埼玉県春日部市の鍼灸院 はり・きゅう はりも

〒344-0058 埼玉県春日部市栄町1-279
Tel:048-763-5323
下肢症状

足底腱膜炎と鍼灸

足底腱膜炎

足底腱膜炎と鍼灸

「足底腱膜炎」は踵から足の裏の指まで広がる「足底腱膜」に問題があり
痛みを起こします。主に踵に強い痛みを感じます。

朝起きた時の第1歩目や、長距離ランナー、飲食業など長時間の
立ち仕事に従事する方に多い症状です。

今回は「足底腱膜炎」についてご案内いたします。

足底腱膜炎の症状

・起床時の第一歩目の痛み
(足根管症候群と症状が同じため区別が必要)

・踵の内側の痛み(踵以外にも痛みを訴えます)

・階段の上り・爪先立ちで痛む

足底腱膜炎になりやすい人

荷重により踵に負荷がかかり、足底腱膜やアキレス腱を繰り返し
動かす動作の多い方になりやすい傾向があります。

・長時間の立ち仕事・歩行

・肥満

・長距離ランナー

・ダンサー

・偏平足

足底腱膜炎になる原因

足底筋膜と踵の骨への繰り返す負荷が、 足底腱膜の
付着部である踵の内側に痛みをおこします。

足底腱膜周辺の解剖

足底腱膜

・踵の内側から足の裏の指に広がっています。
(踵骨隆起内側から第1-5基節骨に付着)


・腱膜が始まる付近に、脛の神経の枝があり、
 痛みに関係することがあります。
(腱膜起始部から脛骨神経の枝、外側足底神経に影響)


・アキレス腱の動きとの連動により痛みが生じます。
(踵の骨膜を通じてアキレス腱につながる)


・足底腱膜の内外側に隣接している筋肉の影響を受けます。
(足底腱膜の内側:母趾外転筋)
(足底腱膜の外側:小趾外転筋)


・足底腱膜より深いところにある筋肉・靭帯の影響を受けます。
 (短趾屈筋が踵骨の内側に付着・長足底靭帯が踵骨に付着)


・ 踵骨付着部に最も負担がかかる といわれています。


・ 足底腱膜より浅いところに脂肪体があります。
 (踵骨下脂肪体・加齢で柔軟性低下)

足底腱膜炎の身体の状態

足・足の指・足の裏・ふくらはぎ(下腿三頭筋)が硬くなっています。

・足関節背屈制限

・ふくらはぎの緊張

・足底腱膜の緊張

・足指の筋力・機能低下

足底腱膜炎の所見

・踵骨内側の圧痛

・足趾・足関節の筋力低下

・ 踵骨棘が合併

足底腱膜炎の施術方針

・疼痛を誘発する運動の中止

・足底腱膜が緊張→踵の付着部の緊張緩和→アキレス腱のストレッチなど

・足底腱膜が弱化→付着部の荷重要素軽減
 →足趾・足関節の筋力強化・脂肪体・靭帯をやわらかく

足底腱膜炎の鍼灸施術

前項の「足底腱膜周辺の解剖」で述べた、問題のある部分へのアプローチが
中心となります。


・下腿三頭筋への刺鍼

・アキレス腱付着部への刺鍼

・踵内側の疼痛部位への刺鍼

・足底腱膜・踵骨下脂肪体への熱刺激

・足底・足指間・足関節周囲・下腿内側の循環改善

・足底腱膜・下腿三頭筋のストレッチ

・足指の筋力強化(荷重しない状態で)


鍼灸の施術をお受けになる前に

足底腱膜炎は重症度によって、痛みも異なります。

病院では痛み止めの処方、ヒアルロン酸・ステロイドの注射
医院によっては体外衝撃波などの機器があります。

またインソールなども有効な場合があります。

まずは病院で「足底腱膜炎」かどうかをしっかりと
診断をしていただくことが重要です。

踵が痛いから、「足底腱膜炎」だと
自己判断されないことは大事なことです。

「足底腱膜炎」の鍼灸症例については後日、ご案内いたします。

足関節捻挫の後遺症

足関節捻挫の後遺症

 

