しゃがむと痛い 膝裏の痛み

しゃがむと痛い 膝裏の痛み

「しゃがむと膝が痛い」という訴えは「変形性膝関節症」を持つ患者さんから
よく聞きます。その場合、膝の内側を示される頻度が高いように思います。

今回は「膝裏の痛み」について症例を通じてご案内いたします。

*この症例は患者さん個人が特定されないよう内容に変更を加えております。

[患者]
40代、男性、立ち仕事
[主訴]
左膝裏・左膝裏外側の痛み

[病歴]
1.2週間前からしゃがむと左膝裏・膝裏外側が痛い。
正座の形はできるが、左膝裏に痛みがあり、数分ももたない。

左腰も前屈みで少し重だるい痛みがある。腰の動きで膝裏の痛みは悪化しない。
膝裏以外の下肢に痛み・しびれはない。
仕事は立ち仕事だが、しゃがむ動作も多いため、日常生活に支障が出ている。

ここ最近は職場の草むしりを毎日1時間ほどしていた。
20代の頃から下肢静脈瘤の既往があり、過去に静脈を切除する手術歴がある。
現在も下腿はむくみやすい。

[所見]
膝窩に広い範囲で圧痛多数。大腿二頭筋に圧痛・硬結あり。
放散痛はない。
下腿前・外側に痛み・しびれはない
大腿・下腿ともにむくみが強い。

大腿二頭筋と膝裏の疼痛部
大腿二頭筋と膝裏の疼痛部

[鑑別]
総腓骨神経絞扼障害(腓骨神経障害)
しゃがむ動作、長時間の立位の病歴はあるが、
下腿外側から足背にかけてしびれや痛み、感覚障害がない。
腰部神経根症
腰の動きによる膝裏の痛みの増悪はない。

[施術方針と内容]
病歴から「総腓骨神経絞扼障害」の可能性もあるが、
疼痛部位が膝裏・膝裏外側の範囲でとどまっていることから、
大腿二頭筋の付着部症も念頭に置いて施術を開始。

[施術]
腹臥位にて、腰・膝裏、大腿後側、下腿後側に電気ていしんでむくみを取り、
残った硬結部に鍼を行う。
腰の痛みは気にならない程度になる。
膝裏の痛みは楽になるが、しゃがむとまだ半分ほど残っている。

座位にて、腓骨裏に残る硬結に単刺、しゃがむ動作での痛みはさらに減る。
正座はお尻が踵につく前に、腓骨頭後側・腓骨頭上部付近に痛みがある。
痛みが出始める膝の角度で、同部位に単刺。
これにより正座での痛み、しゃがむ動作での痛みはほぼ消失。

ハムストリングス等のストレッチの方法を確認して、予防に努める.
むくみがちな体質と、草むしりによる「しゃがむ動作」により
膝裏の負担が増したと思われる。

[施術を終えて]

「しゃがむ」といった膝を曲げる動作は、総腓骨神経を締め付ける動作であり、
大腿二頭筋にも負担がかかります。

「総腓骨神経絞扼障害」に特徴的な病歴「しゃがむ」「草むしり」などは
ありますが、「下腿外側から足背にかけての疼痛・しびれ」は認められませんでした。
今回は初期症状であった可能性もあります。

施術は、最初に電気ていしんで膝窩のむくみにアプローチしたことで、
圧痛部位や緊張部位が途中からより明確になったように思えます。

さらに施術中に再度、正座やしゃがむ動作を確認していただくことで、
患者さん自身が膝窩よりもやや外側の腓骨頭後側周辺に痛みが再現されることを
明確に感じたようです。

そのため、「総腓骨神経絞扼障害」よりは、「大腿二頭筋」の緊張・圧痛、
付着部である腓骨周囲の所見と施術による変化から「大腿二頭筋」の付着部症の
可能性が高いと考えました。

正座や、しゃがむ動作で痛みが出る部位は様々で、 大腿二頭筋だけでなく、
腓腹筋・長腓骨筋 ・fabellaなど様々な要因が考えられます。
経験則ですが、膝関節伸展位よりも、屈曲位での刺鍼の方が、腓骨頭(特に後側)周囲の
緊張がより取れるような気がしています。

総腓骨神経絞扼障害

総腓骨神経


総腓骨神経絞扼障害(腓骨神経障害)は臨床症状が大切といわれています。

症状
下腿外側から足背にかけての知覚障害
足関節・足趾(第1指)の背屈力低下・下垂足

所見
絞扼部の圧痛・下腿外側から足背への放散痛(Tinel様兆候)

病歴
しゃがみ姿勢・正座・長時間の立位・草むしり、農作業

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