ハムストリングスと坐骨部の痛み
「お尻のここが痛いんですよね」と手で「坐骨」を示される方がおられます。
いわゆる下肢に痛みやしびれを訴える「坐骨神経痛」ではありません。
このような訴えをされる方は、比較的ハードにスポーツをされている方、
特に「長距離を走っている方」に多く見られます。
そして「お尻」の痛みと同時に、
「ハムストリングス」の張りや痛みを伴っています。
「坐骨」とは
坐骨は文字通り、座っているときに椅子にあたるお尻の骨です。体重を支持する骨です。
「坐骨」と「ハムストリングス」の関係
なぜ「走っている方」に坐骨の痛みが多いのかは筋肉の走行に一因があります。
スポーツに伴い、ハムストリングス(下図参照)の強力で急激な収縮は「裂離骨折」になることもあるといわれています
他には、長時間座っていることが多い方や、股関節に負担がかかっている方が坐骨部の痛みを訴えます。
「坐骨」から始まる筋群
坐骨部は大殿筋に表層はおおわれています。
坐骨からは8個の筋肉の起始があり、太ももや脛まで伸び、その動きに関係しています。
特にハムストリングスとよばれる「大腿二頭筋」「半腱様筋」「半膜様筋」の収縮力は強く、いわゆる「肉離れ」の多い筋肉でもあります。
![](https://harimo.jp/wp/wp-content/uploads/2022/01/IMG_0791-1024x768.jpg)
坐骨から始まる筋群
・ハムストリングス
(半膜様筋 半腱様筋 大腿二頭筋)
・大腿方形筋 上双子筋 双子筋 内閉鎖筋 大内転筋
![](https://harimo.jp/wp/wp-content/uploads/2022/01/31521-1024x768.jpg)
筋肉は骨から骨へ走行しています。過剰な収縮がかかると筋肉が骨に付着する部位、
付着部に負担がかかり痛みを生じます。
この場合「坐骨」が付着部となります。
坐骨部に痛みが生じる場合、原因の一つとして坐骨に付着している
筋肉の過剰な収縮が考えられます。
坐骨部とハムストリングスの痛みに対する鍼灸
坐骨部を押すと痛みが再現されます。
ただし、うつ伏せよりも、横向きで太ももをお腹に近づけた姿勢で坐骨を押すと
より痛みが再現しやすくなります。
ハムストリングスの筋腹に鍼をするよりは、ハムストリングスの起始である
坐骨部に刺鍼する方が効果が高いように思えます。
「裂離骨折」 もある部位なので、坐骨そのものに相当な負荷がかかっていることが
推測されるからです。
上記の図のように、坐骨部も一定の広さがあり、複数の筋肉が付着しています。
そして大殿筋以外は深部にあります。
痛みや張りを伴う、ハードな練習をしている方の筋肉は分厚く硬いため
刺鍼する鍼の本数も1.2本では緩みにくく、
それなりの本数と長さ・太さの鍼を必要とします。
直接深部の筋肉にアプローチできる点は、
鍼の特徴でありアドバンテージではないかと考えています。
施術直後に変化を感じやすい症状のひとつかと思われます。