足関節捻挫の後遺症

 足関節の捻挫はスポーツ、階段の踏みはずしなどで
よくおきる頻度の高いものです。

特に足関節を内側にひねることで、外くるぶし周囲の靭帯が損傷します。

痛み、腫れ、内出血、関節が不安定になるなどの症状により、歩行に支障をきたします。

捻挫の初期では、安静、冷やす、圧迫、挙上といった「RICE処置」を適切に行います。

そして骨の損傷がないかを確認し、レントゲンをとります。

受傷してから一刻もはやくこの処置を行うかが大切です。
湿布などよりも、氷嚢や氷水などでしっかりと冷やすことが肝心です。

「初期の捻挫」は骨折の確認のためなどもあり整形外科、
その後に接骨院を訪れる方が多いようです。


そのため、当院では受傷直後の捻挫の患者さんは
あまり来院されません。

今回ご案内するのは「初期の捻挫」ではなく、
受傷から数か月経過した「捻挫の後遺症」についてです。

 

足関節捻挫の後遺症

捻挫の後遺症は主に「痛み」「足関節の不安定性」があるといわれています。

日常生活よりも、より負荷のかかる動作、姿勢で「痛み」が出ます。

特に「痛み」について、下記2名の患者さんの鍼灸施術の症例を通じてご案内いたします。

 

鍼灸施術症例
(患者さん個人が特定されないよう内容に変更を加えています)

患者①:10代、男性、サッカー部
主訴:右足関節の痛み

病歴

 4か月前に、サッカーの試合中に右足関節をひねった。
整形外科にて「足関節内反捻挫」と診断。

骨には異常はない。湿布などを処方され、
自宅でRICE処置を行った。

受傷後1.2か月で良くなると思っていたが、
3週間後に大切な試合があるのに痛みがまだある。

現在日常生活には支障はない。

特にサッカーのインステップキック
(強く、遠くへボールを飛ばすキックで、足首を伸ばし、足関節にボールをのせて蹴る)で
足首が痛くて蹴れない。

ダッシュからの方向転換で痛みがある。

身体診察

圧痛部位は「踵腓靭帯」に認められ、特に足関節内反位で
コリコリした硬結を確認。

「前距腓靭帯」「後距腓靭帯」「前脛腓靭帯」
「後脛腓靭帯」には所見は認められない。

自動、他動による足関節の内反、外反では痛みは感じない。

鍼灸施術の中身と経過

初診

右上側臥位にて「踵腓靭帯」、前脛骨筋、腓骨筋に50㎜4番鍼にて鍼通電。
「前距腓靭帯」「後距腓靭帯」に単刺などを行うが、足関節自体は軽くなるものの、
インステップキックでは痛みが残る。

2診
「踵腓靭帯」への鍼を太めのものに変更し、鍼通電。刺激が強くならないよう、

揉捻を念入りに、刺入を慎重に行う。施術直後インステップキックは蹴れる。
 ただ、怖さもあるため、まだ100%の力では蹴れない。

3診
前回施術後完全ではないが、80%ほどの力でインステップキックは
蹴られるようになった。施術は前回同様、数日後に試合のため終了とする。

2週間、計3回の施術となりました。試合には無事出場となりました。

足関節の捻挫による後遺症の痛みに対しては、
あまり細い鍼だと効果が乏しいとケースがあります。
それでも初診時は様子を見る意味も含め、比較的弱めの鍼から始めています。

患者②:30代、男性
主訴:左足関節の痛み

病歴

2か月前に左足関節の捻挫、ご自身でRICE処置を行い、
1週間後には普通に歩けるようになる。

趣味で行っている格闘技の「キック」のインパクトの際に痛みがでる。

接骨院で週に3回電気治療を行うが、短期・長期ともに効果を実感できない。

「キック」だけでなく、「そんきょ」の姿勢でも痛みがあり、
「正座」のように足関節が伸ばされて体重が載る姿勢が維持できない。

歩行は大丈夫だが、下り坂では痛みや違和感を感じる。

 

