肩関節の痛み(腱板炎)とお灸

肩関節の痛み(腱板炎)とお灸


肩関節が痛むのには様々な原因があります。
肩関節の痛みを訴えて来院なさる患者さんは、まず「五十肩」を心配なさることがほとんどです。

「五十肩」以外にも肩関節を痛める病気がいくつかあります。
今回は「五十肩」ではなく、同じく肩関節の病気である「腱板炎」とセルフケアについて下記に少し紹介いたします。

*下記症例は患者さん個人が特定されないよう内容に変更を加えております。

お灸症例

患者
45歳女性、左肩前面の痛みを訴える。最近事務仕事だけでなく、外回りの営業活動をしてから痛み始めた。今まで肩こりはあったが、今回の痛みは少し違うので五十肩にならないか心配

病歴
2か月前から仕事で責任のある立場になり、事務仕事だけでなく、外回りの営業活動を始めた。以前より歩くようになったので足が疲れるのはわかるが、なぜ左肩の前面が痛くなったのかはわからない。

3週間前から左肩の前面がピリッとするようになった、痛みはそれほど強くはないが、休んでも痛みが少なくなる様子はない。
週に1度趣味でダンスを行っている時に、腕を上げると明らかに左の肩に痛みを感じるようになった。就寝時に痛みで目が覚めることはないが、左肩を下にして横になってテレビを見ていると痛くなる。

ここ1週間は営業活動でかけているショルダーバックがすれると痛みを感じるようになった。肩、腕にしびれはない。頸の動きで痛みやしびれがでることはない。
腕は挙げることはできるが、挙げる途中で痛くなったり、ジャケットを着るときなどに痛みを感じる。
特になにかにぶつけたりしたことはない。営業活動はまだ当分続く予定、趣味のダンスも続けたいので、なんとかしてほしい。湿布、服薬などはしていない。食欲、睡眠は正常。発熱なし、夜間痛なし、安静時痛はない。

身体診察
・左肩に熱感、腫れなどは認められない。結節、間溝など肩関節前面に圧痛多数。
・ペインフルアーク 陽性(120°~160°)
・自動、他動ともに外転180°可能
・棘上筋、棘下筋の委縮、左右差は認めれらない

初診時除外診断
・石灰沈着性腱板炎:夜間痛がない、痛みが激しくない
・腱板断裂:自動の可動制限がない
・五十肩:夜間痛がない、拘縮がない、
・外傷:外傷の履歴がない

初診時の診断とその根拠
腱板炎:①上肢拳上途中の痛み ②可動制限がない③夜間痛がない ④安静時痛がない

施術とセルフケア

鍼灸治療は腱板周囲を中心に鍼やお灸をし、腱板の炎症をとります。
腱板炎は腱板断裂や五十肩(疼痛期)ほど炎症が強くないことがほとんどなので、比較的鍼灸の効果がその場で実感できることが多いと思います。
数回の鍼灸治療と生活上の注意とご自宅でのお灸を勧めています。



「病歴」にもありましたが、痛む方の肩を下にして横になられたり、ショルダーバッグやリュックを長時間肩の前面にあてられたことで痛くなられた方は複数の患者さんでおられました。
また、繰り返し腕を上げたり下げたりすることや、ボールなどを投げる動作を過剰に行っても腱板には負担になります。
可能な範囲で生活上の問題点を見直して頂きます。
お仕事などで見直すことができない場合は、ご自宅で腱板周囲にお灸をしていただくと、より早く痛みを軽減することができると思います。

外傷以外では普段の生活の中に原因があることがほとんどなので、こまめにお灸をしておくと悪化を防ぐことができますし、腱板炎の場合はお灸をした後に腕の上げ下げなどをしていただくと即効性を実感できることがほとんどです。腱板炎は五十肩などに比べてより自宅でのお灸が向いているのではと思っています。

お灸をする場所などは当院で随時ご案内しています。

 炎症があまりに強い場合はアイシングを優先的に行います。
また、テーピングなどで肩関節に負担がかからないようにします。お仕事などで動かすことが多いときは、サポーターをすることで肩関節の動作時の痛みが軽減されます。

以上のように、腱板炎に対しては、鍼灸治療と日々の生活上のセルフケアが同じくらい重要です。

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