埼玉県春日部市の鍼灸院 はり・きゅう はりも

〒344-0058 埼玉県春日部市栄町1-279
Tel:048-763-5323
膝の痛み

しゃがむと痛い 膝裏の痛み

しゃがむと痛い 膝裏の痛み

「しゃがむと膝が痛い」という訴えは「変形性膝関節症」を持つ患者さんから
よく聞きます。その場合、膝の内側を示される頻度が高いように思います。

今回は「膝裏の痛み」について症例を通じてご案内いたします。

*この症例は患者さん個人が特定されないよう内容に変更を加えております。

[患者]

40代、男性、立ち仕事


[主訴]

左膝裏・左膝裏外側の痛み

[病歴]

1.2週間前からしゃがむと左膝裏・膝裏外側が痛い。
正座の形はできるが、左膝裏に痛みがあり、数分ももたない。

左腰も前屈みで少し重だるい痛みがある。腰の動きで膝裏の痛みは悪化しない。
膝裏以外の下肢に痛み・しびれはない。

仕事は立ち仕事だが、しゃがむ動作も多いため、日常生活に支障が出ている。

ここ最近は職場の草むしりを毎日1時間ほどしていた。

20代の頃から下肢静脈瘤の既往があり、過去に静脈を切除する手術歴がある。
現在も下腿はむくみやすい。

[所見]

膝窩に広い範囲で圧痛多数。大腿二頭筋に圧痛・硬結あり。
放散痛はない。
下腿前・外側に痛み・しびれはない
大腿・下腿ともにむくみが強い。

大腿二頭筋と膝裏の疼痛部
大腿二頭筋と膝裏の疼痛部

[鑑別]

総腓骨神経絞扼障害(腓骨神経障害)
しゃがむ動作、長時間の立位の病歴はあるが、
下腿外側から足背にかけてしびれや痛み、感覚障害がない。

腰部神経根症
腰の動きによる膝裏の痛みの増悪はない。

[施術方針と内容]

病歴から「総腓骨神経絞扼障害」の可能性もあるが、
疼痛部位が膝裏・膝裏外側の範囲でとどまっていることから、
大腿二頭筋の付着部症も念頭に置いて施術を開始。

[施術]

腹臥位にて、腰・膝裏、大腿後側、下腿後側に電気ていしんでむくみを取り、
残った硬結部に鍼を行う。

腰の痛みは気にならない程度になる。
膝裏の痛みは楽になるが、しゃがむとまだ半分ほど残っている。

座位にて、腓骨裏に残る硬結に単刺、しゃがむ動作での痛みはさらに減る。

正座はお尻が踵につく前に、腓骨頭後側・腓骨頭上部付近に痛みがある。
痛みが出始める膝の角度で、同部位に単刺。
これにより正座での痛み、しゃがむ動作での痛みはほぼ消失。

ハムストリングス等のストレッチの方法を確認して、予防に努める.

むくみがちな体質と、草むしりによる「しゃがむ動作」により
膝裏の負担が増したと思われる。

[施術を終えて]

「しゃがむ」といった膝を曲げる動作は、総腓骨神経を締め付ける動作であり、
大腿二頭筋にも負担がかかります。

「総腓骨神経絞扼障害」に特徴的な病歴「しゃがむ」「草むしり」などは
ありますが、「下腿外側から足背にかけての疼痛・しびれ」は認められませんでした。
今回は初期症状であった可能性もあります。


施術は、最初に電気ていしんで膝窩のむくみにアプローチしたことで、
圧痛部位や緊張部位が途中からより明確になったように思えます。

さらに施術中に再度、正座やしゃがむ動作を確認していただくことで、
患者さん自身が膝窩よりもやや外側の腓骨頭後側周辺に痛みが再現されることを
明確に感じたようです。



そのため、「総腓骨神経絞扼障害」よりは、「大腿二頭筋」の緊張・圧痛、
付着部である腓骨周囲の所見と施術による変化から「大腿二頭筋」の付着部症の
可能性が高いと考えました。