身体診察

「前距腓靭帯」に圧痛が認められる。
足関節内反位で触診するとより著明に確認できる。
少しむくみもある。

他の靭帯については所見が認められない。
前脛骨筋、腓骨筋が患側の左側に緊張が強くみられる。

鍼灸施術の内容と経過

初診

以前に他の症状で鍼の経験があるため、
「前距腓靭帯」に60㎜8番鍼、前脛骨筋、腓骨筋に
50㎜4番鍼にて鍼通電を行う。

外果付近のむくみには電気ていしんを使用。

施術後「そんきょ」「正座」を試してみるが、

楽にはなっているものの「正座」はまだできない。

自宅でせんねん灸を靭帯周囲に行っていただく。

2診
施術内容は前回同様で行うが、足関節内反位で単刺。
さらに正座が数秒は可能のため、その姿勢で単刺を行う。

自宅灸は引き続きお願いする。

3診
施術内容は前回同様。
足関節内反位や正座などで靭帯をより浮きだたせて
伸ばした状態での鍼が効果的と考えられる。

そんきょ、正座はできるようになる。

8日間、計3回の施術となりました。

患者さんが鍼の経験があり、
刺激量と施術効果の説明について納得いただきました。

また接骨院での経過が芳しくなく、
格闘技での負担が決して軽いものではなかったため、
太めの鍼で施術をいたしました。

また自宅でのお灸なども回復を促した要因ではないかと思っています。

患者③:10歳以下、男性

主訴:右足関節外側の痛み

病歴1か月半前にサッカーで受傷。1か月安静にし、練習を休む。
日常生活、歩行、ランニング、ダッシュでは痛みがない。
インステップキックのみで痛みがある。
10日後に大事な試合がある。

身体診察:右足関節内反位で前距腓靭帯周囲に痛み。

前距腓靭帯に最大圧痛。後距腓靭帯も圧痛が少し。

左に比べ、右腓骨筋に著明な緊張。

外果周囲に浮腫みが認められる。

鍼灸施術の内容と経過

方針:患者さんの年齢が10歳以下であり、鍼灸経験もないため
弱刺激から始める。

1回目

外果周囲のむくみ、腓骨筋の緊張緩和のため、微弱な電気ていしんを使用。
電気温灸器も併用。10分程。

臥位での足関節内反位での痛みが5割ほど軽減

前・後距腓靭帯に細い鍼で2本置鍼。
臥位での足関節内反に対する抵抗運動で痛みがわずかに残る。

自宅でうつ伏せでゲームをする習慣があったため、
足関節が底屈位にならないようにアドバイスを行う。

練習ではインステップキックをまだ蹴らない

練習後はアイシングをする

腓骨筋をさする程度のマッサージは良いが、

靭帯は触らないように伝える。

2回目

靭帯の圧痛はわずか。

臥位での内反位では痛みなし。腓骨筋の緊張も左右差がない。

施術は前回同様。
施術後、インステップキック8割までは痛みなし。

3回目

練習時にインステップキックを行ったが痛みなし。

1か月安静にしていたため、練習の疲れで

ふくらはぎにだるさがある。

前回の施術に加え、ふくらはぎのだるさに対し、

電気ていしんとオイルマッサージを加える。

初診時から10日間でしたが、痛みなく試合には出られました。
①②の症例と違い、10歳以下の患者さんのため、
太い鍼を使うわけにもいきませんでした。

受傷後1か月間、安静にしていただいたき、
当院来院後の10日間、アドバイスやセルフケアをしっかり
行っていただいたことが回復への大きな要因かと思います。

捻挫受傷後、無理に練習や試合に出たりなどは本当に避けていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

腸脛靭帯炎・ランナーズニーの原因と対策

 

