埼玉県春日部市の鍼灸院 はり・きゅう はりも

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触れるだけでピリピリ広がる膝の内側の痛み(伏在神経絞扼障害)

触れるだけでピリピリ広がる膝の内側の痛み(伏在神経絞扼障害)

触れるだけでピリピリ広がる膝の内側の痛み(伏在神経絞扼障害)

膝の痛みといえば、「変形性膝関節症」が有名ですが、それだけではありません。

頻度は高くありませんが、膝の内側にピリピリと特徴的な痛みをもたらす
「伏在神経絞扼障害」があります。

実際の症例と「伏在神経絞扼障害」について紹介いたします。

膝の内側が痛む「伏在神経絞扼障害」の鍼灸症例

*この症例は患者さん個人が特定されないよう変更を加えております。

患者
70代、女性

主訴
2か月前からの膝内側の痛み、大腿・下腿内側の痛み。

受診動機
時間がたてば治るだろうと思っていたが改善せず、
日課の散歩ができなくなったため受診。


現病歴
2か月前に思い当たるきっかけなく、
右ひざ内側が腫れるほど痛み、ピリピリする。

現在、腫れは引いたが膝の内側を中心に
大腿・下腿内側にピリピリした痛みがある。
時折、膝から下腿内側にかけて電気が走るようなこともあった。
しびれはない。

腰痛はなく、腰の動きで膝の痛みは悪化しない。
じっとすわっていたり、就寝時に横向きで休んで左右の膝を重ねると、
膝どうしが当たって痛む。

歩行時に痛みはあるが、動いていると楽になることがある。

入浴時に自分患部をもんでいるが、痛みは悪化する。
湿布もしている。
散歩などは普段通り行っていたが、ここ数日痛みが強くなり、
中断している。


既往歴
糖尿病・呼吸器疾患

所見
膝内側に疼痛部位が多いが、下腿内側にかけて広範囲に圧痛だけでなく、
軽く触れるだけでも鋭い痛み。 

また大腿内側や膝内側部の圧迫で下腿内側遠位部に放散する。
チネルサイン(+)

膝内側の静脈が多数透けて見え、むくみがある。 


鑑別

・変形性膝関節症:軽く膝に触れる程度で痛みはでにくい。

・腰椎椎間板ヘルニア:腰痛・しびれがなく、部位も坐骨神経領域と一致しない。
           腰の動きで膝の痛みが悪化しない。
・仙腸関節障害:仙骨部の痛みがない。



施術方針

痛みの性状、部位、触診による所見から
「伏在神経絞扼障害」として施術。




施術とその経過

第1回

以前他疾患で来院の際に、鍼の刺激が苦手だったため、
初回は電気ていしんのみで対応。


伏在神経の走行上の圧痛や硬結を
電気ていしんでの微弱電流を加え、反応の消失をみていく。

遠位から反応の消失が見られる。
一部、ZAMSTホットパックなどで
熱刺激を加えると、あてるととれやすい。 
(喘息の既往のため、お灸は使わない)

下腿部より、膝内側部の反応は取れにくい。

施術終了時は、来院時のような足を引きづるような動きは少ない。


第2回(5日目)

施術日の翌日から痛みがまだ残る。
下肢内側に電気が走るようなことはないが、膝関節内側に痛みはある。

所見
大腿内側の押圧で膝内側に放散痛 皮膚は触れるだけで痛む。
陰陵泉付近が最大圧痛。(伏在神経内側下腿皮枝)
初診時にあった下腿内側遠位1/2には圧痛がない。

方針
症状軽減が見られるも、十分ではないため 伏在神経絞扼部位に刺鍼を行う。

施術
伏在神経に沿って、seirin JSP 1寸3分 置鍼20分。 
脛骨内果から伏在神経に沿って、電気ていしん30分。
大腿内側の押圧による放散痛は消失 陰陵泉の圧痛は残る。
陰陵泉付近に置鍼 寸6-4 10分  
施術後痛みがかなり軽減される。

当院を出てからの歩行が初回よりもスムーズに思える。


*電気ていしんで浮腫が軽減されると、絞扼部位を触診でしぼりこみやすい。


第3回(9日目)

前回施術後、治ったかのように調子がよかったが長距離の散歩で少し症状が戻る。

所見
前回より圧痛部位は少ない。

施術
内転筋管付近、陰陵泉付近の内側下腿皮枝の絞扼部位を中心に置鍼。
抜針後、絞扼部位に電気ていしん。
さらに残存する硬結部位に置鍼。

施術後は痛みをほぼ感じない。

就寝時に大腿まである靴下を履いていることが判明。
絞扼を防ぐため、当面は下腿下半分くらいまでにとどめていただく。

1週間様子をみていただき、症状消失により終了。

初診時は圧痛部位や放散痛を誘発する部位が多かったが、
施術ごとに、部位の減少が見られた。

参考文献にある絞扼好発部位、触診による神経の走行上の部位を
中心に施術をしたのが改善につながったと感じている。


「伏在神経絞扼障害」について

伏在神経

腰からはじまる「大腿神経」は鼠経部を通過し、「伏在神経」に枝分かれします。
その後、大腿内側にある「内転筋管」という「管」を通ります。

その「管」を取り囲む筋肉(縫工筋、内側広筋、長内転筋、大内転筋)が伏在神経を
圧迫し、「伏在神経の痛み」を誘発します。

以下に、「伏在神経絞扼障害」の特徴と、「変形性膝関節症」との共通点と
違いをご案内いたします。

「伏在神経絞扼障害」の特徴

・膝の内側がピリピリ、チクチクした痛み
・膝だけでなく、太ももの内側、脛の内側から内くるぶし付近まで
 痛みが広がることがある。
・痛みに波があり、症状がないときもある。
・触れたり、軽く押圧するだけでも痛い部位がある

「変形性膝関節症」と「伏在神経絞扼障害」に共通する症状

・膝の内側の痛み
・階段は上るより、降りる方が痛い
・立ち上がりなどの動作開始時痛がある
・正座など膝を曲げるのがつらい

病歴・所見での両者の違い

「痛みの性状」が異なる
 「変形性膝関節症」は「関節」の痛み。
 「伏在神経絞扼障害」は「神経」の痛み


・「痛みの範囲」が異なる
  伏在神経の走行に沿って痛む

 
・「軽く触れるだけでも痛む」
 「伏在神経」が皮神経のため

・神経を圧迫する「絞扼部位」がある
 


参考文献

・「下肢のentrapment neuropathy(絞扼性神経障害)の針刺治療(Ⅱ)」
  小川義裕  全日本鍼灸学会雑誌 40巻2号末梢神経絞扼障害

・「しびれと痛み 末梢神経絞扼障害」 広谷速人 金原出版

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