膝の痛みに自分でできること-変形性膝関節症のセルフケア
「慢性的な膝の痛みに自分でできることはないですか」
変形性膝関節症の患者さんを拝見していると、
セルフケアは欠かせないと感じます。
立ったり、歩いたりしている限り膝関節への負担は必ずあります。
膝関節への日々の負担をいかに減らすか、膝関節を支える筋肉や、
歩行に関わる筋肉の状態を
いかによくするかということが大切になってきます。
自分でケアすることで、良くなるスピードが
はやくなる患者さんを多くみてきました。
今回は慢性的な膝の痛みに対するセルフケアを
下記に紹介いたします。
ご自身でできることはありますので、ぜひご覧ください。
セルフケア
①熱を持っているときは冷やす
両手の手のひらで膝の痛む部分を触れてみます。
痛む部分が熱くなっていたり、腫れていた場合は冷やします。
湿布は冷えている感じはありますが、
保冷剤などで冷やしたほうがより中まで冷えます。
何度も使えるので便利です。
「冷た過ぎて痛い」と感じられたら、
一度外しましょう。
しばらくして、まだ熱を持っているようでしたら、
さらに冷やす必要があります。
歩いた後、痛みが強いときは熱を持っていることが多いです。
急な痛みでは熱を持ちやすくなります。
「炎症」をひかせるために、まずは冷やして、運動は控えましょう。
お風呂で温めすぎないこと、サポーターで
保温しすぎないことも大切です。
「急な痛み、強い痛み、熱を持っているときは冷やす」
②慢性的な痛み、熱を持ってないときは温める
①とは逆に、熱を持っていない時、痛みや腫れがそれほどひどくない時は温めます。
温めることで血流が良くなり、筋肉などの伸び縮みがよくなります。
入浴や、電子レンジであたためたタオルなどをあてるのが効果的です。
また温かい飲み物専用のペットボトルに、お湯と水を6:4くらいの比率で入れて、
薄いハンカチの上から膝を温めるのも効果的です。
ペットボトルのふたはしっかり閉めて、お湯の比率を変えることで温度調整ができます。
火傷に注意して、なでながら温めましょう。
「熱を持っているかどうか」
「痛み、腫れが強いかどうか」で
温めるか、冷やすかが決まります。
③環境を整える
日々の生活の中で、膝への負担を軽くするために生活環境を整えます。
- 布団よりもベッドに
- 床に座るよりも椅子を使う
- トイレは洋式に
- 手すりをつける:玄関、トイレ、廊下、浴室
- 杖を用意しておく
膝を深く曲げた状態から、動き始めるのは膝に大きな負担となります。
これらの環境を整えていただくと、膝関節への負担が大きく減ります。
楽に立てることで、転倒防止にもつながります。
日々のことですので、ぜひご検討ください。
また、以上の項目の一部は介護保険の対象となります。
費用が大幅に軽減されるので、ケアマネージャーさんへの相談をお勧めしています。
膝の負担が少ない環境をつくりましょう。
④道具を使う
痛みがある時、歩行が不安定なときなどは道具の力をかります。
杖には抵抗がある方も多いのですが、膝への負担を減らすのに有効です。
杖の準備だけしておくと、旅行のお誘いなどにも不安なく参加できます。
- 杖
- サポーター
- テーピング
- 置き鍼(シールタイプの鍼です)
- シルバーカー(買い物には荷物をいれられ、途中で座ることもできます)
- エレベーター、エスカレーター(階段はさける)
④-1 サポーター
「サポーターをしています」と患者さんが見せてくれるものは、
「保温」タイプのものであることが多いようです。
ドラッグストアで販売されている履くだけのものです。
軽度の膝痛だとそれでも十分対応できるのですが、
膝用のサポーターは本当に種類が多くあります。
内・外側の靭帯用など、横揺れやねじれを制限し、
膝関節をうまく支持するものが多く販売されています。
実際に試して装着されることをお勧めしています。
しっかり膝を支えるプレートが入ったものや、ベルトで的確に固定できるものなど
いわゆる「保温」タイプのサポーターとの違いを感じることができます。