ランナーズニー

 
「膝の外側が痛い」「走る習慣がある」はランナーズニーの可能性があります

今回はランナーの方に多い
「腸脛靭帯炎・ランナーズニー」の原因と対策についてお伝えします。

ランナー初心者の方にもセルフケアを紹介していますので、
ぜひご覧ください。

 

目次:「腸脛靭帯炎・ランナーズニーの原因と対策」

  • 腸脛靭帯炎・ランナーズニーについて
  • 腸脛靭帯にかかわる解剖
  • 腸脛靭帯の働き
  • 腸脛靭帯炎・ランナーズニーの原因
  • セルフケア
  • 腸脛靭帯炎・ランナーズニーへの対
  • 鍼灸院でのアプローチの一例

 

腸脛靭帯炎・ランナーズニーについて

 「繰り返す膝の曲げ伸ばし+背景=膝の外側の痛み」
 
ランニングなど、繰り返す膝の曲げ伸ばし(屈曲・伸展)で腸脛靭帯と
大腿骨(太もも)との間で摩擦がおきます。
 
摩擦の結果、大腿骨外側上顆付近、
腸脛靭帯と深部にある脂肪組織に
炎症がおきます。
 
そして膝から大腿の外側に
痛みを感じます。
これが「腸脛靭帯炎・ランナーズニー」と言います。
 
 
繰り返す動作の他に、以下のような背景が
あると腸脛靭帯炎を誘発しやすくなります。
 
  • 筋肉の柔軟性の低下・異常な緊張
  • O脚や足部の回内などのアライメント(姿勢や骨の整列具合)
  • シューズの問題
  • 練習量の増加
  • ランニングにおける環境(傾斜・下り坂)などが考えられます。
 

腸脛靭帯に関わる解剖

腸脛靭帯炎
 
腸脛靭帯は太ももの外側にあります。
大腿筋膜張筋という筋肉からはじまって、
脛骨という脛の骨の外側についています。
 
腸脛靭帯の浅層、深層によって、
膝蓋骨、脛骨と別々に付着しているとも言われています。
 
大腿筋膜張筋は骨盤の一部である腸骨からはじまっています。
 
腸脛靭帯の緊張には解剖学的に様々な筋肉のつながりが関係しています。
 
他の筋肉の状態が腸脛靭帯の緊張につながる一例として、
大腿四頭筋のひとつである外側広筋は大腿筋膜張筋におおわれています。
 
深部にある外側広筋が緊張すると内圧が上がり、大腿筋膜の緊張につながり、結果として腸脛靭帯の緊張につながることがあります。
 
大腿筋膜張筋は外側広筋だけでなく、中殿筋、縫工筋、腸骨筋、大殿筋、筋膜で連結しており、これらの筋肉も立体的に様々な筋肉と連結しているので互いに影響をうけます。
 
筋肉の偏りのある緊張状態が続くことにより、アライメントへの影響が予想されることから
腸脛靭帯だけでなく、関連する筋肉の状態を確認する必要があります。

どの筋肉が腸脛靭帯の緊張に影響を与えているかにより、治療部位やセルフケアの中身も変わってきます。

 

腸脛靭帯の働き

 
腸脛靭帯は膝の曲げ伸ばし(屈曲・伸展)の働きがあります。
 
そして膝を曲げる(屈曲)と、下腿が内側にねじられ、腸脛靭帯は前内下方に引っ張られます。
 
その結果、腸脛靭帯の緊張が強くなります。
 
 

腸脛靭帯炎・ランナーズニーの原因

 
以上のように腸脛靭帯周辺の解剖や働きから、
  • 繰り返す膝の曲げ伸ばしによる
    脂肪体との「摩擦」

  • 膝を曲げることで下腿が内側にねじられ、腸脛靭帯にかかる
    「牽引ストレス」

  • 関連する筋肉の過緊張による腸脛靭帯の「二次的緊張」

 そして、これらの負担を強くする具体的状況が、
先ほどあげたものになります。
 
  • 筋肉の柔軟性の低下・異常な緊張
  • O脚や足部の回内などのアライメント(姿勢や骨の整列具合)
  • シューズの問題
  • 練習量の増加
  • ランニングにおける環境
    (傾斜・下り坂)
 

