながるとも言われています。

またENoGとよばれる電気生理学的検査により、顔面神経麻痺の重症度や
麻痺の回復期間を判定できる検査などもありますので、できるかぎり早く
病院への受診をお勧めします。




・入院・外来での副腎皮質ホルモン投与(10日-12日)

・抗ウィルス薬
・メチルコバラミン

(星状神経節ブロック注射)

原因


単純ヘルペスウィルス1型(HSV-1)の再活性化によって発症する。

ウィルスによる炎症で神経に浮腫が起き、「顔面神経管」という「管」を通る「顔面神経」が絞扼され様々な症状を引き起こすといわれています。

ベル麻痺とハント症候群で顔面神経麻痺の9割を占める。

予後


・8割は自然回復

・2割は半年かかることもあるといわれています。

・病的共同運動がある方は、後遺症が残ることがあります。

*病的共同運動:まばたきをすると、口角が動いたり、食事の際に涙が出たりなど
 自分の意志とは別に複数の箇所が同時に動いてしまうこと。
 遅発性といわれ、発症時ではなく、後からでてくる可能性がある症状。

顔面神経の走行

顔面神経 枝


顔面神経は枝分かれして、顔面の各部位につながっています。
そのため、様々な部位に症状があらわれます。

*神経の走行には破格も多く、必ずしも下記のようになっているわけではなく、
顔面神経の枝が複数の筋肉に分布する割合は個人差があるようです。

・側頭枝→前頭筋→眉毛・まぶたが下がる

・頬骨枝→眼輪筋→まぶたが閉じない(眼の痛み・涙目)

・頬筋枝→上唇挙筋・口輪筋→口角・上口唇が引き上げられない・鼻唇溝の消失

・下顎縁枝→口角下制筋→口角が引き下げられない

・頸枝→広頚筋

顔面神経が動かす顔の筋肉

顔面神経 筋肉

顔面神経が顔の表情をつくる様々な筋肉を動かします。

図にある筋肉はその一部となります。
「顔面神経麻痺」になると、これらの筋肉が麻痺することで、動きに制限が現れます。

顔面神経麻痺と鍼灸

顔面神経 ツボ

「顔面神経麻痺」に対する鍼灸施術は、顔面神経の走行上に位置する
いわゆる「ツボ」を使用します。

東洋医学的ないわゆる「ツボ」というよりは、顔面神経に関わる
解剖学的に重要な組織である筋肉、神経、血管が「ツボ」の位置に
近いということです。

「ツボ」をランドマークとして、触診により筋肉の拘縮や緊張、
冷えなどの反応を探します。

鍼やお灸を使うことで、神経周辺の血流を促し、回復を図ります。
また、麻痺した筋肉の動きを取り戻すことが目的となります。



浅い鍼を行い、20分ほど置きます。

電気温灸器で反応部位を中心に熱を加え、電気ていしんで
下記の静脈に沿って血流の改善を行います。

顔面神経は耳たぶの後ろ(翳風)から、顔に分布するため、
棒灸なども使用します。

側頸部・肩などの緊張も多いことから同時にそちらも施術しています。

顔面 静脈

鍼灸の施術の頻度は、重症度や発症してからの時間などにより異なります。
発症から2.3週間頃にお見えになる方が多く、最初の1.2か月は週に2-1回、
その後は2週間に1回くらいを目安としています。