正座や、しゃがむ動作で痛みが出る部位は様々で、 大腿二頭筋だけでなく、
腓腹筋・長腓骨筋 ・fabellaなど様々な要因が考えられます。

経験則ですが、膝関節伸展位よりも、屈曲位での刺鍼の方が、腓骨頭(特に後側)周囲の
緊張がより取れるような気がしています。

総腓骨神経絞扼障害

総腓骨神経


総腓骨神経絞扼障害(腓骨神経障害)は臨床症状が大切といわれています。

症状
下腿外側から足背にかけての知覚障害
足関節・足趾(第1指)の背屈力低下・下垂足

所見
絞扼部の圧痛・下腿外側から足背への放散痛(Tinel様兆候)

病歴
しゃがみ姿勢・正座・長時間の立位・草むしり、農作業

膝の水はずっと抜かないといけないのですか?

膝
 
「膝の水はずっと抜かないといけないのですか?」

「膝の水を抜くと癖になりませんか?」
 
この質問は本当によく聞かれます。
 
それだけ患者さんの疑問と不安があるからだと思います。
 
実際に患者さんを診てきた経験から、
その疑問と不安を解決できるように
解説したいと思います。

最後に鍼灸治療院としての当院の対応もお伝えします。

 
 
 

目次

  • なぜ膝に水がたまるか
  • 膝に水がたまったらどうするか
  • 膝の水を抜くと癖になるのか
  • 膝に水がたまらないようにするには
  • 鍼灸治療院である当院での対応
 

なぜ膝に水がたまるか

 
膝に水がたまるのは
「膝に負担がかかっている」からです。
 
その負担は主に3つとなります。
 
①使い過ぎ
②使い方
③体重増加
 
 
①「使い過ぎ」はまさに長年使ってきたということです。
 
 
②「使い方」は仕事・スポーツ・趣味などによる
 習慣的な姿勢・動きです。
しゃがんだり、正座だったりと
 膝を深く曲げたり伸ばしたりを繰り返すことです。
 
 
③「体重の増加」はいわゆる肥満、閉経後のホルモンバランス
  による体重増加などがあります。
 
これらの負担により、軟骨がすり減り、骨と骨がぶつかり、
関節が変形すると「炎症」が起きます。
 
 
つまり様々な膝への負担が関節の「炎症」を引き起こし、
水がたまるということになります。
 
「炎症」と「水がたまる」ことについては、次でもさらに説明していきます。
 
 

膝に水がたまったらどうするか

 膝 注射
 
結論からいいますと、
整形外科を受診されてない患者さんには
受診を強くお勧めしています。
 
(既に頻繁に水を抜いている方、うまくいかなかった方については後ほど回答します)
 
もし膝に水がたまっていた場合、水を抜くことになります。
 
その理由のひとつが、水を抜くこと自体が「検査」であるからです。
 
抜いた水の中身が血液だったり膿だったりと、いろいろとわかることがあるのです。

濁りが強いほど炎症が強い傾向もあります。
 
 
水がたまる原因には様々な疾患があります。
変形性膝関節症・慢性関節リウマチ・
痛風・偽痛風・外傷などがあります。
 
レントゲンだけでなく、水を抜くことが原因を知るための検査となります。
 
 
理由の2つ目が「治療」です。
 
水がたまった状態は膝が不安定になり、
軟骨を破壊します。
したがって、水を抜いたほうがいいのです。
 
 
つまり、水を抜くことには
「検査」と「治療」の2つの役割があります。
 

膝の状態を知るためにも、整形外科への受診をお願いいたします。
 
 
 
 