セルフケア

ストレッチ

 

  • 安静
  • 十分なウォームアップ
  • ストレッチ:腸脛靭帯以外の過緊張している筋肉を中心に
  • 道路の傾斜・下り坂
  • フォームのチェック:ストライドが広すぎないか
  • シューズ(O脚だと小指側に体重がのり、腸脛靭帯に負担)
  • 練習量の再考

 

腸脛靭帯炎・ランナーズニーへの対策

 腸脛靭帯や大腿筋膜張筋だけへのアプローチでは、簡単には改善しにくい印象があります。

ランナーの方はトレーニング量も多く、
またフルマラソンに挑戦している方も増えています。

腸脛靭帯、大腿筋膜張筋そのものと、関連する筋肉、特に殿筋群、腸腰筋の緊張を取ること。
筋肉と筋肉の間の溝を意識して緩めるようにしていきます。

また腸骨前面には多くの筋肉の起始部があり、緊張やむくみなどで鼡径部付近まで硬くなっています。

くるぶし付近がむくんでいたりすることもあります。

患者さんのセルフケア、練習や体調のフィードバックをいただいてアプローチ方法を検討、変更して臨んでいます。

特に疲労回復については、情報をさらに発信していきたいと思っています。

 

鍼灸院でのアプローチの一例

 

30代、男性、会社員、左膝外側部痛
半年後のマラソンに向けて、練習を始めるが10㎞程度で左膝外側部に痛みが生じる。

腰痛(-) 臀部痛(-) しびれ(-) パトリックテスト(-) グラスピングテスト(+)

腸脛靭帯炎として施術開始

1回目
 横向きで左臀部・腸脛靭帯の緊張部位・むくみを中心に
電気治療器・温灸器・数本の鍼・マッサージを行う。

初診のため、軽刺激。

2回目
 15㎞で痛み。練習量が増え20㎞を走るようになる。
左臀部に時折りチクっとした痛み。
脛に張った感じがある。

施術範囲を広げ、脛、鼡径部の浮腫みを
取ること。
動きの乏しい足指・膝のお皿の動きがでるように。

2回目からは腰から足指までの
全ての緊張を施術対象とする。

3回目
 臀部の痛みは消失。
腸脛靭帯の付着部にまだ顕著な緊張。この部位のみ鍼を使う。

4回目
マラソン2週間前のため、練習量減。
腸脛靭帯の付着部を念入りにゆるめ、
右下肢も浮腫みをとり左右のバランスの調整。
疲労感軽減を目的とした施術。

マラソン当日、左膝外側の痛みなく完走。

練習量が増えてくると、下肢全体に浮腫みや疲労感がでてきます。

練習を継続できるよう、浮腫みを取りつつも、
腸脛靭帯に関わる直接・間接的な筋緊張を
取ることを意識して施術しました。

 

市民マラソンの盛り上がりなどもあってか、ここ最近は性別、年齢を問わず走る方が増えています。

当院の近隣の内牧公園、北春日部周辺の田畑でも多くのランナーを目にします。
春日部市は大凧マラソンもありますね。

ランナーの皆さんにはケガ無く、楽しんでいただきたいと思います。

2019-03-18 更新

 

 

参考文献

  • 運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学(医学書院)
  • 骨格筋の形と触察法(大峰閣)
  • ネッター解剖学アトラス(南江堂)

 

閉鎖神経痛-太ももの内側が痛い:鍼灸症例

 閉鎖神経痛

 

「太ももの内側が痛い」理由

 太ももの内側に痛みを伴う「閉鎖神経痛」の症例を紹介いたします。

 太ももの内側に痛みを起こす病気は複数あります。

*下記症例は患者さん個人が特定されないよう、内容に変更を加えております。

 