顔面神経麻痺の鍼灸症例

50歳 男性
左顔面神経麻痺

現病歴

2週間前に左顔面部に違和感を感じ、翌日総合病院を受診。

ブレドニン、メチコバールを処方され、特に次の受診は決まっていない。
入院はなく、外来での点滴もなかった。

現在は、左目が完全に閉じれない、まぶしくてサングラスをしている。
頬が垂れる感じ。噛むときに力が入らない。

当初、耳鳴りはあったが、現在はない。
発汗、味覚に問題なし。

発症前は仕事が忙しく、ほとんど休まず。睡眠も3,4時間が平均。
外傷、風邪などはない。

鍼灸で治った人がいると聞き、鍼灸院を探してきた。
鍼灸受診経験はない。

初診

左上側臥位にて、セイリンJSP1寸3分・3番鍼にて置鍼20分。

前頭筋、眼輪筋、頬筋、上唇挙筋、口輪筋、口角挙筋、口角下制筋、
胸鎖乳突筋などを対象。

後頚部・側頚部・顔面部に電気ていしん。
しっかり睡眠をとって休むこと。顔面部、頚部を冷房などで冷やさないこと。

第2回

前回の施術に電気温灸器syoukiを加える。
口輪筋、上唇挙筋、前頭筋に緊張がみられる。

第3回

まぶしさはまだあるが、以前より目は閉じれるようになった。
上唇挙筋の緊張がまだある。

第4回

見た目が他人からみてもよくなっていると言われる。
鼻唇溝の左右差はほぼない。

目は特に改善を感じる。口の周りの力がでにくいこと、
頬がたれる感じはまだ残っている。

第5回

調子はよく。目は気にならない。

左口角外方、左頬部に5ミリほどの緊張部位が残っているが、
日常生活に支障はないとのこと。

経過をみることに。

参考文献


・顔面表情筋(眼輪筋および口輪筋)の支配神経に関する研究 昭和医会誌 第72巻 6号
・「ネッター解剖学アトラス」 南江堂
・「鍼灸師・柔道整復師のための局所解剖カラーアトラス」 南江堂

[文献]感熱灸は顔面神経麻痺患者に良好な治療効果をもたらす

糸上灸6

 

[文献]感熱灸は顔面神経麻痺患者により良好な治療効果をもたらす

[Thermosensitive Moxibustion Induces A Better Therapeutic Effect in the Treatment of Facial Paralysis Patients].

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30365264

 

*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので、原文での確認をお願いいたします。

 

顔面神経麻痺に対するお灸の治療効果の比較を行った報告です。

マイルドな熱刺激のお灸と、患者さんが熱を感じるくらいのお灸と
どちらが顔面神経麻痺の症状改善に貢献しているかを検証しています。

 
[目的]

顔面神経麻痺患者の治療における鍼治療介入と翳風穴(TE 17)における
感熱灸(TSM)と従来の軽度の灸(CMM)との効果の差を比較する。

 
[方法]
 
前向きコホート研究デザインを本研究で使用した。
翳風穴への灸刺激を感じる患者の主観によって、
183例の患者を感熱灸(局所的な熱浸透、熱の広がり、
深部組織のあたたかさなど)群(n = 132)、CMM群(n = 51) に分けた。
 
SPSS 19. 0ソフトウェアを用いた傾向スコアマッチング
(PSM、観察データの統計的マッチング技術)処理後、
TSM群で33例、CMM群で33例のアウトカムを分析した
 
1 stコース(10日間)、TSM群の患者では熱感が消失するまで翳風に、
CMM群の患者では翳風で45分間、
麻痺側には攅竹穴(BL 2)、陽白穴(GB 14)、四白穴(ST 2)、
顴髎穴(SI 18)、 頬車穴(ST 6)などへの鍼治療、浅刺にて鍼の
操作を1日1回30分行った。
 
2ndコース(10日間)では、1 stコースと同じ方法で鍼刺激を
同部位に行った。さらに両側の足三里穴(ST 36)に鍼の手技による刺激を加えた。
 
2コース間の間隔は2日間であった。
 
治療の前後に顔面神経麻痺の重症度をを評価するために、改良された
ポートマンスケール(眉毛が上にあがるかどうか、閉眼、頬の膨らみ、
拍動、歯をみせること、および鼻孔の広がり、お安静時の対称性)を使用した。
 
 
[結果]
 
治療後、Portmannのスコアは、2つのグループ(P <0.01)のそれぞれでの
治療前のスコアよりも有意に高く、CMM群よりもTSM群で顕著に
高かった(P <0.01)。 
TSMのより良い治療効果が提示された。
 
 
[結論]
 
感熱灸は、顔面麻痺患者の症状を改善するために
従来の軽度の灸よりかなり優れている
 
 
[読んでみて]
 
TSM,CMM群両方とも治療後のスコアの改善がみられるが、
特にTSM群の患者が感じるくらいの熱刺激のあるお灸の有効性が示唆された。
 
Thermosensitive Moxibustion=熱を感じるお灸、知熱灸のことでしょうか。

経験上も熱刺激を加えた方が、麻痺側のぼわーっとした独特の感覚が減り、
顔が軽くなる感じがして良いというフィードバックをいただくことがあります。

 
顔面部ということもあり、以前はもぐさのお灸を細かく行っていましたが、
安全面も考慮し電気のお灸で行うことが増えました。
より細かく熱刺激を加えられることや、患者さんも恐怖心がなく
安心して施術を受けていただくことができます。
 
 
参考記事
 
 
 
 
 
 

 

 

顎の痛み-鍼灸症例

顎の痛み

顎の痛み(鍼灸症例)

 

 顎の痛み を引き起こす病気はいくつかあります。

鍼灸院では「口を開けない」「顎が痛む」「音が鳴る」といった
症状がメインとなります。

顎が痛くなる病気は顎関節症が有名ですが、それだけではありませんので、
1度は医療機関での診断をお勧めしています。

 

