急性低音障害型感音難聴の鍼灸症例

急性低音障害型感音難聴の鍼灸症例


こちらの症例は患者さん個人が特定されないように変更を加えております。

患者 
70代、女性

主訴
右耳の突然の難聴・耳鳴り・閉塞感

受診動機
突発性難聴で鍼灸受診経験のある家族のアドバイスで当院を受診した。

病歴

4日前、突然右の耳が聞こえづらくなる。蚊がいるような耳鳴り、
閉塞感がある。めまい・頭痛なし、顔・手足のしびれなし。

3日前に近隣の耳鼻科を受診、服薬を開始する。
カリクレイン・トリノシン・メチコバール・リンデロン

現在、2割ほど症状が軽減している。
医師からは診断名は言われず、「高音」「低音」どちらの
難聴かは伝えられなかった。自分では「低音」だと思う。

随伴症状は首・肩こり、背中の張り。鍼灸受診経験有

食欲正常数年来の睡眠障害健康診断・血圧などに問題はない。

所見

「風池」付近の圧迫で、耳症状が少し強くなる。
乳様突起周囲のむくみ、肩上部の緊張側頭部の筋張りなどが認められた。

初診

右上側臥位にて、頚部、後頭部、肩上部、側頭部、
顎関節部などの緊張を和らげ、循環改善を促す。上記部位に電気ていしんを使用。
「翳風」「天柱」「風池」「聴宮」「下関」「角孫」などへの置鍼15分。
水分摂取となるべく身体に無理のない生活を、心がけていただく。
難聴が「低音」か「高音」かを医師に確認していただくようお願いする

第2回(6日目)

耳鼻科からのステロイドの量が朝3錠 昼2錠 夜1錠から
朝1錠 昼1錠 夜0 となる。
医師から「急性低音障害型感音難聴」と伝えられる。
昨日、本日と少し楽。
耳栓をしていると耳閉感が楽だが、「ファンファン」と反響がある。
聞こえにくさは感じにくく、蚊の音はない。
電気ていしんで大迎-完骨をつないだ刺激を加え電気温灸器で
乳様突起から側頸部、後頭部に熱を加え、緊張を緩め、循環改善を図る。
手足のツボにも数か所、鍼を加える
また睡眠の質が少しでも改善できるように、首・肩の緊張を取るようにした。

第3回(8日目)

蚊の音、耳鳴りは消える。つまり感もない難聴は感じない
「ボワンボワン」と自分の声、テレビの音が反響する。
起床時はすっきりしている
家事を少しずつ、以前のようにするようになった。
気になっていた家事を再開でき、気分が良い。

第4回(11日目)

耳鼻科にて聴力の回復がオージオグラムで確認された。
ステロイドは終了した。
蚊の音もない閉塞感もぬけてくれる。昨日は1日中、
スッキリしていた。
周囲の音に反応して「ボワンボワン」と反響するのは少し残っている。
側頭部「角孫」付近の圧痛を訴えられる。
同部位に硬結も確認できたため、水平刺で置鍼10分、
その後、硬結縮小を確認した。
発症前の習慣だった「ラジオ」を聞くことが苦痛ではなくなった。

第5回(15日目)

前回施術後、2日間ほど「ポワンポワン」した反響音はなかった。
しかしながら、昨日、本日とあったりなかったりが続いている。

施術を終えて

早期の耳鼻科の受診、「急性低音障害型感音難聴」であったこと。
鍼灸施術のタイミングが早かったなどの「好条件」があり、
妥当な経過をたどったように思えます。
難聴・耳鳴り・耳閉感については改善。反響音については、
日によって変化がある状態で終了となりました。
生活面においては、ご家族の協力もあり、患者さん自身の
負担の軽減につながったと思われます。
お見えになるごとに、症状が少しずつ軽減され、
ご本人の表情からも安心感がうかがえました。

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