鍼灸施術症例

患者
50歳代、女性
左大腿内側の痛みを訴えて来院された。
旅行中に痛みがでてきた。

歩きすぎが原因だと思っている。
痛くなってから自分なりに様々な対策をしているが、
効果がなく仕事や日常生活に支障がでている。

主訴「左大腿内側の痛み」

現病歴

半年くらい前、旅行中に左大腿内側が痛くなった。
痛みはしめつけるような痛み、こわばりがある。

一度痛むと、痛みの持続時間は数十分。しびれはない。
腰痛はない。

座った後に悪くなるので、なるべく座らないようにしている。
仕事は接客業で立ちっぱなし。
トイレや、椅子からの立ち上がり時に痛みを感じる。

休日はリラックスして痛みをあまり意識しない。
横になって休んでいるのが一番楽。夜間痛、自発痛はない。

整形外科では股関節の変形が少し認められた。
母も股関節の手術をしている。

医師からは将来的に手術をすすめられている。
ロキソニンを週に2.3回服用。マッサージ、鍼灸は
4.5回通ったが良くならなかった。

 

健康状態

飲酒、喫煙歴なし。食欲(正)、
睡眠(正)、発熱なし

既往歴

左変形性股関節症

身体診察

圧痛:左股関節周囲に圧痛多数。上前腸骨棘直下、
鼡径部に圧痛。
大腿内側、腰部には圧痛なし。

炎症所見:認められない。

可動域制限:左軽度股関節屈曲、内転制限が認められる

アライメント:骨盤後傾位、腰椎後弯、胸椎前弯

鑑別疾患

・仙腸関節障害:腰痛が認められない。
 下肢症状部位が移動しない。

・椎間関節性腰痛:腰痛が認められない。

・伏在神経絞扼障害::大腿内側下部、膝内側部の痛み、
 圧痛がない。
 痛みの性状がピリピリ、チクチクではない。
 夜間痛、自発痛はない。

診断

・変形性股関節症:立位時の痛み・股関節の既往などから。

 股関節疾患は一般的には股関節周囲や鼡径部、大腿外側の痛みが
 メインであり、今回の主訴である大腿内側部の痛みと
 合わない点もある。

 

鍼灸施術とその経過

閉鎖神経痛 鍼灸施術の経過

 

第1回

 右上側臥位にて、第3.4.5椎間関節、PSIS、大腸兪、
関元兪、左股関節周囲の硬結部位に48㎜-22号(寸6-4番)、置鍼15分。

仰臥位にて鼡径部、内転筋部に置鍼10分。

座位から立位への動作、足踏みで股関節外側、
内転筋に「つっぱり感」が残存。

座位にて、左股関節外側に60㎜-30(2寸-8番)号で単刺。

股関節の「つっぱり感」は消失。

内転筋上部のつっぱり感が残存。
第3腰椎椎間、PSISに48㎜-22号(寸6-4番)で単刺。

内転筋上部の「つっぱり感」消失。腰の「こり感」を
新たに訴えたが、
初診であるため、加療せず終了。

第2回(14日目)

座位から立位への痛みはなくなった。
30分座っていても、歩ける。
職場での痛みはなくなった。

代わりに、腰、臀部、大腿後側に「コリ感」がでてきた。

施術部位は前回通り。経過が良く、
鍼の刺激によるだるさなどがなかったため、
置鍼から鍼通電(間歇波)に変更した。

腰部、臀部、腸骨筋、内転筋部に通電。
施術後、大腿内側の「つっぱり感」が少し残る。

症状は改善しているが、大腿内側部に施術をしても
痛みが少し残るため、絞扼部位が大腿以外にある
「閉鎖神経痛」の可能性を考慮する。

第3回(23日目)

前回の施術からは全体の痛みは10→6. 調子は良かった。
電車を長めに乗ってもあまり痛くない。

大腿内側部の痛みが残りやすい点から「閉鎖神経痛」の
可能性について説明。

施術は内閉鎖筋による閉鎖神経の絞扼
(緊張が強い筋肉が神経をしめつける)を対象にし、
腿内側部は触らず。

他は前回同様。

第4回(30日目)

