「加齢」や「季節」を原因とする前に

「加齢」や「季節」を原因とする前に

初診の患者さんや、痛みがある時に来院される患者さんには
「どうして痛くなったと思われますか」とうかがっています。

痛みのきっかけや、背景を知って治療や予防につなげるためです。
明らかなきっかけや、原因がわかるときもあれば、患者さん自身も覚えがないことがあります。

患者さん自身に思い当たるきっかけがない場合、
「もう歳かなあ」、「この季節(気温の変化など)にいつも痛くなる」と患者さんは少しあきらめ気味です。

確かに「加齢」や「季節」は自らコントロールできない要素ですので、あきらめがちになるお気持ちもよくわかります。「加齢」は筋肉や骨などの組織を弱くし、痛みのきっかけをつくる大きな要素であることは間違いありません。

しかしながら、最初から「加齢」や「季節」」を原因としてあてはめてしまうと、本来の原因を見過ごすことにつながりかねません。

患者さん自身に明確なきっかけがない場合でも、患者さんから得られた情報で、仮説を立て、痛む動作、触診などから判断をし治療を行い、その過程と結果を記録に残していきます。

本当に「季節」だけが原因?:繰り返す腰痛の例


その時々には原因がわからなくても、カルテへの記録の蓄積が多くのことを教えてくれます。
繰り返す腰痛で困っていた患者さんは「季節」が原因だと思っていました。
カルテの記録をたどり、何回も話をうがかいました。
その結果、毎年痛む時期に畑仕事が忙しくなっていたこと。
畑仕事がなくても、突然の雪かきのように、畑仕事と似たような動作が原因となっていることがわかりました。

患者さん自身はそのような動作は日常的であったため、原因だという自覚はありませんでした。

また、夏と冬の定期的な長距離の旅行でも、電車の場合は痛くならないが、車の場合はその姿勢で痛くなっていたことがありました。
「季節」も全く無関係とはいいきれませんが、その時期に多い動作、姿勢などが主な原因と考えられました。

春先にぎっくり腰が多いといわれているのも、似たような事例かもしれません。気温の変化も激しい時期ですし、「季節」の要素があるかもしれません。

同時に春先は職場環境の変化や、引っ越しなどいろいろ負担の多い時期でもあります。「季節」の要素は自分でコントロールできませんが、忙しくなる時期だからこそ、腰を痛める動作に注意するなどの対策はできます。

記録をとることの大切さ

治療前の問診だけでなく、治療中の何気ない日常会話の中から気になったことをカルテに記録しておくと、先ほどのように痛めた時の共通点がみつかることがあります。

「加齢」や「季節」だけではなく、ある特定の環境、特定の動作で痛めることが多いのではないかと推察できます。

カルテの記録を時系列にまとめ、その考えを患者さんに伝えると、患者さんも思い当たるところがでてくるようで、納得したうえで積極的に予防をしていただけます。

また記録があることで、同じような状況で、同程度の痛みが再度起こった時には、必要な治療回数や期間をより正確に伝えることができます。
痛みの前後関係、時間の経過、痛む動作などの記録が様々な場面で活用できます。
繰り返す痛みのある患者さんはご自身でも少し記録をつけていただくと、痛みの頻度を減らすのに役立つかと思います。

患者さんご自身でも記録をとっていただくことをお勧めしています。

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