膝の水を抜くと癖になるのか

 
既に水を頻繁に抜いている方は、
「癖になると困る」「いつまで水を抜けばいいのか」という
不安をかかえています。
 
 
これは、
「水を抜くと癖になるのではなくて、炎症が続いているために水がたまる」
というのが回答となります。
 

もともと膝関節には 「関節液」という
「必要な水」があります。

それが適量だといいのですが、「炎症」がおこると
量が増え、水がたまります。

膝の周りのしわがみえないくらい、パンパンになる方もいます。
 
「検査」「治療」の理由で水を抜いてもらうことは
決して悪いことではありません。
 
水を数回抜くだけで症状が治まる方もいます。
 
しかしながら実際は、水を抜きながらも、
「炎症」を引かせるアプローチが必要です。
 
 
 

水がたまらないようにするにはどうするか

 
水がたまらないように、「炎症」を引かせる、
「膝の負担を減らす」ために様々な方法があります。
 
  • ヒアルロン酸・ステロイドの注射
  • サポーター
  • テーピング
  • インソール
  • 消炎鎮痛剤
  • 湿布
すでにこれらの方法をされている方がほとんどでしょう。

鍼灸治療院である当院での対応

 
鍼灸治療院にお見えになる方は、
水を頻繁に抜いて、注射も行い、湿布を貼っていますが、
あまり改善が見られない方です。
 
 
当院では、下記のように対応しています。
 
膝に直接・間接的に関わる筋肉・腱・靭帯の状態を診て

股関節・足関節との関係を検討しアプローチしています。

 

膝裏・膝内側に多いむくみを減らし、
膝のお皿がよく動くようにする。
 
 

そのうえでご自宅で行っていただく運動・ストレッチ・生活上の工夫を
含めたセルフケアを個別に提案しています。

セルフケアについてはこちらも参考になさってください。
「膝の痛み-変形性膝関節症のセルフケア」
 

特に膝周囲の「むくみ」については大きな問題と考えています。

 

鍼・灸もつかいますが、膝に関しては、最近は微弱な電気治療器、
電気温灸器、手で見始めることがほとんどです。
 
以上のような方法で、炎症を出にくくし、
水がたまらないようにしています。
 
鍼灸の適応を超え、あまりに変形が強い場合は
手術などをお勧めすることもあります。
 
 
 
 

膝の痛みに自分でできること-変形性膝関節症のセルフケア

膝の痛みに自分でできること-変形性膝関節症のセルフケア

膝 痛み

 

「慢性的な膝の痛みに自分でできることはないですか」

 

変形性膝関節症の患者さんを拝見していると、
セルフケアは欠かせないと感じます。

立ったり、歩いたりしている限り膝関節への負担は必ずあります。

膝関節への日々の負担をいかに減らすか、膝関節を支える筋肉や、
歩行に関わる筋肉の状態を
いかによくするかということが大切になってきます。

自分でケアすることで、良くなるスピードが
はやくなる患者さんを多くみてきました。

今回は慢性的な膝の痛みに対するセルフケアを
下記に紹介いたします。

ご自身でできることはありますので、ぜひご覧ください。

 

セルフケア

①熱を持っているときは冷やす

アイシング

 

両手の手のひらで膝の痛む部分を触れてみます。

痛む部分が熱くなっていたり、腫れていた場合は冷やします。

湿布は冷えている感じはありますが、
保冷剤などで冷やしたほうがより中まで冷えます。
何度も使えるので便利です。

 

「冷た過ぎて痛い」と感じられたら、
一度外しましょう。

しばらくして、まだ熱を持っているようでしたら、
さらに冷やす必要があります。

歩いた後、痛みが強いときは熱を持っていることが多いです。
急な痛みでは熱を持ちやすくなります。

「炎症」をひかせるために、まずは冷やして、運動は控えましょう。
お風呂で温めすぎないこと、サポーターで
保温しすぎないことも大切です。

「急な痛み、強い痛み、熱を持っているときは冷やす」

 

②慢性的な痛み、熱を持ってないときは温める

 

 

