腰椎椎間板ヘルニアについて知っていただきたいこと

腰椎椎間板ヘルニアについて知っていただきたいこと

目次

  • 腰椎椎間板ヘルニアの症状
  • 腰椎椎間板ヘルニアになりやすい人は?
  • 腰椎椎間板ヘルニアのタイプ
  • 腰椎椎間板ヘルニアの診察と診断で大切なのは「病歴」
  • 腰椎椎間板ヘルニアにおける画像診断
  • 腰椎椎間板ヘルニアの経過
  • 腰椎椎間板ヘルニアになったときの過ごし方と鍼灸治療
  • まとめ

 「腰椎椎間板ヘルニア」は、「腰痛」と「坐骨神経痛」が主症状の病気です。
「坐骨神経」は腰から足にかけて走っている神経で、この神経に痛み・しびれがおきます。
「坐骨神経痛」を起こすのは「腰椎椎間板ヘルニア」以外にもあります。「腰椎椎間板ヘルニア」については、既にわかっていること、まだわかってないことがあり、様々な情報があります。

今は、ほとんどの患者さんがインターネットにアクセスでき、情報を得ているのですが、情報量が多かったり、その質の問題などもあり、混乱されていることがあります。
「腰椎椎間板ヘルニア」の患者さんは、急性期は「痛み」「しびれ」などの症状でつらい思いをされます。
症状が治まった後も、「痛みの記憶」や「再発の不安」などの心配を抱えておられる方が多いように思われます。

ここではガイドラインや、参考文献でより正確な情報を提供し、また当院の経験も踏まえて、患者さんの不安を少しでも解消できる内容をご案内していきます。

「腰椎椎間板ヘルニア」の症状

・腰痛
・坐骨神経痛(臀部、足の痛み、しびれ):ほとんどが左右どちらか、両足のときもあります。
・麻痺(足を上げにくい)
・尿が出づらい:一刻も早く病院を受診するべき症状です

*特に歩きづらいほどの強い「麻痺」、尿が出づらい、出ないなどの「排尿障害」の時は、すぐに病院を受診するべき状態です。

「腰椎椎間板ヘルニア」になりやすい人は?

・男性が女性よりも2-3倍多い
・年齢は20-40歳代:高齢になるほど椎間板がつぶれなくなってくるので、発症リスクが減る
・運転手、金属・機械労働者に多い→当院でも運転の仕事の方に多い印象です
・スポーツとの関連は不明・喫煙は少し関係あり
・遺伝要素もあります。
・ぎっくり腰(急性腰痛)の既往がある方

「腰椎椎間板ヘルニア」のタイプ

・「腰椎」の4番と5番の間、また腰椎5番と仙椎1番の間にヘルニアがよくおこります。
・正中型:腰痛がメインですが、両足に痛み・しびれがでます。
 麻痺や排尿障害がでやすいといわれています。 
 自然吸収されず、手術になることが他のタイプより比較的多いとされています。
・外側型:痛みが強く、左右どちらかの足に坐骨神経痛がでます。自然吸収されやすい

「腰椎椎間板ヘルニア」の診察と診断で大切なのは「病歴」

・正しい病歴を聞くことが診断に最も重要とされています

  1. 下腿まで放散する疼痛
  2. 神経根の走行に一致する疼痛
  3. 咳やくしゃみにより悪化する疼痛
  4. 発作性の疼痛

*この中で特に「痛みの部位」の確認が最も診断の精度が高い情報と言われています。
他に、筋力低下や知覚の鈍さ、深部腱反射などの低下は診断の決め手になるほどの情報ではないとの報告があります。
患者さんに「どこに痛みがあり」「どうすると痛みが増し」「どうして痛くなったのか」を丁寧に聞くことが診断上もっとも有効だと示されています。
SLRという仰向けで患者さんの足を上げる身体診察も、診断の精度を少し上げるという点では有効ですが、以上の4つの病歴ほどの精度ではないようです。