*下記症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております
 

鍼灸症例

 
患者 40代 男性

主訴:左顎の痛み

 

現病歴

 自分では頸・肩こりが原因で顎が痛くなったと思っている。
3か月前から左首肩こりがひどく、口が開きにくくなり、
だんだんひどくなってきている。

 以前は体調がすぐれなくても一晩眠れば良くなっていたが、
今回は睡眠でも改善せず、母の薦めもあり鍼灸を受けることにした。
 
 口を十分に開けず、食事の際にこぼしてしまう、
そのため人と食事ができないのが悩み。

左顎に痛みや、不快感を感じる。唇、舌がしびれる感じがする。
ゴキっと音がする。

 よく噛めないせいからか、胃の調子もいまひとつ。
難聴やめまいなどはない。顎関節付近に指をいれると楽になる。


他にはパソコンの使用で左目が疲れたり、頸や肩がこる。
最近は寝つきも悪く、途中で目が覚めたり、
急に早く起きてしまったりと睡眠の質もよくなかった。

 職場でのストレスもあるが、ゆううつな気分になるほどではなかった。
特にこれまで大きな病気もなく、会社の健康診断でも問題はない。
手や顔はしびれない。


喫煙習慣あり、機会飲酒程度。
 
 
身体診察
 
血圧120/90㎜Hg
左後頚部、肩上部に緊張。
左「天柱」、左第4,6頸椎椎間関節
左「聴宮」、「大迎」、「頬車」に圧痛が認められた。
開口は2センチ程度可能
 
鍼灸施術と経過
 
 鍼灸がはじめてであり、弱い刺激から少しずつはじめていきました。
施術頻度は1週間に1度。顎関節に関連する筋肉や、頚、肩を中心に鍼灸をしていきます。
 
第1回
 ツボ「天柱」、「風池」、第4.5.6頸椎椎間関節、「下風池」、
「扶突」、「膏肓」、「肩井」、「太陽」に置鍼15分。
「下関」、「聴宮」、「大迎」に置鍼10分。

「百会」、「完骨」、胸椎際、「胃の六灸」に直接灸各3壮。
座位にて、顎関節周辺の圧痛、開口時の疼痛部位に単刺。

内側翼突筋に硬結が多く認められる。

座位での鍼が直後効果を患者さん自身も実感でき、開口時の変化を確認できる。

 
第2回(7日目)
開口時の音がなくなる。下関の圧痛が消失。「頬車」、「聴宮」の圧痛、
自覚痛は残存。治療は前回同様。
 
第3回(14日目)
痛みが10→3(7割減)「聴宮」付近に少し痛みが残る。前回の治療に加え、
顎関節の硬結部位に旋撚、雀琢を軽く行う。
 
第4回(21日目)
口は以前のように開くようになりましたが、噛んだ時にまだ痛みが少し残りました。
この頃には顎そのものより、頸、肩のこりの方が気になっています。
 
 1か月後には休日出勤なども続き、疲れも出ましたが、
それでも顎に関しては気にならない。
食欲も戻り、人と食事をするのも気にならなくなりました。

 以前は十分な睡眠で翌日に疲れを持ち越しませんでしたが、
今回は顎の痛みやそれに伴う睡眠障害もあり、疲れもとれず
悪循環になっていたようです。

 比較的早い段階から睡眠の質も戻り、仕事が忙しくても
眠ると回復できるように再びなられました。

 
 
仕事のストレス・疲労

首肩こり

顎の痛み・開口障害・睡眠障害

食事の問題、胃の問題と多くの問題がありました。
 
 
痛みの程度、口の開き具合など同じ顎の症状でも
治療回数に個人差はありますが、顎の痛みは
比較的鍼灸の効果を実感できる症状と考えています。
 
「ほおづえをつく、あくびをする、硬いものを食べる、大きいものを食べようとする」
などには特に気を付けていただきたいと思います。
 

鍼のひびきの研究-顔面神経麻痺(ベル麻痺)

鍼のひびきの研究-顔面神経麻痺(ベル麻痺)

 

前回は「鍼のひびき(得気)」について紹介いたしました。

今回は顔面神経麻痺における鍼のひびきについての研究について書きます。

原著論文は下記となります。

Effectiveness of strengthened stimulation during acupuncture
for the treatment of Bell palsy : a randomized controlled trial

 

2013年2月に発表された新しい研究です。方法は以下の通りです。

ベル麻痺の患者、338人が対象です。

プレドニゾロン(ステロイド)の治療は全員が受けています。

167人を鍼治療(ひびき(得気)有)と 
171人を鍼治療(ひびき(得気)無し)の2つのグループにランダムに分けています。

半年後の顔面神経機能を指標としています。

338人中、316人が最後まで経過観察されています。(追跡率93.5%)