①とは逆に、熱を持っていない時、痛みや腫れがそれほどひどくない時は温めます。

温めることで血流が良くなり、筋肉などの伸び縮みがよくなります。

入浴や、電子レンジであたためたタオルなどをあてるのが効果的です。

また温かい飲み物専用のペットボトルに、お湯と水を6:4くらいの比率で入れて、

薄いハンカチの上から膝を温めるのも効果的です。

ペットボトルのふたはしっかり閉めて、お湯の比率を変えることで温度調整ができます。

火傷に注意して、なでながら温めましょう。

「熱を持っているかどうか」
「痛み、腫れが強いかどうか」で
温めるか、冷やすかが決まります。

 

③環境を整える

日々の生活の中で、膝への負担を軽くするために生活環境を整えます。

 

  • 布団よりもベッドに
  • 床に座るよりも椅子を使う
  • トイレは洋式に
  • 手すりをつける:玄関、トイレ、廊下、浴室
  • 杖を用意しておく

 

膝を深く曲げた状態から、動き始めるのは膝に大きな負担となります。


これらの環境を整えていただくと、膝関節への負担が大きく減ります。
楽に立てることで、転倒防止にもつながります。


日々のことですので、ぜひご検討ください。

また、以上の項目の一部は介護保険の対象となります。

費用が大幅に軽減されるので、ケアマネージャーさんへの相談をお勧めしています。

膝の負担が少ない環境をつくりましょう。

 

④道具を使う

 

 

痛みがある時、歩行が不安定なときなどは道具の力をかります。


杖には抵抗がある方も多いのですが、膝への負担を減らすのに有効です。

杖の準備だけしておくと、旅行のお誘いなどにも不安なく参加できます。

 

  • サポーター
  • テーピング
  • 置き鍼(シールタイプの鍼です)
  • シルバーカー(買い物には荷物をいれられ、途中で座ることもできます)
  • エレベーター、エスカレーター(階段はさける)

 

 

 ④-1 サポーター

「サポーターをしています」と患者さんが見せてくれるものは、
「保温」タイプのものであることが多いようです。

ドラッグストアで販売されている履くだけのものです。

軽度の膝痛だとそれでも十分対応できるのですが、
膝用のサポーターは本当に種類が多くあります。

内・外側の靭帯用など、横揺れやねじれを制限し、
膝関節をうまく支持するものが多く販売されています。

実際に試して装着されることをお勧めしています

しっかり膝を支えるプレートが入ったものや、ベルトで的確に固定できるものなど
いわゆる「保温」タイプのサポーターとの違いを感じることができます。

 
当院のある春日部近辺では岩槻のスポーツ用品店「アルペン」が
種類も多く、サンプルも用意されてました。

当院では取り寄せのみで対応しています。

 

ちなみに「保温」用のサポーターは、
「冷えて痛む」「温めると楽になる」といった方には有効ですが。

「膝に熱をもっている」「腫れている」時は、サポーターで
「保温」するのは「熱が引くまで」やめておきましょう。

サポーターは実際に試して選びましょう

 

⑤動き始めに注意する

 変形性膝関節症は「動き始め」、
つまり動作を始めるときに最も痛みます。

歩き始め、立ち上がりなどの
動作を開始するときに最も力を必要とします。

対策としては、動作前と動作中において
注意が必要です。

動作前は、足をブラブラと貧乏ゆすりのようにゆらします。
15秒程度でかまいません。

動作中は可能なら、なんらかの支えをみつけて動きます。

立ち上がる時なら、机やいすを手でつかみながら。

トイレなどでは手すりにつかまりながらだと、
膝への負担が減ります。

電車やバスでの移動中では、降りる駅のひとつ前から、
足をブラブラしてください。

痛みがずいぶん違います。ぜひお試しください。

動き始めはブラブラ足を軽く動かしましょう

 

⑥自宅でお灸をする

せんねん灸

 