「腰椎椎間板ヘルニア」における画像診断

・レントゲンでは判断できません、ただし「骨折」などほかの病気の有無を調べることはできます。
・MRIで診断はできます。

一般にヘルニアが大きいほど、足の症状も強く出ることが多いと言われています。
しかしながら、画像上にヘルニアが認められていても、なんの症状もない人が一定数おられます。
また、発症時にヘルニアがあり、症状もある方が、その後症状が消失しても、画像上はヘルニアが変わらずある方もおられます。つまり「ヘルニアの有無・大きさ」などが「症状の有無・強さ」と関連がない場合があると言われています。
「腰椎椎間板ヘルニア」において、「病歴」をきちんと聞くことが最も大切で、画像診断はそれを裏付けるための補助てきな役割と考えます。

画像診断の項目で、ヘルニアの有無・大きさが必ずしも症状のそれらと関連するわけではないことがわかりました。
それなのに、症状があるのは、飛び出したヘルニアによる「圧迫」だけが原因ではないということです。

現在では「圧迫」と「炎症」があるといわれています。物理的な「圧迫」と化学的な「炎症」の2つがヘルニアの痛みの原因とされています。「炎症」は画像にはうつりません。

「腰椎椎間板ヘルニア」の経過

経過はヘルニアのタイプや程度によって様々です。基本的には「自然経過」が良いとされる病気です。報告では半数以上が手術をしなくてよく、保存療法を第一選択としています。

手術の適応は大まかに以下の二つです
1:急性の強い麻痺、排尿障害は手術対応となります。(保存療法を選択するケースではありません)2:保存療法でよくならないもの、社会復帰を早急にしなくてはいけないもの。
*手術と保存療法の短期での比較は「手術」が良いとされていますが、長期での比較(半年から4年程度)では経過に差がないとされています。**再手術率は5年で4-15%と言われています。


自然経過
一般的にヘルニアは平均2-3か月で吸収してなくなります。また、先ほど申し上げたようにヘルニアが吸収されなくても症状がなくなることもあります。自然に小さくなりますが、小さくならなくても患者さんの症状がなくなることがあります。


当院でよくみる経過
「腰椎椎間板ヘルニア」と整形外科で診断をされてお見えになる方が、ほとんどです。
中には画像診断だけで、前述の4つの病歴もなくヘルニアと診断されている方も、時々おみえになります。
病歴からも画像からもヘルニアである場合、概ね以下のような経過で回復されていきます。
1:腰痛も坐骨神経痛も強い
2:発症から2週間、3回目の治療後くらいに、先に「腰痛」が軽減されます。
3:それにともなって、坐骨神経痛の範囲が狭まってきます。(大腿→下腿→足指)
4:足の指先のしびれが少しある程度(日常生活に支障がなく、気にならない方は治療をここで終了します)
この間1-2か月くらいが平均だと思われます。

当院への来院が発症してどれくらいか、麻痺や筋力低下の有無、坐骨神経痛の範囲などが経過を決めているように思えます。
当院での症例を紹介しておりますので、ご覧になってください。
「腰椎椎間板ヘルニア-麻痺を伴った症例」
「腰椎椎間板ヘルニア-(鍼灸治療症例)」

「腰椎椎間板ヘルニアになったときの過ごし方と鍼灸治療

「腰椎椎間板ヘルニア」になったときの過ごし方は、時期や程度によって異なります。

  • 急性期で痛みなどの症状が強いときは「安静」
  • 回復期になってきたときはウォーキングなどの「軽めの運動」
  • しびれや筋力低下などの後遺症については、回復に至るまで一定程度の「時間」が必要ではあること、

より具体的な過ごし方や注意点は、「腰椎椎間板ヘルニア-適切な過ごし方に書きましたので、参考にしてください。

まとめ

・強い麻痺・尿が出にくい時はすぐに病院へ
・急性期の痛みや、しびれは強いことがありますが、自然経過のよい病気です
・画像診断だけでなく、病歴がもっとも診断に重要です


参考資料・「腰痛 第2版」 菊池臣一 医学書院 刊

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