当院のある春日部近辺では岩槻のスポーツ用品店「アルペン」が
種類も多く、サンプルも用意されてました。
当院では取り寄せのみで対応しています。
ちなみに「保温」用のサポーターは、
「冷えて痛む」「温めると楽になる」といった方には有効ですが。
「膝に熱をもっている」「腫れている」時は、サポーターで
「保温」するのは「熱が引くまで」やめておきましょう。
サポーターは実際に試して選びましょう
⑤動き始めに注意する
変形性膝関節症は「動き始め」、
つまり動作を始めるときに最も痛みます。
歩き始め、立ち上がりなどの
動作を開始するときに最も力を必要とします。
対策としては、動作前と動作中において
注意が必要です。
動作前は、足をブラブラと貧乏ゆすりのようにゆらします。
15秒程度でかまいません。
動作中は可能なら、なんらかの支えをみつけて動きます。
立ち上がる時なら、机やいすを手でつかみながら。
トイレなどでは手すりにつかまりながらだと、
膝への負担が減ります。
電車やバスでの移動中では、降りる駅のひとつ前から、
足をブラブラしてください。
痛みがずいぶん違います。ぜひお試しください。
動き始めはブラブラ足を軽く動かしましょう
⑥自宅でお灸をする
変形性膝関節症は軽度のものを除いて、
地道に治していくことが必要となります。
痛み止めや、注射で痛みを減らすことと同じくらい、
痛みが出にくい状態にすることが大切です。
自宅でのお灸は、膝関
節周囲の血行を促進し、余分な水を膝関節に溜めないようにします。
また膝関節周囲の筋肉の緊張を緩和し、
筋肉の疲労を緩和することで筋力を発揮できるようにします。
膝周囲に熱を持っているときだけは、
お灸を避け、アイシング、つまり冷やすほうを優先します。
熱がないときに、お灸は適応となります。
(鍼灸院でのお灸は熱を加えるお灸と、熱をとるお灸ががあります。)
手のひらで触って、熱があるかどうかを確認し、なければお灸をします。
しばらく続けていると、膝のむくみ、だるさ、腫れ、痛みなどが
軽減してきます。自宅用のお灸はドラッグストアでも当院でも扱っています。
お灸の方法、部位などご不明な点が
ございましたら、いつでもご相談ください。
お灸はあまり熱をもってないときにしましょう
⑦運動をする
運動といっても激しい運動ではありません。
横になったり、座った状態でできる
軽い負荷の運動から始めます。
並行してストレッチを行い、
筋肉の伸張性を高めることで
関節の可動域を狭くしないようにします。
一方で、運動で疲労を溜めすぎても筋力を最大限に
発揮できなくなります。適度な休息も必要です。
運動に慣れてくると徐々に回数が増えて、
回数をこなすことが目的となってしまうことがあります。
痛みがあったり、疲労があっても休むことなく運動を
継続すると悪化させてしまいます。
適度な回数や負荷は患者さん毎に違います。
同じ患者さんでもその日の状態によって違います。
ご自身の「感覚」も大切にしていただき、
運動と休息とケアを適度に組み、継続することが確実です。
自宅だけでなく、近隣のスーパーや趣味などで外にでることは
足腰の筋力の維持だけでなく、太陽の光にあたることで骨密度にも
良い影響を与えます。
ご自宅で静かに過ごされるのもいいのですが、刺激が少ないせいもあり、
膝痛に意識が向きすぎる面もあります。
膝に注意を向け、ケアすることは大切なことですが、
気づいたら膝痛のことを忘れるくらい、
他のことに没頭することも同じくらい大切です。
他人と比べず自分の感覚を大事にして、適度な運動をしましょう
⑦-1 プールで歩く
プールで歩くことは関節への負荷が減った状態で
膝周辺の筋力が鍛えられる
非常に有効な方法です。
代謝が上がりやすく体重コントロールも期待できます。
水圧で浮腫みも取れやすく、メリットが大きいです。
プール後の体の冷えには十分注意していただきたいと思います。
着替えなどは手間かもしれませんが、
プールはお勧めです
2019-03-16 更新