変形性膝関節症は軽度のものを除いて、
地道に治していくことが必要となります。

痛み止めや、注射で痛みを減らすことと同じくらい、
痛みが出にくい状態にすることが大切です。

 自宅でのお灸は、膝関
節周囲の血行を促進し、余分な水を膝関節に溜めないようにします。

また膝関節周囲の筋肉の緊張を緩和し、
筋肉の疲労を緩和することで筋力を発揮できるようにします。

膝周囲に熱を持っているときだけは、
お灸を避け、アイシング、つまり冷やすほうを優先します。

熱がないときに、お灸は適応となります。
(鍼灸院でのお灸は熱を加えるお灸と、熱をとるお灸ががあります。)

手のひらで触って、熱があるかどうかを確認し、なければお灸をします。

しばらく続けていると、膝のむくみ、だるさ、腫れ、痛みなどが
軽減してきます。
自宅用のお灸はドラッグストアでも当院でも扱っています。

お灸の方法、部位などご不明な点が
ございましたら、いつでもご相談ください。

お灸はあまり熱をもってないときにしましょう

 

⑦運動をする

運動といっても激しい運動ではありません。


横になったり、座った状態でできる
軽い負荷の運動から始めます。

並行してストレッチを行い、
筋肉の伸張性を高めることで
関節の可動域を狭くしないようにします。

一方で、運動で疲労を溜めすぎても筋力を最大限に
発揮できなくなります。適度な休息も必要です。

運動に慣れてくると徐々に回数が増えて、
回数をこなすことが目的となってしまうことがあります。

痛みがあったり、疲労があっても休むことなく運動を
継続すると悪化させてしまいます。

適度な回数や負荷は患者さん毎に違います。
同じ患者さんでもその日の状態によって違います。

ご自身の「感覚」も大切にしていただき、
運動と休息とケアを適度に組み、継続することが確実です。

自宅だけでなく、近隣のスーパーや趣味などで外にでることは
足腰の筋力の維持だけでなく、太陽の光にあたることで
骨密度にも
良い影響を与えます。

ご自宅で静かに過ごされるのもいいのですが、刺激が少ないせいもあり、
膝痛に意識が向きすぎる面もあります。

膝に注意を向け、ケアすることは大切なことですが、
気づいたら膝痛のことを忘れるくらい、
他のことに没頭することも同じくらい大切です。

他人と比べず自分の感覚を大事にして、適度な運動をしましょう

 

 ⑦-1 プールで歩く

 

プールで歩くことは関節への負荷が減った状態で
膝周辺の筋力が鍛えられる
非常に有効な方法です。

代謝が上がりやすく体重コントロールも期待できます。

水圧で浮腫みも取れやすく、メリットが大きいです。

プール後の体の冷えには十分注意していただきたいと思います。

着替えなどは手間かもしれませんが、
プールはお勧めです

 

2019-03-16 更新

 

変形性膝関節症・股関節症における併存疾患の存在と臨床症状の予後:システマティックレビューおよびメタ分析

 

変形性膝関節症/股関節症における併存疾患の存在と
臨床症状の予後:システマティックレビューおよびメタ分析

Presence of comorbidities and prognosis of clinical symptoms in knee
and/or hip osteoarthritis: A systematic review and meta-analysis.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29157670

 

*自己学習も兼ねて、鍼灸の海外文献を紹介する記事です。
誤訳の可能性もありますので、原文での確認をお願いいたします。

 
[目的]
 
 i)変形性膝関節症/股関節症を有する人々における併存疾患の存在と
  疼痛および機能障害の重症度との関連性を見つけること
 
(ii)特定の併存疾患(心疾患および/または高血圧、糖尿病、うつ病、
   および腰痛)と症状の重症度との関連性を探索すること
 
 

[方法]

研究は、4つの電子データベースおよび灰色文献#¹の系統的検索を
通じて割り出し、その後、方法論的に評価された

対象となった引用は、変形性膝関節症/股関節症を有する人で、
自己申告による併存疾患と重症度、疼痛や機能障害にもとづく
症状との直接的な関連性についての情報を、横断的または縦断的研究、
ランダム化比較試験によって提供された。
 