結果は、鍼のひびき(得気)があった方のグループの方がひびきがなかった方の
グループよりも顔面神経の機能回復において良好であるというものでした。

 

前回は鍼のひびきの効果については不明な部分が多いというお話をいたしました。

今回は経験ではなく、実際の1つの研究において鍼のひびき(得気)の
有無が効果に影響しているということがわかりました。

 

こういった研究で、鍼灸のまだまだ不明な部分が少しずつ明らかになり、

経験知を裏付けることは患者さんにとっても、
治療者にとっても有益なことと思われます。

顔面神経麻痺については過去の記事、

「末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)-鍼灸治療の役割も参考にしてみてください。鍼のひびきの研究-顔面神経麻痺(ベル麻痺)

 

 

末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)-鍼灸の役割

末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)-鍼灸の役割

 

顔面神経麻痺には様々な原因があります。

主に、耳鼻咽喉科、脳神経外科、神経内科、
麻酔科などで対応しています。

まずは原因を特定することが先決です。

病気の内容・詳細については医療機関の発信するものを
参考になされることをお勧めいたします。

今回は顔面神経麻痺の中でも、
末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)についてお伝えいたします。

 

論文報告から考える:顔面神経麻痺に対して鍼灸が貢献できること


「鍼灸は顔面神経麻痺に効果がありますよ」だけではなく、
医療全体の中で鍼灸はどういうケースで利用価値があるのかを
鍼灸師個人の経験だけでなく、なるべく客観的な視点も加えて
紹介していければと思います。

できる限り、今得られる情報の中での慎重な発信を考えています。

 あわせて、医療情報は常に更新していきますので、
その内容も随時追いかけていく予定です。

 

 末梢性顔面神経麻痺の原因ではベル麻痺が52~70%、
ハント症候群が4.5~14%という研究があります。

1.701名のベル麻痺患者を全く治療せずに観察したところ、
自然治癒率は約70%であったと報告されています。

現在はステロイドを中心とした薬物療法が行われていますが。

果たして鍼灸治療は薬物療法より回復を早めるのか、
または併用すると回復が早まるのか、自然治癒率よりも
効果が高いのかが鍼灸の利用価値のひとつの指標となると思います。

発症後7日以内に受診した末梢性顔面神経麻痺の患者61名の研究があります。1)


「急性期」
の末梢性顔面神経麻痺が対象です。

  • 「ステロイド単独」
  • 「鍼治療単独」
  • 「ステロイドと鍼治療併用」

の3つの治療法を比較しています。

結果は、どの治療法も回復はしていきますが、症状の程度に
かかわらずステロイド療法が鍼治療よりも回復を早めています。

またステロイドに鍼治療を併用しても、ステロイド単独と変わらず、
また鍼治療併用をすることでより回復を早めることはないが、
遅くすることもありませんでした。

 

「急性期」の末梢性顔面神経麻痺については、発症して7日以内の
治療が推奨されていおり、鍼治療よりもステロイドなどの薬物療法が
第一選択となると結論付けています。

 

 この研究は日本の大学病院での研究です。町の鍼灸院では急性期の
患者さんの来院が多いかどうかは今のところ確かな情報を持っていません。

経験から考える鍼灸治療の価値


私は、病院での治療がいったん終了し、発症してしばらくした後の
顔のつっぱり感やこわばり、不快感などの後遺症を訴えられる方の
対応をした経験の方が多くあります。

鍼だけでなく、痕の残らないお灸で対応することもあります。
お灸は良く効く印象を持っています。

急性期よりも、その後の時期に鍼灸の利用価値を感じています。

後遺症に対する薬物療法と鍼灸治療を比較する文献は残念ながら
まだ見つけられていません。

最近の研究ではブロック注射と鍼灸を併用した方が有効だったと
されている中国の研究などもありましたが、中身はまだまだ
不明瞭な部分も多いです。

 

鍼灸治療が急性期や後遺症に対して経験だけでなく、客観的にも
第一選択となるような研究がでてきた時、再度ご紹介できればと思います。

 

顔面神経麻痺については「鍼のひびきの研究-顔面神経麻痺(ベル麻痺)」
ご参考になさってください。


参考文献

1)末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療 新鮮例に対して 
  全日本鍼灸学会雑誌第52巻1号

