足関節捻挫と「むくみ」に対する鍼灸症例

足関節捻挫と「むくみ」に対する鍼灸症例

足関節捻挫後の可動域制限を訴えられた鍼灸症例を紹介いたします。
今回は「むくみ」が悪化要因のひとつと考えています。
再発予防の観点からもご参考になれば幸いです。

(患者さん個人が特定されないよう内容に変更を加えています)

患者
50代、女性

主訴
左足関節捻挫後の可動制限
今後年齢を重ねていくことによる、歩行の不安がある。
再度捻挫しないようにしたい

病歴
1ヶ月前 段差で左足関節を捻挫。
接骨院に1ヶ月通って、痛みが軽減し、施術が終了となったが
左足関節が伸ばせないため当院に来院。

普段痛みはないが、ふとした時に左外くるぶしの前後が痛む。
夜になると足全体がむくむ。整形外科は受診していない。

既往歴
高校時代バスケットボールで左足関節を2回捻挫
スキーで左膝内側を痛め、膝に水が溜まったことがある。
左下肢静脈瘤でストッキングを使用中。

一般健康状態
睡眠・食欲問題なし
健康診断で特に異常はみられない。

所見
左外果から、足関節・下腿遠位4分の1にむくみ。(圧痕は伴わない)
底屈・背屈ともに可動域制限あり。
前脛骨筋部に圧痛・硬結多数。「附陽」に圧痛が認められる。

施術方針
繰り返す捻挫と、既往歴、所見から「むくみ」が
今回の可動制限に関与していると思われる。
まずむくみをとり、その後に筋緊張などの軽減を図ることとする。

初診
電気ていしん、電気温灸器syouki、ザムストホットパックを併用し、
マッサージジェルを使用して、下腿から足部のむくみを軽減。

下腿前面、前脛骨筋の硬結部を中心に単刺。1寸3分4番鍼、
2寸8番鍼を使用。

下肢静脈瘤があるため、下肢挙上位で就寝いただく。

第2回(7日目)
前回施術後の調子は良いが、まだ左足関節外果上から
下腿遠位1/5にむくみが残存している。前回同様の施術後、足関節可動域の左右差がなくなる。

底屈時に足関節前面につっぱりが残るため、前脛骨筋硬結部に2寸8番鍼で
単刺4箇所により、つっぱり感は消失。

「附陽」単刺により、圧痛消失。
セラバンドを使ったセルフケアをお伝えし、施術終了。

施術を終えて
今回は捻挫の後遺症と下肢静脈瘤による「むくみ」が悪化要因のひとつと考えました。
「むくみ」を先に電気ていしんで軽減すると、筋緊張の部位がわかりやすくなります。
足関節捻挫は靭帯だけを痛めるわけではなく、他の軟部組織にも影響します。

筋緊張に対しては、それなりの太さの鍼の方が改善しやすいと考えています。
患者さんの主訴であった「足関節の可動制限」は捻挫の再発リスクとなる報告もあります。

そのため、痛みだけでなく、可動制限も改善する必要があると感じます。

また、捻挫と思っていても「骨折」の可能性もあるため、
まずは整形外科を受診することを強くお勧めしています。

参考文献

・「機能解剖と運動療法」 工藤慎太郎 編 羊土社
・「足部・足関節理学療法マネジメント」 片寄正樹 監修 MEDICAL VIEW
・「スポーツ活動における足関節捻挫 後遺症と捻挫再発予防について」 篠原純司
 日本アスレティックトレーニング学会誌 第 3 巻 第 2 号 127-133(2018)

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