 大腿内側部の痛みが大幅に減る。
痛みを意識しない日が増えた。

1週間のほとんどは痛みを感じない。今回の症状は股関節の
関与もあるが、
閉鎖神経の絞扼による割合がより強いと
説明した。以後、大腿内側の痛みは出ていない。

考察

 

考察

閉鎖神経は腰から臀部、大腿内側を通っている神経です。
主に大腰筋、内・外閉鎖筋で絞扼されて痛みを生じます。

閉鎖神経は途中で枝分かれし、股関節と大腿内側、
膝内側に出ています。

また股関節の動きにより、これらの神経が圧迫され症状が増悪します。
股関節を屈曲・内転の動きで内閉鎖筋に、
屈曲・内旋の動きで外閉鎖筋に負荷がかかります。

施術の後半で、大腿内側部に刺鍼しないで改善しているのは、
絞扼部位が大腿内側部以外であると考えられる。

一般的に「閉鎖神経痛」によく使われる陰廉、五里、陰包などの
大腿内側部にあるツボについては絞扼部位が
末端の場合に有効ではないかと考えました。

施術の前半において一定の効果が出ていたのは、
股関節周囲のに鍼を行っていたからだと思われます。

3回目で閉鎖神経、内・外閉鎖筋への
施術を加えた結果、改善がみられています。

閉鎖神経痛はそれほど頻度の高いものではないとおもいますが、
股関節の動きなどで誘発される所見を見逃さないこと、
閉鎖神経痛の絞扼部位の把握などが重要な疾患であると感じました。

また、今回の患者さんは股関節の変形が見られるため、
医師による定期的な経過観察の必要性を説明し、理解していただきました。

 

アキレス腱の痛みと鍼灸

アキレス腱

 

アキレス腱の痛みと鍼灸

アキレス腱はふくらはぎの2種類の筋肉が腱となり、
踵にくっついています。

アキレス腱の痛みには専門的には
「アキレス腱炎」
「アキレス腱周囲炎」
「アキレス腱付着部症」などがあります。

原因は外傷や使いすぎによるものがほとんどです。

ここでは、前半にアキレス腱を大切に使うために注意すること、
後半はアキレス腱を痛めた患者さんの具体的症例から
対処法と予防策、そして当院の施術法などを紹介いたします。

 

運動を長く楽しむために

当院のある埼玉県春日部市内牧地区ではウォーキングや、
ランニングをされている方をよくみかけます。

内牧公園など、歩くと気持ちがいい場所がたくさんあります。
春日部市でも北と南では随分と印象が違うように思えます。

歩く目的は、気分転換や健康維持はもちろんのこと、
膝の痛みの予防、筋力低下防止など、みなさん様々なようです。

気温がグッと下がっているときは、無理をせず体を温め、
十分な防寒をなさっていただきたいと思います。

急な気温の低下や歩きすぎなどで、いわゆる「古傷が痛む」と
訴えて来院される方がいらっしゃいます。

学生時代に、陸上競技や、柔道などに打ち込んでおられて、
アキレス腱を傷めたり、肉離れをされた方は多いようです。

普段は気にならないけれども、「痛み」というよりは
「違和感」「不快感」「十分に伸びきらない」といった
表現をよく耳にします。

実際に傷めたときの処置でその後の経過は随分と変わりますが、
すでに随分と時間が経ち、あきらめている方も少なくありません。

以前、10年以上前にアキレス腱断裂の手術をされた40代、
男性の患者さんは、ご自身でストレッチなどをされていました。

しかし、仕事が終わる午後になるといつも「違和感」を感じていました。
休日の犬の散歩でも日によってはコースを短くすることもあったようです。

当初の来院目的は寝違いの施術だったのですが、アキレス腱の施術も併行し、
ストレッチの方法なども確認することで、気にならない程度まで
もっていくことができました。

個人差はありますが、手術をされた側の足はは自然と血行が悪くなるようで、
反対側と比較すると冷えていることも多く、筋肉の緊張も強いようでした。

鍼灸では直接アキレス腱に関わる筋肉の緊張をとりながらも、
お灸で深部を温めます。

手術をされた部分はどうしても元の組織よりは弱くなり、
皮膚などの突っ張りなどもあり、動きの制限や血行不良を引き起こすと
考えているからです。おそらく触ると冷えていることがほとんどです。