低〜中程度のバイアスリスクのうち、少なくとも2つの引用が
利用可能な場合、ランダム効果メタ分析を実施しました。
 
エビデンスそのものの質は、Cochrane推奨の方法を用いて決定された。

 

[結果]

対象となるすべての引用(n = 26)のうち、17件の研究が
メタアナリシスにあった。中程度のエビデンスで様々な併存疾患と
痛みの悪化とのつながりが明らかにされた
(回帰係数(95%信頼区間(CI)):0.18(95%CI:0.14,0.22)
 
 
身体機能のパフォーマンス(0.20 (95%CI:0.10,0.29))。
心臓病および/または高血圧(自己申告:0.08(95%CI:0.01,0.16)、
身体機能のパフォーマンス:(0.11(95%CI:0.02,0.20))
腰痛(自己申告:0.12 (95%CI:0.04,0.20))は、
以上、これらはは身体機能の低下を予測した
 
糖尿病は、より悪い痛みと関連していた(0.10(95%CI:0.02,0.17))。
 
その他の知見は、有意ではないか質の低いエビデンスであった。
 

[結論]

変形性膝関節症・股関節症を有する人にとっては、程度の重い
併存疾患による負担が、痛みや身体機能のパフォーマンスをより
悪化させてしまう。

高血圧による心疾患、腰痛または糖尿病による併存疾患で苦しむことは、
より重症度を増すかもしれない

 

[読んでみて]

下肢の変形性関節症のリスク要因のひとつに「体重」が
あげられると思いますが、今回の報告では高血圧、
心疾患、腰痛、糖尿病が挙げられています。

腰痛以外は循環器に関わる全身疾患です。

膝や股関節のケアをしながらも、併存疾患にも注意を向けることが、
変形性膝・股関節症を悪化させないために大切であることが
改めてわかる意義深い報告だと思われます。

 

#¹ 灰色文献:商業出版では入手困難な文献

 

急性腰痛に併発した膝の痛み:症例検討会より

急性腰痛に併発した膝の痛み

症例検討会での症例をご案内いたします。

「急性の腰痛と同時に表れた膝と足部内側にジワーとした痛みを訴える女性」
症例でした。

膝内側の痛みは、加齢や体重増加などでおこる「変形性膝関節症」が有名ですが、
急性でおこることはあまりありません。

「変形性膝関節症」の場合は、立ち上がりなどの動きはじめ、膝の曲げ伸ばし、階段の降りるときなどに痛みがでることがほとんどです。

症例のの患者さんではそういったことはなかったようです。

腰を曲げたり伸ばしたり、洗顔などの腰の動作、長時間座った後にかかる
腰の負担で、膝内側の痛みがでていました。

しかしながら、大腿内側から膝内側にかけて走る「伏在神経」には圧痛はありませんでした。腰から「大腿神経」という神経が大腿内側を通過し「伏在神経」というものに枝分かれしています。そこから足内側までつながっています。

「伏在神経」の痛みは「ピリピリ」「チクチク」といった皮膚に感じるような表現を患者さんはされることが多いといわれています。皮膚表面に近い浅い部分を神経が走っているからです。

今回の患者さんの痛みは「ジワーとした痛み」でした。この表現だけで判断はできませんが、患者さんの痛みの表現が原因部位の特定にとても参考になります。

以上から、「膝」そのものに問題がある「変形性膝関節症」の可能性は低いこと。また膝内側を通過する伏在神経が絞扼されておこる「伏在神経絞扼障害」の可能性も低いことが考えられます。

