【文献】末梢性顔面神経麻痺に対する、星状神経節ブロックと鍼治療併用の効果

末梢性顔面神経麻痺に対して、星状神経節ブロックと鍼治療併用の効果

末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療の一論文について、下記に紹介いたします。

Treatment of peripheral facial paralysis with acupunctureat Renying (ST 9) mainly cooperated with stellate ganglion block:a randomized controlled trial

ランダム化比較試験
星状神経節ブロックと併用した人迎(ST9)穴への鍼治療による末梢性顔面神経麻痺の治療
 *2012年 中国の研究

原著はこちら
末梢性顔面神経麻痺に対する星状神経節ブロックと鍼治療の併用


目的
末梢性顔面神経麻痺のより良い治療の開発のため

方法
120人の患者をランダムに3つのグループに振り分けた。
①一般的な鍼灸のグループ:陽白 (GB 14), 四白 (ST 2) ,迎香 (LI 20) を主要な治療点とした。 
②人迎(ST 9)穴をメインとしたグループ:人迎(ST 9)を主要な治療点とした。
③人迎(ST 9)穴と星状神経節ブロックをメインとしたグループ:人迎穴と星状神経節ブロック

毎日1回、 7回の治療を1セッションとした。
3セッションの後、ENoGで誘発電位の潜伏期と振幅,瞬目反射のR1とR2値をそれぞれのグループで治療前、治療後で比較した。総合的な治療評価は治療後に行われた。

結果
すべての治療で、ENoGの潜伏期間が短くなり、誘発電位の振幅が上昇した。
治療後では③グループは①グループと比較して潜伏期が優位に短くなった。(P < 0.05)
誘発電位の振幅においては、②のグループがほかの2つのグループと比較して優位に上昇した。

治療後はそれぞれのグループでR1 R2の値が優位に短くなった。
R1 R2値の違いは②③グループが①グループと比べて、優位に高い値となった。
加えて、③グループは②グループよりもR1の値が優位に高くなった。
臨床的に顕著な治効率は

③人迎穴+星状神経節ブロック      87.5% (35/40)
②人迎穴              77.5% (31/40) 
①一般的な鍼治療         65.0% (26/40)

結論
一般的な鍼治療グループ(①)と比較して人迎穴グループ(②)、人迎穴グループに星状神経節ブロックを加えたグループ(③)が末梢性顔面麻痺に対してよりすぐれた効果をもたらした。人迎穴の鍼と星状神経節ブロックの治療が顔面神経の傷によって誘発された早期の反射?をより良くすることができる。

 読んでみて
末梢性顔面神経麻痺の疫学調査によるとベル麻痺の頻度が52-70%、ハント症候群が4.5-14%となり。そのうちベル麻痺は無治療で自然治癒するのが70%といわれている。

この文献の抄録からは、ベル麻痺の割合は不明。
発症してどれくらい経過しているのか、ENoGの具体的な数値も不明であった。
この文献からは、人迎穴を使い、さらに星状神経節ブロックを加えると良い結果が出ているが、星状神経節ブロック単独だとどうかぜひ知りたいところ。

人迎穴を顔面神経麻痺の治療部位として使用するのはあまり一般的な印象がない。
急性期の末梢性顔面神経麻痺に対しては、ステロイドによる薬物療法が鍼治療より優れており、鍼治療を加えても回復が早まることはなかったという報告がある1)

鍼治療がどういった病態の時に効果があるのか引き続き調べる必要がありそうです。


参考文献
1)粕谷大智。末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療 新鮮例に対して 
 全日本鍼灸学会雑誌第52巻1号1

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