頸、肩、腕、指の痛み、しびれ-当院の鍼灸症例

頸、肩、腕、指の痛み、しびれ-当院の鍼灸症例

鍼灸とはどういう施術なのか、なかなか患者さん側からは見えにくいものだと思います。
鍼灸の施術方法は様々です。

痛いと訴えている部位に鍼をする先生もおられる一方で、痛い場所には一切施術をせずに、東洋思想を背景として、手や足だけに鍼やお灸をされる先生もおられます。
(良し悪しや優劣ではなく、あくまで違いであり、ここでは当院での一例をあげています)

当院の施術法については、一例をもとに記した方が、より具体的だと思いましたので、
少し長いですがお読みいただければとおもいます。
*下記症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております。

鍼灸症例

患者:40代 男性

主訴:右側の頸・肩・腕・指の痛み、しびれ

患者さんの考え
1年以上前から右側の頸・肩・腕・指に痛みとしびれを感じる。牽引をしていたが最近は改善せず、夜も眠れないほど痛みが増している。
以前にぎっくり腰が鍼灸で良くなった経験があるので、なんとかしたいと思っている。

現病歴
頸を動かすと肩・腕・指に痛みやしびれが生じる。特にうがいをするとつらい。
肩は肩甲骨の内側や、肩関節の周り、腕は右肘の外側に痛みがある。
しびれは特に右の親指であることが多く、頸を動かさなくてもしびれている。
腕をあげると肩に痛みがあり、挙げられない時もある。

以前レントゲンをとったときに、頸椎の5番、6番が悪いと言われた。数ケ月前から、工事現場で今までとは違う重機を使うようになり、確認のためあちこち見るようになった。

ヘルメットも頸の負担になる。自宅ではカラーをまいたり、湿布をして対応しているがあまり改善されない。
左側には症状はなく、足にも問題はない。特に大きな病気やケガなどもない。

身体診察 
頸椎5番・6番周囲の圧痛と肩に放散痛を認める。

アセスメント(分析・判断) 
あちこちに痛み・しびれはありますが、患者さんのお話から頸の動き・負担によって痛みが再現されています。
またレントゲンでも頸椎5番・6番の問題が確認されています。

そして肩甲骨の内側、肘の外側、親指の症状は、頸から出る神経の症状として解剖学的に理に適っています。「頸椎症性神経根症」と判断しました。

 施術方針 
お仕事の都合で2週間に1回の頻度。原因部位と思われる頸椎の5番・6番を中心に、肩、腕などを対象とし、痛みとしびれの改善を目標としました。

 経過
1回目 
施術直後は頸の「痛み」は軽減するが、肩・肘については少し変化があった程度。

2回目 
「痛み」についてはかなり軽減されるが、「しびれ」は変化に乏しい。

3回目 
鍼を置く時間を長くしたところ、寝返りや枕に頭を乗せるときに頚をあげても痛くならない。

4回目 
頸を後ろに反らない限り痛まない。腕を上げても痛くならない。痛みとしびれが減り、よく眠れる。

5回目 
頸・肩・腕にはほとんど痛みは感じない。右の親指の先端にほんの少ししびれがあるかなというところ。

6回目 
仕事の内容が首に負担がかかるものとなったが、疲れはあるものの痛みやしびれは再発しない。

まとめ

肩が痛い、腕が上がらないとなると、五十肩が思い浮かびます。
頚が原因での肩の痛み・しびれは鍼灸院では珍しくありません。
頚を動かすと肩や腕の痛みが再現され、頸にかかわる特定の神経の走行に沿ったものであれば、頚が原因の可能性が高まります。

今回の症状は複数箇所に認められますが、ほぼ同時に起こっています。
患者さんの年齢(高齢者ではない)を考えると、頸・肩・腕・指それぞれに別々の病気が偶然同時におこっていると考えるよりも、単一の原因があって複数箇所に症状をおこしていると考える方が妥当と判断しました。
そのため、頸を中心とした施術方針を立てています。

 「しびれ」が長期間にわたり続くと、鍼をしても何割かは残ってしまいます。
今回も1年以上前からのしびれだったため、どこまで改善できるかは未知数でしたが、3回目以降からは症状軽減のスピードがあがりました。「しびれ」はできる限り早期に治療された方が経験的にも良い印象があります。

今回のように長期の「しびれ」でも、こちらの予想を超えた回復をみせます。その程度は患者さんによってばらつきがありますが、鍼灸をする価値は十分にあると考えています。
 以前は脳梗塞後のリハビリが6か月を超えると効果が乏しいといわれていましたが、ここ数年では6か月以降も回復がみこめるという考えに変わってきています。

今回は末梢のしびれでしたが、長期の「しびれ」についても挑戦していきたいと思います。
当院の施術方法・過程を症例を通じてお話しいたしました。
長文になりましたが、なんとなくイメージがつかめましたでしょうか。
患者さんの話される内容から、原因を探し、論理的に無理のない判断をして施術をすることを心がけています。

関連記事

PAGE TOP