頬の痛み-鍼灸症例検討会

頬の痛み-症例検討会

「頬の痛み」が先日、定期的に参加している鍼灸の研修会でのテーマでした。

発表者が提示した症例の情報から、「頬の痛み」で想定する疾患や治療法などを参加者全員で検討します。どのような疾患が想定されるでしょうか。

 

三叉神経痛、顎関節症、帯状疱疹後神経痛、打撲、歯痛、副鼻腔炎、脳血管障害、心身症など様々な疾患が想定されます。

中には鍼灸不適応疾患もあり、病歴や所見によってはすぐに病院を受診していただかなくてはなりません。

今回は、病院受診後の鍼灸治療院受診であったことや、病歴や所見からも鍼灸不適応疾患の可能性が限りなく低いと判断されていました。鍼灸治療をし、無事に頬の痛みが消失した症例でした。

「非定型顔面痛」(持続性特発性顔面痛)という、あまり耳慣れないですが、国際頭痛分類に掲載されている疾患なども想定され、また三叉神経痛にしては合わない点などもありました。多様な意見が出され、中身の濃い症例検討であったと思います。

 

【文献】末梢性顔面神経麻痺に対する、星状神経節ブロックと鍼治療併用の効果

ブロック注射

末梢性顔面神経麻痺に対して、
星状神経節ブロックと鍼治療併用の効果

 

末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療の一論文について、
下記に紹介いたします。

 

Treatment of peripheral facial paralysis with acupuncture
 at Renying (ST 9) mainly cooperated with stellate ganglion block:
a randomized controlled trial

ランダム化比較試験:星状神経節ブロックと併用した人迎(ST9)穴への
鍼治療による末梢性顔面神経麻痺の治療

 

*2012年 中国の研究

↓原著はこちら

 

目的

末梢性顔面神経麻痺のより良い治療の開発のため

 

方法

120人の患者をランダムに3つのグループに振り分けた。

①一般的な鍼灸のグループ:陽白 (GB 14), 四白 (ST 2) , 
    迎香 (LI 20) を主要な治療点とした。 

②人迎(ST 9)穴をメインとしたグループ:
   人迎(ST 9)を主要な治療点とした。

③人迎(ST 9)穴と星状神経節ブロックをメインとしたグループ:
   人迎穴と星状神経節ブロック

 

毎日1回、 7回の治療を1セッションとした。

3セッションの後、ENoGで誘発電位の潜伏期と振幅,瞬目反射の
R1とR2値をそれぞれのグループで治療前、治療後で比較した。

総合的な治療評価は治療後に行われた。

 

結果

すべての治療で、ENoGの潜伏期間が短くなり、誘発電位の振幅が上昇した。

治療後では③グループは①グループと比較して潜伏期が優位に短くなった。(P < 0.05)

誘発電位の振幅においては、②のグループがほかの2つのグループと
比較して優位に上昇した。

治療後はそれぞれのグループでR1 R2の値が優位に短くなった。

R1 R2値の違いは②③グループが①グループと比べて、優位に高い値となった。

加えて、③グループは②グループよりもR1の値が優位に高くなった。

臨床的に顕著な治効率は

 

③人迎穴+星状神経節ブロック      87.5% (35/40)

②人迎穴              77.5% (31/40) 

①一般的な鍼治療         65.0% (26/40)

 

結論

一般的な鍼治療グループ(①)と比較して人迎穴グループ(②)、
人迎穴グループに星状神経節ブロックを加えたグループ(③)が
末梢性顔面麻痺に対してよりすぐれた効果をもたらした。

 

人迎穴の鍼と星状神経節ブロックの治療が顔面神経の傷によって
誘発された早期の反射?をより良くすることができる。

 

 読んでみて

末梢性顔面神経麻痺の疫学調査によるとベル麻痺の頻度が52-70%、
ハント症候群が4.5-14%となり。そのうちベル麻痺は無治療で
自然治癒するのが70%といわれている。

 

この文献の抄録からは、ベル麻痺の割合は不明。

発症してどれくらい経過しているのか、ENoGの具体的な数値も不明であった

この文献からは、人迎穴を使い、さらに星状神経節ブロックを加えると
良い結果が出ているが、星状神経節ブロック単独だとどうかぜひ知りたいところ。

人迎穴を顔面神経麻痺の治療部位として使用するのはあまり一般的な印象がない。

急性期の末梢性顔面神経麻痺に対しては、ステロイドによる薬物療法が
鍼治療より優れており、鍼治療を加えても回復が早まることは
なかったという報告がある1)

鍼治療がどういった病態の時に効果があるのか引き続き調べる必要がありそうです。

 

参考文献

1)粕谷大智。末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療 新鮮例に対して 

 全日本鍼灸学会雑誌第52巻1号1