さらに、違和感をかばう為、他の部位にかかった負担をとる目的で
反対側の下肢や腰なども併行して施術をします。

まずはご自身の体の状態を、運動前にチェックされることで
ウォーミングアップやストレッチの中身も変わってきます。

筋肉の張りや、力の入り具合、伸び具合などを確認し、
ケアすることで長く運動を楽しむことができると思います。

それでもどうしてもうまくいかない時などに鍼灸のことを
思い出していただければと思います

 

マラソンによるアキレス腱の痛み(症例)

こちらの症例は患者さん個人が特定されないように変更を加えております。

患者:50代、男性

主訴:アキレス腱の痛み

現病歴

マラソン大会に出場するために日々、近隣の公園を走っている。
最近気分を変えようとコースを変え(コンクリートでした)、
調子が良いためいつもより長い時間走っていた。

4日前から左のアキレス腱に痛みがでてきた。1日休むと痛みは減ったが、
また走ると痛みが増してあまり走ることができない。

今では歩いたり、アキレス腱を伸ばしたりすると痛む。
自分では湿布をしてみたがあまり効果がない。
腰痛はなく、アキレス腱の痛み以外の下肢症状はない。

 

身体診察

アキレス腱上に複数箇所の圧痛とアキレス腱の外側にも
圧痛が認められた。足関節の背屈で痛みが増したが、
底屈では痛みは増さない。

回外・回内では痛みは増悪しない。
また周囲の靭帯、足底腱膜には痛みは認められない。

左右のアキレス腱を比較して、腫れについては差がない。
熱は少し持っているが、それほど強い印象はない。


全体的に左殿部、左ハムストリングス、左下腿三頭筋の
緊張が右に比べ強く、圧痛も左に多い。

 

初診時の診断と根拠

・アキレス腱炎とアキレス腱周囲炎
①アキレス腱上と周囲に圧痛、自覚痛があること 
②足関節の背屈で痛みが増悪すること

除外診断

・アキレス腱付着部症:腫れがほとんどないこと
・足底腱膜炎:足底腱膜に圧痛がない
・後距踵靭帯の炎症:圧痛がないこと、回内位で痛みが再現しないこと

アセスメント

急に運動量が増したこと、コースを変えたことなどが今回のアキレス腱の
痛みにつながっていると考えた。またアキレス腱だけでなく、
左殿部から下肢にかけて緊張が強く、左右差があることも原因の
一つと考えられる。アキレス腱の痛み、炎症をとるだけでなく、
痛みを再発させない予防策についてもしっかりと伝える。

 

施術部位

解剖学的な観点から以下の部位に筋緊張の緩和と痛みの
除去を目的に鍼とストレッチを行った。

①アキレス腱と直接関係する下腿三頭筋
②アキレス腱とその周囲
③ハムストリングス、殿部、腰部(特に左)
④拮抗筋である脛
⑤足底筋膜

施術後は痛みは10→2 
歩行時やふくらはぎを伸ばした時の痛みはかなり軽減された。

 

対処法と予防策

急な痛みの時は湿布よりもしっかりと氷水や保冷剤などで冷やすこと。
テーピングなどでの固定により動きを制限すること。

運動量を減らしたり休むことの必要性を伝えた。
痛みが減ってきたら、ふくらはぎだけでなく、殿部や下肢、
足底のストレッチを。

また筋緊張に左右差があるので靴や練習方法、フォームの見直し
なども大事な要素になることを話しました。