今回は、膝より上の大腿神経が急性の腰痛によって、「大腿神経痛」を誘発したのではないかという結論に至りました。

症例を発表された先生も「急性腰痛」と「大腿神経痛」を目的とした治療をされており、2週間3回ほどの治療で寛解となっていました。

鍼灸治療院にはこういった患者さんが少なくありません。

今回の「腰」に原因があって「膝」が痛むケースのように、原因部位と症状部位が離れていることは他の病気でもあります。

先日も、首を痛めて、手がしびれる「頸椎症性神経根症」など、
「レントゲンでは異常がありません」といわれて半年以上困られている
患者さんがお見えになりました。

今回の症例でも、同時に「腰」と「膝」の症状がでています。それぞれ別の病気が「同時」におこる確率よりも、ひとつの原因が同時に両方の症状を起こしていると考えるのが妥当だと再確認できた症例でした。

腰下肢痛・膝痛-研修会にて

腰下肢痛・膝痛-研修会にて

 

 2か月に1度の頻度で定期的に参加している研修会があります。
今回は2つの症例と、1つの講演会参加報告がありました。

偶然にも、2症例とも高齢女性のひとり暮らしの患者さんであり、腰下肢痛、膝痛の内容でした。

鍼灸治療や病態把握などの中身を参加者全員で検討いたしました。
それら以外で重要なことは、

  • 高齢者の腰下肢痛、膝痛は生活への影響が大きいこと
    (歩けなくなることで、衣食住が困難になることや、動かないことでの筋力低下、近隣との交流が途絶えるなど)

  • 身体的なことだけではなく、精神面、社会面、福祉面への視点が必要であること
    (これがきっかけで歩けなくなるのではという不安があります)

  • 独居の場合は、家族、ご近所とのつながりなど患者さんをサポートする人的資源の確認が必要であること


具体的には、患者さんが腰下肢痛などで動けないときに食事をどう確保しているか。患者さん自身で可能なのか。サポートする友人、知人、家族は近くにいるのか。福祉面では包括支援センターにつなげることも必要になります。介護サービスについて患者さんが知っているかどうかなどの確認も必要です。

主訴である腰下肢痛、膝痛の経過や改善後において、鍼灸治療以外の手段でも、どのように患者さんを支えていくかについて意見交換をいたしました。

また、患者さん自身が行えるセルフケアや安全性の確認についても様々な臨床上のアイデアがでました。

当院では往診もしています。来院できない状態の時は往診でサポートします。症状が改善してくると、タイミングをみて外来に切り替えます。往診から外来への切り替えは、ご自身で来院できたと自信をつけていただく目的もあります。

変形性膝関節症-研修会にて

変形性膝関節症-研修会にて

 

鍼灸院で膝の痛みを訴えられる患者さんは、
整形外科で「変形性膝関節症」と診断されてお見えになります。

 

膝の痛みの原因は、「変形性膝関節症」だけではなく、
他にも腰が原因で膝に痛みをひきおこす「伏在神経絞扼障害」など
様々なものがあります。

 

今回の研修では、テーマを「変形性膝関節症」に絞って
確認、議論を致しました。

 

ひとくちに「変形性膝関節症」といっても、痛みの程度や
関節周囲の状態、発症してからの経過、体重、他の関節の
状態などにより患者さんによって千差万別です。

 

それにより、治療成績も変わってきているというのは
参加者共通の認識でした。

そのうえで、まず鍼灸での標準的な治療方法を確認いたしました。

 

そこで標準的な治療を数回行ったうえで、症状の改善が
見られない場合にどのような工夫をしているのかを
参加者全員で共有いたしました。

何を見て、どういったものを指標にし、またどのように触診すると
痛みの状態、予後などを把握しやすいのかということを知ることができました。

 

特にどのように膝を曲げて触診を丹念に行うかがひとつのポイントでした。

状態によっては鍼灸だけでは難しい場合も珍しくありません。

 

炎症が強い場合や、どうしても出かけなくてはいけない状況など、
補助的にアイシングやテーピングなどの活用が必要なケースもあります。

標準的な治療と参加者それぞれの経験からの工夫など、
有意義に意見交換ができた場であったと感じています。